特別養子縁組成立申立事件
1 申立の趣旨
主文同旨
2 当裁判所の判断本件記録によれば,次の各事実を認めることができる。
(1) 申立人(養父となる者)A (以下「申立人A」という。)と申立人(養母となる者)B (以下「申立人B」という。)は,平成16年×月×日に婚姻した夫婦であり,いずれも現在25歳以上の者であるが,申立人Bは.Cわ症候群で,子を産むことができなかった。
(2) 事件本人(養子となる者の父)0 (以下fDJという。)と,事件本人(養子となる者の母)Eは,夫婦であり,申立人Bは,両名聞の長女である。
(3) 事件本人(養子となる者の母)E (以下fEJという。)は.申立人ら夫婦のためにし、わゆる代理出産することを決意し,申立人ら夫婦,D等の家族の了解を得た。Eは.平成19年×月.00県所在のクリニッグを受診し,ホルモン治療を受けた上申立人Bの卵子と申立人Aの精子を受精させた匪の移植を受けて妊娠し,平成20年×月×日,事件本人(養子となる者)c (以下「事件本人」という。)を出産した(なお.女性が自己以外の女性の卵子を用いた生殖補助医療により子を懐胎し出産した場合における出生した子の母は,その子を懐胎し出産した女性であることについては,最高裁判所第二小法廷平成19年3月23日決定,平成18年(許)第47号,最高裁判所民事判例集61巻第2号619頁参照。)。
(4) 申立人Bは,事件本人の出生に合わせて母乳を出すための薬を飲み,事件本人に与えた。申立人ら夫婦は,平成20年2月下旬に,事件本人を自宅に引き取り,以後,約10か月間,事件本人を監護養育してきている。
(5) Eは,事件本人を申立人ら夫婦のために妊娠.出産したと考えている。E及びD夫婦は.いずれも稼動して収入を得ており.経済的な不安はないが,申立人ら夫婦が事件本人を責任を持って育てるべきであると考えており,事件本人を自身らの子として育てる意思はなく,本件特別養子縁組を希望している。
(6) 申立人ら夫婦は,事件本人の血縁上の親であり,事件本人を責任を持って育てる意向である。申立人ら夫婦は.仲が円満で,愛情を持って事件本人を監護養育しており,その心身の健康状態,居住環境,経済状態等も安定している。申立人ら夫婦による事件本人の監護養育は.(4)のとおり約10か月が経過し,良好に推移しており.事件本人の発育・発達状況も順調である。当裁判所家庭裁判所調査官の調査においても,申立人ら夫婦に養親としての適格性が認められること及び申立人ら夫婦と事件本人聞の適合性が良好であることが確認されている。
3 以上のとおり,本件は,いわゆる代理出産により出生した事件本人について,卵子及び精子を提供した申立人ら夫婦との特別養子縁組許可の申立てをした事件である。いわゆる代理出産については.医学的,倫理的・社会的,法的各側面から,その是非を含めた様々な議論がされ,上記最高裁判所決定においても,法制度としてどう取り扱うか改めて検討されるべき状況にあり,医療法制,親子法制の両面にわたる検討を経て,立法による速やかな対応が強く望まれるとされている(なお,いわゆる代理出産の検討状況について, 日本学術会議生殖補助医療の在り方検討委員会平成20年4月8日報告「代理懐胎を中心とする生殖補助医療の課題一社会的合意に向けて一J参照)。しかし.出生した子と,血縁上の親との聞にどのような関係を成立させるかについては,代理出産の是非と必然、的に連動するものではなく,出生した子の福祉を中心に検討するのが相当であり.上記最高裁判所決定の補足意見においても,事案によっては,法的に親子関係を成立させるため.現行法において,特別養子縁組を成立させる余地がある旨が指摘されている。
4 そうすると,本件においては,申立人ら夫婦の養親としての適格性及び事件本人との適合性にはいずれも問題がない上,申立入ら夫婦は,事件本人の血縁上の親であり,事件本人を責任を持って監護養育していく其撃な意向を示していること,他方. E及びD夫婦は,申立人ら夫婦が事件本人を責任を持って育てるべきであると考えており,事件本人を自身らの子として監護養育していく意向はなく,かかるE及びD夫婦に事件本人の監護養育を委ねることは.その監護が著しく困難文は不適当であることその他特別の事情があると認められるから,事件本人を申立人ら夫婦の特別養子とすることが,その利益のために特に必要があるというべきである。よって,本件申立てを相当と認め,主文のとおり審判する。(家事審判官菊池絵理)
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2012年2月26日 | コメント/トラックバック(0) |
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遺産分割及び寄与分を定める処分審判に対する抗告審の変更決定に対する許可抗告事件
抗告代理人〇〇〇〇,同〇〇〇〇,同〇〇〇〇の抗告理由について
1 本件は,亡Eと亡Fの各共同相続人である抗告人らと相手方との聞におけるそれぞれの被相続人の遺産の分割等申立て事件である。
2 記録によれば,本件の経緯は次のとおりである。
(1) 抗告人ら及び相手方は,いずれもEとFの間の子である。Eは平成2年1月2日に.Fは同年10月29日に,それぞれ死亡した。Eの法定相続人はR 抗告人ら及び相手方であり.Fの法定相続人は抗告人ら及び相手方である。
(2) 本件において遺産分割の対象となる遺産は.Eが所有していた第1審の審判の別紙遺産目録記載の各土地(以下「本件各土地」という。)であり,その平成2年度の固定資産税評価額は合計707万7100円, 第1審における鑑定の結果による平成15年2月7日時点の評価額は合計1149万円である。
(3) E及びFの本件各土地以外の遺産については,抗告人ら及び相手方との聞において,平成10年11月30日までに遺産分割協議及び遺産分割調停が成立し(その内容は原決定別表1及び2のとおり。).これにより.相手方は合計1387万8727円,抗告人Aは合計1199万6113円,抗告人Bは合計1221万4998円,抗告人Cは合計1441万7793円に相当する財産をそれぞれ取得した。なお,抗告人ら及び相手方は,本件各土地の遺産分割の際に上記迫産分割の結果を考慮しないことを合意している。
(4) 相手方は.EとFのために兵庫県伊丹市内の自宅を増築し.EとFを昭和56年6月ころからそれぞれ死亡するまでそこに住まわせ,痴呆状態になっていたEの介護をFが行うのを手伝った。その間,抗告人らは,いずれもE及びFと同居していない。
(5) 相手方は,次の養老保険契約及び護老生命共済契約に係る死亡保険金等を受領した。
ア保険者を〇〇保険相互会社,保険契約者及び被保険者をF,死亡保険金受取人を相手方とする養老保険(契約締結日平成2年3月1日)の死亡保険金500万2465円
イ保険者を△△保険相互会社,保険契約者及び被保険者をF,死亡保険金受取人を相手方とする養老保険(契約締結日昭和39年10月31日)の死亡保険金73万7824円ウ共済者を口口県・業協同組合,共済契約者をE,被共済者をF,共済金受取人をEとする養老生命共済(契約締結日昭和51年7月5日)の死亡共済金等合計219万4768円(入院共済金13万4000円,死亡共済金206万0768円)
(6) 抗告人らは,上記(5)の死亡保険金等が民法903条1項のいわゆる特別受益に該当すると主張した。
3 原審は,前記2(5)の死亡保険金等については,同項に規定する遺贈又は生計の資本としての贈与に該当しないとして,死亡保険金等の額を被相続人が相続開始の時において有した財産の価額に加えること(以下, この操作を「持戻し」という。)を否定した上,本件各土地を相手方の単独取得とし,相手方に対し抗告人ら各自に代償金各287万2500円の支払を命ずる旨の決定をした。
4 前記2(5)ア及びイの死亡保険金について
被相続人が自己を保険契約者及び被保険者とし,共同相続人の1人又は一部の者を保険金受取人と指定して締結した養老保険契約に基づく死亡保険金請求権は,その保険金受取人が自らの固有の権利として取得するのであって,保険契約者又は被保険者から承継取得するものではなく,これらの者の相続財産に属するものではないというべきである(最高裁昭和36年制第1028号同40年2月2日第三小法廷判決・民集19巻1号1頁参照)。また,死亡保険金請求権は,被保険者が死亡した時に初めて発生するものであり,保険契約者の払い込んだ保険料と等価関係に立つものではなく,被保険者の稜(動能力に代わる給付でもないのであるから,実質的に保険契約者又は被保険者の財産に属していたものとみることはできない(最高裁平成11年同第1136号同14年11月5日第一小法廷判決・民柴田巻8号2069頁参照)。したがって,上記の養老保険契約に基づき保険金受取人とされた相続人が取得する死亡保険金詰求権文はこれを行使して取得した死亡保険金は,民法903条1項に規定する遺贈又は贈与に係る財産には当たらないと解するのが相当である。もっとも,上記死亡保険金請求権の取得のための世用である保険料は,被相続人が生前保険者に支払ったものであり,保険契約者である被相続人の死亡により保険金受取人である相続人に死亡保険金請求権が発生することなどにかんがみると,保険金受取人である相続人とその他の共同相続人との聞に生ずる不公平が民法903条の趣旨に照らし到底是認することができないほどに著しいものであると評価すべき特段の事情が存する場合には,同条の類推適用により,当該死亡保険金詰求権は特別受誌に準じて持戻しの対象となると解するのが相当である。上記特段の事告!?の有無については,保険金の額,この額の逃産の総額に対する比率のほか,同居の有無,被相続人の介護等に対する貢献の度合いなどの保険金受取人である相続人及び他の共同相続人と被相続人との関係,各相続人の生活実態等の諸般の事情を総合考慮して判断すべきである。
これを本件についてみるに,前記2(5)ア及びイの死亡保険金については,その保険金の額,本件で遺産分割の対象となった本件各土地の評価額,前記の経緯からうかがわれるFの遺産の総額.抗告人ら及び相手方と被相続人らとの関係並びに本件に現れた抗告人ら及び相手方の生活実態等に照らすと,上記特段の事情があるとまではいえない。したがって,前記2(5)ア及びイの死亡保険金は,特別受益に準じて持戻しの対象とすべきものということはできない。
5 前記2(5)ウの死亡共済金等について
上記死亡共済金等についての養老生命共済契約は,共済金受取人をEとするものであるので,その死亡共済金等請求権文は死亡共済金等については,民法903条の類推適用について論ずる余地はない。
6 以上のとおりであるから.前記2(5)の死亡保険金等について持戻しを認めず,前記3のとおりの遺産分割をした原審の判断は,結論において是認することができる。論旨は採用することができない。よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり決定する。(裁判長裁判官北川弘治裁判官福田博梶谷玄花井繁男津野修)
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遺産分割申立事件寄与分を定める処分申立事件
一件記録に基づ・く当裁判所ゐ事実認定及び法律判断は,以下のとおりである。
l 相続の開始,相続人及び法定相続分被相続人は,平成17年×月×日死亡し相続が開始した。相続人は,被相続人の妻である申立人Aと,子である相手方G,申立人B,同C,脱退前申立人D,同E及び同Fである。法定相続分は,申立人Aが2分のlであり,相手方,申立人B,同C,脱退前申立人D,同E及び同Fが各12分のlである。
2 相続分の譲渡脱退前申立人Fは平成20年×月XB,同Dは同月×日,同Eは同月×日,申立人Aに対し.それぞれその相続分全部を譲渡し,それぞれ本件遺産分割手続から脱退した。また,申立人Cは申立人Bに対し,同年×月×日相続分全部を譲渡した。その結果,場立人Aの相続分は12分の9に,申立人Bの相続分が12分の2,相手方の相続分は12分のlになづた(なお,申立人Cの相続分は零である。)。
3 遺産の範囲及びその評価被相続人の遺産及びその評価(不動産持分及ひ’株式については,鑑定人0000及び同ムムムムの各鑑定結果による。)は,別紙遺産目録記載のとおりであると認められる(なお,当事者聞には,預貯金及び債権に.っき遺産分割の対象とすること及びその金額についての合意がある。)。相続開始時の造産総額は2億6712万4951円であり,分割時の遺産総額は2億8354万5686円である。
4 特別受益
(1 ) 申立入らは,相手方が被相続人から,①別表1のとおり平成8年×月から平成11年×月×日までの聞に727万2000円の送金ないしは交付を受け,相手方の平成11年度から平成16年度の国民年金保険料及び国民健康保険料合計99万3585円の支払を受け,平成14年ころ簡易保険満期金200万円を騒し取り,また別表2のとおり昭和53年×月から昭和60年× 月まで借入れを受け(借入残477万5000円),平成2年×月×臼から周年×月×日までの合計27万6334円の送金(返済分控除)を受け,平成15年度国民健康保険料3万8400円の支払を受けるなどし,さらに別表3のとおり平成4年×月×日から平成6年×月×日までの合計227万4334円の送金を受けたので, これらの合計1762万9653円の贈与を受け,②被相続人に相手方の長男Iを3歳から高校卒業まで養育させてきたが, この聞に少なくとも生活保護法による生活保護基準額及び教育費の合計702万8280円を負担させ,③被相続人が一人株主で当時の代表取締役をしていた00株式会社から,相手方は勤務していないのに昭和53年から昭和60年までの聞に支払いを受けた給与合計2617万7000円を,その聞の同社及び被相続人が一人株主のムム株式会社が勤務実態のない相手方の厚生年金保険料184万1884円(なお,少なくとも本人負担分92万0942円は被相続人が負担している),国民年金保険料93万1000円を,両社を通じて贈与を受けた特別受益があると主張する。相手方は,①の送金ないし交付についての認否は別表1.2, 3の「認否J欄のとおりであって,金銭的援助は申立人Aから受けたものであるが,被相続人から金銭的援助を受けたことはなく,②長男Iを養育したのは被相続人ではなく申立人Aであり,被相続人や申立人A夫婦が自ら希望して孫を養育したものにすぎないし,③00株式会社等から給与を受け取ったことはなく,いずれにしろ相手方が被相続人からの特別受益を受けたことはないとしてこれを争う。
(2) そこで検討するに,
ア①の別表1(1)・(3),511]表2(1)・(2),511]表3の金銭援助については,相手方が認める援助以外の金銭援助はノートの記載(甲19,20) と申立人の陳述説明以外にこれを認めるに足りる証拠はないので,これらは金銭援助の事実自体認めがたい(なお,別表1(3)の200万円のうち,免許取得費用50万円についても相手方の陳述哲[乙11のー記載では「受け取った記憶がある」と記載されているもの’ の,相手方作成の「反訴状」と題する書面では認めない旨の記載があり,相手方が50 万円の受領を認めたものとは言い難し、。また間「反訴状」の 4 頁, 5 頁は申立人主張の計算上の誤りを指摘した同所に記載された金額を認めるものではない。〉。相手方が認める金銭援助(平成 4 年の103 万円, 5 年の1 05 万円,6 年のものであり,12 万円, 8 年×月以降の40 万円, 9 年の153 万5000 円,1 0 年の286 万甲3 の 1 から34 まで)について,相手方は被相続人からの援 円,助ではなく申立人Aからの援助であると主張し,まで, 45 の4 から28 までによれば,相手方lζ対する送金は口口口口甲3 の 2 から34名義であって申立人Aが送金手続をしたものと認められるが,被・ 相続人の給与受給額は平成 2 年から 4 年までが各792 万円,平成 5年が1056 万円,平成 6 年及び 7 年が1188 万円,平成 8 年及び 9 年が申立人Aの給与受給額 396 万円, 10 年及び11 年が180 万円であり,平成 5 年が430 万5000 円,平成 6 年が303 万円,平成 7 年が288 万円,平成&年が280万5000 円,平成 9 年から11 年までが各2 7 0 万円であって(甲37 ,被は平成 2 年制1 89 万円,平成 3 , 4 年が各198 万円,相続人につき甲38) ,平成4 年には被相続人及び申立人Aの収入はほぼ同額であるが,平成 5 年以降は申立人Aの収入が減少してしる時期であるし,被相続人及び申立人Aの生活費等も考慮すると,被相続人の高額な給与の蓄えで・同援助がなされたものと推認され,申立人A自身が送金の経緯を具体的i こ説明できないことをも加味すれば,相手方に対しなされた送金の出摘者は被相続人というべきである。そして,別表 3 記載の平成 4 年×月×日から平成 6 年×月 ×日までの聞に一月に 2 万円から25 万円の送金がなされているが,本件一月に10 万円を超える 追産総額や被相続人の収入状況からすると,同年×月 12 万円, x 用×日6 0万円,平成 5 年×月×日 10万円, 同年×月 22万円,司.~x 月 25万同年×月×日10 万円,同年×月×日25 万円)は生計資本とし送金(平成 4年×月×日12 万円,-円,これに満たないその余の送金は親族閣の扶養的金銭援助にとどまり生計資本としての贈与とは認めらての贈与であると認められるが,れないと思慮する。また, ~IJ表 1 (1) の送金中の相手方が受領を認める平成 8 年×月×日から平成11 年×月×固までの送金のうち,平成10 年×月×日 5万6000 円,同年×月×日 5万6000 円, 同年×いずれも一月に1 0 万円未満であるから,親族問の扶養的金銭援助にとどまり生計資本と月×百 6 万円,平成J. 1 年×月×日 l 万円は,しての贈与とは直ちに認められないと思躍するが, その余の送金はいずれも一月に10 万円以上の送金がなされており,平成10 年 ×月×自 に10 万円返金されたとの記載を除き返済されたと認められるこれらの一月に1 0 万円を超える送金( ただし,上記10 万円の返金を控除する。)は生計資本と しての贈与証拠がないことからすると,いずれも相手方の特別受益と認められる。しかし,別表 1 ( 2) ,別表 2 (3) 記載の平成11 年度から平成15 年度までの国民年金保険料,平成12 年度から16 年度までの国民健康保険料であり,一月あたり約 l 万 の納付は被相続人が納付したか争いがあるが,50ao 円程度であることからすると,仮に被相続人が納付したと しても生計資本としての贈与とは言い難く親族聞の扶養的な金銭援助にとどまるというべきである。②については,相手方の長男I が3 歳のころ(昭和51 年ころ)か
イら高校卒業(平成 4 年 3 月)までの約15 年間,相手方と同居せず,被相続人及び申立人A夫婦と同居していたことは当事者間で争いなし被相続人及び申立人A夫婦の養育下にあり, その養育費用.は相手方が被相続人及び申立人Aに支払っていたと認めるに定りる証拠はなく,かっ,その期間中の被相続人の受取給与額は申立人Aと比較して高額であることからすると(申立人Aは昭和56年から59年までは無給であった。甲37),被相続人がこれを負担していたと推認されるが, これをもって被相続人から相手方に対する生計資本としての贈与とは直ちにいえないし,また,仮に被相続人の経済的負担において,相手方が親として負担すべき扶養料負担を免れたことにより相手方の生計維持に貢献した分があったとしても,被相.続人としては,孫にあたるIの養育費用の負担をすることは相続の際に相手方の特別受益として考慮する意思はなかったと推認されるので,黙示的な特別受益の持戻し免除の意思表示があったものというべきである。いずれにしても,相手方の特別受益ということはでaきない。
ウ③については,甲37Jこよれば, 00株式会社は,相手方に対し,給与として昭和53年に160万円, 54年に237万円, 55年に359万5000円, 56年に397万円, 57年に456万円, 58年に400万8000円, 59年に472万9000円,60年に134万5000円を支給し,それ以後は給与の支払をしていないところ(甲37については,脱退前申立人Fや同Dも自‘己の受給給与額について疑問を呈しており,その信用性については判断はさておく。),仮に相手方が稼働実態なくして00株式会社から上記給与が支払われているとしても,同社から相手方に対する贈与であって,被相続人からの贈与とはいえない。このことは,同社が被相続人の一人会社であったとしても,会社経理との誤認混同など経済的に極めて密着した関係があったとは認めるに足りる証拠はないので,一人会社というだけで被相続人からの贈与と認めることはできないと思慮する。また,同社やムム株式会社の勤務期間中の厚生年金保険料のうち,会社負担部分につい芝は両社が負担していたものであって,両社が被相続人の一人会社というだけで被相続人からの贈与とはいえないことは前記判示のとおりであり,また本人負担部分(保険料の半額)についても,両会社が負担していたのではなく被相続人が負担していたとは直ちに認められないし,また申立人らが相手方の国民年金保険料領収曹を現在持っているこ£で,被相続人がこれを負担したものとは直ちに認められず,他にこれを認めるに足りる証拠はないし.さらに仮に被相続人が支払っていたとしても月々l万3300円の納付であることからすると,生計資本としての贈与とまではいえない。
(3) 以上によれば,申立人らが主張する相手方の特別受益のうち,平成4年に84万円, 5年に92万円, .8年に40万円,9年に153万5000円,10年iこ259万円の特別受益のみ認められる。そして,相続開始時の消費者物価指数(総合)を100とした場合,平成4年が98.9,’平成5年が. 100.2,平成8年が100.8,平成9年が102.7,平成10年が103.3であって,貨幣価値の変動は大きくないので,上記特別受益の相続開始時の評価にあたり貨幣価値の変動は考慮しないことにする。そこで,相手方の特別受益の合計は628万5000円となる。
5 申立人A及び同Bの寄与分
(1) 申立人Aは,①昭和23年ころから被相続人の営む00業に従事し,その事業を通じて被相続人が309坪の借地権を取得できたのであり,申立人Aも被相続人と同等に仕事してきたので、借地権取得についての寄与が半分あったところ,この借地権と同地上の建物が平成5年の再開発により別紙遺産目録1, 2記載の土地建物と等価交換されたものであるから,同地産土地建物持分の2分のlが申立人Aの寄与であること,②00株式会社の資産の大部分は上記遺産土地建物の残持分であり,昭和47年から平成3年まで被相続人に代わって申立人Aが同社を一人で経営してきたので,申立人Aの寄与は別紙遺産目録4記載の株式についての2分のlであること,③被相続人の役員報酬は申立人Aが同社を実質的に経営していたので,申立人Aからの贈与といえるのでこれを原資とする別紙遺産目録3,5記載の預貯金及び債権の4分の3も申立人Aの寄与であるとして,寄与分を定める申立てをする。申立人Bは,上記309坪の借地権と遺産土地建物との等価交換の交渉を一人す行ったものであるし,平成4年.から実質的に00株式会社の経営にあたっていたので被相続人の役員報酬はBからの贈与といえ, これを原資とする別紙遺産目録3,5記載の預貯金及び債権の4分のlは同申立人の寄与であるとして寄与分を定める申立てをする。相手方は,これらを否認し却下を求める。
(2) そこで,検討するに,申立人A.は,① 昭和23年ころから00業を営んでいた被相続人と昭和24年×月×自に婚姻し,昭和25年× 月に相手方を,昭和27年×月に申立人Bを,昭和28年×月に申立人Cを,昭和30年×月に脱退前申立人Dを,昭和33年× 月に同Eを,昭和35年×月に間Fを順次出産しており,相手方,申立人B,問C,脱退前申立入らの育児等に追われ,家事も担っていたことが推測されることからすると,申立人Aの母や身内の者が家事や育児を助けてくれることがあり,申立人Aが00業を手伝うことがあったとしても被相続人と同等に仕事をしたとの説明は措信できず,00業の手伝い(取引先との連絡や会計処理等を含む。)は夫婦問で・の協力の範囲にとどまると解されるので(なお,相手方によれば,申立人Aは給与の支払を受けていたという。),結局309坪の借地権を被相続人が取得したことについて申立人Aの特別な寄与があったと認めるに足りる具体的証拠はなく, この借地権が等価交換〈甲32,借地権売買と別紙遺産目録l記載の土地の売買,岡田録2記載の建物の建築請負とを一体化した契約に基づき取得)された別紙遺産目録1, 2記載の土地建物の持分についての申立人Aの具体的寄与行為は認められない。②申立人Aが昭和47年から平成3年まで被相続人民代わって00株式会社の不動産賃貸業の経営に実質的に係わってきたとしても-(甲37によれば,申立人Aは昭和56年から59年までの4年間同社から給与支払を受けていないことからすると,同社の経営に係わっていたか疑問である。),’閉会社に対する貢献があるにすぎず”これをもって被相続人の追産の形成維持に貢献があったとはいえなし、。③被相続人の役員報酬(給与)は,同会社から支給されるものであって, 申立人Aが同社を.実質的に経営していたとしても,申立人Aが被相続人に対し財産給付したものではなく,同申立人による寄与ということができないことは明らかである。また, 一申立人Bが,平成4年から実質的に00株式会社の経営にあたっていたとしても被相続人の役員報酬(給与)は同会社から支給されるものであって,申立人Bが被相続人に対して財産給付をしたものではないし,前記借地権と遺産土地建物(被相続人持分100分の65, 00号式会社持分100分の35) の交換について関与したとしても。~, ~”‘ー同社の役員としての立場をも有していたことからすると,被相続人の遺産の維持増加につき特別な寄与があるとは認められないから, いず
7 分割方法についての当事者の意見等
(1) 申立人らは,第l次的には申立人Bが別紙遺産目録l記載の土地持分及び同目録2記載の建物持分の各5分のlを取得し,申立人Aがその余の遺産をすべて取得することを希望し,申立人Bは申立人Aから代償金を取得できるとしてもその支払を求める意向はないが,申立人Aには相手方に対する代償金一括支払資力がないので,相手方に対する代償金は長期分割(当初に400万円を,その後は毎月10万円の分割支払)による弁済を希望する。第2次的には長期分割弁済による代償分割が認められ戸いのであれば,代償金の支払ができず申立人Aの取得分について競売を申し立てられると同人に種々”の不利益が生じるので,別紙遺産目録l記載の土地持分及び同目録2記載の建物持分について相手方との共有分割(申立人Aと同B間の持分割合4対1)を希望する。
(2) 相手方は, いずれの遺産の取得も希望せず,申立人らが代償金をー括して支払う能力がなくても,申立人Aないしは同Bから?括した代償金の支払を受ける代償分割を希望し,別紙追産目録l記載の土地持分及び同目録2記載の建物持分についての申立入らとの共有分割には反対であって,競売による換価分割を希望する。
8 当裁判所で定める分割方法
(1 )汚IJ紙遺産目録1.2記載の土地建物は,被相続人の持分が100分の65であり,その余の持分100分の35は00株式会社(代表者・申立人B)であって,同建物の利用状況は,同建物の1階から5階までは賃貸され. 6. 7階は申立人A. 同B及び脱退前申立人Fの住居として使用さa-F」畑』国-ph l ‘ llii jj!れている。本件の遺産は,上記土地建物の持分であるから現物分割は不可能である。申立入らは..申立人Bが別紙遺産目録1記載の土地持分及び同62・9ー72-hIT裁判例( 家事)目録2記載の建物持分の各5分のlの取得を希望し,申立人Aがそーの余の遺産すべての取得を希望するものの,相手方に対して負担する代償金を一括して支払う資力がなく,代償金の長期分害IJ弁済を希望するが,相手方はこれに応じないので,申立人らが希望する代償金の長期分割弁済(本件では完済までの期間が元金のみで・も11年以上にわたる。)による代償分割は,適正かっ公平な分割方法とはいえない。なお,相手方は申立人らに代償金支払資力がなくても代償金の即時一括支払による代償分割でよいとの意見であるが,申立人らが代償金の一括支払を前提とする場合には代償分割jを希望してい広いし, 即時一括の代償金支払を命じられでも申立人Aの財産が競売されることになりかねず,本件遺産土地建物の持分が競売された場合には競落価格が低額となるなどの不利益を被るおそれが大きいので,結局代償分割も相当でない。そこで,上記述産土地建物の持分について,共有分割とするか競売による換価分割とするかを検討するに,遺産が土地建物の持分であって,上記遺産土地建物持分についての競売による換価分割は当事者全員に及ぼす経済的不利益が大きい(不動産持分のみの競売は不動産全体の競売に比較して競落価格が著しく低額となる可能性がある。)ことからすると適切とはいえず,申立人らと相手方間には感情的対立も”a争.. ,l’窺えるし,相手方が共有取得にほ反対していることを十分考慮しでも,上記土地建物持分につき共有分割とすることとし,本件造産分割l終了後に別紙迫産目録1.2記載の土地建物全体についての共有関係の解消等を共有物分割手続によって別途解決することが妥当というべきである。なお. ~IJ紙埠産目録3. 4. 5記載の預貯金,株式,債権については申立人A以外には取得希望者がいないので,同申主人の単独取得とするのが相当である。
(2) そう.すると,相手方の本件迫産分割における現実の取得額は前記6(7)に判示のとおり1751万3000円であって,分割時の別紙遺産目録1.2記載の土地建物の各持分の価額合計は2億1450万円であるから,相手方は上記土地建物持分につき2億1450万分の1751万3000の割合で取得とし,申立人Aと同Bについては同申立人らの希望を踏まえて,申立人Bがその余の5分のlに当たる2億1450万分の3939万7400の割合で,申立人Aが5分の4に当たる2億1450万分のl億5758万9600の割合で取得するのが相当である。ところで.申立人Bの現実の取得額は,前記6(7)に判示のとおり4837万円であり,上記土地建物の持分の共有取得によって3939万7400円の価値を取得するので,同人の現実の取得額よりも上記土地建物持分の共有取得額がその差額である897万2600円少なくなるが,申立人Bは申立人Aに対する代償金の支払は求めないとしているので,上記代償金の支払ないしはこれに代わる上記土地建物持分の取得はしないこととする。なお,申立人Cは,相続分譲渡によって相続分を有しないので,遺産を取得しない。
9 結論したがって, b申立人A及び同Bの寄与分を定める申立てをいずれも却下し,被相続大についての遺産分割は主文2項掲記のとおりとする。本件手続賀用のうち,鑑定人0000に支出した鑑定料84万5250円は申立人ら及び脱退申立人らが立替えており,鑑定人ムムムムに支出した鑑定料42万円は申立人Bが立替えているところ,当事者の相続分に応じて.これを12分し,その9を申立人Aの負担とし,その2を申立人Bの負担とし,そのlを相手方の負担とする。帽手方は申立人Bに対し鑑定62・9ー74一一裁判例( 家事)料の償還として10万5000円(1000円未満は負担させない。)を支払う対きである(なお,申立入ら閣の立替金の内部負担が明確でないので,その償還は命じない。)。その余の手続費用は各自の負担とする。よって,主文のとおり審判する。(家事審判官石田浩二)〔編注〕別紙及び別表は省略した。れも申立人Bの寄与ということができないことは明らかである。よって, 申立人A及び同Bの寄与分の申立ては,いずれも理由がなし、。6 相続分の算定〔編注〕中略
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財産分与申立却下審判に対する即時抗告事件
第1 抗告の趣旨及び理由
〔抗告人〕
〔相手方〕
A
B
C
抗告人らの抗告の趣旨及び抗告の理由は.別紙即時抗告申立書写し中,各該当側記載のとおりである。
第2 当裁判所の判断
1 本件は,亡Dと死別した前妻Eとの間の子である抗告人らが,亡Dの後妻である相手方に対し,亡Dの相手方に対する財産分与請求権を相続したとして,相手方の財産の半分相当額の12分の5に当たるとする各1638万6459円の支払をそれぞれ求めるものである。
2 基礎となる事実(一件記録により認められる。)
(1)亡Dは,昭和32年3月26日に前妻Eと婚姻し,両者聞に抗告人らをもうけたが,昭和50年11月27日にEが病死した。亡Dは,昭和51年4月19日に相手方と再婚し,その後,相手方とその前夫との間の子であるFと養子縁組をした。
(2)亡Dは,平成11年12月に肝臓病で入院し,以後入退院を繰り返し.その聞の平成12年6月ころ,浦和家庭裁判所越谷支部に夫婦関係調整の調停を申し立てた(同庁同支部平成12年(家イ)第〇〇○号)。申立ての趣旨は調停の経過の中で変更あるいは追加がされ,平成13年1月12日の調停j明日の段階では,相手方との離婚並びに離婚に伴う財産分与として3932万7502円及び慰謝料500万円の各支払を求めており,それらの趣旨の記載された書面は,前向日相手方に送達されていた。
(3) 上記調停が成立しないままに,亡Dは平成13年1月16日に死亡した。
(4) 亡Dは,同年1月10日に公正証書追言をしており,同遺言には,相手方を相続人から廃除し,財産分与請求権を含む一切の財産について,抗告人らに各12分の5及び養子Fに12分の2の各割合で相続させるものとする等の記載がある。
(5)抗告人らは,平成13年3月30日,相手方に対し,東京家庭裁判所に財産分与請求調停事件を申し立て(同裁判所平成13年(家イ)第△△△△号).7固にわたり調停期日が聞かれたが,平成14年3月1日不成立となり,本件審判に移行した。
3 当裁判所の判断
(1) 夫婦が離婚したときは,その一方は,他方に対し,財産分与を詰求することができる(民法768条.771条)。この財産分与の権利義務の内容は,当事者の協議,家庭裁判所の調停若しくは審判又は婚姻関係の人事訴訟の付帯処分として判決で‘具体的に確定されるが,上記権利そのものは,離婚の成立によって発生し,実体的権利義務として存在するに至札前記当事者の協議等は,単にその内容を具体的に確定するものであるにすぎない(以上につき,最高裁判所第三小法廷昭和50年5月27日判決・民集29巻5号641頁参照)。そして,財産分与に関する規定及ひ’相続に関する規定を総合すれば,民法は,法律上の夫婦の婚姻解消時における財産関係の清算及び婚姻解消後の扶養については,出m婚による解消と当事者の一方の死亡による解消とを区別し,前者の場合には財産分与の方法を用意し,後者の場合には相続により財産を承継させることでこれを処理するものとしていると解するのが相当である(最高裁判所第一小法廷平成12年3月10日決定・民集54巻3号1040頁参照)。したがって, 離婚が成立するより前に夫婦の一方が死亡した場合には,離婚が成立する余地はないから,財産分与請求権も発生することはないものである。そのことは,夫婦の一方の死亡前に,その者から家庭裁判所に離婚を求めて調停が申し立てられ,調停申立ての趣旨の中に財産分与を求める趣旨が明確にされていた場合でも同様である。そうすると,亡Dの相手方に対する財産分与請求権は発生していないから,抗告人らがこれを相続により取得することはできない。
(2)ア抗告人らは,本件では,亡Dと相手方との間で,近い将来,調停あるいは訴訟で離婚が成立することが確実であったものであり,離婚が成立していなくても,実質的に離婚が認められることが確実で,具体的に当事者の一方から財産分与の意思表示がされている場合は,例外的に財産分与請求権は発生し,その相続人らに相続されると解すべきである旨主張する。しかし,離婚の成立によって発生する財産分与請求権を,例外的に抗告人らの主張するような場合には離婚が成立していなくても発生するものとするのは法律的な根拠がない。抗告人らの主張する財産分与請求権を,婚姻継続中の夫婦の一方が有している離婚した場合に財産分与諮求権を取得できる地位あるいは期待権と理解しても,そのような地位あるいは期待権は,その者の死亡によって消滅するものでこれを相続する余地はないというべきである。
イまた,抗告人らは,本件において,財産分与請求権の相続を認めないことは,正義.公平に反することは明白であり,離婚調停中に亡Dが死亡したという事実によって,相手方が取得すべきいわれのない財産を取得することまで認めることは,信義誠実の原則ないしその根底にある法の正義の観念に著しく反する旨主張する。
しかし,法律上要件となる事実の発生の先後により,法律を適用した結果が異なる場合があることはまれではないのであり,本件の場合,亡Dが離婚し財産分与により財産を取得した後に死亡したと仮定した場合と,実際に生起したとおり亡Dが離婚調停で財産分与を請求したけれども,離婚が成立する前に亡Dが死亡した場合で,抗告人らが亡Dの相続財産として承継する財産に差異が生ずる可能性があることは否定できないが,現在の法制度を前提とすれば,それは人生の運不運と言うべきものであり,正義,公平に反するとか,信義誠実の原則ないしその担底にある法の正義の観念に著しく反するということはできない。
ウ抗告人らは,東京家庭裁判所では,本件のような場合財産分与請求権の相続という法律構成での調停申立てが受理されて調停が行われており,本件でも財産分与請求権の相続を前提とする調停申立てが受理され.5期日にわたり,財産分与の対象になる財産とその分割割合について話し合いが行われてきたところ,一律に財産分与の制度は死亡による婚姻解消の場合に認めるべきではないとすれば,東京家庭裁判所が本件を調停として受理したこと,それを前提に調停が進められたことが全て否定されることになり,調停実務の運用が否定されるとしづ不合理なことになる旨主張する。しかし,調停の対象となる事項に当事者の処分権があることを前提に,厳密な意味での実定法令のみではなく,身分関係の非合理性,継続性という特性を踏まえ,対象事項に応じた条理,良識をも基準とした合意に基づく家庭に関する事件の解決のための制度である家事調停においては,特に財産関係の紛争については,当事者の法的構成がそのまま是認できるか否かはさておき,調停申立てを受理し,合意に向けての事実の調査,当事者の意向の調整をはかり.調停を成立させることができるのであり,死亡による婚姻解消の場合に財産分与請求権は発生しないと解することと死亡によって解消した婚姻の死亡当事者からの財産分与請求権の相続を主張してされた調停申立が受理されて調停が行われることとは相反するものではない。抗告人らの主張は採用できない。
エ 抗告人らは,協議離婚後に当事者が財産分与の話し合いをし,調停.審判の申立てをすることは極めて少なく,多くは離婚の申立てと共に財産分与の申立てをし,調停,判決の中で離婚と同時に財産分与も解決されるのであり,このような実態からすると,離婚が成立していないことの一事をもって,財産分与請求権の相続を否定することは,財産分与請求権の相続を認めることで公平を図ろうとした趣旨が生かされないことになる旨主張する。なるほど,夫婦関係調整の調停において.離婚と共に財産分与が請求され,離婚成立前に財産分与についての事実の調査や当事者の意向の調整が行われること,離婚訴訟において付帯処分として財産分与が請求された場合に,離婚の判決が確定する前に財産分与の当否,内容について審理することは,通常の手続運営である。それは.調停においては,離婚の合意が成立することを仮定してあるいは離婚の合意をするために当事者が必要と考える付随事項の合意に向けて事実の調査あるいは調盤が行われるのであり,離婚の合意と同時に財産分与の合意が成立することを前提としているのであり,訴訟においては,離婚認容の主文と財産分与を命ずる主文が同時に確定することを前提としているのであって,離婚が成立する前に財産分与請求権が発生することを前提とするものではない。抗告人らの主張は,採用できない。
(3) よって,本件抗告はいずれも理由がないので,これを棄却することとして,主文のとおり決定する。(裁判長裁判官 西回美昭 裁判官 森高重久 高野伸)
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遺言無効確認等請求事件
上告人Y2 の代理人0000 及び上告人らの代理人0000 の各上告理由について
1 民事事件にっし1 て最高裁判所に上告をすることが許されるのは,民訴法312 条 l 項文は 2 項所定の場合に限られるところ,上告人Y 2 の代理人0000 0) 上告理由は,理由の不備をいうが,その実質は事実誤認文は単なる法令違反を主張するものであって,上記各項に規定する事由に該当しない。• 2 上告人らの代理人000 0の上告理由比 上告人Y 2 の関係では,これを記載した書面が民訴規則1 94 条所定の上告理白書提出期間後に提出されたことが明らかであり,上告人Y1 との関係では,民訴法312条 1 項又は 2 項に規定する事由を主張するものではないことが明らかである。第 2 職権による検討上告人らの代理人0000 の所論にかんがみ,職権をもって検討する。l 原審の適法に確定した事実関係の概要は,次のとおりである。
(1) Aは,平成17 年×月 ×日に死亡した。
(2) 上告人Y2 • 同Y1 及ひ’被上告人は,いずれも A の子である。
(3) 上告人Y2 は,第 l審判決別紙のとおりのA名義の造言替を偽造しf こ。
2 本件は,被上告人が,上告人らに対し,上告人Y 2 が民法89 1 条5 号所定の相続欠格者に当たるとして,同Yz がAの相続財産にづき相続人の地位を有: しないことの確認等を求める事案である(以下,上記確認請求を「本件請求Jという。)。, 3 第 l 審は,本件請求を棄却したため,被よ告人がこれを不服として原審は.*件請求を棄却した第 l 審判決を上告人Yzl こ対する関係でのみ取り消した上,同Y 2 に対する本件請求を認容控訴したと ころ同Yt に対する被上告人の控訴を,控訴の利益を欠くもの する一方,として却下した。以下の( 1 ) 及び(2) の各点におい是認する ことができない。その理由は,次のと おりである。 て,被上告人の上告人Yt に対する控訴の適否について本件請求に係る訴えは,共同相続人全員が当事者として関与し,その間で・合ーにのみ確定することを要する固有必要的共同訴訟と解(最高裁平成1 5 年(受)第1153 号同16 年 7 月 6したがって, ー 本件請求を棄却した第 1 審判決主文第 2 項は,被上告人の上告人Yt ‘ こ対す同Yt に対する関係では,本件請求を棄却した を却下した結果,このような原審 第 l 審判決を維持したものといわざるを得ない。固有必要的共同訴訟における合一確定の要請に反する の判断は,ものである。そして,原告甲の被告乙及ひ’丙に対する訴えが固有必要的共同 イ原審の上記判断は, しかしながら,(1) するのが相当である日第三小法廷判決 ・ 民集58 巻 5 号1 3 1 9 頁) 。る請求をも棄却するものであるというべきであって, 上記 3の訴訟経過に照らせば,被上告人の上告人Y t に対する控訴につき,控訴の利益が認められることは明らかである。本件請求に係る訴えは,固有必要的共同訴訟と解するのが相当であることは前示のとおりであるところ,原審は,本件請求を棄却 した第 l 審判決を上告人Y 2 に対する関係でのみ取り消した上,同Y 2 に対する本件請求を認容する一方,同Y1 に対する控訴甲の 甲の乙に対する請求を認容し.本件請求に関する判断についてア(2) ず ‘り.わ ・ 刀 ・カ も る φ の で ぶ AZ – -” ” 訴{9j J (家事)丙に対する請求を棄却するという趣旨の判決がされた場合には,甲が上訴又は附帯上訴をしていないときで・あっ守 ても,半 I J 裁上訴審は,合一確定に必要な限度で,上記判決のうち丙に関する部分を,丙に不利益に変更することができると解するのが相当である(最高裁昭和44 年(オ)第3 1 6 号岡崎年 7 月20 日第二小法廷判決 ・ 民集27 巻7 号863 頁参照)。そうすると,当裁判所は,原判決のうち上告人同Yt に関する部分も破棄することができるというべきである。以上によれば,上記各点に係る原審の判断には,判決に影響を及ぼ原判決は,全部破棄を免れなぃ。そしてJ上記事実関係によれば,上告人Yz は民法891 条 5 号所定の相続欠格者に当たるというべきところ, 同Yz 及び 記録によれば,Y 2 に関する部分のみならず,
5 すことが明らかな法令の違反があり,同Yt は,第 1 審及び原審を通じて共通の訴訟代理人を選任し,本件請求の当否にっさ,全く同ムの主張立証活動をしてきたことが明らかであって,本件請求については,同Y z のみならず,同Yt の関係においても,既に半分な審理が尽くされているということができるから,第 l 審判決のうち同Y 2 及び同Y t に対する関係で本件請求を棄却したこれらの請求を認容すべきである。なお,上告審は.1:記のような理由により原判決を破棄する旨の判決をする場合には,民訴法3 1 9 条並びに同法313 条及び297 条により上告審の訴訟手続に準用される同法1 40 条の規定の趣旨に照らし, 必ずしも口頭弁論を経ることを要しないものというべきである。よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。(裁判堀寵幸男 藤田苗靖 裁判官 田原睦夫 長裁判官 近藤 那須弘平崇晴)
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国籍確認請求事件
上告代理人〇〇〇〇ほかの上告受理申立て理由について
1 原審の適法に確定した事実関係等の概要は.次のとおりである。
(1)被上告人は,昭和20年8月14E.朝鮮慶尚南道に本籍を有する朝鮮人男性Bを父とし,当時埼玉県に本籍を有した内地人女性Cを母とする
非嫡出子として出生し, 日本人母の子として日本国籍を取得した。
(2) Bは,昭和25年9月8日, 被上告人を認知した(以下,この認知を「本件認知」という。)。
(3)ア昭和27年4月28日に日本国との平和条約(以下「平和条約」という。)が発効する前の我が国においては,内地,朝鮮,台湾等の異法地域に属する者の聞で身分行為があった場合,その準拠法は,共通法(大正7年法律第39号) 2条2項によって準用される法例(平成元年法律第27号による改正前のもの)の規定によって決定されることとなり,朝鮮人父が内地人母の子を認知した場合の認知の効力については,認知者である父の属する地域である朝鮮の法令が適用されることとされていたが,朝鮮民事令(明治45年制令第7号) 1条及び11条によれば,旧民法(昭和22年法律第222号による改正前のもの) 827条2項によることとされ,子は,朝鮮人父の認知により,その庶子となるものとされていた。
また,朝鮮民事令11条により,朝鮮人の親族相続に関しては,前記認知に関する規定のように別段の規定があるものを除き,朝鮮慣習が適用されることとされており,朝鮮伯習によれば,朝鮮人父の認知によりその庶子となった子は,戸主の同意を要することなく,当然に朝鮮人父の家に入ることとされていた。
したがって,朝鮮人父が内地人母の子を認知した場合には,子は,上記のとおり庶子となって朝鮮人父の家に入り,父の朝鮮戸籍に入籍することとされていた。イ共通法3条l項は.「ーノ地域ノ法令ニ依リ其ノ地域ノ家ニ入ル者ノ、他ノ地域ノ家ヲ去ル」とし,同条2項は.「ーノ地域ノ法令ニ依り家ヲ去ルコトヲ得サル者ノイ也ノ地域ノ家ニ入ルコトヲ得ス」としており,異法地域に属する者の聞で身分行為があった場合,ーの地域の法令上入家とし、他家族法上の効果が発生するときには,他の地域においても原則としてその効果を承認して去家の原因とすることを定めていた。その結果,戸籍に関しでも,ーの地域の戸籍から他の地域の戸籍への移動としみ効果を生ずることとされていた。したがって,後記の国籍法改正による影響を考慮しない限り,内地人母の子が,朝鮮人父の認知によりその庶子となり,朝鮮人父の家(朝鮮戸籍) に入る場合は,内地戸籍から除籍されることとなる。
ウ平和条約の発効により,我が国が,朝鮮の独立を承認して,朝鮮に対するすべての権利, 権原及び請求権を放棄したことに伴い,それまで日本の圏内法上で朝鮮人としての法的地位を有していた人,すなわち,朝鮮戸籍令(大正11年朝鮮総督府令第154号)の適用を受け朝鮮戸籍に登載されるべき地位にあった人は,元来日本人で朝鮮人との身分行為によって朝鮮戸籍に入籍すべき事由の生じた人を含め,朝鮮国籍を取得し, 日本国籍を喪失したものと解されている(最高裁昭和30年同第890号同36年4月5日大法廷判決・民集15巻4号657頁,最高裁昭和33年(あ)第2109号同37
年12月5日大法廷判決・刑集16巻12号1661頁,最高裁昭和38年同第1343号同40年6月4日第二小法廷判決・民集19巻4号898頁,最高裁平成6年(行ツ)第109号同10年3月12日第一小法廷判決・民集52巻2号342頁参照)。
エ旧国籍法(明治32年法律第66号) 23条本文は,「日本人タル子ヵ認知ニ因リテ外国ノ国籍ヲ取得シタルトキハ日本ノ国籍ヲ失フ」と規定していたが.昭和25年7月1日から国籍法(昭和25年法律第147号)が施行され,その附則により旧国籍法が廃止された。国籍法は, 日本国籍の喪失については,自己の志望により外国籍を取得した場合(昭和59年法律第45号による改正前の8条),外国で生まれたこ
とによってその国の国籍を取得した日本国民が戸籍法の定めるところにより日本の国籍を留保する意思を表示しなかった場合(昭和59年法律第45号による改正前の9条),外国の国籍を有する日本国民が届出により日本の国籍を離脱する場合(昭和27年法律第268号による改正前の10条)を挙げるのみで,認知等の身分行為により日本国籍を失う旨の規定は設けられなかった。
2 原審は,内地戸籍から除籍されて朝鮮戸籍に入籍することは,後の平和条約の発効に伴い日本国籍を失うという結果をもたらすものであるところ,昭和25年7月1日に国籍法が施行されて, 日本人たる子が外国人父の認知という一方的意思表示によっては日本国籍を失わないこととされた後においては,朝鮮人父に認知された内地人母の子は,共通法3条2項にいう「ーノ地域ノ法令ニ依リ家ヲ去ルコトヲ得サル者」に該当し,朝鮮戸籍に入籍するべき者には該当せず,平和条約の発効によっても日本国籍を喪失しないとして,被上告人の日本国籍を有することの確認を求める請求を認容すべきものとした。
3 当裁判所の判断は,次のとおりである。
共通法3条は,内地,朝鮮,台湾等の地域ごとに,適用法令が異なるという当時の制度を前提として,旧国籍法5条.6条. 18条.19条.23条等の内容に準じていわゆる地域籍の得喪を定める規定で・あり,地域籍は,当時の法制の下において,上記の地域ごとに国籍に準ずる役割を果たしていた。
前記のとおり,旧国籍法23条本文は「日本人タル子カ認知ニ因リテ外国ノ国籍ヲ取得シタルトキハ日本ノ国籍ヲ失フ」と規定していたところ,昭和25年7月1日施行の国籍法は, 自己の意思に基づかない身分行為によって日本国籍を失うとし寸法制は採用せず,旧国籍法23条の規定も廃止した。地域籍の得喪が,旧国籍法の前記規定に準じて定められていたことに照らすと,上記のような法制の変動の結果,上記の国籍法施行日以降においてされた親の一方的な意思表示による認知は, もはや地域籍の得喪の原因とはならなくなったものというほかはなく,朝鮮人父によって認知された子を内地戸籍から除籍する理由はなくなったものというべきである。昭和25年12月6日付け法務府民事局長通達「朝鮮又は台湾と内地聞における父子の認知について」は.r標記の件に関する従前の内地における戸籍の取扱については,旧国籍法第5条第3号,同法第23条,戸籍法第22条及び同法第23条の各規定の精神に則り,内地人男が朝鮮,台湾に本籍を有する女の出生した子を認知した場合は,子は内地に新戸籍を編製し,また,朝鮮,台湾に本籍を有する男が内地人女の出生した子を認知した場合は,子は内地の戸籍から除くこととされていた。右戸籍の取扱は,今後はこれを改め,前記各場合の認知によっては子の戸籍に変動を生じないこととした。」と定めているが, これは,前記の説示と同じ趣旨の下に,地域籍についても,朝鮮又は台湾と内地聞における父子の認知に関する従前の取扱いを新しく施行された国籍法の趣旨に準じた取扱いに改めたものである。そうすると,上記民事局長通達の取扱いを,同通達発出自の昭和25年12月6日以降の認知に限定する理由はなく,前記説示のように,国籍法施行の同年7月1日以降の認知についても,同様の取扱いを行うべきである。そうすることによって,法の下の平等の精神にも沿うことになるのである。以上のとおり,国籍法施行後に朝鮮人父から認知された子は.内地の戸籍から除籍される理由がないから,平和条約の発効によっても日本国籍を失うことはないと解するのが相当である。そうすると,被上告人は,平和条約の発効後も日本国籍を有するのであり,これと結論を同じくする原審の判断は,是認することができる。所論引用の判例(最高裁昭和36年同第1390号同38年4月5日第二小法廷判決・裁判集民事65号437頁)は,昭和27年2月12日に台湾人男と自己の意思に基づき婚姻した内地人女の平和条約発効後における日本国籍喪失に関するもので,本件とは事案を異にする。論旨は採用することができない。
4 よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。(裁判長裁判官 甲斐中辰夫 裁判官 横尾和子 泉徳治 島田仁郎 才ロ千晴)
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管理権喪失宣告申立事件
1 一件記録によれば,以下の事実が認められる。
(1) 申立人と事件本人は,昭和62年×月×日に婚姻し,申立人と事件本人の聞には,昭和63年×月×日,未成年者が出生した。
(2) 申立人と事件本人は.平成9年×月×臼,未成年者の親権者を父である事件本人と定めて協議離婚した。離婚当時,事件本人は無職であったが,事件本人の父Dが不動産などの財産を有していたため,未成年者に財産を承継させるため,申立人が希望して事件本人を未成年者の親権者としたものであった。
(3) 申立人は,離婚後は住所地に居住しながら,未成年者の食事の世話のために事件本人宅へ通っていたが,その後,次第に 3 人で暮らすよ
うになった。
(4) 平成13 年×月×日, Dが死亡した。
(5) 未成年者は,上記同日,所在00 市O町字00(以下,土地の所在はすべて同じなので省略する。) ,地番0000 番 2 ,地自宅地,地積OOOrrf の土地の持分 2 分の l についてDから追贈を受けた。 同土地・のその余の持分 2 分の l については事件本人:が相続年より取得し,の結果,同土地は,未成年者と事件本人が持分 2 分の l ず‘つ共有するその後,平成1 6 年×月×日,000ことになった。上記0000 番 2の土地は,さらに, 0000 番 2の土 0番2の土地と同番 7の土地に分話され,地から,平成17 年×月 X8 に同番 8の土地が,平成1 9 年×月×日に同番11 の各土地がそれぞれ分筆された。 同番1 0 ,その結果,未成年者が追贈を受けた0000 番 2 の土地は,平成19(}5 IJ 紙物件目録記載の土地。以 年×月×日の時点で,0000 番 2同番11 の 同番1 0 , 同番 8 , 下「本件不動産」という。)及び同番 7 ,5 径の土地となった。Dが死亡した平成13 年×月×日,①地番0000 番 事件本人は,
(6) 1 ,地自宅地,地積OOOrrf ,②地番口口口口番1.地目田.地積OOOrrf をDから相続により取得Lた。同番 9 上記① (0000 番 1 )の土地から,平成19 年×月×日,その土地が分筆され,他方,同年×月×日には0000 番 1 の土地に,同番 3 ,同番11 及び口口口口番 8 の各土地が合伍されている。また,上記②(口口口口番 1 )の土地から,平成16 年×月 x8, 同番 4ないし 6 の土地が分筆された。さらに,口口口口番6の土地から,平成17 年×月×日に同番 7 の土地が.平成19 年×月×日に同番8 の土地がそれぞれ分筆されている。また,事件本人は,平成13 年×月×日,地番ムムムA番 1 ,地包
(7) 田,地税OOOrrf の土地について,相続により持分25 分の14 を取得し,同土地のその余の持分25 分の11 については甲が相続により取得した。同土地ムムムム番 i か同番 5の土地が分怒され,さらに,平成1 6 年×月×日,ムムムム番 l から同番 6 ,同番 7 の土地が分筆された。
(8) 未成年者は,平成18 年×月,高校を卒業して大学に進学し,現在は00 で単身生活している。未成年者は,大学の学費については奨学ら同番 4 ,事件本人は,平成15 年×月×日共有物分割を原因として,の甲の持分25 分の日を取得した。また,同月×日,金を受給したが,生活費については申立人から月額 8 万円程度の仕送りを受けている。事件本人から仕送り等の援助は受けていない。ギャンブJ レ及ひ6飲酒代のために相当 事件本人は,離婚時,生活費,
(9) 額の負債を抱えていた。事件本人は,債務の返済のために,平成17 年×月×日, 0 00 0番 7 の土地の持分 2 分の l とムムムム番札口口口口番 4 ,同番 5 のその際,0000 番 7 の土地の未成年者の持分 各土地を乙に売却し,2 分の l についても,上記乙に売却した。ー 上記未成年者の持分を売却するに当たり,事件本人は未成年者に対し,借金があり,取り立てられているので土地を売却したい, 1300 万円で売れる予定であとi などと持ちかけた。未成年者は事件本人に対うち200 から250 万円は大学の授業料としてもらいたいと伝えて売 し,その後,事件本人から未成年者に入金されることは 却芦了承したが
(10) 事件本人は,その後,平成19年×月×日,0000番1の土地を丙に売却し,同年×月×日,ムムムム番7,口口口口番lの各土地を丁に売却した。
(11) 申立人は,未成年者が大学進学のために家を出た後も,事件本人方で事件本人と同居していた。平成19年×月下旬ころ, 申立人は,不動産業者らしき者が本件不動産を見に来ていたことから,事件本人が同土地を売却しようとしていることに気づいた。申立人が調査したところ,事件本人は本性不動産を代金約900万円で売却する予定であること,既に同年×月× 日ころに契約書を作成し,手附金100万円を受領していること,最終決済日は同年×月×日であることが判明した。そこで, 申立人は,未成年者の財産を守るため,同月×日,本件審判の申立てをするとともに,管理権者の職務執行停止を求めて審判前の保全処分を申し立てた(平成19年(家ロ)第000号)。当裁判所は,同日,事件本人の未成年者に対する職務の執行を停止し,申立人を職務代行者に選任する等の審判をした。ω その後,口口口口番6の土地には,平成19年×月×日,事件本人を債務者,戊を抵当権者として,①原因平成19年×月×日売買契約解除による手附金償還請求権問日設定,債権額100万円,②原因平成19年×月×白金銭消費貸借同日設定,債権額40万円の各抵当権設定登記がされている。同事件本人は,平成20年×月×日に行われた家庭裁判所調査官の面接調査の際,不動産の処分について以下のとおり説明していた。
ア3年ほど前に借金の返済のため,未成年者と共有名義の口口口口番5の土地(約00坪)を600万円で売却した。これについ.ては未成年者には知られていないと思うが,売却後しばらくして申立人に知られた。
イ平成19年×月には0000番lの土地を1180万円で売却した。,これについて未成年寄に伝え存ところ,未成年者は大学の費用にし・たいから100万円は欲しいと主張していたが,申立人を介して30万円を渡した。
ウ事件本人は,上記と閉じ平成19年×月ころ,自宅の敷地である0000番2とムムムム番1の土地を知人に約1000万円で売却し以後,事件本人は知人から自宅を5万円で賃借する旨合意した。
2 上記認定のとおり,事件本人は未成年者の親権者となったが,離婚当時から生活費,ギャyブル及び飲酒代のために相当額の負債を抱えていたこと,事件本人は,債務の返済のために,平成17年×月×日には未成年者所有の不動産を売却し,未成年者の申入れにもかかわらず,その売買代金を未成年者の希望どおり大学の授業料として使うことはなかったこと,平成19年×月下旬ころには今度は未成年者に無断で未成年者の不動産を売却しようとしたことが認められる。なお,上記1U3)記載のとおり,事件本人が説明する不動産の所有者及び処分の経過は前記の事実(不動産の登記全部事項証明書から認められる。)と一致しておらず, このことは,事件本人が未成年者の所有不動産を正確に把握していないことを示している占と同時に,事件本人は,未成年者の所有不動産を未成年者に無断で売却したこと,未成年者の希望にもかかめらず,事件本人の説明によっても売却代金のうち30万円しか未成年者の学費のために使用していないのであり,未成年者の所有不動産について事件本人の説明を前提としても,その管理が適切でないことは明らかである。以上の事実jこよれば,事件本人は,管理が失当であったことによって未成年者の財墜を危うくしたもの(民法835条)と認めら札る。よって,本件申立τには理由があるから,主文のとおり審判する。(家事審判官大薮和男)〔編注〕別紙は省略した。
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2012年2月26日 | コメント/トラックバック(0) |
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所有権転移登記手続等請求控訴事件
第1 当事者の求めた裁判
1 1審原告の控訴について
(1) 1審原告
ア原判決を次のとおり変更する。
イl審被告は, 1審原告に対し, 1148万6810円を支払え。(財産分与請求)
ウ1審被告は, 1審原告に対し, 2000万円を支払え。(慰謝料請求)
エ訴訟費用は,第1,2審とも1審被告の負担とする。
オ上記ウにつき,仮執行の宣言。
(2) 1審被告
ア本件控訴を棄却する。
イ控訴費用は1審原告の負担とする。
2 1審被告の控訴について
(1) 1審被告
ア原判決中, 1審被告敗訴部分を取り消す。
イ前項の部分につき,1審原告の請求を棄却する。
ウ訴訟費用は,第1,2審とも1審原告の負担とする。
(2) 1審原告
ア本件控訴を棄却する。
イ控訴費用は1審被告の負担とする。
第2 事案の概要
1 事案の要旨
(1) 本件は, 1審原告が, 1審被告に対し, 1審原告と1審被告とは,子をもうけるなど,将来婚姻することを前提にした内縁関係にあったが, 1審被告がこれを不当に破棄したなどと主張して,①内縁関係の解消に伴う財産分与として,1148万6810円の支払を求めるとともに,②債務不履行(婚約の不履行)又は不法行為による損害賠償請求権に基づき慰謝料2000万円の支払を求めた事案である。
(2) 訴訟の経過
ア原審裁判所は, 1審原告の請求のうち,①財産分与請求を250万円の限度で認容し,その余を棄却し,②債務不履行又は不法行為による損害賠償請求をいずれも棄却した。
イこれに対し,①1審原告は上記第1の1(1)のとおりの判決を求めて控訴し,②1審被告は上記第1の2(1)のとおりの判決を求めて控訴した。
(3) 当審における審判の対象
よって,当審における審判の対象は,上記(1)の1審原告の各請求の当否である。
2 争いのない事実
(1) 1審被告は,昭和48年1月24日, cと婚姻し,その聞に長女D(昭和49年12月12日生),二女E(昭和55年5月17日生)をもうけた。
(2) 1審原告は,大阪市の北新地でホステスとして働いていた昭和59年8月ころ,当時〇〇工業株式会社(以下〇〇工業」という。)の代表取締役であった1審被告と知り合った。その後, 1審原告は,昭和61年10月19日, 1審被告との間の子であるFを出産した。そして, 1審被告は,平成4年11月6日, Fを認知した。
(3) 1審被告とCとは,平成12年7月7日,協議離婚した。その後1審被告は,同年8月4日,Gと婚姻した。
なお, 1審被告の氏名は,従前は「H」であったが,改名と婚姻に伴う氏の変更により,現在は,本判決当事者側のとおりとなっている。
(4) 1審被告は,平成12年8月23日,1審原告に対し, 2000万円を振込入金した。1審原告は,このうち1000万円のみを受領して,同月30日,残額の1000万円を1審被告の銀行口座に振り込んで返還した。なお,1審被告は,同年6月以降. 1審原告に生活費等を支払っていない。
また, 1審被告は,平成13年3月31日,〇〇工業の代表取締役を辞任し,そのころ,〇〇工業から,退職慰労金として4288万4100円を受領した。
3 争点及びこれに関する当事者の主張
(1) 1審原告と1審被告とが内縁関係にあったか否か。
ア1審原告
(ア) 1審原告と1審被告とは,昭和61年から平成12年3月までの間,内縁関係にあった。
(イ) すなわち. 1審被告は. 1審原告に対し,昭和60年5月の1審原告の誕生日以来,熱心に求愛し,また,1審被告との交際に反対していた1審原告の母親のもとに日参して.cとは離婚するから交際を許可してほしいと求めるほどであった。そのため, 1審原告は,昭和60年末ころ,初めて1審被告と肉体関係を持った。Fを出産したことについても. 1審被告が子供を作ることを提案したものである。1審被告は,昭和61年1月にl審原告が妊娠すると, しばしば1審原告の当時の住居(門真市所在)に寄ってから,夜中すぎに自宅に帰るようになり.Fの出産後は,毎日そのような生活を送るようになった。1審原告は,昭和63年春ころ,西宮市裁判例(家事)xx町に転居したが,このころから,1審原告が自宅に帰るのは隔日となった。さらに,平成2年夏,1審原告,1審被告及びFがレスト
ランに食事に行った際,cと鉢合わせすることがあって以降は, 1審被告は自宅に帰らなくなり,平成12年3月に別居するまで, 1審原告と1審被告とは,完全に同居していた。その間, 1審原告は,近所の住民や1審被告の母からも,1審被告の妻として扱われ. 1審被告も,Fの学校行事等に出席したり,会祉の人聞に対して.1審原告を妻として紹介するなどしていたのであり,事実上の夫婦としての生活を送っていた。
イ 1審被告
(ア) 1審原告の主張は,否認ないし争う。
(イ) 1審被告は.cと離婚して1審原告と婚姻すると約束したことはなく,そのような意思もなかった。Fの出産についても,1審被告は. 1審原告の姉と共にこれに反対したが,1審原告が,頑としてこれを聞き入れなかったものである。また,1審被告が1審原告宅に立ち寄っていたのは週に1,2回程度で,宿泊したことは僅かしかない。平成2年夏ころ,1審原告が主張するとおりの経過で.Cに1審原告との関係を知られるに至ったが.1審被告が. 1審原告宅に主として居住するようになったのは,平成9年4月にCが夫婦関係調整調停の申立てをした後のことである。1審原告の主張は,上記のとおり1審被告と同居するようになってからのことを,平成2年ころからのことのように誇張しているにすぎない。
(2) 1審被告とCとの聞の婚姻関係が形骸化していたか否か。
ア 1審被告
1審原告と1審被告が内縁関係にあったとしても,他方で1審被告とCとの婚姻関係(法律婚)が存在するいわゆる重婚的内縁である。したがって,上記法律婚が形骸化していない限り1審原告の内縁の妻としての立場は法律的に保護されない。
そして,1審被告の生活の本拠は,飽くまでもCのいる自宅であったし,娘ともアメリカに海外旅行に行くなどしていた。また.1審被告は,平成9年4月から夫婦関係調整調停の申立てがされたことを契機にCと別居するに至り, 主に1審原告宅にいることが多くなったが. 1審被告に離婚意思はなく,現に同調停は取り下げられた。したがって, 1審被告とCとの婚姻関係(法律婚)が形骸化していたとはいえない。
イ1審原告
1審被告は. 1審原告との交際当初から,cの悪口を言っていたし,既に主張したとおり,平成2年夏ころに1審原告と1審被告との内縁関係が発覚し,それ以降,1審被告はcのもとに戻らなくなった。1審被告とCとの婚姻関係(法律婚)は,昭和61年当時,既に形骸化していたものである。
(3) 1審被告が.1審原告との内縁関係を破棄したことに関して. 1審原告に対する損害賠償責任を負うか否か。
アl審原告
(ア) 1審被告の債務不履行ないし不法行為
既に述べたとおり. 1審被告は,将来はl審原告と婚姻すると明言しており.1審原告もこれを信じて内縁関係を継続してきた。ところが, 1審被告は,平成9年ころから新興宗教に傾倒するようになって,家庭を願みなくなり,平成12年3月には「精神世界に入ってしまった。」などとして. 1審原告に同居の解消を申し出た。1審原告は.1審被告の「必ず籍を入れる。」との言葉を信じ,これに応じたが. 1審被告は,同年6月ころ,金銭の支払等による関係の清算を書面(甲6)で一方的に申し出た上. 1審原告に対する生活費の支払を停止した。
そして. 1審被告は,同年7月にCと離婚し,同年8月,新興宗教の教祖らしき人物であるGと婚姻してしまった。
以上のような1審被告の行為は.1審原告に対する婚約不履行であるとともに,悪意の遺棄に当たる。また,上記事実経過に照らせば,1審被告が.Gとの不貞行為を原因として1審原告との内縁関係を解消しようとしたことも明らかである。したがって.1審被告は.1審原告に対し,債務不履行責任(婚約不思行)文は不法行為責任を負う。
(イ) 慰謝料額
1審原告は,上記(ア)のような1審被告の行為により,多大な精神的苦痛を被った。これを慰謝するための慰謝料の額は,2000万円が相当である。
イ 1審被告
(ア)1審原告の主張は,否認ないし争う。
(イ)1審被告が.1審原告との婚姻を約束したことはない。
1審被告は,かねて宗教に興味を抱くとともに,漢方医学と西洋医学を結びつけた「〇〇○」に関心を持っていたことから,その提唱者であるI氏の信奉者と交遊を持つようになり,その縁で同氏の妹であったGと知り合ったにすぎず,Gは新興宗教の教祖などではない。また. 1審被告は,Gのカウンセラー的な能力に惹かれ,結婚を決意したものである。Gは1審被告より11歳も年上であって,両者の聞に不貞関係などあり得ない。
さらに, 1審被告は, 1審原告との関係を清算するに当たって,相当な給付の提供を申し出ていたのに, 自ら交渉の機会を放棄したものであり, 1審原告から慰謝料を請求される理由はない。
(4)財産分与請求の可否及びその額
ア 1審原告
1審被告は,〇〇工業の代表取締役を退任した際に,退職慰労金として4288万4100円を受領している。そして, 1審原告は, 1審被告が同会社に勤務した28年間のうち,昭和61年から1審被告がCわ工業の代表取締役を退任するまでの15年間は,事実上の夫婦として生活してきたのであり,主婦として多大なる貢献をしている。したがって, 1審原告は,1審被告に対し,上記退職金のうち28分の15の半分に相当する1148万6810円
を,財産分与として請求できる。なお,本件のように,内縁関係の解消に伴う法的紛争解決のため,慰謝料請求及び財産分与請求が同時にされた場合には,財産分与請求は家庭裁判所の専属管轄とすべきではなく,地方裁判所にも管轄があるというべきである。
イ 1審被告
上記(2)アで述べたとおり,1審原告は,1審被告に対し,財産分与を請求しうる立場にはない。
1審原告は, 1審被告が金銭的清算を申し出た際も,これを拒絶し, 1審被告が支払おうとした2000万円のうち, 1000万円だけを受領して,残金の受領を拒絶した。また,1審原告は,平成7年の阪神大震災以前において,約8000万円の貯蓄を有していたし,平成15年に現在の家屋の他人名義の持分を約2000万円で買い戻すなどしており,これらの財産ないし資金が1審被告からの給付によって形成されたことは明らかである。
以上のとおりであるから1審原告は, 1審被告に対して,財産分与を請求することはできない。
第3 当裁判所の判断
1 当裁判所は,①本件訴えのうち財産分与請求に関する部分は不適法であるから却下すべきであり,② 1審原告の慰謝料請求は, 400万円の支払を求める限度で理由があるから認容し,その余は理由がないから棄却すべきものと判断する。その理由は,以下のとおりである。
2 事実の認定
当事者聞に争いのない事実,証拠(甲6,8の1・2,12の1-5, 13ないし16の各1・2,23, 24, 25の1-5, 28, 29の1-25,31, 33, 34, 38の1-23, 50, 51の1-4, 54,乙1,6, 10, 15の1・2,16, 17, 20,証人C, 1審原告,1審被告〔し、ずれもl審。以下同じ。〕。ただし,以下の認定に反する部分を除く。)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。
(1) 1審原告とl審被告とは,昭和59年8月ころ知り合い,昭和60年末ころから肉体関係を持つようになった。その結果, 昭和61年10月19日,両者の子であるFが生まれた。1審被告は, 1審原告がFを産むことに積極的ではなく, 1審被告の周囲もこれに反対した。そして, Fが生まれた当初は, 1審被告が1審原告宅を訪れる回数は必ずしも多くはなかった。しかし,Fの成長に伴って,自分に良く似たFへの愛情が増し, 1審原告宅を訪問する回数も増え,正月やクリスマスを1審原告及びFと過ごしたりもした。
(2) ところで1審原告は, 1審被告と出会った当時,大阪府門真市の居宅で母親と同居していたが,その後,兵庫県西宮市xx町に転居した。
また, 1審原告及びJ(1審被告の母。)は,平成元年8月31日,本判決添付の別紙物件目録1記載の土地(以下「本件土地」という。)を,共有持分を各2分の1ずつ購入し,その旨の所有権移転登記手続をした。そして, Jは,平成2年11月1審原告,1審被告及びFに対し,本件土地の自己の持分のうち1万分の134ずつをそれぞれ贈与し,平成3年12月, 1審原告及びFに対し,本件土地の自己の持分のうち1万分の77ずつをそれぞれ贈与した(ただし,その旨の所有権移転登記手続はされなかった。)。
(3) Cは, 平成2年夏ころ,D及びEと共に,西宮市内のレストランで, 1審原告, 1審被告及びFと鉢合わせし, 1審原告と1審被告の関係やFの存在を知った。なお, Cは,それまでは, 1審被告が外泊しているのは全て仕事上の出張のためでーあると信じており,1審被告の女性関係を疑ったことはなかった。1審被告は,上記のとおりCと鉢合わせした直後から,Cと話合いの機会を持った。Cは, 1審被告が, 1審原告との関係を解消することを希望したが, 1審被告は,Fの存在があるので, 1審原告と完全に縁を切ることは難しいなどとしてこれに難色を示した。
また, Cとの話合いの中で, 1審被告が1審原告のもとからFだけを引き取ることも検討されたが,Dが反対したため,そのままになった。
その後,1審被告は,Cとの聞及び1審原告との聞にそれぞれ子がいることも考慮して,両者の居宅を行き来するようになった。
(4) 平成4年5月, 本件土地上に本判決添付の別紙物件目録2記載の建物(以下「本件建物」とする。)が新築され,同年7月,共有持分を10分の9, 1審原告を10分の1とする所有権保存登記手続がされた。そして,同年11月ころ, 1審原告は,Fとともに本件建物に引っ越し,また,1審被告は,同月6日,Fを認知した。
1審被告は,Fに対する愛情もあって,1審原告が本件建物に引っ越した際は1審原告とともに近隣への挨拶回りをし,また,自治会の会合に出席したり,Fの学校行事にも参加するなどした。さらに,1審被告は,平成5年ころからは,おおむね3分の1程度は本件建物に泊まるようになった。このようなこともあって,近隣住民の間では, 1審原告と1審被告とは,本件建物に居住する夫婦であると認識されていた。そして, 1審被告は, 1審原告に対し,毎月の生活費の支払(最大で月額50万円)もしていた。
(5) 一方, 1審被告とCとは, 1審原告と1審被告との関係が発覚した後も離婚を考えることはなく,ぎくしゃくするようになった関係の修復に務めた。1審被告は, 3分の2ほどはCの居宅に帰り,Cと,家庭生活や子どもの教育問題について話し合ったり,二人で韓国や金沢,長門などに旅行に行くなどし, また,子どもたちと高校時代のホームステイ先を訪問したり,二女のEと海外旅行に出かけるなどした。
ところが,平成7年1月の阪神大震災の際, 1審被告が1審原告のもとに宿泊していたことから, Cは, このような一大事にCの居住する自宅にいなかった1審被告への不満を改めて感じるようになり,その後, 1審被告が帰宅する回数が減ってきたこともあっ
て,次第に1審被告との離婚を考えるようになった。そして,Cは,平成9年4月, 1審被告を相手方として,夫婦関係調整調停の申立てをした。
(6) 1審被告は,上記のとおり夫婦関係調整調停の申立てがされた際にCと別居し,本件建物において1審原告と完全に同居するようになった。その後, cは,上記調停の申立てを取り下げたが, 1審被告は,本件建物からC宅へ帰ることなく, 1審原告との同居を続けた。
(7) 1審被告は,宗教や超自然的事象に対する関心を強く持っていたが,平成9年ころ,気功やオーラなどで病気を治すというKなる人物と知り合った際に,Gとも知り合った。1審被告は,上記のようなKの療法に傾倒し,Kから良い気をもらうためのシールなるものをもらったり,類似のものを自ら考案したりして,本件建物の中のいたるところに貼ったりした。そして, 1審被告は,平成11年11月ころ〇〇工業を辞めて僧侶になることを決心し.そのことを1審原告に伝えたところ,1審原告は立腹し, 1審被告に対して極めて感情的な態度をとった。その後,1審被告は,平成12年3月,本件建物を出て1審原告と別居したが,その後も, 1審原告は, 1審被告の居住するマンションを訪問するなどしていた。
(8) 1審被告は, 1審原告に対し,平成12年6月21日付けの書面で,①1審被告が,本件土地及び本件建物のJの持分を同人から買い取り,これを1審原告に譲渡すること,② 1審被告が,1審原告に対し,Fの養育費として2000万円を支払うこと,③ 1審被告が, 1審原告に対し, 1審原告が1審被告に貸し付けたと主張している1000万円を支払うことにより, 1審原告と1審被告とのこれまでの関係を清算することを申し入れた。また,1審被告は, 1審原告に対し,そのころ, 1審被告代理人を通じて,宗教上の理由で1審原告と別れたい旨を伝えた。しかし1審原告は,このような1審被告の申入れを了承しなかった。なお, 1審被告は, 1審原告に対し,同年6月以降,それまで続けてきた生活費の支払を,1審原告の了承なく停止した。
(9) ところで, 1審被告は, cと離婚して1審原告と婚姻したとしても,Fの代わりにDやEを傷つけるだけであると考え,cとの離婚にも, 1審原告との婚姻にも踏み切れずにいた。1審被告は, Gがこのような悩みについて相談に乗ってくれたことから, Gを信頼するようになった。そして, 1審原告は,平成12年7月7日, cと協議離婚し,同年8月48, 1審原告と1審被告との関係を清算することについて1審原告からの了承を得ないまま,Gと婚姻するに至った。
(10) 1審被告は, 1審原告に対し,平成12年8月23日,上記(8)の申入れに関する1審原告からの承諾を得ないまま,2000万円(上記(8)のとおり1審被告が1審原告に対して提示したFの養育費に相当する金額)を送金して支払った。これに対し, 1審原告は,上記のような1審被告の態度を非難するとともに,送金された金員からl審原告が1審被告に貸したと主張している金額を差し引いた残額は1審被告に返還すること, 1審被告との話合いをする気がないことを記載した君面を1審被告に送付した上,同月30日, 1審被告に対し, 1000万円を返還した。
3 争点(1)(1審原告と1審被告とが内縁関係にあったか否か)及び争点(2)(1審被告とCとの間の婚姻関係が形骸化していたか否か)について
(1) 検討の順序
既に述べたとおり, 1審被告は,昭和48年1月24日にCと婚姻し,平成12年7月7日に離婚するまでの間,cと法律上の婚姻関係にあった。すなわち,仮に1審原告と1審被告とが内縁関係にあったとしても. 1審被告がCと離婚するまでの聞は,いわゆる重婚的内縁の状態にあったものである。そして, このような重婚的内縁が法的に保護されるためには,法律上の婚姻関係が破綻し,形骸化していることが必要であると解される。そこで,まず争点(2)について判断する。
(2) 争点(2](1審被告とCとの聞の婚姻関係が形骸化していたか否か)について
ア 上記2の認定事実によれば,次のとおりいうことができる。すなわち,① 1審被告とCとの婚姻関係は,平成2年夏ころ.cが1審原告と1審被告との関係やFの存在を知ったことによってぎくしゃくするようになった。②しかし,1審被告.cとも,離婚を考えることはなく.3分の2程度はCの居宅で生活をし,家庭生活や子どもの教育について話し合ったり,一緒に旅行をするなどして,互いに関係の修復に務めた。③ところが,cは,平成7年の阪神大震災の際に1審被告が本件建物にいたことをきっかけとして,徐々に1審被告との離婚を考えるようになり,平成9年4月. 1審被告を相手方として夫婦関係調整調停の申立てをした。④1審被告は,向調停の申立てがされた際にC宅を出て,1審原告と完全に同居し,その後,平成12年7月7日に離婚するまで, 1審被告とCとが共に生活をすることはなかった。
イ このような事実経過に照らせば. 1審被告とCとの法律上の婚姻関係は上記調停の申立てがされた平成9年4月ころに破綻し,形骸化することになったものというべきである。
したがって. 1審原告と1審被告とが内縁関係にあったとしても,平成9年4月以前の両者の関係は,直接は法的保護の対象にならないというべきである。
ウ この点. 1審原告は,① 1審被告は. 1審原告との交際を開始した当初から,たびたびCの悪口を言っていた,②1審被告は,平成2年夏にCに1審原告との関係が知られた後,全くCの居
宅に帰らなくなった,③ 1審原告の居宅である本件建物には. 1審被告の所有物が多数保管されており,また.1審被告は,正月等の行事を1審原告とともに過ごしている,などとるる主張し
て. 1審被告とCと婚姻関係は,昭和61年ころには既に破綻していたなどと主張する。
しかし,① 1審被告が.cの悪口を言うことがあったとしても.1審被告とCとの婚姻関係が形骸化しているという事実に直接つながるものではないことが明らかである。②また,既に認
定したとおり,平成2年以降. 1審被告が全くCのもとに帰らなくなったとは認められない。③さらに. 1審被告の所有物が本件建物に保管されていたり. 1審被告が正月等を1審原告宅で過
ごしていたとしても,そのことから,直ちに1審被告とCとの婚姻関係が破綻し,形骸化していたとの結論を導くことができないことは明らかである。1審原告の主張は,到底採用することが
できない。
(3) 争点(1)(1審原告と1審被告とが内縁関係にあったか否か)について
ア上記2の認定事実によれば次のとおりいうことができる。すなわち,① 1審原告と1審被告との聞には,昭和61年10月にFが生まれ,両者の関係及びFの存在は,平成2年夏ころにCの知るところになったが,その後も.両者の関係は続いた。②1審原告及びFは,平成4年11月,本件土地上の本件建物(本件土地,本件建物ともに, 1審原告と1審被告の母であるJの共有名義であった。)に引っ越したが, 1審被告は,同月,Fを認知し,平成5年ころには,本件建物で毎月のうち3分の1ほどの日に泊まるようになり, 1審原告と1審被告とは,周囲からも夫婦であると認識されていた。③また. 1審被告は, 1審原告に対し,毎月,生活費の支払もしていた。④そして, 1審被告は,平成9年4月にCから夫婦関係調整調停の申立てがされると,本件建物において完全に1審原告と同居するようになり,それ以後, 1審被告とCとが共同生活をすることはなかった。⑤1審被告は,平成12年3月,本件建物を出て1審原告と別居したが,その後も, 1審原告は. 1審被告のもとを訪問するなどした。⑥1審被告も, 1審原告に対する生活費の支払を統けたが, 同年6月,1審原告に対し,金銭によって両者の関係を清算することを申し入れるともに,生活費の支払を打ち切った。⑦そして,1審被告は,同年7月,cと離婚し.同年8月,Gと婚姻した。イこのような事実経過や, 1審被告の母であるJと1審原告及びFとの聞には音信があったこと(甲21の1・2,48), 1審原告は,平成11年には, 1審被告と共に, 1審被告の先祖の墓所を訪れていること(甲40の1の1-3, 1審原告)などにも照らせば, 1審被告とCとの法律上の婚姻関係が破綻・形骸化するに至った平成9年4月から, 1若手原告が1審被告に対して関係の清算を申し出た平成12年6月までの1審原告と1審被告との関係が,夫婦としての実質を備えた内縁関係に当たることは明らかというべきである。なお,1審被告の主暖は,1審原告と内縁関係にあったことを一切否認するものと解されるが,採用できない。
4 争点(3)(1審被告が, 1審原告との内縁関係を破棄したことに関して, 1審原告に対する損害賠償責任を負うか否か)について
(1)債務不履行責任(婚約不履行)について
ア1審原告は, 1審被告がCと離婚して1審原告と婚姻する旨約束したなどと主張し,証拠(甲33. 1審原告) には,これに沿う部分がある。しかし,これまで認定したところからすれば,上記証拠には,その重要部分において採用できない部分があると評価せざるを得ないことや上記証拠に反する証拠(乙16,17, 1審被告)に照らせば,上記1審原告の主張に沿う証拠のみでは.1審被告がCと離婚して1審原告と婚姻する旨約束したとの事実を認めるに足りず,その他,本件において,この事実を認めるに足りる的確な証拠はない。1審原告の主張は,採用することができない。
イしたがって,その余の点について判断するまでもなく, 1審原告の1審被告に対する債務不履行に基づく損害賠償請求は.理由がない。
(2) 不法行為責任について
ア婚約不履行について
上記(1)で述べたところからすれば,1審被告は,婚約不履行を理由とする不法行為責任を負わない。
イ不貞行為について
1審原告は, 1審原告と1審被告とが内縁関係にある聞に1審被告とGとが不貞行為をしたなどと主張し,証拠(甲33,34, 1審原告)には.これに沿う部分がある。また,1審原告は,上記主張
を裏付ける証拠として,甲3の1 (圏内旅行申込書)を提出する。しかし,甲3の1は,それ自体が1審被告とGとが不貞行為をしたことを示すものではないし,証拠(甲33,34, 1審原告)についても,いずれも伝聞に基づく1審原告の推測を述べる以上のものではない。このような事情や, 1審原告の主張に反する証拠(乙,10, 16, 17, 1審被告)に照らせば,証拠(甲3の1,33, 34, 1審原告)によっては,1審原告と1審被告とが内縁関係にある聞に1審被告とGとが不貞行為をしたことを認めるに足りない。また,その他,本件において,この事実を認めるに足りる的確な証拠はない。1審原告の主張は,採用することができない。
ウ悪意の遺棄について
(ア)上記2の認定事実によれば, 1審原告と1審被告との内縁関係が解消されるに至った経緯は以下のとおりである。すなわち,① l審原告とl審被告とは,平成9年4月ころ以降,完全に同居するようになったが, 1審被告は,同年ころ,Kなる人物と知り合い,同人の行う療法に傾倒していった。②1審被告は,平成11年11月ころ,僧侶になるなどと言い出し,平成12年3月, 1審原告と別居し,同年6月,宗教上の理由を挙げて, 1審原告と1審被告との関係を金銭で清算することを申し出るとともに,それまで続けてきた1審原告に対する生活費の支払を一方的に停止した。③そして, 1審被告は,同年7月,Cと離婚し,同年8月, 1審原告から両者の関係を清算することについての了承を得ないまま, Gと婚姻し,その後, 1審原告に対して2000万円を振り込んだが, 1審原告は, このうち1000万円を1審被告に返還した。
(イ) 上記同のような事実経過や,既に認定したとおりの従前の1審原告とl審被告との関係及びFの存在などに照らせば, 1審被告の行為は,正当な理由に基づかない内縁関係の不当破棄であり,悪意の遺棄(正当な理由がないのに同居,協力,扶助の義務を履行せず,実質的な夫婦生活を継続する意思の認められない場合)に当たると評価するほかない。すなわち, 1審被告が1審原告との内縁関係を解消しようとした動機が,僧になりたいとし、う宗教的な希望や,相談に乗ってもらったGに心引かれるようになったという点にあったとしても,これをもって, 1審原告の意向を考慮せずに,一方的に内縁関係を破棄することを許容すべき正当な理由と評価できないことは明らかである。したがって, 1審被告は, 1審原告に対し,不法行為責任を負うというべきである。
(ウ) この点, 1審被告は, 1審原告との関係を清算するに当たって,相当な給付の提供を申し出たのに, 1審原告が自ら交渉の機会を放棄したから1審被告に慰謝料の支払義務はないなどと主張する。しかし,そもそも,上記のような正当な理由によるとは評価できない内縁関係解消の申入れについて,1審原告に1審被告と交渉すべき義務がないことは明らかである。また,既に認定したような本件の事実関係に照らせば, 1審原告において, 1審被告がゆくゆくは自己と婚姻するものと考えていたとしても無理からぬものがあり, 1審原告が, 1審被告から一方的に金銭の支払を条件とする内縁関係の解消を求められたのに対し,交渉を拒絶したからといって, 1審被告による内縁関係の一方的破棄が正当化されるものでもない。1審被告の主張は,到底採用できない。
エ損害(慰謝料)額について
①本件において, 1審原告と1審被告とが直接法的保護の対象となるべき内縁関係にあった期聞は3年余と必ずしも長いものではない。②しかし,両者の聞には未成年の子がし、ることや,本件の事実
関係に照らせば, 1審原告において,1審被告がゆくゆくは自己と婚姻するものと考えていたとしても無理からぬ面があったというべきであることからすれば,本件における1審原告の地位は.十分に
法的保護に値するものというべきである。③そして,内縁関係解消の際の1審被告の態度は,多額の財産的給付の申し出はしているものの,現在に至るまで,内縁関係解消に伴う財産関係の清算が完了しているとは必ずしも評価し難し、(1審原告側が金銭の支払で内縁関係の清算をすることを拒否したことをもって1審原告を非難することはできないことは既に述べたとおりである。そして,1審被告としても, 1審原告がそのような態度をとったからといって,それ以上の働きかけをすることなく,放置してよいものではない。)。
これらの事情や,本件における1審被告の応訴態度,その他,本件において認められる一切の事情を総合考慮すれば. 1審被告が1審原告に対して支払うべき慰謝料の額は. 400万円をもって相当と認める。
(3) まとめ
以上のとおりであるから, 1審原告の債務不履行に基づく損害賠償請求は理由がない。一方, 1審原告の不法行為に基づく損害賠償請求は.400万円の限度で理由があり,その余は理由がない。
5 争点(4)(財産分与請求の可否及びその額)について
(1) 家庭裁判所が専属的に管轄すべき審判事項について地方裁判所に訴えが提起されたときは.地方裁判所は, これを家庭裁判所に移送することはできず,不適法な訴えとして却下するほかない(最高裁判所第二小法廷昭和38年11月15日判決・民集17巻11号1364頁,最高裁判所第一小法廷昭和44年2月20日・民集23巻2号399頁参照)。
そして,離婚に伴う財産分与は,家庭裁判所が専属的に管轄すべき審判事項とされており(民法768条2項,771条,家事審判法9条1項乙類5号).地方裁判所が例外的にこれについて審理・判断を
することが許されるのは,離婚の訴えの附帯的請求として財産分与の申立てがされた場合のみである(人事訴訟手続法「以下旧法」という。)15条1項)。
したがって,地方裁判所は,離婚の訴えの附帝的請求ではない財産分与請求にかかる訴えが提起されたときは,これを不適法なものとして却下するほかなし、。また,地方裁判所に係属する離婚の訴えにおいて財産分与の申立てがされた場合で・あっても,その後に離婚の訴えの係属が失われたときは,残存する附帯的申立てて、ある財産分与の申立ては,不適法として却下を免れない(最高裁判所第一小法廷昭和58年2月3日・民集37巻1号45頁)。
なお,旧法は,離婚の訴えを家庭裁判所の専属管轄とする人事訴訟法(同法2条. 4条)の施行に伴って廃止された(同法附則2条)。したがって.今後,地方裁判所が審理に関与するのは,同法
施行の際現に地方裁判所に係属していた離婚の訴え(同法附則4条1項により旧法が適用される。)の附帯的請求である財産分与の申立てに限られることになった。
(2) 内縁の夫婦の生前離別の場合に財産分与を認めるべきであるとしても,その実質的根拠は内縁が準婚的法律関係であるという点にあり,その実体法上の根拠は離婚に伴う財産分与に関する民法の規定の類推適用で、あると解される。そうすると,内縁の夫婦の生前離別に伴う財産分与は,離婚に伴う財産分与とその趣旨・目的や法的性質を同じくするものと考えるほかなし、から,その管轄について,上記(1)と別異の解釈をすべき理由はなし、。そして,内縁関係の解消については,離婚の訴えに対応する訴えの手続がないから,内縁の夫婦の生前離別に伴う財産分与について旧法15条1項を類推適用する余地はなく,その他,これについて地方裁判所に管轄を与えるべき特別の規定は何ら存在しなし、。したがって,内縁の夫婦の生前離別
に伴う財産分与請求にかかる訴えを提起された地方裁判所としては,これを不適法なものとして却下するほかないというべきであ
る。以上に反する1審原告の主張は,独自の見解を述べるにすぎないことが明らかであって,到底採用することができない。
(3) 以上のとおりであるから,その余の点について判断するまでもなく,本件訴えのうち財産分与請求に関する部分は不適法であるから却下すべきである。
6 結論
以上の次第であって, 1審原告の訴えないし請求についての判断は,上記1のとおりとなる。よって,これと異なる原判決は一部不当であるから,1審原告及びl審被告の各控訴に基づき原判決を変更することとし,主文のとおり判決する。(裁判長裁判官 大出晃之 裁判官 赤西芳文 田中一彦)
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2012年2月26日 | コメント/トラックバック(0) |
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親権者の職務執行停止・職務代 行者選任(審判前の保全処分)申立事件
l 申立ての趣旨及び理由は,別紙「審判前の保全処分申立書Jのとおりである。
2 当裁判所の判断
(1)一件記録及び審問の結果によれば,次の事実が一応認められる。
ア未成年者は,事件本人ら(平成18年×月×日婚姻)の聞に,平成19年×月×日長男として出生した男児である。
イ未成年者は,平成20年×月×日,00病院において00と診断され,現在,ムム病院において入院中である。
ウ△△病院における診断によれば,未成年者の現在の病状は,緊急に右眼摘出手術,左眼局所療法及び全身化学療法を行えば,約90パーセントの確率で治癒が見込まれるものであるが,右眼の視力が失われるのに加え,温存される左眼の視力もほぼ失われる。これに対し,緊急に上記手術・治療をしなければ,臨筋の眼球外浸潤がおこり,数か月以内には死亡することになる。
エ未成年者の共同親権者である事件本人らは,平成20年×月×日以降,再三にわたり医師等から未成年者の病状と手術・治療の必要62・8-84裁判例( 家事)性の説明を受けたが, 「治療はしたくなし、。自分は育てられない。」などと述べ,障害を持つ子供を育てていくことに不安があるとの理ー白から,同意しない。
オ00病院は,未成年者につき,平成20年×月×日に右眼摘出手術を予定している。
(2) 以上の疎明事実からすると,事件本人らは,未成年者の親権者として,適切に未成年者の監護養育に当たるべき権利を有し,義務を負っているところ,未成年者は緊急に手術・治療を施さなければ死亡を免れない状況にあるのに,事件本人らは再三の説得にもかかわらず同意をせずJ このまま事態を放置することは未成年者の生命を危うくするものであるし,事件本人らの対応に合理的理由を認めることはできない。このような事件本人らの対応は,親権を濫用し,未成年者の福祉を著しく損なっていると解される可能性が高いものであって,事件本人らから同意を得る時間的余裕もない。したがって,事件本人らの親権者としての職務の執行を停止させ,かっ,未成年者の監護養育を本案審判確定まで図る必要があるから,その停止期間中は,弁護士である0000をその職務執行代行者に選任するのが相当である。
(3) よって,本件申立てを認容することとし,主文のとおり審判する。(裁判長家事審判官堀内照美家事審判官田中正哉薄井真由子)
(別紙)
審判前の保全処分申立書
平成20年×月×日
津家庭裁判所御中当事者の表示.
【 申立人】所長 。 0000 00 児童相談所A B C
【 未成年者】氏. 平成19 年×月×日生
【 職務代行候補者】0000 名 氏本案審判事件の表示当事者
第 1相手方らは、未成年者の実父・実母であり、未成年者の共同親権者である。
第 2名氏名名親権喪失宣告申立事件 .求める保全処分本案審判申立事件の審判が効力を生ずるまでの問、未成年者の親権者につき、職務の執行を停止し、職務代行者を選任する審判を求める。保全処分を求める事由申立人は、 00 児童相談所所長である。未成年者は、平成19 年×月×日生まれの生後三ヶ月の男児であり、現在ムム病院に入院中である。申立に至る経緯相手方らは、平成19 年×月×目、ムム病院において、未成年者を受診させたところ、 00 と診断された。さらに、平成20 年×月×目、ムム病院から紹介をされた00 病院名氏氏津家庭裁判所2 裁判にて未成年者を受診. させたが、同様に00 と診断され、両院よ り手術{9 I J (家事)をすすめられたが、これを拒否した。
2相手方h は、医師より説得をうけて、平成20 年×月 ×旬、 検査及び治療方針決定の目的で未成年者をムム病院小児科に入院させた。同院において平成20 年×月× 日MR I 検査をしたところ、未成年者の右眼球内にOOmm 、左眼球内にOOmm の腫鎮が認められたが、視神経や大脳など眼球外への浸簡は認められなかった。そこで、同院は、右眼球腫筋は進行期、右と比較して左眼は軽症と診断し、治療法として右眼は眼球摘出、左眼は保存的治療(全身化学療法と局所治療)(以下 「 本件治療方法」という。)との方針をたて、相手方らに本件治療方法実施の同意を求めたが、相手方らはこれを拒否した。
3申立人は、平成20 年×月×目、ムム病院より本件にっしての相談を受け、直ちに同院の医師と面接して事情を聴取したと ころ、未成年者の00 に対する治療法としては、本件治療方法が標準治療である こと、本件治療方法の成功可能性は90% 以上である こと、本件治療方法が成功すれば、両眼の視力を失うもの. の、天命を全う するまで生存で2ヶ月以内に死亡する可能性が1 00% に近いとの説明を受けた。そこで、申立人は本件治療方法実施の拒否は医療ネグレクトと して虐待に該当するとの結論に達し、翌XX臼及びxx日、ムム病院において相手方(母)から事情を聴取したが、同人は障害をもっ未成年者を育ててい く自信がないため本件治療方法に同意し ないと主張しと面会し、・ 本件治療方法へのた。申立人は翌xx日も、相手方(母)同意を求めたが、同人は本件治療方法を拒否する姿勢を崩さなかっきる可能性が極めて高いこと、仮に本件治療を行わなければ、た。第3 親権の濫用相手方らが、本件治療方法を拒否する心情も理解できなくはないところであり、また、児童の権利に関する条約第 5 条で父母の権利 ・ 義務の尊重が規定されていることからして、相手方らの意見にも耳を傾ける必要はあろう。しかしながら、同条約第 6 条では児童が生命に対する固有の権利を有すること及び締結国に対して児童の生存を最大限の確保する義務が規定されていること、また、第 5 条に定める父母の児童に対する指導 ・ 指示の権利も「児童の発達しつつある能力に適合する方法で」との限定がついていることからして、児童の生存をはかるのが児童にとっての最善の利益であり、共同親権者たる相手方らは、かかる最善の利益を確保するために親権を行使する義務があるのである。しかるに、本件治療方法を拒否する相手方らの態度は、生命という未成年者の最善の利益を害することが明白であり、民法834 条に定める親権の濫用に該当する。第4 保全の必要性現荏のところ未成年者に視神経や大脳など眼球外への浸潤は認められないが、 00 の腫誤増殖速度は速く、治療開始の遅れは腫協が眼外へ進出する機会を増加させ、生存率を極めて低下させるため、平成20年×月中の本件治療開始が不可欠であり、△△病院においては、平成20 年×月× 日の本件治療実施につき、準備はととのっている。よって、保全の必要性は高度に認められる。第 5 まとめ以上により、申立趣旨記載の保全処分を求め本申立に及んだ。以上
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住民票不記載処分取消等請求事件
第l 事案の慨要
1 本件は,上告人X3(以下「上告人父Jという。)が世田谷区長(以下「区長」という。)に対し,上告人父と上告人X2(以下「上告人母」といい,上告人父と併せて「上告人父母」という。)との間の子である上告人Xl (以下「上告人子Jという。)につき住民票の記載を求める申出をしたところ,これをしない旨の応答を受け,その後も上告人母と共に同様の申入れをしたものの住民票の記載がされなかったことから.上告人らにおいて,被上告人に対し,上記応答及び住民票の記載をしない不作為が違法であると主張して,国家賠償法l条1項に基づく損害賠償等を求めるとともに.上記応答が行政処分であることを前提にその取消しを求める事案である。2 原審の適法に確定した事実関係等の概要は,次のとおりである。
(1) 上告人父母は,平成11年以降,東京都世田谷区内で事実上の夫婦として共同生活をしている。上告人父母の聞には,同17年3月企日,上告人子が出生し,上告人父は.これに先立つ同年2月24日,我孫子市長に上告人子に係る胎児認知届を提出して受理された。
(2) 上告人父は,区長に対し,同年4月11日,自らを届出人として上告人子に係る出生届(以下「本件出生届Jとし、ぅ。)を提出したが,非嫡出子という用語を差別用語と考えていたことから,届書中,嫡出子又は嫡出でない子(以下「非嫡出子」という。)の別を記載する側(戸籍法49条2項1号参照)を空欄のままとした。このため,本件出生届には,上記の欄が空欄になっており,かつ,同法52条2項所定の届出義務者である上告人母ではなく,上告人父が届出人として記載されているという不備が認められた。区長は,上告人父に対し.これらの不備の補正を求めたが.拒否され.前者の不備については,届奮の記載が上記のままでも,区長において屈笹のその余の記載事項から出生証明書の本人と届Eの本人との同一性が確認されれば,その認定事項(例えば.父母との統柄を「嫡出でない子・女Jと認める等)を記載した付せんを届告に貼付するという内部処理(以下「付せん処理」という。)をして受理する方法を提案したものの,この提案も拒絶された。そこで,区長は,同日,本件出生屈を受理しないこととした(以下,これを「本件不受理処分Jという。)。
(3) 上告人父は,区長に対し,同年5月19日,上告人子につき住民票の記載を求める申出をしたが,区長は.本件出生届が受理されていないことを理由に,上記記載をしない旨の応答(以下「本件応答Jという。)をした。
(4) 上告人父母は,その後も区長に対し上告人子に係る住民票の記載を求める申入れをしたが,区長はこれに応じていない。
(5) 上告人父は,本件不受理処分を不服として,区長に本件出生届の受理を命ずることを求める家事審判の申立てをしたが,東京家庭裁判所は,同年12月2日, 本件不受理処分に違法はないとして,同申立てを却下する決定をした。上告人父はこれを不服として抗告したが,東京高等裁判所は同18年1月30日,これを棄却する決定をし,これに対する特別抗告も同年9月8日の最高裁判所の決定により棄却された。上告人母は,その後も,現在に至るまで,上告人子に係る適法な出生届を提出していない。
(6) 上告人父母は,現在,世田谷区内で上告人子を監護養育している。なお,本件の第1審判決は,同19年5月31日,区長に上告人子に係る住民票の作成を命ずる判決を言い渡したが,被上告人は,原審の口頭弁論終結時(同年9月12日)までの間,本件出生届の提出後に上告人子の居住実態や通名(上告人子は出生届が受理されていないので戸籍上の名はない。)に変更を生じたなどの具体的な主張をしていない。
(7) なお,行政実務上,戸籍の記載と住民票の記載との連動を前提とした事務処理システムが全国的に構築されており,被上告人においても同様のシステムが導入されている。また.住民票は,行政実務上,選挙人名簿への登録のほか,就学,転出証明,国民健康保険,年金,自動車運転免許証の取得,都営住宅への入居等に係る事務処理の基礎とされているが,これらのうち,選挙人名簿への登録に関しては,上告人子が事実審の口頭弁論終結時において2歳であり,住民票の記載がされないことに伴う不利益が現実化しているものではない。その余の事務に関しても,被上告人は,住民基本台帳に記録されていない住民に対し,手続的に煩さな点はあり得るとしても,多くの場合,それに記録されている住民に対するのと同様の行政上のサーピスを提供している。
第2 職権による検討
原審は,本件応答が抗告訴訟の対象となる行政処分に当たり,その取消しを求める上告人子の訴えが適法な取消訴訟であることを前提として,同訴えに係る請求を棄却した。しかし,上告人子につき住民票の記載をすることを求める上告人父の申出は,住民基本台帳法(以下「法」という。)の規定による届出があった場合に市町村(特別区を含む。以下同じ。)の長にこれに対する応答義務が課されている(住民基本台帳法施行令(以下「令Jという。)11条参照)のとは異なり,申出に対する応答義務が課されておらず,住民票の記載に係る職権の発動を促す法14条2項所定の申出とみるほかないものである。したがって,本件応答は,法令に根拠のない事実上の応答にすぎず,これにより上告人子又は上告人父の権利義務ないし法律上の地位に直接影響を及ぼすものではないから,抗告訴訟の対象となる行政処分に該当しないと解される(最高裁昭和43年(行ツ)第3号同47年11月16日第一小法廷判決・民集26巻9号1573頁,最高裁平成2年(行ツ)第202号同3年3月19日第三小法廷判決・裁判集民事162号211頁参照)。そうすると,本件応答の取消しを求める上告人子の訴えは不適法として却下すべきである。
第3 上告人らの上告受理申立て理由(ただし,排除されたものを除く。)について
1 原審は,前記事実関係等の下において,次のとおり判示して,上告人らの損害賠償請求を棄却すべきものと判断した。法8条及び令12条2項によれば,市町村長は,戸籍に関する届魯を受理したとき等,同項1号所定の場合に,職権で出生した子に係る住民票の記載をすべきものとされており,法はそれ以外の場合に.出生した子に係る住民票の職権記載をすることを予定していないというべきである。仮に市町村長が無戸籍の子につき職権で住民票の記載をすべき場合があるとしても,それは極めて例外的な場合に限られ,せいぜい,出生届をすることによって届出義務者や子が重大な不利益を被る場合で,かつ,戸籍法によって義務付けられた出生届の提出を届出義務者に求めることを社会通念上期待することができないような事情がある場合に限定されると解すべきである。本件において上記のような事情があると認めることはできないから,本件応答及び区長がその後も上告人子につき住民票の記載をしなかったことを違法ということはできない。
2(1 )法 は,市町村において,住民の居住関係の公証.選挙人名簿の登録その他の住民に関する事務の処理の基礎とするとともに住民の住所に関する届出等の簡素化を図り,併せて住民に関する記録の適正な管理を図り,もって住民の利便を増進するとともに,国及び地方公共団体の行政の合理化に資するため,住民基本台帳の制度を定めている(法1条)。住民基本台帳は.個人を単位とする住民票を世帯ごとに編成して作成する台帳であり(法6条).住民票には,住民の氏名,出生の年月日,男女の別,世帯主との続柄,戸籍の表示等を記載するところ,本籍のない者及び本籍の明らかでない者については,その旨を記載すべきものとされている(法7条)。また,市町村長は,新たに市町村の区域内に住所を定めた者その他新たにその市町村の住民基本台帳に記録されるべき者があるときは,その者につき住民票の作成又は記載をしなければならず(法8条.令7条).住民基本台帳に脱漏等があったときは,当該事実を確認して,職権で住民票の記載等をしなければならないものとされている(法8条,令12条3項)。そして,市町村長は,常に,住民基本台帳を整備し,住民に関する正確な記録が行われるように努めなければならないものとされている(法3条)。これらの規定によれば,法及び令は,当該市町村に住所を有する者すべてについて住民票の記載をして,住民に関する事務処理の基礎とすることを制度の基本としていることが明らかである。このことは,出生届が受理ざれず,戸籍の記載がされていない子についても変わりはない。
(2) ところで,法及び令は,子が出生した場合,世帯主等に,転入届, 世帯変更届等の届出義務を課することなく(法22条1項括弧書参照).出生届の受理等又はこれに関する関係市町村長からの通知に基づき,職権で住民票の記載をすべきものとしている(令12条2項1号,法9条2項)。そして,当該子につき出生届が提出されなかった場合におし、て,当該子に係る住民票の記載をするための手続として,出生届の届出義務者に対し届出の催告等をし,出生届の提出を待って,戸籍の記載に基づき,職権で住民票の記載をする方法(法14条1項参照。以下「届出の催告等による方法」という。)と,職権調査を行って当該子の身分関係等を把握し.その結果に基づき,職権で住民票の記載をする方法(法34条参照。以下「職権調査による方法」という。)の2種類の手続を設けている。両手続の優先関係ないし補充関係に関しては,法及び令に明文の規定は置かれていない。しかし,戸籍法52条1項ないし3項所定の者は,出生の届出をすることを義務付けられており(同法的条参照),その違反に対しては,届出の催告(同法44条)及び過料の制裁(同法135条)が予定されている。そして,法が出生した子に係る転入届等の届出義務を課さなかったのは,その義務を課すると,戸籍法の定める上記の届出義務に加えて二重の届出義務を課することとなるほか,出生届の提出を待って,戸籍の記載に基づき住民票の記載をする方が,戸籍の記載と住民票の記載との不一致を防止し,住民票の記載の正確性を確保するために適切であると判断されたことによるものと解される。また,法は,このような制度趣旨に基づき,住民票の記載を戸籍の記載と合致させるため,・関係市町村長聞の通知の制度(法9条2項)を設けている。なお,住民は,常に,住民としての地位の変更に関する届出を正確に行うように努めなければならず,住民基本台帳の正確性を阻害するような行為をしてはならないものとされている(法3条3項)。このような法の趣旨等にかんがみれば,法は,上記の両手続のうち,届出の催告等による方法を原則的な方法として定めているものと解するのが相当である。したがって,市町村長は,父又は母の戸籍に入る子について出生届が提出されない結果.住民票の記載もされていない場合,常に職権調査による方法で住民票の記載をしなければならないものではなく,原則として, 出生届の届出義務者にその提出を促し,戸籍の記載に基づき住民票の記載をすれば足りるものというべきである。
(3) もっとも,上記(1)のとおり,住民基本台帳は,出生した子が当該市町村に住所を有する限り,戸籍の記載がされたか否かにかかわらず,最終的には,それらの子につきすべて住民票の記識をすることを制度の基本としており,その記載を基礎として,住民に関する事務処理が行われるのであるから,その記載がされなければ,当該子が行政上のサービスを受ける上で少なからぬ支障が生ずることが予想される。したがって,戸籍に記載のない子については,届出の催告等による方法により住民票の記載をするのが原則的な手続であるとはいえ,その方法によって住民票の記載をすることが社会通念に照らし著しく困難であり又は相当性を欠くなどの特段の事情がある場合にまで,出生届が提出されていないことを理由に住民票の記載をしないことが許されるものではなく,このような場合には,市町村長に職権調査による方法で当該子につき住民票の記載をすべきことが義務付けられることがあるものと解される。
(4)本件においては,前記事実関係等のとおり, ①上告人父は上告人子に係る胎児認知届を提出して受理された,② 本件出生届は,嫡出子文は非嫡出子の別を記載する欄及び届出人欄の記載を除けば,添付された出生証明君の記載も含めて,不備のない届出であった,③ 上告人子は.現在も世田谷区内の上告人父母の住所で監護旋育されており,その居住実態や通名に変更を生じたことはうかがわれないなどというのであるから,住民票に記載すべき上告人子の身分関係等は明らかであったというべきである。したがって,仮に区長において,上告人子につき上告人母の世帯に属する者として住民票の記載をしたとしても,法の趣旨に反する措置ということはできず,むしろ,このような措置を執ることで,上告人子に関する画一的な処理が可能となり,被上告人における行政上の事務処理の便宜に資する面もあるということができる。.それにもかかわらず区長が上記のような措置を講じていないのは.本件において,上告人母が上告人子に係る適式な出生届を提出することに格別の支障がないにもかかわらず,その提出を怠っていることによるものと考えられる。上告人母が上記提出をしていないのは,前記第1の2(2)の事情等からすれば,その信条に基づくものであることがうかがわれるところ,区長は,このような信条にも配慮.して,付せん処理の方法による本件出生届の受理を提案したのであり, しかも,区長の本件不受理処分に違法がないことについては司法の最終的判断が確定しているのである。したがって,上告人母が出生届の提出をけ怠していることにやむを得ない合理的な理由があるということはできず,前記の特段の事情があるということもできないから,区長が上記のような措置を講じていないことが,この観点から法の趣旨に反するものということはできない。-
(5) また,住民票の記載がされないことによって上告人子に看過し難い不利益が生ずる可能性があるような場合は,たとい上告人母の上記け怠にやむを得ない合理的な理由がないときであっても,前記の特段の事情があるものとして,区長が職権調査による方法で上告人子につき住民票の記載をしなければならないこともあり得ると解されるところではある。しかし,前記事実関係等によれば,上告人子においては,住民票の記載を欠くことに伴う最大の不利益ともいうベき,選挙人名簿への被登録資格を欠くことになるという点に関しては,その年齢からして,いまだその不利益が現実化しているものではなく.また,被上告人は,住民基本台帳に記録されていない住民に対しでも,手続的に頼さな点があり得るとはいえ,多くの場合,それに記録されている住民に対するのと同様の行政上のサービスを提供しているというのである。なお,本件記録によっても,上記のような措置が講じられないことにより上告人子に看過し難い不利益が現に生じているような事情はうかがわれなし、。したがって,区長が上記のような措置を講じていないことが,この観点から法の趣旨に反するものということもできない。
(6) 他に,区長において上記のような措置を誹じていないことを違法とすべき特段の事情は見当たらない。そうすると,区長において,上告人子につき上告人母の世帯に属する者として住民票の記載をしていないことは,法8条,令12条3項等の規定に違反するものではないというべきであり, もとより国家賠償法上も違法の評価を受けるものではないと解するのが相当である。したがって,上告人らの損害賠償諾求には理由がない。
3 よって,上告人らの損害賠償請求を棄却すべきものとした原審の判断は是認することができる。論旨は採用することができない。
第4 結論以上のとおり,上告人子の取消請求に関する訴えは不適法であり,同訴えに係る請求につき本案の判断をした原判決は失当であるから,原判決中同請求に関する部分を破棄し,同部分につき第1審判決を取り消し,上記訴えを却下すべきである。そして,上記訴えは,不適法でその不備を補正することができないものであるから,当裁判所は,を拒否することは,関連が深いとはいえ,別個の制度である戸籍と住民基本台帳とを混同するもので・あって,先に述べたように,住基法の趣旨に反し,違法というべきである。住民票に記載されないことについて上告人母に責任があることは,国家賠償法による損害賠償責任を考える際に考慮すれば足り,かつそれで十分である。
3 以上のように,本件の住民票の記載を拒否した区長の措置は住基法による義務に違反し,違法であるといわなければならない。しかしながら,住基法上違法であるからといって,それにより国家賠償法上も直ちに違法となるわけではない。すなわち,本件は,上告人母が戸籍法の規定に違反して上告人子の出生届を提出しなかったため,区長が住民票に記載しなかったとし、う事案である。ところで,戸籍に記載のない子については,出生届の提出を待って,戸籍の記載に基づき住民票の記載をするというのが,前記のように法の予定する原則的な方法であるとともに,従来の一般的な行政実務の取扱いであって,区長もこのような一般的な取扱いに従い,職権調査による方法で上告人子につき住民票の記載をする措置を講じなかったということができるのである。そうすると,区長の判断が,公務員が職務上尽くすべき注意義務を尽くすことなく漫然とされたものということはできず,区長の措置について国家賠償法1条1項にいう違法がないというべきである。( 裁判長裁判官今井功裁判官中川了滋古田佑紀竹内行夫)
上告人らの上告受理申立て理由(中略)
第12 原判決は住民基本台帳の記載に係る市町村長の責務についての法解釈を誤っている(住民基本台帳法違反ならびに地方自治法違反)
1 原判決の判示(原判決17-18,21ページ)原判決はr(住民基本台帳)法1条は同法の目的を,法3条1項は市町村長の責務を,法5条は市町村は住民基本台帳を備えるといった一般的な事項を定めているものにすぎないし,施行令12条3項は住民票に脱漏,誤載等があった場合のことを定めているので‘あって,法8条が職権で・住民票の記載を行うことがあることを定めていることの法解釈は前記のとおりであるから,上記諸規定から,市町村長が,一般的に住民票記載の裁量権限を有し,居住実態のある住民が存する場合には,職権でこのことを住民票に記載すべき法的義務を負っていると解することはできない。J(原判決17-18ページ)とするとともにr(地方自治)法13条の2は,自治行政の基礎となる住民の記録に関する市町村の責務に関する基本を定めた規定であって,同条を根拠として定められた法律が法である。そして,本件処分が法に反しないことは前記のとおりであり,したがって,本件処分が地方自治法13条の2に反するということもできない。J(原判決21ページ)と判じた。
2 施行令の条項解釈のみによって上位法の規定を無視するとしゅ原判決の間違い原判決が「本件処分が法に反しないことは前記のとおり」という判断を導き出しているのは,本書面第11の通り,住民基本台帳法施行令12条各項の解釈によるものである。原判決の同条解釈自体に誤りがあることも前述したが,いずれにしても前記本書面第11の4小括で述べたとおり,原判決は住民基本台帳法施行令12条に照らして,出生届未済のまま子の住民票記載を行っても行わなくても違法ではないというに等しいのである。であるとすれば,たとえ本件処分が住民基本台帳法施行令12条に照らして違法とはいえない旨の判断を導き出したとしても,住民基本台帳に係る市町村長の責務については,国会の承認を要さない施行令のみの解釈に終始することなく,上位法である住民基本台帳法ならびにさらに上位である地方自治法の規定を検討しなければならないことは言うまでもない。そもそも住民基本台帳法は, r地方公共団体の組織及び運営に関する事項は,地方自治の本旨に基いて,法律でこれを定める。」とした憲法第92条に基つ’いて制定された地方自治法の第13条の2r市町村は,別に法律の定めるところにより,その住民につき,住民たる地位に関する正確な記録を常に整備しておかなければならない。Jの定めによって制定された住民登録法(昭和26年法律第218号。1967年(昭和42) 11月10日廃止。)に代わって制定されたものである。その制定時には「地方自治の本旨を尊重し,かつ,住民基本台帳の本来の趣旨にのっとり,この制度の適切な運用を期することJ(842615参議院地方行政委員会付帯決議3) との国会決議があったことも忘れてはならない。国会での議決を得たのは,住民基本台帳法ならびに付帯決議までであって,施行令は国会の承認を経ないものである。同施行令は同法の第8条「住民票の記載,消除文は記載の修正・…・・は,・…・・規定によるほか,政令で定めるところにより,この法律の規定による届出に基づき,文は職権で行うものとする。Jとの定めにより,国会の議決を経ずして内閣が定めたものである。国会の議決を経ていない施行令の解釈に終始した結果,たとえ本件処分が住民基本台帳法施行令12条に照らして違法とはし、えない旨の判断を導き出したのだとしても,そのことを理由として国民から選出された国会議員による議決を得た住民基本台帳法ならびに地方自治法といった上位法の規定の検討を排除するようなことは,司法としてあってはならない。この点のみでも,原判決は,司法としての役割を果たしておらず,理由不備の違法を免れず,破棄されなければならない。
3 地方自治法ならびに住民基本台帳法における住民基本台帳に係る市町村長の責務そこであらためて,地方自治法ならびに住民基本台帳法における住民基本台帳に係る世田谷区長の責務を本件に照らして検討する。地方自治法は,第10条に「市町村の区域内に住所を有する者は,当該市町村及びこれを包括する都道府県の住民とする。2 住民は,法律の定めるところにより,その属する普通地方公共団体の役務の提供をひとしく受ける権利を有し,その負担を分任する義務を負う。」と定めるとともに,第13条の2で「市町村は,別に法律の定めるところにより,その住民につき,住民たる地位に関する正確な記録を常に整備しておかなければならない。」と市町村の責務を定めている。申立人子の住所地を確定した上で,世田谷区長が児童手当,乳幼児医療券等の支給を行っていることからすれば,申立人子の地方自治法10条1項にし、う住所は確定されている。それはすなわち,申立人子が地方自治法上,世田谷区の住民たる地位にあり,世田谷区長は,同法13条の2が定める責務を免れることはできないので、あって,これに反する本件処分が地方自治法に違反することは明らかである。また,住民基本台帳法は,第1条に「……住民に関する記録を正確かつ統一的に行う住民基本台帳の制度を定め,もって住民の利便を増進する……ことを目的とする」と法の目的を明らかにし,第3条1項に「市町村長は,常に,住民基本台帳を整備し,住民に関する正確な記録が行われるように努めるとともに,住民に関する記録の管理が適正に行われるように必要な措置を講ずるよう努めなければならない。」と市町村長の責務を定め,第5条には「市町村は,住民基本台帳を備え,その住民につき,第7条に規定する事項を記録するものとする。Jとし,記載の仕方については,第8条で「住民票の記載,消除又は記載の修正……は,……規定によるほか,政令で定めるところにより,この法律の規定による届出に基づき,文は職権で行うものとする。」として届出のほか市町村長が職権で記載することも定めている。また,住民の住所については,第4条に「住民の住所に関する法令の規定は,地方自治法……第10条第l項に規定する住民の住所と異なる意義の住所を定めるものと解釈してはならない。」と規定している。よって,地方自治法上,世田谷区の住民たる地位を有する申立人子の住所は,住民基本台帳法上も確定しており,世田谷区の「役務の提供をひとしく受ける権利を有しJている申立人子は,住民基本台帳法制定の目的である「住民の利便を増進」を受ける権利も同時に有するのであるから,住民基本台帳法第3条1項ならびに同法5条に定められた責務により,世田谷区長は申立人子の住民基本台帳の記載をしなければならないことは明らかである。またその記載は同法第8条により届出によらなくとも職権によって記載することもできるのである。住民基本台帳法施行令は,地方自治法ならびに住民基本台帳法で保障されている住民の権利を保護し,市町村長の法律上の責務を果たさせるために内閣が制定したものであって,間違っても,同施行令の解釈に終始することで上位の法律が定めている住民の権利や市町村長の責務を損なうことがあってはならないのである。このことからも原判決は法令の解釈適用を誤るものである。
4 小括以上のように原判決は,国会の決議を経ない住民基本台帳法施行令の解釈に終始するあまり,その施行令の上位にある住民基本台帳法ならびに地方自治法が規定する住民の権利や市町村長の責務に関する定めを無にするものであり,法令の解釈適用を誤り,理由不備ないし理由阻踏の違法は明らかで・あって,破棄を免れない。
第13 住民票の記載につきこれが世田谷区長の裁量事項であるかのように述べる見解は失当とすることの,原判決の法令解釈違反
1 原判決の判示(原判決16-18,20ページ)原判決は「……子が出生したことにより住民票の記載がされるべき場合については,施行令12条2項1号がその手続を定めているものであって,市町村長が出生届を受理することにより,その後の手続は職権によって住民票に出生した子の記載をすることとされているものと解することができるo したがって住民票の記載につきこれが世田谷区長の裁量事項であるかのように述べる1審原告Xlの見解は失当といわなければならない。J(原判決16-17ページ)としたうえで「……諸規定から,市町村長が,一般的に住民票記載の裁量権限を有し,居住実態のある住民が存する場合には,職権でこのことを住民票に記載すべき法的義務を負っていると解することはできない。J(原判決17-18ページ)と判じ,加えて「仮に職権により記載すべきかどうかについて,世田谷区長に一定の裁量があるとしても,……同区長に裁量権の範囲を逸脱,濫用した違法があるといえないことは明らかである。」(原判決20ページ)と判示した。
2 世田谷区長は申立人子の住民票記載の裁量を有するそもそも住民基本台帳事務は,法定受託事務ではなく市町村の自治事務であり(地方自治法第2条9ないし10),したがって地方自治法第2条12の「法律又はこれに基づく政令により地方公共団体が処理することとされる事務が自治事務である場合においては,国は,地方公共団体が地域の特性に応じて当該事務を処理することができるよう特に配慮しなければならない。」との定めがあることに合わせて,前述のrS42615参議院地方行政委員会付帯決議3Jが「地方自治の本旨を尊重し,かつ,住民基本台帳の本来の趣旨にのっとり,この制度の適切な運用を期することJとしていることを考慮すれば,住民基本台帳事務における一般的な裁量権を世田谷区長は有しているというべきであって,これを否定するかのような原判決は,地方自治の本旨を損なうものであり違法である。自治事務においても,こと住民票の記載については,住民基本台帳法施行令7条が, r市町村長は,新たに市町村の区域内に住所を定めた者……があるときは……その者の住民票を作成しなければならなし、Jと定めており,さらに市町村長に対して,住民に関する正確な記録が行われるよう努める責務を課し(住民基本台帳法3条1項),正確性を担保するため市町村長に調査権限を与えている(同法34条)のだから,市町村長の住民票記載にかかる裁量は,その責務と合わせて当然に有するものと考えられる。とりわけ住民基本台帳法34条は「市町村長は,定期に,第7条に規定する事項について調査をするものとする。
2 市町村長は,前項に定める場合のほか,必要があると認めるときは,いつでも第7条に規定する事項について調査をすることができる。
3 市町村長は,前2項の調査に当たり,必要があると認めるときは,当該職員をして,関係人に対し,質問をさせ,文は文書の提示を求めさせることができる。……」とする調査についての強い権限を市町村長に付しているのであり,これは市町村長の住民票記載にかかる裁量を担保するための権限に他ならない。これは,原々判決が「……当該住民票作成の判断については諸般の事情を総合考感した上で,個別・具体的な事案ごとに行われるべきものであって,住民基本台帳を管理し,また,その記載事項について調査権を有する市町村長の合理的な裁量にゆだねられていると解すべきである。J(原々判決12ページ)とした判断こそが正当なのであって, r住民票の記載につきこれが世田谷区長の裁量事項であるかのように述べる……見解は失当といわなければならない。」とする原判決の判断は失当といわなければならない。このことは,原判決自身が「……仮に職権により記載すべきかどうかについて,世田谷区長に一定の裁量があるとしても……」として実質的に住民票記載について「世田谷区長に一定の裁量がある」ことを認めていることとも矛盾する。
3 小括以上のように,申立人子の住民票記載にかかる裁量を世田谷区長が有しており,それを否定するかのような原判決には明らかな法令解釈の誤りがあることを確認したうえで,次に本件において世田谷区長に裁量権の範囲を逸脱,濫用した違法があるかどうか検討する。
第14 世田谷区長に裁量権の範囲を逸脱,濫用した違法があるといえないとした原判決の法令解釈違反1 原判決の判示(原判決19-20ページ)原判決は「……子が無戸籍の状態にある場合において,…・・・なお,職権で・住民票の記載をすべき場合があるとしても,それは極めて例外的な場合に限られるというべきであり,せいぜい, 1審被告が主張するように,子が出生の届出を行うことによって,届出義務者や子が重大な不利益を被る場合で,かつ,戸籍法によって義務付けられた出生届の提出を求めることが社会通念上,届出義務者に期待できないような場合に限定されるというべきである。」としたうえで,出生届の「届出義務者である1審原告父母が届出をしようと思えば容易にできる状況にある,すなわち法律上届出をすることに支障はないにもかかわらず,その信条によって法が何人に対しても予定している手続をあえて拒否し届出をけ怠しているものである。したがって,本件において,出生届の提出を求めることが社会通念上,届出義務者に期待できないような場合に当たるとはし、えないというべきであるから,上記例外的に許される場合として裁量により職権で住民票の記載を認めるべき場合に当たるとはし、えない。Jとし,さらに「以上の次第であるから,本件処分は適法である。なお,仮に職権により記載すべきかどうかについて,世田谷区長に一定の裁量があるとしても,前記したところからして,同区長に裁量権の範囲を逸脱,濫用した違法があるといえないことは明らかである。」と判じた。
2 本件処分は世田谷区長の裁量権の範囲を逸脱文は濫用したものであって違法であるまず,本書面第4で述べたとおり,原判決が示した「……子が無戸籍の状態にある場合において,……,職権で住民票の記載をすべき場合があるとしても,それは……子が出生の届出を行うことによって,届出義務者や子が重大な不利益を被る場合で,かつ,戸籍法によって義務付けられた出生届の提出を求めることが社会通念上,届出義務者に期待できないような場合に限定されるJというような基準を設けることは,何をもって「子が出生の届出を行うことによって,届出義務者や子が重大な不利益を被るJのか,また何をもって「戸籍法によって義務付けられた出生届の提出を求めることが社会通念上,届出義務者に期待できないような場合Jというのかあいまいであり,事務処理要領で示されている住民票記載の実務の統一性を阻害するものであり,原判決のこの判断は失当である。申立人子については,氏名も住所など住民基本台帳の記載に必要な事項も確定しており.r子が無戸籍の状態にある場合において」も事務処理要領にしたがえば住民票記載は容易に行えるのであって,事実,相手方も「住民票そのものを記載すること自体については確かに特段の支障はない。Jと認めている(平成19年7月31日付第1審被告世田谷区控訴理白書10ベージ)。したがって.r……子が無戸籍の状態にある場合において,・…・,職権で住民票の記載をすべき場合があるとしても,それは・…・・子が出生の届出を行うことによって,届出義務者や子が重大な不利益を被る場合で,かつ,戸籍法によって義務付けられた出生届の提出を求めることが社会通念上,届出義務者に期待できないような場合に限定されるJというような基準を設けること自体が無効であるから,原判決のこの判断が世田谷区長の裁量を制限するには当たらない。次に,原判決は,出生届の「届出義務者である1審原告父母が届出をしようと思えば容易にできる状況にある,すなわち法律上届出をすることに支障はないにもかかわらず,その信条によって法が何人に対しでも予定している手続をあえて拒否し届出をけ怠しているものである。したがって,本件において,出生届の提出を求めることが社会通念上,届出義務者に期待できないような場合に当たるとはいえないというべきである」としているが,前述のように「出生届の提出を求めることが社会通念上,届出義務者に期待できないような場合」とし、った基準を設けること自体が無効であることに加えて,申立人父母の「信条」である「出生届の「父母との続柄」欄の記入が子を「嫡出子Jと「嫡出でない子Jと分けて表記すること自体が婚外子に対する差別に当たるというもの」であって,出生届出において「嫡出でない子」なる表記を拒否していることについては,本書面第9ないし第10で詳述したとおり,相当の理由があるのであるから,原判決のこの判断も,申立人子の住民票記載を妨げることはできない。以上のようであって.r世田谷区長は,本件処分時において,例外的な場合として,原告子の住民票の記載をすべきであったにもかかわらず,世田谷区長が上記事情を基礎にした裁量判断を何らせず,形式的に,出生届が受理されていないことを根拠として住民票に記載しない処分に至ったことは,その裁量権の範囲を逸脱又は濫用したものであって違法である。J(原々判決13ページ)とした原々判決こそ正当なのであって, r同区長に裁量権の範囲を逸脱,濫用した違法があるといえなし、Jとした原判決の判断は失当といわざるを得ない。
3 小括よって,本件処分は住民票記載にかかる世田谷区長の裁量権の範囲を逸脱文は濫用したもので、あって違法であり,本件処分を「違法があるといえない」とした原判決は破棄されなければならない。ここまで,本件処分の取消請求に関わる原判決の違法について,その理由を述べた。次に,申立人子の住民票作成の義務付け請求に関わる,原判決の違法の理由を述べる。(中略)
第17 損害賠償請求について
1 原判決の判示(原判決23ページ)原判決は「前記認定のとおり本件処分を違法とは認めることはできないのであるから,その余の点について判断するまでもなぐ, 1審被告に国家賠償法上の責任はなく, 1審原告らの1審被告に対する慰謝料請求は理由がない。」と判じた。
2 本件損害賠償請求は容認されるべきであるしかしながら,これまで述べたように,本件処分は違法を免れないものである。そして,本件処分によって,申立人らには,今後.申立人子が,年齢を重ね,就園・就学等さまざまな手続をしようとするとき,住民票が記載されていないとし、う状況が,住民サーピス支給制限につながらないかどうかとしみ不安が,常につきまとっている。さらには,申立人子の選挙権を侵害することになりかねないかという重大な懸念を持たざるを得ない。また,本件の経過に沿えば,相手方の主張は,住民票記載の条件として,国連勧告をして「差別的用語Jと指摘されている「嫡出でない子」とし、う用語の使用を申立人らに強制することにほかならない。これは,本件処分の差別性を本裁判において,申立人らが丁寧に説明し, 1審においては,申立人子の住民票作成の命令が出たにも関わらず,いまだ,住民票作成に至っていない事実からすれば,本裁判を提起した当初よりもさらに,本件処分における国家賠償法第1条にいう「公権力の行使に当る公務員」による「故意文は過失」の性格は高まったといえる。このことが,申立人らにもたらす精神的苦痛は著しいものがあり,また,前記のように本件処分は国家賠償法上の違法にも当たるので,申立人らの本件損害賠償請求は容認されるべきである。
3 小括以上のように本件処分は国家賠償法上も違法であるので,相手方に「国家賠償法上の責任はな」いとした原判決は破棄されなければならない。
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2012年2月26日 | コメント/トラックバック(0) |
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