子の監護に関する処分(面接交渉)申立事件

第1 申立ての趣旨
申立人と相手方との聞の当庁平成19年(家イ)第0000号子の監護に関する処分(面接交渉)調停事件(以下「前件面接交渉事件」という。)において平成19年×月×日成立した別紙1の調停条項を,別紙2のとおり変更する。
第2 当裁判所の判断
l 本件一件記録によれば,次の事実が認められる。
(1) 申立人と相手方とは,平成10年×月×日婚姻し,平成11年×月×日に長女である未成年者C (以下「未成年者」という。)が生まれた。申立人と相手方は,平成16年×月×日調停離婚し,その際,未成年者の親権者を相手方と定め,以後相手方において未成年者を監護養育している。
(2) 申立人が平成19年×月×日当庁に申し立てた前件面接交渉事件において,同年×月×日,申立人と相手方との聞に,別紙lの調停条項(以下「前件調停条項Jという。)により調停が成立した。
(3) 相手方は,平成19年×月×日,未成年者を連れ,アメリカ合衆国ペンシルバニア州に転居した。相手方は,現在,未成年者とともに肩書住所地で生活し, 00大学00学部で研修中である。
(4) 申立人は,前件調停条項に従い,未成年者と面接交渉を行おうとしたが,円滑に実行されないため,平成20年×月×日,面接交渉の調書を作成(前件調停条項の変更)するための調停をペンシルバニア州00家庭裁判所に申し立てた。ところが,相手方が,向子の監護に閲する処分(面接交渉)事件についての管絡が日本国にあるとする先決的抗弁を申し立てたため,申立人は,同年×月×日,当庁に前件調停条項の変更を求める本件子の監護に関する処分(面接交渉)事件の審判を申し立て,同事件の国際裁判管轄権の有無についての判断(ペンシルバニア州の裁判所が「統一子監護事件に関する管轄及び執行法(UniformChild Custody Jurisdiction andEnforcement Act) 」以下「uC C J E A」という。) に従って前件調停条項を変更するために必要となる東京家庭裁判所の判断)を求めている。
2 そこで,前記1で認定の事実をふまえ,前件調停条項の変更を求める本件子の監護に関する処分事件について,我が固に国際裁判管轄があるか否かにつき判断する。子の監護に関する処分事件に関する国際裁判管轄については,我が国とアメリカ合衆国との聞においてこれを定める条約は存在しない上,我が国には国際裁判管轄権に関する明文の規定は存在しないことから,条理によって定めるしかない(ちなみに,圏内の裁判管轄権については,家事審判規則52条により子の住所地の家庭裁判所が有するとされている。)。そうすると, 離婚事件のみならず,親子関係事件(本件子の監護に関する処分事件も含まれる。)についても,相手方が行方不明その他特段の事情がない限り,相手方の住所地固に国際裁判管轄があるとするのを原則とし,併せて,親子関係事件の中でも本件のような子の面接交渉を定める事件(我が国で定めた面接交渉に関する調停条項の変更を求める場合も含む。)については,子の福祉という観点から,子と最も密接な関係を有する地である子の住所池田にも国際裁判管轄を認めるのが相当である。これを本件についてみると,前記1で認定の事実によれば,相手方及び未成年者は,いずれもペンシルパニア州に住所を有するから,ペンシルパニア州に国際裁判管轄があるというべきである。そこで,本件について,我が国に国際裁判管轄を認めなければならないような特段の事情が存在するかにつき判断するに,前記lで認定のとおり,相手方は未成年者とともに,平成19年×月×日,日本からペンシルパニア州に転居し,未成年者は相手方が00大学00学部での研修を終了するまで相手方とともにペンシルパニア州で生活することになること,前件調停条項を変更するにあたっては相手方及び未成年者の生活状況等の調査が必要であること,申立人は,現に,面接交渉の調書を新たに作成(前件調停条項の変更)するための調停をペンシルパニア州00家庭裁判所に申し立てており,同裁判所に本件についての国際裁判管轄を認めるほうがより子の福祉の観点から適切な判断をなし得るのみならず,当事者の出頭等の便宜にも資すること,また,ペンシルパニア州UCC]EAによれば,子の監護に関する処分事件に関する「排他的かつ継続的な管轄」は原則として監護に関する処分を最初に下した州が持つとされているが,その州が第5422条に従ってもはや排他的かつ継続的な管轄を有しないと判断した場合(①子と子の親がその州に住んでいないとき,もしくは②子もしくは子の親がその州と密接な関係を持たず,子に関する実質的な証拠がもはやその州では得られないとき)はその限りではないとされており(第5423条),その場合にはペンシルパニア州の裁判所が本件のように我が国で定めた面接交渉に関する調停条項の変更を求める事件についても管轄を持つとされていることにかんがみると,本件においては,我が国に本件子の監護に関する事件の裁判管轄を認めなければならないような特段の事情は存在しないといわざるを得ない。したがって,我が固には本件子の監護に関する処分事件の国際裁判管轄はないというべきであって,国際裁判管轄のない当庁に審判を求めた本件申立ては不適法である(これをUCC]EAに則していえば,東京家庭裁判所は,本件子の監護に関する処分事件について,もはや「排他的かつ継続的な管轄Jを有しない。)。よって,主文のとおり審判する。(家事審判官土居葉子)

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