子の監護に関する処分(面接交渉)申立事件
第1 申立ての趣旨
申立人と相手方との聞の当庁平成19年(家イ)第0000号子の監護に関する処分(面接交渉)調停事件(以下「前件面接交渉事件」という。)において平成19年×月×日成立した別紙1の調停条項を,別紙2のとおり変更する。
第2 当裁判所の判断
l 本件一件記録によれば,次の事実が認められる。
(1) 申立人と相手方とは,平成10年×月×日婚姻し,平成11年×月×日に長女である未成年者C (以下「未成年者」という。)が生まれた。申立人と相手方は,平成16年×月×日調停離婚し,その際,未成年者の親権者を相手方と定め,以後相手方において未成年者を監護養育している。
(2) 申立人が平成19年×月×日当庁に申し立てた前件面接交渉事件において,同年×月×日,申立人と相手方との聞に,別紙lの調停条項(以下「前件調停条項Jという。)により調停が成立した。
(3) 相手方は,平成19年×月×日,未成年者を連れ,アメリカ合衆国ペンシルバニア州に転居した。相手方は,現在,未成年者とともに肩書住所地で生活し, 00大学00学部で研修中である。
(4) 申立人は,前件調停条項に従い,未成年者と面接交渉を行おうとしたが,円滑に実行されないため,平成20年×月×日,面接交渉の調書を作成(前件調停条項の変更)するための調停をペンシルバニア州00家庭裁判所に申し立てた。ところが,相手方が,向子の監護に閲する処分(面接交渉)事件についての管絡が日本国にあるとする先決的抗弁を申し立てたため,申立人は,同年×月×日,当庁に前件調停条項の変更を求める本件子の監護に関する処分(面接交渉)事件の審判を申し立て,同事件の国際裁判管轄権の有無についての判断(ペンシルバニア州の裁判所が「統一子監護事件に関する管轄及び執行法(UniformChild Custody Jurisdiction andEnforcement Act) 」以下「uC C J E A」という。) に従って前件調停条項を変更するために必要となる東京家庭裁判所の判断)を求めている。
2 そこで,前記1で認定の事実をふまえ,前件調停条項の変更を求める本件子の監護に関する処分事件について,我が固に国際裁判管轄があるか否かにつき判断する。子の監護に関する処分事件に関する国際裁判管轄については,我が国とアメリカ合衆国との聞においてこれを定める条約は存在しない上,我が国には国際裁判管轄権に関する明文の規定は存在しないことから,条理によって定めるしかない(ちなみに,圏内の裁判管轄権については,家事審判規則52条により子の住所地の家庭裁判所が有するとされている。)。そうすると, 離婚事件のみならず,親子関係事件(本件子の監護に関する処分事件も含まれる。)についても,相手方が行方不明その他特段の事情がない限り,相手方の住所地固に国際裁判管轄があるとするのを原則とし,併せて,親子関係事件の中でも本件のような子の面接交渉を定める事件(我が国で定めた面接交渉に関する調停条項の変更を求める場合も含む。)については,子の福祉という観点から,子と最も密接な関係を有する地である子の住所池田にも国際裁判管轄を認めるのが相当である。これを本件についてみると,前記1で認定の事実によれば,相手方及び未成年者は,いずれもペンシルパニア州に住所を有するから,ペンシルパニア州に国際裁判管轄があるというべきである。そこで,本件について,我が国に国際裁判管轄を認めなければならないような特段の事情が存在するかにつき判断するに,前記lで認定のとおり,相手方は未成年者とともに,平成19年×月×日,日本からペンシルパニア州に転居し,未成年者は相手方が00大学00学部での研修を終了するまで相手方とともにペンシルパニア州で生活することになること,前件調停条項を変更するにあたっては相手方及び未成年者の生活状況等の調査が必要であること,申立人は,現に,面接交渉の調書を新たに作成(前件調停条項の変更)するための調停をペンシルパニア州00家庭裁判所に申し立てており,同裁判所に本件についての国際裁判管轄を認めるほうがより子の福祉の観点から適切な判断をなし得るのみならず,当事者の出頭等の便宜にも資すること,また,ペンシルパニア州UCC]EAによれば,子の監護に関する処分事件に関する「排他的かつ継続的な管轄」は原則として監護に関する処分を最初に下した州が持つとされているが,その州が第5422条に従ってもはや排他的かつ継続的な管轄を有しないと判断した場合(①子と子の親がその州に住んでいないとき,もしくは②子もしくは子の親がその州と密接な関係を持たず,子に関する実質的な証拠がもはやその州では得られないとき)はその限りではないとされており(第5423条),その場合にはペンシルパニア州の裁判所が本件のように我が国で定めた面接交渉に関する調停条項の変更を求める事件についても管轄を持つとされていることにかんがみると,本件においては,我が国に本件子の監護に関する事件の裁判管轄を認めなければならないような特段の事情は存在しないといわざるを得ない。したがって,我が固には本件子の監護に関する処分事件の国際裁判管轄はないというべきであって,国際裁判管轄のない当庁に審判を求めた本件申立ては不適法である(これをUCC]EAに則していえば,東京家庭裁判所は,本件子の監護に関する処分事件について,もはや「排他的かつ継続的な管轄Jを有しない。)。よって,主文のとおり審判する。(家事審判官土居葉子)
タグ
2012年2月26日 | コメント/トラックバック(0) |
カテゴリー:未分類
養子縁組許可申立事件(趣旨変更後の事件名特別養子縁組申立事件)
第1 申立ての趣旨
主文同旨
第2 認定事実家庭裁判所調査官0000の調査報告書を含む一件記録によれば,以下の事実が認められる。
1 申立人(養父となる者) A (以下「申立人A」という。)と申立人(盤母となる者) B (以下「申立人B」という。)は, 1987年×月×日に婚姻した夫婦である。
2 申立人Aは,アメリカ合衆国a州で出生し,現在も実母と妹は同州内に居住しているが,父はb州に居住している。そして申立人A自身は, 1987年にテネシー州内の高校を卒業し,そのころ同州内で申立人Bと婚姻し, 00ゃ00で勤務した後,同州内にある00学校に入学して, 1995年に同校を卒業した。その後は口口として活動するようになり,1996年(平成8年)ころには申立人Bと共に来日の上, 00県00市内で生活するようになって,今日に至っている。申立人Aは,その本国法がアメリカ合衆国テネシー州であることを前提に本件申立てを行っている。申立人Bは,アメリカ合衆国テネシー州で出生し,同州内の高校を卒業し,そのころ同州内で申立人Aと婚姻し, 1995年には同申立人と問機,口口としての資格を有するに至った。申立入Bの実父は既に他界したが,実母や兄,妹は,現在もテネシー州内に居住している。申立人Bは, 1996年(平成8年)ころ,申立人Aと共に来日し, 00県00市内で生活するようになって,今日に至っている。申立人Bも,その本国法がアメリカ合衆国テネシー州であることを前提に本件申立てを行っている。申立入らは,現時点では,無期限で00県00市内での生活を継続する予定であって,アメリカへの帰国予定は有していない。また,申立入らは,現在, 00から相当額の報酬を受領し,借財は特になく,経済的に安定した生活をしている。
3 申立人らには,1988年×月×日生まれの長女E,1990年×月×日生まれの二女F,1994年x月×日生まれの三女Gの3人の実子がいる。申立入らの長女は, 2007年夏以降アメリカに帰国して大学に通学しているものの,高校生の二女,中学生の三女は,現在も申立人らと同居して生活している。
4 申立人らは, 3人の娘に恵まれ,養育してきたものの,かねて男児が欲しいという希望を有しており,また恵まれない子に愛情のある家庭環境を与えたいという思いから, 2年位前から養子を迎えたいと考えるようになり,知人を通じて,養子縁組希望者リストへの登録を行っていた。
5 事件本人Cは,平成18年(2006年) x月×日,00県00市内の00病院において,事件本人Dの非嫡出子として出生した。事件本人Dの供述舎によれば,事件本人Cの実父とは1回の付き合いだけで妊娠したとのことであり,実父の氏名職業等,その人となりは不明であって,実父からの認知も受けていない。
6 事件本人Dは,事件本人Cの妊娠中から,精神的な疾患を抱えて通院していた上,事件本人Cの兄に当たる非嫡出子H (平成14年×月x日生)を既に施設に預けていて,体調快復後は同児を引き取って養育するつもりであったことから,事件本人Cについては,妊娠当時から,自ら養育することは困難と考えていた。そして,事件本人Cの出生後は, 00市内在住のIが主宰する民間の養子縁組斡旋機関「口口口口」のスタッフを通じて,同児を養子縁組に出すことを決意した。事件本人Cは,低出生体重児で誕生したほか,貧血などの治療のため,出生後も病院で過ごしていたが,平成18年(2006年) x月×日に退院し,そのまま「口口口口」のスタッフに預けられた。なお,退院時点の事件本人Cには, 00の障害が残っていた。
7 事件本人D は,平成18年(2006年) x月×日には,自宅を訪ねてきた「口口口口」 のスタッフに対して,申立人らと事件本人C との特別養子縁組に同意する内容の特別養子縁組同意書,また事件本人Cが,申立人らと養子縁組をしてアメリカに移民すること,養子縁組成立時までは申立入らに事件本人Cの後見人を依頼する内容の孤児養子縁組並びに移民説渡証明書等に署名して交付し,また事件本人Cの幸せのために養子縁組を希望し,将来これに対する異議申立てはしないこと,この養子縁組によって事件本人Dの事件本人Cに対する賀任と親権がすべて終了することを承諾,同意することを含む内容の供述書を作成して,本件養子縁組に対する同意を表明した。
8 他方,「口口口口」のスタッフから,事件本人Cの事情を知らされた申立入らは,平成18年(2006年) x月には事本人Cを引き取り,養子として養育していくことを表明し,同月×日に,実際に「口口口口」スタッフから事件本人Cを引き取って,以後現在まで同児と同居して生活している。そして申立人らは,平成18年(2006年) x月×日には,当裁判所に対し,テネシー州法に基づき,事件本人Cを養子とすることの許可を求める本件申立てを行ったが,その後その申立ての趣旨を,日本法上の特別養子縁組申立てに変更する旨の申立てを行った。
9 事件本人Cは,申立人らに引き取られた後,申立入らや3人の娘たちに大変かわいがられて養育されており,その家庭環境にもすっかりなじんで,安定した生活を送っている。事件本人Cには00の障害があるものの, これについては医師の診察の下,近年中に手術で治療する予定であり,それ以外には特に健康上の問題もない。成育状況は順調であり,年齢相応の発途段階にあると見受けられる。申立人らは,今後とも事件本人Cを実子問機養育するつもりであるが,養子縁組の事実について隠し立てをするつもりはなく,成長に応じて説明をするつもりである。なお,事件本人Cに対しては,将来的には大学課程まで含めた教育の機会を与えるつもりでいる。これまでの経過に照らして,申立人らの監護養育態度,生活環境には何の問題もなく,申立人ら及びその娘たちと,事件本人Cとの適合性は十分である。
10 なお,本件申立後,事件本人Dは,家庭裁判所調査官からの電話連絡に1度だけ応対したことがあったものの,その後電話(携帝電話)は不通となり,また4回にわたる文書送付に対しでも何の反応も示さなかったが,現在に至るまで,本件養子縁組に対する反対の意向を表明したことがない。
第3 当裁判所の判断
1 申立人ら及び事件本人Cは,いずれも日本国内に居住していることから,本件についての国際裁判管轄権は我が固にあると認められる。
2 本件養子縁組に関する準拠法は,法の適用に関する通則法(以下「通則法」という。) 31条1項前段により,養親となるべき者,すなわち申立人らの本国法が適用される。申立入らはいずれもアメリカ合衆国の国籍を有しているが,同国は地域(州)各申立人の本国法が同国内のどの州法となるベきカか、を検討すべきところ,同国内には,その適用法を統一して指定する規則がないと認められるから,当事者に最も密接な関係がある地域の法が,その本国法になると解すべきである。認定事実によれば,申立人Aは,その出生地こそテネシー州ではないものの,同州内の高校を卒業し,同州出身の申立人Bと同州内で婚姻し,同州内での00学校も卒業して同州内で口口としての資格を得,申立人A自身も同州法を自身の本国法として本件申立てを行っているのであるから,同申立人と最も密接な関係がある地域とはテネシー州であると認められ,同申立人の本国法は,アメリカ合衆国テネシー州の州法であると認める。また,申立人Bは,テネシー州で出生し,同州内の高校を卒業し,同州内で申立人Aと婚姻し,現在も実母や兄,妹は同州内に居住しており,同申立人自身が同州法を自身の本国法として本件申立てを行っているのであるから,同申立人と最も密接な関係がある地域もテネシー州であって,同申立人の本国法も,アメリカ合衆国テネシー州の州法であると認める。
3 ところで,申立人らはいずれも平成8年(1996年)ころから日本国の00県00市内に居住し,現時点では,無期限で同所での生活を続けるつもりであって,アメリカに帰国する予定はないというのであるから,英米法上にいうところの住所(そこを本拠(home) とする意思〔永住意思〕をもって居住する地域)たるドミサイル(domicile) は,日本国内にあると認められる。そして,申立人らの本国法であるアメリカ合衆国テネシー州法(36-1-114) では,養子縁組の場合の裁判管轄権は,①養子縁組の申立人の居住地,②子の居住地,③子が公的機関による保護を受けるに至った時の居住地, ④子の監護権又は後見の権利を有する公認機関もしくは子の引渡を受けている公認機関の所在地,のいずれかにあることが規定されており,他方で,アメリカ合衆国のアメリカ抵触法第2リステイトメント(Restatementof The Law Second Conflict of Laws 2 d)289条によれば,裁判所は,養子縁組の裁判につき,常に,当該法廷地法を適用する旨定めているところである。そうすると,養親となるべき申立入らのドミサイルも,また養子となるべき事件本人Cの住所(すなわち,英米法上のドミサイル)も日本国内にあり,他方で事件本人Cの監護権や後見業務に携わっている公認機関があるとはいえない(少なくとも,テネシー州内に,かかる公認機関はない)本件においては,テネシー州法上も, その裁判管轄権は我が国のみにあることとなる(したがって,現にテネシー州内に居住しておらず, ドミサイルも日本国内に有している申立人らとしては,現状のままでは,本国であるアメリカ合衆国テネシー州において,本件養子縁組を求める裁判を提訴することができず,当然準拠法をテネシー州法とする養子縁組裁判も受け得ない可能性が高い。)。かかる場合においては,裁判管轄権を有する法廷地法をもって事件審理の準拠法とする旨定めた前記アメリカ抵触法第2リステイトメント289条の法理に従い,本申立てについてのいわば専属的な裁判管轄権のある日本法が,その準拠法として適用される(すなわち,いわゆる「隠れた反致J理論により,申立人らの本国法(テネシー州法)上,日本法への反致が成立する。通則法41条)と解するのが相当である。またこのように解しでも,それが申立人らの本国法(テネシー州法)上の公序に反するとは認められないし,養子となるべき者の保護,利益を勘案して決されるべき日本法に基づく養子縁組裁判の結果は,申立入らの本国法(テネシー州法)上も十分承認され得るものと解される。となれば,結局本件養子縁組に関する準拠法は,日本法ということになる。
4 申立人らは,日本法の適用を前提とする場合,事件本人Cを特別養子とすることを希望してその旨の趣旨変更申立てをしたので,日本国民法817条の2以下の規定により,その特別養子縁組(養子と実親その他の実方との親族関係が終了する縁組) を成立させることが相当であるかを検討する。前記認定事実によれば,申立人らはいずれも満25歳以上であり,事件本人Cは平成18年(2006年) x月×日の本件申立時点で未だ6歳未満であることが明らかであるから,その年齢要件はいずれも満たしている。事件本人Cの実母である事件本人Dは,本件申立て以前の平成18年(2006年) x月×日の時点で,既に申立人らと事件本人Cの特別養子縁組に同意する旨の意思表明をして,その旨の文書も作成しており,その後現在までには,当家庭裁判所調査官からの連絡にも何ら返答を答こさないなど,同女との連絡自体が困難な状態に陥っているが,いずれにしても現在に至るまで,その同意の意思を撤回したと認められる事情はなく, 同女は現在もなお本件特別養子縁組に同意しているものと認められる。さらに,事件本人Dは,事件本人Cの出産以来,同児を自ら養育したことはなく,またその意思もなく,経済的にも環境的にも,養育が可能な状況にあるとも認められないから,実母たる事件本人Dによる監護は,著しく困難かつ不適当であって,事件本人Cの利益のため,特に特別養子縁組をする必要性があると認められる。そして,申立人らは,平成18年(2006年) x月×日の本件申立て後,既に6か月以上の間,手ずから事件本人Cを監護養育してきたところ,これまでの期間中における申立人らと事件本人C,また申立入らの実子である長女,二女,三女と事件本人Cとの関係は大変良好で,申立人らと事件本人Cとの適合性には申し分がない。
5 以上によれば,本件では,特別養子縁組を認めるための法的要件はすべて充足しており,事件本人Cの利益のためにも,同人を申立人らの特別養子とすることが特に必要であると認めるから,本件申立てを認容するものとし,主文のとおり審判する。(家事審判官荻原弘子)
タグ
2012年2月26日 | コメント/トラックバック(0) |
カテゴリー:未分類
養子縁組無効確認請求控訴事件
第1 控訴の趣旨
1 原判決を取り消す。
(1 )
(本案前の申立て)被控訴人らの本件訴えをいずれも却下する。
(本案の申立て)
(2)被控訴人らの請求をいずれも棄却する。
3 訴訟費用は,第一,二審とも,被控訴人らの負担とする。
第2 事案の概要
1 控訴人は,昭和18年×月×日に従兄弟の関係にあるD (平成10年x月×日死亡)と婚姻したが,婚姻当日, 自らと夫であるDとを養子とし,実の姉であるE(平成17年×月×日死亡)を養母とする旨の養子縁組の届出(本件縁組届)がされた。
2 本件は, Eとその夫のF (平成4年×月×日死亡)との聞の実子である被控訴人らが,控訴人に対し,上記養子縁組について, E, D及び控訴人には縁組意思も届出意思もなかったとして,同養子縁組が無効であることの確認を求めた事案である。これに対し,控訴人は,本案前の主張として. EとDが共に死亡している本件においては. E. D間の養子縁組の無効をいうためには,検察官を当事者(被告)とする必要があり,控訴人には本件の被告適格がないとして,本件訴えの却下を求め,本案の主張として,Eも控訴人Dも,縁組意思を有していたし,仮にそうでないとしても,その後縁組のことを知りながら長期間放置したので,黙示の追認をした(更に,控訴人は平成19年×月x日付け準備書面により改めて追認をした。)として,被控訴人らの諮求を争った。
3 原審は,次のとおり判示して,被控訴人らの請求をいずれも認容した。
(1) 養子が夫婦である夫婦共同縁組の場合,夫婦は共同してのみ縁組無効の当事者となり得るものであるから,あくまで全体で一つの縁組と捉えるのが原則であり,その結果,第三者が,養親が一人,養子が夫婦という養子縁組の無効の訴えを提起する場合には,原則として,養親・養子夫婦の当事者3名全員を共同被告とするべきことになる。そして,この当事者3名のうちに死亡した者がいる場合であっても,当該3名こそが当該縁組における最も緊密な利害関係者である以上,当事者中に未だ生存者がいる以上は,当該生存者にこそ当事者適格を認めるべきであり,敢えて検察官を控訴人とする必要性は認めがたい。
(2) 控訴人本人自身が,本件縁組届の存在を知ったのは終戦後Dが就職のために戸籍謄本を取り寄せた際であり. Dと共にその時に初めて認識した旨明確に供述しており,本件縁組届時点においてはD及び控訴人のいずれにもその認識が全くなかったことが明らかである。Eについても,本件縁組屈時点でその認識を有していたことを裏付ける証拠は何ら存在しない。本件縁組届は. Eの祖父母の長女の夫であったGが. Eが他家に嫁ぐ前にa家の家督をD控訴人夫婦に継がせることでa家の絶家を回避できると考え,独断で実行したものであり. E. D,控訴人という縁組当事者たちに何ら説明がされなかった可能性を否定できない。
(3) 届出当時縁組意思が認められなかった無効な縁組について,後日の追認が有効に認められるためには, ①届出当時に事実上の養親子関係がすでに成立している状況において,②追認権者が届出がなされていることを知った上で,縁組をする意思をもって追認の意思表示をすることが必要であるが,本件全証拠によっても. Eと控訴人Dとの間に,身分的生活事実が営まれたとの事実を認めることはできないし,また. Eによる追認の意思表示を認めることもできない。
4 上記判決を不服として,控訴人(被告)が控訴したものである。
5 前提事実及び争点(当事者の主張を含む。)は,次の(1)のとおり訂正し, (2)のとおり当審における主張を付加するほか,原判決の「事実及び理由」の第2の(2)に記載のとおりであるから,これを引用する。
(1) 原判決の訂正
ア原判決2頁13行目から14行目にかけての「昭和4年当時,駅逓の廃止に伴い, 00郡00町に15万1074坪の土地を付与され.Jを「安政生まれで,郵便取扱所長などをしつつ農業に従事していたが,昭和2年に駅逓が廃止されたことに伴い,昭和4年.00郡00町に15万1074坪の土地を付与され,」と改める。イ同3頁15行自の123歳の被告及び24歳のDJ を122歳の控訴人及び23歳のDJと改める。
(2) 当審における主張(被告適格について)ア控訴人の主張(対配偶者のある者が養子縁組をする場合について夫婦共同縁組の原則を厳格に貫こうとする見解(合一説)は,戦後になって見直され,夫婦共同縁組は,共同一体的な身分行為ではなく,夫婦それぞれについて個別的に相手方との間で養親子関係が生じ,それぞれ単独縁組が複数同時に成立するものと理解すべきであるとする見解(個別説)が学説上の多数説になった。また,戸籍先例も次第に個別説を容認するようになり,最高裁も,従前の大審院の判例を変更し,合一説から個別説に変更することを明確にするに至った(最高裁昭和48年4月12日第一小法廷判決・民集27巻3号500頁〈以下「昭和48年最高裁判決」という。))。(イ) 上記のような考え方の傾向からすれば,本件縁組届に係る養子縁組は, E.控訴人間, E. D聞の2つの縁組を内包するものとしてとらえ,これらを区別して人事訴訟法12条2項, 3項を適用するのが相当であり,そうすると, E. D聞の養子縁組の無効をいうためには,検察官を被告とする必要があった。(ゥ) また,上記のように解さないと, Dの子であるH, 1及びJの3名が自らの全く関与しない訴訟において代襲相続人たる地位を左右されることになり,不当である。イ被控訴人らの主張(ァ) 夫婦共同縁組を全体で一つの縁組ととらえる立場(合一説)を採用すれば,第三者が夫婦共同縁組の無効の訴えを提起する場合には養親子双方全員を被告とすべきことが明らかであり,人事訴訟法12条2項, 3項が夫婦共同縁組の当事者全員について適用されるのは当然である。(イ) 仮に夫婦共同縁組を夫婦それぞれについて個別的に相手方との聞で養子縁組が成立しているものととらえる立場(個別説)を採用したとしても,昭和48年最高裁判決の立場からすれば,夫婦につき縁組の成立・効力は通常一体として定められるべきであるから,第三者が夫婦共同縁組の無効の訴えを提起する場合には,夫婦共同縁組の原則の趣旨に反しない特段の事情のない限り,養親子双方全員を被告とすべきであり,人事訴訟法12条2項, 3項は,夫婦共同縁組の当事者全員について適用すべきである。(ゥ) したがって,第三者が他人間の養子縁組の無効の訴えを提起するに当たって検察官を被告とする必要性が生じるのは,あくまで当該縁組の当事者全員が死亡したときのみであり,縁組当事者のいずれかが生存している以上は,人事訴訟法12条2項を適用して,当該生存当事者を被告とすべきものである。これを本件についてみると, E及びDが既に死亡しているから,被告適格を有するのは控訴人のみであり,かつ,控訴人のみを被告として訴えを提起すれば足りると解すべきである。(エ) なお,控訴人は,検察官を被告にしないと,Dの子であるH,I及びJの3名が自らの全く関与しない訴訟において代襲相続人たる地位を左右されることになり,不当であると主張する。しかし,人事訴訟法12条3項が検察官を被告とする訴えの提起を認めているのは,原告に確認の利益がある以上,訴訟を可能にすべく被告の不存在及び被告選択のリスクを原告に負わせないようするためであって,死亡した者や利害関係人の利益保護に目的があるものではなく,代襲相続人の手続保障は,基本的には,代襲相続人が自ら訴訟参加することにより実現されるべきものである。
第3 当裁判所の判断
1 争点(1)(被告適格)について(1) 前提事実記載のとおり,本件縁組屈は, EとD・控訴人夫婦との聞で昭和18年×月×日になされたものであり,その当時適用のあった昭和22年法律第222号による改正前の民法(以下「旧民法」という。)841条l項には「配偶者アル者ハ其配偶者ト共ニスルニ非サレハ縁組ヲ為スコトヲ得ス」とのいわゆる夫婦共同縁組の原則が規定されていた。上記のような旧民法下の夫婦共同縁組の原則の下においては,配偶者の一方に縁組をする意思がなかった場合には.縁組の意思のある他方の配偶者についても縁組は無効であると解すべきである。しかし,本来,養子縁組は,個人間の法律行為であって,夫婦が共同して他の夫婦と養子縁組をする場合にも,夫婦各自について各々別個の縁組行為があり,各当事者ごとにそれぞれ相手方との聞に親子関係が成立するととらえるべきものである(昭和48年最高裁判決,最高裁昭和53年7月17日第二小法廷判決・民集32巻5号980頁参照。)。このことは,旧民法841条1項の下における夫婦共同縁組についても,同様に解するのが相当であり,また,仮に旧民法における夫婦共同縁組が家制度の一環をなすものであることを重視し,同法の下で成立した夫婦共同縁組については,夫婦共同縁組全体を一つの縁組と解するのが相当であったとしても,昭和22年法律第222号による法改正後は,夫婦各自について各々別個の縁組行為が存在するものへとその法的性質を変容させたと解するのが相当である。
(2) 本件は,第三者である被控訴人らがEとD・控訴人夫妻との間の縁組の無効確認を求める訴えであるところ,このように人事に関する訴えであって当該訴えに係る身分関係の当事者以外の者が提起するものにおいては,当該身分関係の当事者の双方を被告とし,その一方が死亡した後は他の一方を被告とし,被告の双方が死亡し,被告とすべき者がいないときは,検察官を被告とすべきものである(人事訴訟法12条2項, 3項)。そして,旧民法下の夫婦共同縁組の場合であっても,養子縁組は,個人間の法律行為であるから,人事訴訟法12粂2項, 3項の適用に当たっては,夫婦それぞれの養子縁組に係る訴訟ごとに上記各規定を適用して,誰を被告とすべきかを検討すべきである。そうすると,Eと控訴人との聞の養子縁組の無効確認の訴えについては,同縁組の当事者の一方のEが死亡しているから,同条2項により,控訴人を被告とすべきであるが,EとDとの問の養子縁組の無効確認の訴えについては,同縁組の当事者双方が死亡しているから,同条3項により, 検察官を被告とすべきである。他方で, 前記のような夫婦共同縁組についての無効確認の訴えについては,夫婦について画ーに処理することが要請されるから,夫婦につき固有必要的共同訴訟になると解される。なお,被控訴人らは,夫婦につき縁組の成立,効力は通常一体として定められるべきであるから,人事訴訟法12粂2項, 3項は,夫婦共同縁組の当事l者全員について適用すべきである旨主張するが,同主張は,夫婦それぞれの訴訟についての同条項の適用の問題と両訴訟が固有必要的共同訴訟になるか否かの問題とを混同するものであるというべきである。
(3) 以上によれば,本件においては, EとDとの聞の養子縁組の無効確認の訴えについては検察官を被告とすべきであるから,控訴人に対する訴えは不適法であるといわざるを得ず,また, EとDとの問の養子縁組の無効確認の訴えとEと控訴人との聞の養子縁組の無効確認の訴えとは固有必要的共同訴訟であるから,前者の訴えが不適法である以上,本件の訴え全体が不適法になり,却下を免れないことになる。
2 よって,上記と異なる原判決を取り消し,被控訴人らの本件訴えをいずれも却下することとし,主文のとおり判決する。(裁判長裁判官寺田逸郎裁判官辻次郎)裁判官森一岳は,転補につき,署名押印することができない。裁判長裁判官寺田逸郎
タグ
2012年2月26日 | コメント/トラックバック(0) |
カテゴリー:未分類
特別縁故者に対する相続財産分与申立事件
第1 申立ての要旨
(1) 被相続人(大正3年×月×日生)は,平成13年×月×日死亡して,相続が開始した。
(2) 被相続人には法定の相続人が見当たらなかったので,相続財産管理人が選任され,同人の請求により相続人捜索の公告がなされたが,期間内にその権利を主彊するものがし、なかった。
(3) 申立人亡Aは,被相続人の生前,同人と特別の縁故関係があったとして,平成15年×月×日,特別縁故者に対する相続財産分与の申立てをした。
(4) Aは,平成16年×月×日死亡し,申立人ら(妻であるB及び養女であるC) が相続し,本件審判手続の承継を申し立てた。
第2 当裁判所の判断
1 さいたま家庭裁判所飯能出張所平成15年同第20号事件記録,同出張所平成13年隊)第C丈わ号事件記録,東京高等裁判所平成19年(ラ)第1876号事件記録及び本件記録によれば,申立ての要旨(1)ないし(4)の事実のほか,次の事実が認められる。
(1) 被相続人とAは,母親同士が姉妹であり,いとこの関係にあたる。被相続人は,大正3年×月×自に神奈川県co市で出生し,幼くして父を亡くし,戦前から最後の住所地となった埼玉県Cわ市内において,母Eと兄F,姉G,妹Hと生活していた。母Eは,昭和37年×月×日に亡くなり,姉Gは結婚して家を出た(昭和58年×月×日死亡)。その後は,生涯結婚することのなかった,被相続人と兄F,妹Hの3人で生活することとなった。被相続人は,小学校の教諭をしていたが,定年退職し,年金で生活を立てていた。兄Fも年金暮らしであったが,妹Hは,職に就かず, もつばら家事を担当していた。Aとは,同じ町内に住んでおり,戦前には兄FがAの経営するムム工場で働いていたこともあり,妹Hは,しばしばA宅を訪問して,交際があった。しかし,被相続人と兄Fは,対人関係が苦手で, A宅を訪れることは殆どなかった。やがて平成3年×月×日に妹Hが死亡し,被相続人と兄Fとの2人暮らしとなった。
(2) 平成8年×月×日に兄Fが死亡した。被相続人は,A宅を訪れ,Fが今日亡くなったので,宜しく頼みます。」と言って帰っていった。Aと妻である申立人亡A承継人Bが,被相続人方に行ってみると,既にFはミイラ化しており,響察に連絡し,死体の検視手続を了した。被相続人は,著しく衰弱し,精神状態も正常ではなかったため, Aが, Fの葬儀にかかる一切を代行して執り行った。
(3) Fの葬儀の後,平成8年×月×日, AとBが,被相続人を訪ねると,被相続人は法要のときに食べ過ぎたことが原因で.下痢をし止まらないとのことで,歩くこともできない状態であった。A夫妻は,救急車を呼び,○○病院に被相続人を入院させた。入院に際しては,Bと申立人亡A承継人Cが身元引受人,保証人となった。Cわ病院の主治医作成の診断書(さいたま家庭裁判所飯能出護所平成13年(家)第○○○号事件記録・嘱託する事項に対する回答)によれば, r平成8年×月×日発熱と下痢にて自宅前にて倒れているのを発見され救急車にて本院へ入院。独居であり.栄養状態も悪く,他人を寄せ付けない生活をしていたため,症状改善するも自宅での生活できる状態ではなく,身元引受人の希望もあり,継続入院となった。入院後漸次痴呆が増強し,平成9年×月頃より俳佃を認め,意味不明の発語が多く,平成10年になると,痴呆増悪し,同年×月には他患者の病室に入り迷惑をかけるため,閉鎖病棟での管理となる。平成11年×月×自転倒により右大腿骨骨折し,それ以後臥床したきりの状態となる。平成13年×月×日急性の心筋梗塞にて永眠する。」とある。
(4) 被相続人は,入院するに当たって,預金通帳と印鑑をAに預け,入院費用を預金から支払ってもらいたい旨申し向けた。入院時において,被相続人には,少なくとも,358万円余りの定期預金(口座番号xx x x x x x), 800万円の定期預金(口座番号xxxxxxx)と100万円余りの普通預金(口座番号xxxxxxx)があった他,2か月毎に,公立学校共済組合から24万円ないし25万円程の年金が支給されていた。Cわ病院から入院費用の請求があると,被相続人は,Aに請求書を渡し,Aが預金を払い戻して支払っていた。入院費用額は,時期によって変遷があるが, 10万円ないし14万円程度で,ほぽ年金収入で賄えることになっていた。A夫婦は,殆ど毎日病院に見舞いに行っていたと述べるが, 00病院は,完全看護で,洗濯等も病院で世話していたため,見舞いに行っても被相続人のために特に何かをするといったことはなかった。A夫婦は,被相続人がどんな治療を受けていたか, どんな薬を飲んでいたか全く把握していない。(さいたま家庭裁判所飯能出張所平成13年岡第○○○号事件記録・相続財産管理人作成の平成14年×月×日付け管理報告書(第1回)別紙4聴取書)
(5) 被相続人は,4年半の入院の後,平成13年×月× 日病院で死亡した。被相続人の葬儀は, AとBの2人だけで執り行った。Aは,葬儀費用として, 20万円を立て替えて出摘し,東京都○○区にある○○家の菩提寺○○院に埋葬し,永代供養料50万円を立て替えて支払った。
(6) 被相続人は,○○銀行(x)支庖に普通預金及び定期預金の口座を開設していた。被相続人は○○病院に入院するに際して,預金通帳と印鑑をAに預けていたものであるが,Aは,預かった預金通帳から,次のとおり払い戻している。口座番号xxxxxxxの総合口座の通帳(公立学校共済組合から隔月で年金が振り込まれていた通帳)から,普通預金を合計899万1821円払い戻し,別口の定期預金36万円を払い戻した。口座番号xxxxxxxの定期預金の通帳から,平成11年×月×日から平成12年×月×日まで8固にわたり.合計201万6257円を払い戻し,平成12年×月×日中途解約で156万7226円の支払を受けた。口座番号xxxxxxxの定期預金の通帳から.平成9年×月×日に150万円を,同年×月×日に300万円(内100万3019円が同日口座番号xxxxxxxの通帳に入金されている。)を,平成10年×月×日に350万円を解約した。以上のとおり, Aは,被相続人の預金から合計1993万5304円を払い戻して,受領している。他方で,Aは,被相続人のために,固定資産税25万9200円,国民健康保険税1万4200円を支払い,葬儀費用20万円,永代供養料50万円,粗大ゴミ撤去費用6万5535円を立て替えて支払った。また,00病院の入院費用として合計633万0647円が充てられた。以上の他にも,さいたま家庭裁判所飯能出張所平成13年嗣第Cにわ号相続財産管理人選任事件において,Aは,被相続人の看護費用と称し日当1000円合計150万7200円の被相続人に対する債権など種々の項目を債権として届け出るなどしているが,相続財産管理人が内容を的確に精査して,上記の立替金のみを正当な債権として認めている。したがって, Aが被相続人の預金から払い戻した合計1993万5304円から,被相続人のために適切に支払ったと認められる合計736万9582円を控除した1256万5722円が,Aが不当利得した金額であると認められる。(さいたま家庭裁判所飯能出張所平成13年隊)第Cにわ号事件記録・相続財産管理人作成平成14年×月×日付け管理報告魯(第2回),平成14年×月×日付け届出債権認否表,同出張所平成15年闘第20号事件記録・平成15年×月×日付け家庭裁判所制査官作成の調査報告書6頁
2 申立人亡A承継人ら代理人は.差戻前の抗告審において, 平成19年×月×日付け上申告をもって, r元来被相続人は,諸都自分で管理する性格であったから,預貯金その他貴重品は入院中でも自分で管理した。Jと主張し,Aが被相統人の預金通帳や印鑑を預かり.預金を管理していたことを否定する。しかしながら,平成13年×月×日,A及びBは.被相続人の相続財産管理人から事情聴取を受けた際, r被相続人は,入院したとき,私達にこの通帳と印鑑を預け,入院費用をこの預金から支払ってほしいと言っていました。病院から入院費用の請求書がくると,被相続人は,それを私達によこしましたので.私達は銀行へ行って預金を払い戻して支払っていました。Jと明確に,預金通帳と印鑑を預かった事実を供述している上(さいたま家庭裁判所飯能出張所平成13年闘第OCわ号事件記録・相続財産管理人作成の平成14年×月×日付け管理報告書(第1回)別紙4聴取書),申立人亡A承継人ら代理人自身,差戻前の原審・同出張所平成15年同第20号事件申立容において, 申立人(A) は,被相続人の預金や現金の管理を担当した」と主張して,預金等を管理したことをAの被相続人との特別縁故の事情としているのである。そればかりか,平成14年×月×日,被相続人の相続財産管理人がAの代理人となった0000弁護士(本件の代理人でもある。)と面会し,当時判明していた不当利得金556万5722円の返還を請求したのに対し,○○弁護士は.相続財産管理人と電話のやり取りをして,同年×月×日には「相続財産管理人から諮求のあった金銭は支払うように本人を説得しているが結論が出るのに時間がかかる。もう暫く待ってほしい。」と述べ,同年×月×日にはrAは,当初銀行から融資を受けて弁済しようと思い,銀行と折衝していたが,融資が受けられないことになった。それで.現在は信用金庫に融資をお願いし,話し合っているので暫く待ってほしい。Jと述べたものであり,A及びその代理人弁護士の行動は,まさに不当利得を自認していたものということができる(同出張所平成13年同第Cだわ号事件記録・相続財産管理人作成の平成14年×月×日付け管理報告宮(第3回)別紙)。ところが,差戻前の原審手続において,平成15年×月×日,家庭裁判所調査官がA及びBと面接した際に,A及びBは,突然前言を翻して,被相続人の財産の管理はしていないと供述するに至ったのである。A及びBは,従前の説明と全く相反することを述べるに至った経緯について,合理的な説明をすることができず,まさに不当利得の返還を免れんがために,前言を翻したものと断ぜざるを得ない。そして,前記1(3)認定の被相続人の入院時,入院後の病状の経過,Cわ病院が本人は金銭管理がで・きないと認定していること(同出張所平成13年闘第Cだわ号事件記録・嘱託する事項に対する回答「相談内容J) に照らせば,被相続人が預貯金を管理する能力があったと見ることは困難である。また, 00病院が,被相続人の預金の管理について, r入院時には,900万円ぐらいの預金があったが,平成11年2月にはほとんど残金なし。平成11年2月までは,入院保証人である○○様が, ○様(被相続人)の入院費用の支払等,全て行っていたが,あまりにも現金が少なくなるので,病棟の看護師(副婦長)○○が○○様と面談し,以後D様(被相続人)の入院費用等の支払を事務所に依頼する。Jとして,埼玉県に意見を求めたことがあり,平成11年×月×日には,年金が入金される,00銀行00支庖の被相続人の普通預金通帳(口座番号×xxxxxx)を同病院が預かることにしたとしみ経緯は,A及びBが被相続人の預金を管理して誌に出金していたことを窺わせる事実である。なお,上記通帳は,被相続人の死後Bに返還され,253万2546円が平成13年2月8日に出金されて残金0となり,同月19日に被相続人の死後振り込まれた年金及び利息計25万3439円が出金されて,残金0となった後,被相続人の相続財産管理人にAから引き渡された。(同出張所平成13特)第○○号事件記録・嘱託する事項に対する回答「相談内容」「預金通帳の写しに,通帳3冊受領しました。Bと記載のあるもの」「預り証」)以上検討したところによれば,上記1で認定したとおり,Aが被相続人の預金通帳や印鑑を預かり,預金を管理していたところ,これを窓に領得したことは明らかというべきである。
3 1で認定した事実により検討するに,Aについては,被相続人に対する4年半以上の療養看護(完全看護の病院に入院中の被相続人を時折見舞い,入院費用等を管理するといったこと)や葬儀の主宰の事実が認められるのであるが,他方で,療養看護の期間中において,被相続人の資産を1256万5722円もの多額に不当利得していることに照らすと, このように被相続人の療養看護の過程において被相続人の巨額の資産を不当に利得した者につき被相続人と特別な縁故がある者と認めるのは相当ではないというべきである。よって,本件申立てはこれを理由のないものとして却下することとし,主文のとおり審判する。(家事審判官生島弘康)
タグ
2012年2月26日 | コメント/トラックバック(0) |
カテゴリー:未分類
子の氏の変更許可申立却下審判に対する抗告事件
第1 抗告の趣旨及び理由
別紙「即時抗告申立書」(写し)記載のとおりである。
第2 裁判所の判断
l 一件記録によれば以下の事実が認められる。
(1) 抗告人法定代理人親権者母(以下単に「母」という。)は昭和48年×月×日に出生し,乙川C男(以下単に「父」という。)は昭和45年×月×日に出生した者であり,両名は,平成10年4月から夫婦として共同生活を営んで・いるが,婚姻の届出はしておらず, その関係は事実上の婚姻関係である内縁関係に留まっている。なお,父母はいずれも,これまで法律婚歴はない。
(2) 両者の間には,平成15年×月×日,男子である甲山D男(以下iD男Jという。)が出生し,父は,同年×月x日にD男を認知した。そして,母は, D男の親権者として,事前に家庭裁判所の許可を得た上で,同年×月×日, D男の氏を母の氏である「甲山」から父の氏である「乙川」に変更する旨の届出を行い受理された。しかし,D男の親権者は,その際父に変更されず,現在に至るまで母である。
(3) 両者の聞には,さらに,平成19年×月×日,抗告人が出生し,同月×日,父は抗告人を認知したが, D男の場合と同様,親権者が父に変更されることはなく,現在に至るまで抗告人の親権者は母のままである。
(4) 母は,抗告人の親権者として,平成19年6月×日,札幌家庭裁判所に,抗告人の氏を父の氏に変更する許可を求める申立てを行ったが,同裁判所は,同月19日,上記申立てを却下したので,母は, x月×日,本件抗告を申し立てた。
2 以上認定したところに基づき,本件子の氏の変更の許否につき検討する。非嫡出子の氏について,民法790条2項は,一律に母の氏を称すると定めた上で,父による認知後,同法791条により, 親権者である母が家庭裁判所の許可を得て届け出ることにより,父の氏に変更することを認めている。民法791条が,上記の場合を含めて,子が父又は母と氏を異にする場合にその父又は母の氏への変更を認めた趣旨は,民法790条により形式的基準でいったん定まった子の氏につき,主として共同生活を営む親子聞で氏を同一にしたいとの要請に配慮して,その他の利害関係人の利害感情も考慮の上で,家庭裁判所の裁量により他方の氏への変更を認めるところにあると解される。かかる観点から本件をみるに,父は,母と長年にわたって事実上の夫婦として共同生活を送り,母は,法律上の婚姻関係にないため父の氏を称していないものの,平成15年に父母聞に生まれた第一子は,父による認知後家庭裁判所の許可を得て直ちに父の氏を称しており,第一子同様,第二子である抗告人についても,同居して養育を受ける父の氏を称させることは,前述した民法791条の趣旨に適うということができる。また,父には現在はもとより過去においても法律上の婚姻関係が存在したことはなく,第二子に父の氏を称させることにつき,父母以外の者の利援を害するおそれはない。加えて,抗告人の兄である第一子との関係では,抗告人が父の氏を称することによって,きょうだいでありながら戸籍上の氏を異にするという望ましくない結果を避けることができる。.なお,母は,抗告人の氏を父に変更する申立てを行いながら,第一子同様,親権者を父とすることなく,氏の変更が許可されても,親権者は将来にわたり母のままであると認められる。しかしながら,氏の変更は,親と共同生活を営む子の社会生活上の必要性から認められるものであり,両親のうち親権者をいずれにするかとは直接の関連性を有せず,親権者が母のままであることは,非嫡出子が,その氏を,共同生活を営む父の氏に変更することを妨げる事由とはなり得ない。以上によれば,抗告人の氏を母の氏から父の氏に変更することを許可するのが相当というべきである。
3 そうすると,抗告人の本件申立ては理由があるからこれを認容すべきであり,これと異なる原審判を取り消し,主文のとおり決定する。(裁判長裁判官末永進裁判官千葉和則住友隆行)
タグ
2012年2月26日 | コメント/トラックバック(0) |
カテゴリー:未分類
審判前の保全処分(子の引渡し)申立事件
1 申立ての趣旨
主文と同旨
2 本件の事実関係本件記録及び本案審判申立事件の記録によれば,次の事実が一応認められる。
(1) 申立人は,フィリピン国籍の女性で,平成5年ころから日本に在留している。申立人とD (昭和33年×月×日生)は,平成12年×月×日に婚姻し,長男E (同年x月×日生)をもうけたが,平成17年×月×日, Eの親権者をDと定めて協議離婚した。相手方は, 00県内で00ゃ00,00を営む有限会社00を経営している。昭和63年×月×日,委F (昭和40年×月×日生)と婚姻し,肩書住所に妻及び相手方の実母(昭和9年生)と居住している。未成年者(平成17年×月×日生)は,申立人と相手方との間の子であり,相手方は,同年×月×日,未成年者を胎児認知している。なお,未成年者については,平成18年3月×日,嫡出子否認の審判が確定している。
(2) 申立人は,平成15年ころに,勤務先のスナックに来庖した相手方と知り合い,平成16年ころから交際を始め,妊娠した。申立人も相手方も婚姻していた身であったが,相手方が申立人に対する経済的な援助を約束したので,申立人は出産を決意し,平成17年×月×日,日本で未成年者を出産した。相手方は,経営する会社の従業員の名義でアパートを借り,申立人と未成年者を住まわせていた。相手方はアパートの家賃は支払っていたものの,生活費の援助は不十分であったので,平成18年5月ころ,申立人は,相手方と相談した結果,未成年者をフィリピンに住む申立人の家族らに預けた。申立人は,平成19年3月に未成年者を呼び寄せ,一緒に暮らすようになった。申立人の姉がフィリピンから来日し,申立人が働く夜間は,未成年者の世話をしてくれた。相手方は,時々申立人のアパートを訪ね,未成年者と遊んだり,申立人に頼まれて,未成年者を小児科に連れていったりした。
(3) 平成19年12月暮れころ,申立人が旅行に行った際,相手方が申立人の男性関係を疑ったことなどから,申立人と相手方が険悪な関係になった。相手方は,申立人との関係や未成年者の存在について,それまでは妻に秘していたが,初めて事情を話した。平成20年1月×日,相手方は,申立人に対し, i妻に関係をすべて話した。妻がCの面倒を見ると言っている。Jと連絡し,未成年者を自ら養育する意向を示したが,申立人は,同意しなかった。同月×日,申立人が夜間仕事に出かけた後,申立人の姉が未成年者を入浴させている最中に,相手方が申立人のアパートに来て,髪も濡れたままの未成年者を毛布でくるんで連れ出した。申立人が姉から辿絡を受け,相手方にすぐに抗議したところ,相手方は,同居している相手方の実母の具合が悪いため, 実母に未成年者を会わせたいと説明したが,申立人は信用しなかった。未成年者は. 1. 2時間後に申立人の下に戻された。
(4 ) 申立人は. Dとの聞にもうけた長男Eとも同居して世話をしていたので. Eや未成年者の養育のことで.Dの援助を求めることができた。同年2月×日,相手方は. Dに頼んで,未成年者をかかりつけの小児科である00市の00クリニックに連れて行ってもらった。風邪だと言われて薬をもらった。同月×日,申立人は,未成年者の薬がなくなったので,連休に入る前にDに00クリニックに連れて行ってもらおうとしたところ. Dに断られたため,相手方に連絡して車を出してもらい,同クリニックに連れて行ってもらった。相手方は,同クリニックから戻ると. 「cの病気は半端じゃない。ストレス性障害で,急に悪くなったりする。」等と言っていた。相手方は,未成年者を引き取ると申し出たが,申立人は同意せず,未成年者の養育等を巡って口論になった。同月×日,相手方が申立人のアパートに来て,未成年者の症状が思わしくないので,自分の従姉妹が看護師だから,そこでしばらく治療させること. cが元気になるまで預かることなどを告げた。申立人は,相手方の話を聞いて心配になり,未成年者の衣類などを持たせて,相手方に未成年者を預けた。
(5) ところが,その後まもなく,相手方に電話連絡が取れなくなった。心配した申立人は,同月×日.00クリニックに問い合わせたところ,同クリニックでは,未成年者にストレス性障害等の診断はしていないと説明された。同月×日に相手方が未成年者の診断書を取っていたが,問診断書の記載では,同月×日午後O時45分受診時の病名は咽頭炎のみであった。同月×日,申立人が相手方宅に赴くと,相手方の姿と実母のみが応対し. 「cちゃんはここにはいない。」と言った。その後も申立人は相手方宅に行ったが,未成年者に会わせてもらうこともできなかった。
(6) 相手方は,未成年者を自宅に連れ帰った後,相手方と喪とで未成年者の世話をしている。相手方の妻も有限会社00の仕事に就いている。相手方の実母は,癌の手術を受けた後通院中である。未成年者は,同月×日,口口市の00小児病院で急性胃腸炎の診断を受け,同日から内服治療が開始された。整腸剤,抗不安剤等が処方されている。
(7) 申立人の姉は. 3月×日にフィリピンに帰国した。申立人は. 3月×日で勤務先のパプを退職したので,夜間も未成年者を監護養育することができる状態である。今後は日中働けるところに就職したい意向である。申立人の前夫であるDは. Eと未成年者が兄妹としていっしょに暮らせるように,物心両面の援助をしていく意向である。
(8) 相手方は. 3月×日,当庁に親権者指定の調停を申し立て(平成20年(家イ)第000号).自己が未成年者の親権者になることを希望している。
3 判断前記疎明にかかる事実関係を基に検討する。
(1) 相手方は未成年者を認知しているが,未成年者の親権者は母である申立人である。そして,申立人は,未成年者の養育が困難になり,一時期母国の家族に未成年者の養育を託したことはあったものの,それ以外は,自らあるいは姉の助けを受けて,未成年者を監護養育してきたものと認められる。親権者である申立人の監護状況が劣悪で,その監護状況から緊急に離脱させる必要があるなど,子の福祉に反することが明らかな特段の事情がある場合を除いては,親権者である申立人が未成年者を監護養育することが相当であって, 上記のような特段の事情があるか否かを検討する。
(2) 相手方は,申立人の下では未成年者が健康を維持できないと主張するが,申立人が監護していた2月×日までの聞に,未成年者が重篤な病気に催患していたことを窺わせる資料はなく,小児科の診察を受けさせ,薬を飲ませるなど適切な対応をしていたことが窺われるのであって,申立人が未成年者の健康面での配慮を欠いていたものとはいえず,養育態度,監護能力に格別問題とすべき点は認められない。また,相手方は,申立人には経済力もないうえ,兄のEと同居しているために,申立人の前夫が出入りするという好ましい環境ではないこと等を問題点として指摘するが,仮に申立人の経済力が未成年者を養育するのに不十分であれば,未成年者の実父である相手方が養育費を負担すること等によって補うことは可能であり,経済的事情を重視することはできない。申立人の前夫の存在が,養育環境として問題があることを窺わせる資料もない。
(3) 相手方は,申立人とのやり取りから,申立人が未成年者を相手方において養育することを認めていないのを承知のうえで,未成年者を通院させたことをきっかけとして,未成年者の症状が重篤であるかのように説明し,親類の看護師の者に面倒を見させるなどという口実を申し述べて,申立人から未成年者の引渡しを受けたものである。未成年者は, 2月×日には,急性胃腸炎に権患し,整腸剤や抗不安剤等が処方されているが,これは,相手方の下で暮らすようになって10日程度が経過した後のことである。それまで住んだこともない相手方宅において,申立人や兄E,申立人の姉とも一切引き離された状況で, 2歳の未成年者が心身の安定を崩していったものと推察されるところである。仮に,現在,未成年者が相手方の監護の下で小康状態を保って過ごしているとしても,相手方は,申立人の親権を侵害した違法状態を継続しているものであって,安定した現状を主張することは許されるものではない。
(4) 前記3(2), (3)のとおり,申立人が未成年者を監護することが未成年者の福祉に明らかに反するような事情は認められないから,未成年者は,速やかに親権者である申立人の監護の下に戻されるべきものであって,本案申立て認容の蓋然性は高いということができる。また,未成年者の急迫の危険を防止するために,相手方から申立人に未成年者の引渡しが実現されなければならないところ,本案審判の確定までには相当な日数を要することがあるから,審判の告知によって即時執行力が生じる保全処分の必要性があると認められる。
(5) 以上の次第で,本件申立ては理由があるから,これを認容することとし,主文のとおり審判する。(家事審判官生島恭子)
タグ
2012年2月26日 | コメント/トラックバック(0) |
カテゴリー:未分類
遺産分割審判等に対する抗告審の変更決定に対する許可抗告事件
1 抗告代理人○○○○、同○○○○の抗告理由第1について
本件記録によれば,即時抗告の相手方である抗告人(原審における相手方。以下,単に「抗告人」とし、う。)は,即時抗告審における事件の追行を弁護士に委任するなど,即時抗告があったことを既に知っていたことがうかがわれる上,即時抗告の抗告状に記載された抗告理由も抽象的なものにとどまり,上記抗告状には抗告人に攻撃防御の機会を与えることを必要とする事項は記載されていなかったものというべきであるから,上記抗告状の副本の送達又はその写しの送付がなかったことによって抗告人が攻撃防御の機会を逸し,その結果として十分な審理が尽くされなかったとまではいえない。論旨は,結局採用することができない。
2 その余の抗告理由について所論の点に関する原審の判断は.正当として是認することができる。論旨は採用することができない。
3 よって,前記1の点につき,裁判官那須弘平の反対意見があるほか,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり決定する。裁判官那須弘平の反対意見は,次のとおりである。私は,最高裁平成19年(ク)第1128号同20年5月8日第三小法廷決定・裁判集民事228号1頁の中の反対意見において述べたとおり,家事審判規則,家事審判法及び非訟11J件手続法に基づく手続にも態法32条の理念が及ぶ場合があり,少なくとも,争訟性の強い乙類審判手続については,憲法32条の趣旨に照らし,即時抗告により不利益変更を受ける即時抗告の相手方に対して反論の機会を与えるために即時抗告の抗告状等の送達ないし送付をする必要があると解するのが相当と考えるものである。本件では原審において即時抗告の抗告状の送達も送付もないままに即時抗告の相手方である抗告人に不利益に変更がなされたというのであるから,原審の手続には裁判に影響を及ぼすことが明らかな法令違反があり,原決定が維持されるようなことがあれば,憲法32条違反の疑念が生ずることになるものといわざるを得ない。そして,原審の手続の法令違反が上記のとおり憲法32条の趣旨に反する極めて重大なものであることにかんがみると,抗告人が即時抗告があったことを既に知っていたことや,上記抗告状に記載された抗告理由が抽象的なものにとどまることなど,多数意見の指摘するような事情があるとしても,それだけでは即時抗告により不利益変更を受ける抗告人に対して反論の機会を与えるために即時抗告の抗告状等の送達ないし送付をする必要がなかったということはできないというべきである。原決定はその手続に裁判に影響を及ぼすことが明らかな法令違反があるものとして破棄を免れず.抗告人の代償金の支払能力等について更に審理を尽くさせるため,本件を原審に差し戻すのが相当であると考える。( 裁判長裁判官藤田宙靖裁判官堀簡幸男那須弘平田原陸夫近藤崇晴)
タグ
2012年2月26日 | コメント/トラックバック(0) |
カテゴリー:未分類
面接交渉申立却下審判に対する抗告事件
第1 事案の概要
1 抗告人(原審申立人。昭和49年×月×日生)と相手方(原審相手方。昭和49年×月×日生)は,平成13年×月x日に婚姻し,平成14年x月×日,長女c(未成年者C)が出生し,平成15年×月×日,二女D(未成年者D)及び三女E (未成年者E)が出生した。その後,抗告人と相手方は不仲になり,平成16年×月から別居している。
2 本件は,抗告人が相手方に対し,相手方が監護している未成年者らとの面接交渉を行う時期,方法などについて審判を求めた事案である。
3 原審は,抗告人が未成年者らと面接交渉をすることで,未成年者らに悪影響を及ぼす可能性があることを理由に,抗告人の申立てをいずれも却下した。そこで,抗告人が本件の抗告をして,ー抗告人が未成年者らと面接交渉をすることを認めること及びその時期,方法などを定めることを求めた。抗告の理由は,別紙抗告理由書に記載のとおりである。
第2 当裁判所の判断
l 当裁判所は,原審判と異なり,抗告人の未成年者らとの面接交渉を主文2項及び3項のとおり認めるのが相当であると判断する。その理由は以下のとおりである。
2 本件記録によれば,以下の事実が認められる。
(1) 抗告人と相手方は,平成13年x月×日に婚姻し, 3人の子をもうけたが,相手方の実家で相手方の両親と同居していたこともあり,嫁姑間の葛藤などが原因で婚姻当初から不和であった。抗告人と相手方は,平成16年×月に相手方の実家を出てアパートを借りたが,その後も不和は続き,平成16年x月に近隣から抗告人が未成年者らを虐待しているとの通報があったのをきっかけに児童相談所が介入し,抗告人は精神疾患により00病院に約1か月間入院し,相手方は未成年者らを連れて相手方の実家に戻り,それ以降,相手方が相手方の実家において,相手方の両親とともに未成年者らを監護している。
(2) 抗告人は,平成17年×月, x月及び×月に相手方宅を訪れ,未成年者らと対面したが,その際,未成年者らは不安な態度を示し,抗告人は,相手方の説得に応じて短時間で退去した。抗告人は,その後は相手方宅を訪れることを自粛している。
(3) 未成年者らは,出生から平成16年×月に抗告人と相手方が別居するまでの間,主として抗告人に監護されていた。抗告人による未成年者らの監護状況は,抗告人と相手方の不和や抗告人の精神的な不安定さのため,家事が十分に行われず,育児にも行き届かない面があったことが窺われるが,抗告人が未成年者らに身体的な暴力を加えたことはなく,抗告人と相手方が別属した当時に,来成年者らの心身に問題があった事実は認められない。未成年者らの年齢を考慮すると,未成年者らは抗告人と同居していた当時の具体的な記憶を有していないものと考えられる。
(4) 抗告人と相手方の別居後は,未成年者らは,相手方及びその両親による監護の下,保育園に通園しているが,心身の発達に問題はなく,概ね安定した生活状態にある。
(5) 抗告人は,平成17年×月から生活保護を受給している。上記のとおり精神疾患を患っており,平成16年×月の00病院への入院後も数度にわたり同病院に入退院していた。平成19年×月×日,抗告人が飲酒の上, 00病院を訪れたため,警察に保護されるところとなり,抗告人は,これをきっかけに,借りていたアパートの立退きを要求された。抗告人は,住居の確保の必要性もあって,平成19年×月×日からは口口病院に任意で入院し,薬物療法,精神・作業療法等を受けているが,許可を得て外出することは可能である。口口病院の担当医師は,抗告人が未成年者らと会うことで母親としての意識が芽生えることが期待され,未成年者らと会うことが認められない場合,病棟で抑うつの訴えが増すと思われる旨述べている。
(6) 平成19年9月×日, 00家庭裁判所において,抗告人と未成年者らとの面接交渉の試行が,相手方及び抗告人代理人の立会いの下で約50分間行われた。抗告人は,面接交渉の試行前には,緊張感も高まり,自分の感情を統制できるか不安を抱いていたが,実際の面接交渉の場面では大声を出したり,涙を流したりなどの感情的な言動は見られず,行動は抑制的であった。抗告人は,未成年者らの一人一人に関心を向け,身体の接触時にも未成年者らのペースを乱すことなく対応した。抗告人は,事前に説明した留意事項や面接時間等を遵守し,同席した家裁調査官や代理人の指示に素直に従った。未成年者Cは,抗告人が母であるとの認識があり,緊張した様子であったが,抗告人の問いかけにはうなずくなどして反応しており,抗告人が遊びを手伝ったり抱きかかえたりするときにもいやがる態度は見せなかった。未成年者D及び未成年者Eは,やや緊張している様子は見られたものの,抗告人を過度に警戒することなく,自分たちのペースで遊びを継続していた。
3 そこで,面接交渉の可否及びその時期,方法等について検討する。
(1 ) 本件記録及び上記事実経過によれば,①抗告人が相手方及ぴ‘未成年者らと同居していた時期に,未成年者らの監護について不適切な面があったこと,平成17年に抗告人が未成年者らと短時間面接したときに未成年者らが不安な態度を示したことが認められるが,既にその頃から相当期間経過しており,未成年者らが相手方の下で安定した生活をしていることからすると,ぞれらの事情が現在まで未成年者らの情緒面に悪影響を及ぼしているとは考えられないこと,②抗告人は精神疾患で入院中であるが,面接交渉の試行の際には抑制的に撮る舞い,未成年者らのペースを乱すことなく対応し,定められたルールや面接時間を遵守することができたこと,③相手方は,原審においては抗告人との面接交渉によって未成年者らが怯えるなど情緒の安定を害する懸念があることなどから面接交渉には拒否的であったが,当審においては,審問期日,家裁調査官による調査,そして家庭裁判所における試行的面接交渉を経て,試行的面接交渉の終了の時点では,抗告人の抑制的な態度を踏まえて,子どもたちが慣れるまでは回数を少なくするなとaの条件の下で面接交渉を認めるとの意向を示すようになり,面接交渉後の未成年者らの心身について配!置をするつもりであると言明したこと,以上の事実が認められる。そうすると,抗告人が未成年者らと面接交渉をすることによる未成年者らへの具体的な悪影響は考え難く,むしろ,抗告人と未成年者らとの面接交渉は,未成年者らの健全な発達のために有意義であると考えられる上,面接交渉後の未成年者らへの配慮を相手方に期待することもできるから,抗告人と米成年者らとの面接交渉を認めることが相当である。
(2) 他方,抗告人が未成年者らと最後に会ってから2年以上経過し,その後に1回面接交渉の試行が行われたにすぎないこと,相手方には面接交渉につき協力的な姿勢がみられるが抗告人と相手方の聞には十分な信頼関係が形成されているとはいい難いこと,抗告人には精神的に安定していない面があることにかんがみると,当面の面接交渉は,抗告人が未成年者らの成長ぶりを直接見聞するとともに,しばらく途絶えていた母子の接触,交流を回復することを主な目的として実施されるのが相当である。加えて,抗告人の未成年者らとの面接交渉の試行は,相手方及び抗告人代理人の立会い,協力のもとに実現したこと,未成年者ら3名はいずれも就学前であり,その情緒面や健康面に配慮する必要があること,未成年者ら3名の相手を同時にすることは容易ではなく,補助者が必要であることを併せて考慮すれば,面接交渉の頻度及び時間は3か月に1回1時間程度が相当であり,面接交渉の際には相手方の立会いを認める必要がある。また,抗告人には精神的に不安定なところがあることからすると,面接交渉の際に抗告人を適切に支えることのできる第三者の立会いを条件とするのが相当である。当面の第三者としては, 本件調停,審判を追行し,面接交渉の試行にも立ち会った抗告人代理人が相当であるが,将来的には抗告人と相手方の間で協議の上,抗告人のことを理解できる第三者を相手方が指定することが望ましい。なお,抗告人には,面接交渉は未成年者らの福祉のための制度であり,面接交渉に当たっては未成年者らの情緒面や健康面に十分配慮する必要があることや,相手方が抗告人との別居後,仕事をしながら未成年者らの監護を行ってきたものであることを理解し,相手方と未成年者らの安定した養育環境を揺るがすことのないよう,十分に配慮した対応をすることが求められる。他方,相手方には,抗告人と未成年者らの面接交渉は,未成年者らの健全な心身の成長にとって有益であることを理解した上,抗告人との面接交渉に協力することが期待される。
第3 結論よって,原審判は相当ではないからこれを取り消すこととし,当裁判所として審判に代わる裁判をすることが相当であるから,主文のとおり決定する。(裁判長裁判官安倍嘉人裁判官片山良広後藤健)
タグ
2012年2月26日 | コメント/トラックバック(0) |
カテゴリー:未分類
養子縁組許可申立事件
1 申立ての要旨
申立人A(以下「申立人」という。)には実子がいないので,未成年者B (以下「未成年者」という。)を養子とし,同人に申立人の00家の家督を継がせたい。そして,未成年者の法定代理人親権者で、ある実父母は,本件養子縁組を承諾している。よって,申立人が未成年者を養子とすることの許可を求める。
2 認定できる事実
本件記録及び調査の結果によれば,次のような事実が認められる。すなわち,
(1) 申立人は,昭和27年×月×日にCと婚姻し,現在85蔵で,平成21年×月×日に同人が死亡した後は,独り暮らしをしており,血圧が高く,不整脈があるため,内科に月1回くらい通院しているが,炊事,洗濯等の身の回りのことはすべて自分で-行っている。
(2) Cの生家は,数百年続く○○神宮のいわゆる社家として,代々神官を輩出してきた家系て-あるところ.Cは,昭和xx年にCわ神宮の社家を承継し,年2回の○○神宮の大祭の支援をしたり,定期的な地域活動をしてきており.上記大祭においては.co神宮からOムまで御神体を運ぶ行列に参加するなと・の役割を担ってきた。
(3) 未成年者は,申立人の姪の長女に当たるD (現在37歳)の二男であり,現在10歳で,小学校4年生である。未成年者は,実家が経営する「株式会社○○○○」の取締役部長である実父のE(現在37歳)と,専業主婦である実母のDによって,実兄のF(現在13歳)とともに,適切に監護養育されている。
(4) 申立人は,未成年者が生まれてから現在までの間,未成年者の一家と親戚として交流をしてきており,未成年者の一家が,年に数回程度,盆や正月等に申立人宅を訪れ,食事をして過ごすなどしている。
(5) 申立人は,年金の支給を受けて生活をしているが,財産としては,○○県○○市内に○○家で先祖代々受け継がれている土地と建物を所有している。
(6) 申立人はCとの聞に実子がなく,平成21年×月×日.Cが体調を崩したため,代々続いてきた社家で・ある○○家を途絶えさせたくないとの思いから,後継者となる養子の候補者らに当たったが,いずれも養子縁組を断られた。そこで,申立人は,同月下旬ころ.Dに対し,未成年者との本件養子縁組の話を持ち掛けたところ,その承諾が得られたので,同年×月×日.Cとともに,本件養子縁組許可の申立てをした(なお,本件養子縁組許可申立事件のうちCの申立てに係る部分は.同人が申立てをした後に死亡したため,事件が終了している)。
(7) 申立人は,未成年者の年齢を考慮し,本件養子縁組後も,差し当たりは同居の予定はなく,これまでどおり実父母と一緒に生活してもらってよし、と考えてし、る。もっとも,申立人は,未成年者には○○氏を継いでもらい○○市内の○○家の不動産を譲り受け,将来は,できればそこに居住してもらい,社家としての役割を果たしたり,神官になってほしいとの希望を有しているが,未成年者の判断で,それらを断ってもらっても構わず,強制はしないとの意向である。
(8) 未成年者の両親は,以前にも申立人夫婦から未成年者の提子縁組の話があったが,他にも養子の候補者がし、ると聞いていたため,未成年者の養子縁組については余り現実的なものと考えておらず,これまで未成年者にその話を伝えたことはなく,平成21年×月下旬ころに申立人から連絡があった後,初めて未成年者に本件養子縁組の話をした。
(9)未成年者は,実母から,平成21年×月下旬ころに本件養子縁組のことを初めて聞いた時には,意味が分からず,嫌だと思ったが,申立人については,遊びに行くと優じくしてくれるということで好感を抱いており,実母から.r学校には,今までどおり△△の氏で通学できる。15歳になれば,ムムの氏に戻ることもできるJなどと説明を受け.15歳になった時に離縁じて△△の氏に戻りたいとの思いを前提に,現在では.15歳になるまで申立人の養子になるととも仕方がないと考えている。もっとも,未成年者は,社家に関する説明については,家庭裁判所調査官から初めて聞いたとのことであり,その意味も,十分に理解するまでには至っていない。
(10) 未成年者の両親は,未成年者が,本件養子縁組を渋々了解している様子なので,可哀想だとの思いはあるが,成長すれば,社家の役割等も理解し,その気持ちも変わるのではないかとの期待もあり,社家を途絶えさせたくないとの申立人の思いも理解できるので,本件養子縁組については,仕方がないものとして承諾している。
(11) 未成年者の両親は,本件張子縁組後も,未成年者とはこれまでどおり親子として一緒に生活して監護養育し,小学校には未成年者を引き続き△△の氏で通学させ○○神宮の大祭等の支援については,当面は,自分らが対応していきたいと考えている。
3 当裁判所の判断
以上認定した事実によれば,未成年者は,本件養子縁組により,申立入所有の不動産を相続等により譲り受けることになるとし、う財産上の利益がないではないものの, 他方で,将来は,その不動産に居住し, 社家を継いで○○神宮の大祭の支援や地域活動等に従事することが強く期待されることになるのであって,それが強制されるものでないとはいえ,未成年者の将来をかなり制約する可能性が生じることは否定できないところである。そして,未成年者は,未だ小学校4年生で.10歳と年若く,自らの将来設計について的確に判断し得るだけの能力を備えているということはできず,実際にも,本件養子縁組の目的や社家の役割等を十分に理解するには至っていないのであるから,未成年者が現時点で本件養子縁組を承諾するとの意向を示しているからといって,本件養子縁組を許可するに足る有効な縁組意思が存すると評価することはできない。しかも,未成年者は.これまでも両親の下で適切に監護養育されてきており,今後も,引き続き両親の下で適切に監護養育されることが十分に期待されるのである。してみると,未成年者が,少なくとも15歳又はこれに近い年齢になって,自らの将来設計について的確に判断し得るだけの能力を備えるようになり,かつ,代々続いたζわ神宮の社家の社会的な意義や役割等を十分に理解し,その家系に繋がりを有する者として,社家の役割を自らが果たしたいとの思し、から積極的に養子縁組を希望するような状況にでもなれば,養子縁組を許可することも考えられなくはないとしても,現時点においては,本件養子縁組は,民法798条がその立法趣旨として求めている未成年者の福祉に適うということができないのであるから,未成年者の法定代理人親権者である実父母が未成年者に代わって本件養子縁組を承諾しているからといって,本件養子縁組を許可することはできない。
よって,本件申立ては,相当でないから,これを却下することとし,主文のとおり審判する。(家事審判官服部悟)
タグ
2012年2月26日 | コメント/トラックバック(0) |
カテゴリー:未分類
相続放棄の申述受理申立却下審判に対する即時抗告事件
第1 抗告の趣旨及び理由
別紙即時抗告申立書及び同理由書各写し記載のとおり。
第2 当裁判所の判断
1 一件記録によれば,次の事実を認めることができる。
(1) C (昭和5年×月×日生)は被相続人(大正12年×月×日生)の要であり,抗告人(昭和25年×月×日生)及びD (昭和27年×月×日生)は,それぞれ被相続人とCの長男及び二男である。被相続人は平成18年6月×日に死亡した。被相続人の遺産に属する財産としては,別紙遺産目録記載のとおり, Dと共有する自宅建物の共有持分5分の3,その敷地である宅地,山林数筆、預貯金等が存した。
(2) 被相続人はもと専業農家であったが,昭和53年ころから団体職員としても稼働するようになった。CとDは被相続人と同居し, Dは昭和46年から平成18年3月まで00に勤務していた。他方,抗告人は,昭和52年に結婚するまで被相続人, c及びDと同居して生活していたが,その後被相続人らと別居して生活するようになり,被相続人と会うのは盆や正月等年に数度にすぎなかった。
(3) D及び抗告人の聞においては, Dが被相続人のいわゆる跡取りの立場にあり, Dが被相続人の遺産を引き継ぎ,抗告人はこれを取得しないとの点において認識を共通にしており,相続に際しては,抗告人がDに一切をゆだね,手続上必要があればその指示に従い,協力する旨了解し合っていた。
(4) Dは,被相続人の死後間もない平成18年6月中に,被相続人の相続人らを代表して,被相続人が生前出資し,貯金し,建物更生共済に加入するなどして取引していた00農業協同組合(以下「本件農協」という。)00支所を訪れ,被相続人の本件農協に対する債務の存否を尋ね,債務はない旨の回答を得た。そこで, Dは, cとともに,本件農協における被相続人名義の普通貯金口座の解約及び出資証券の払戻しの手続をするとともに,本件農協を共済者とする建物更生共済契約の名義人を被相続人からCに変更する手続をした。この手続に際し,抗告人はDから連絡を受け,その求めに応じて,書類に押印する等必要な協力をした。
(5) 被相続人は,別紙遺産目録記織のとおり,平成3年ないし平成8年ころ,本件農協を貸主とする3口の消費貸借契約(元金合計3億円〉につき連帯保証人(うちl億円については連帯債務者)となっていた。このうち被相続人が連帯債務者となっているl億円の貸付けについては連帯保証人兼担保提供者による担保不動産の任意売却交渉が進行していたことから,本件農協は債務者らに対する返済の請求を控えていたが,任意売却が不可能な状況に至ったため,担保不動産の競売により貸付金(残元金7531万5245円)の回収を図ることとし,平成19年9月x日ころ,その旨をC,抗告人及びD (以下「抗告人らJという。)に通知した。
(6) 抗告人らは,本件農協による上記通知により被相続人の債務を初めて知り,抗告人は,平成19年11月×日,松山家庭裁判所に対し本件相続放棄の申述受理の申立てをした。
2 相続人は,自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内に,相続について,単純若しくは限定の承認又は放棄をしなければならないとされ(民法915粂1項本文),上記3か月の熟慮期間については,相続人が相続開始の原因たる事実及びこれにより自己が相続人となったことを党知した時から起算するのが原別である。本件においては,前記のとおり,抗告人はかつて被相続人と同居し,別居後も年に数度は被相続人と会っており,被相続人所有の宅地上に建築された被相続人及びDの共有する建物にはC及びDが被相続人とともに居住していたことからすれば,抗告人らは,被相続人の死亡により自己のために相続の開始があったことを知るとともに,被相続人が上記不動産(自宅敷地の所有権及び建物の共有持分権)を含む積極財産を有することを知っていたものと認められるから,熟慮期間の起算点は平成18年6月×日であるところ,抗告人が本件申立てをしたのは平成19年11月×日であって,それまでに既に3か月の期間が経過していることは明らかである。しかしながら,相続人が,自己のために開始した相続につき単純若しくは限定の承認をするか又は放棄をするかの決定をする際の最も重要な要素である遺産の構成,とりわけ被相続人の消極財産の状態について,熱風期間内に調査を尽くしたにもかかわらず,被相続人の債権者からの誤った回答により,相続債務が存在しないものと信じたため,限定承認又は放棄をすることなく熟慮期聞を経過するなどしてしまった場合には,相続人において,遺産の構成につき錯誤に陥っており,そのために上記調査終了後更に相続財産の状態につき翻査をしてその結果に基づき相続につき限定承認又は放棄をするかどうかの検討をすることを期待することは事実上不可能であったということができるから,熟慮期聞が設けられた趣旨に照らし,上記錯誤が遺産内容の重要な部分に関するものであるときには,相続人において,上記錯誤に陥っていることを認識した後改めて民法915条1項所定の期間内に,錯誤を理由として単純承認の効果を否定して限定承認又は放棄の申述受理の申立てをすることができると解するのが相当である。なお,最高裁昭和57年(オ)第82号同59年4月27日第二小法廷判決・民集38巻6号698頁は,本件と司王案を異にするものであり,前記のように解しでも上記判例と抵触するものではない。これを本件についてみると,前記のとおり, Dは,被相続人死亡後間もない時期に本件農協00支所を訪れて被相続人の本件農協に対する債務の存否を尋ね,同債務は存在しない旨の回答を得,そこで,抗告人らは本件農協における被相続人名義の普通貯金の解約や出資証券の払戻しの手続を執るなどしたものであるが,それは,抗告人らにおいて同債務が存在しないものと信じたことによるものであり, それゆえに,抗告人らは被相続人死亡時から3か月以内に限定承認又は放楽の申述受理の申立てをすることもなかったものと認められる。こうした事情に照らせば,抗告人らは本来の熟慮期間内に被相続人の本件農協に対する債務の有無及び内容につき調査を尽くしたにもかかわらず,本件農協の誤った回答により同債務が存在しないと信じたものであって,後に本件農協からの通知により判明した被相続人の本件農協に対する保証債務の額が残元金7500万円余という巨額なものであることからすれば,上記のような抗告人らの被相続人の遺産の構成に関する錯誤は要素の錯誤に当たるというべきである。そうすると,抗告人は,錯誤を理由として上記財産処分及び熟慮期間経過による法定単純承認の効果を否定して改めて相続放棄の申述受理の申立てをすることができるというべきであって,抗告人が平成19年9月×日ころに本件農協からの通知を受けて被相続人の債務の存在を知った時から起算して3か月の熟慮期間内にされた本件の相続放棄の申述受理の申立ては適法なものとしてこれを受理するのが相当である。
3 よって,これと異なる原審判を取り消した上,抗告人の相続放棄の申述を受理することとし,主文のとおり決定する。(裁判長裁判官矢延正平裁判官豊津佳弘蔚藤聡)
タグ
2012年2月26日 | コメント/トラックバック(0) |
カテゴリー:未分類
