離婚請求本訴, 同反訴事件

上告代理人〇〇〇〇の上告受理申立て理由第1について
1 記録によれば,本件の経粋の概要は,次のとおりである。
被上告人が上告人に対して離婚を求める訴訟を提起したところ,第1審判決は,被上告人の詰求を認容した。上告人は,第1審判決を不服として控訴を提起し,原審において,上記離婚の請求が認容されることを条件として,予備的に,慰謝料及びこれに対する遅延損害金の支払を求める反訴 の提起並びに財産分与及びこれに対する遅延損害金の支払を求める申立てをしたが,被上告人はこの予備的な反訴の提起及び申立てについて同意しなかった。
2 原審は,上告人の控訴を棄却するとともに,上告人の上記予備的な反訴の提起及び申立てについては,相手方である被上告人の同意がなく, 不適法であるとして,その訴え及び申立てを却下した。
3 しかしながら,原審の上記判断のうち,上記予備的な反訴請求に係る訴え及び申立てを却下した部分は是認することができない。その理由は,次のとおりである。
離婚の訴えの原因である事実によって生じた損害賠償詰求の反訴の提起及び離婚の訴えに附帯してする財産分与の申立てについては,人事訴訟手続法8条の規定の趣旨により,控訴審においても,その提起及び申立てに ついて相手方の同意を要しないものと解すべきである(最高裁昭和41年同第972号同年12月23日第三小法廷判決・裁判集民事85号869頁.最高裁昭和 56年同第1087号同58年3月10日第一小法廷判決・裁判集民事138号257頁参照)。
なお,当審係属後に,人事訴訟法(平成15年法律第109号。平成16年4月1日施行)が制定,施行され,人事訴訟手続法は人事訴訟法附則2条 の規定により廃止されたが,上記予備的な反訴の提起及び申立ての適否については,同法附則3条ただし岳の規定により,人事訴訟手続法8条の規定(その内容は,人事訴訟法18条の規定の内容と同旨である。)によって判断されるべきものである。
これと異なる原審の判断には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があり,原判決は破棄を免れない。論旨は理由がある。
そして,人事訴訟法32条1項(同法附則3条本文, 8条参照)は,家庭 裁判所が審判を行うべき事項とされている財産分与の申立て(家事審判法 9条1項乙類5号)につき,手続の経済と当事者の便宜とを考慮して,訴訟事件である離婚の訴えに附帯して申し立てることを認め,両者を同ーの訴訟手続内で審理判断し,同時に解決することができるようにしたものである。
したがって,原審の口頭弁論の終結に至るまでに離婚請求に附帯して財産分与の申立てがされた場合において,上訴審が,原審の判断のうち財産分与の申立てに係る部分について違法があることを理由に原判決を破棄し,又は取り消して当該事件を原審に差し戻すとの判断に至ったときには,離婚請求を認容した原審の判断に違法がない場合であっても,財産分与の申立てに係る部分のみならず,離婚請求に係る部分をも破棄し,又は取り消して,共に原審に差し戻すこととするのが相当である。
以上のとおりであるから,上記予備的反訴請求及び予備的申立てに係る部分はもとより,本訴請求部分も含めて原判決を全部破棄して,慰謝料及び財産分与の点について更に審理を尽くさせるため, 本件を原審に差し戻すこととする。
よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。(裁判長裁判官 泉徳治 裁判官 横尾和子 甲斐中辰夫 島田仁郎 才口千晴)

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2012年2月5日 | コメント/トラックバック(0) |

カテゴリー:離婚

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