管理権喪失宣告申立事件

1 一件記録によれば,以下の事実が認められる。
(1) 申立人と事件本人は,昭和62年×月×日に婚姻し,申立人と事件本人の聞には,昭和63年×月×日,未成年者が出生した。
(2) 申立人と事件本人は.平成9年×月×臼,未成年者の親権者を父である事件本人と定めて協議離婚した。離婚当時,事件本人は無職であったが,事件本人の父Dが不動産などの財産を有していたため,未成年者に財産を承継させるため,申立人が希望して事件本人を未成年者の親権者としたものであった。
(3) 申立人は,離婚後は住所地に居住しながら,未成年者の食事の世話のために事件本人宅へ通っていたが,その後,次第に 3 人で暮らすよ
うになった。
(4) 平成13 年×月×日, Dが死亡した。
(5) 未成年者は,上記同日,所在00 市O町字00(以下,土地の所在はすべて同じなので省略する。) ,地番0000 番 2 ,地自宅地,地積OOOrrf の土地の持分 2 分の l についてDから追贈を受けた。 同土地・のその余の持分 2 分の l については事件本人:が相続年より取得し,の結果,同土地は,未成年者と事件本人が持分 2 分の l ず‘つ共有するその後,平成1 6 年×月×日,000ことになった。上記0000 番 2の土地は,さらに, 0000 番 2の土 0番2の土地と同番 7の土地に分話され,地から,平成17 年×月 X8 に同番 8の土地が,平成1 9 年×月×日に同番11 の各土地がそれぞれ分筆された。 同番1 0 ,その結果,未成年者が追贈を受けた0000 番 2 の土地は,平成19(}5 IJ 紙物件目録記載の土地。以 年×月×日の時点で,0000 番 2同番11 の 同番1 0 , 同番 8 , 下「本件不動産」という。)及び同番 7 ,5 径の土地となった。Dが死亡した平成13 年×月×日,①地番0000 番 事件本人は,
(6) 1 ,地自宅地,地積OOOrrf ,②地番口口口口番1.地目田.地積OOOrrf をDから相続により取得Lた。同番 9 上記① (0000 番 1 )の土地から,平成19 年×月×日,その土地が分筆され,他方,同年×月×日には0000 番 1 の土地に,同番 3 ,同番11 及び口口口口番 8 の各土地が合伍されている。また,上記②(口口口口番 1 )の土地から,平成16 年×月 x8, 同番 4ないし 6 の土地が分筆された。さらに,口口口口番6の土地から,平成17 年×月×日に同番 7 の土地が.平成19 年×月×日に同番8 の土地がそれぞれ分筆されている。また,事件本人は,平成13 年×月×日,地番ムムムA番 1 ,地包
(7) 田,地税OOOrrf の土地について,相続により持分25 分の14 を取得し,同土地のその余の持分25 分の11 については甲が相続により取得した。同土地ムムムム番 i か同番 5の土地が分怒され,さらに,平成1 6 年×月×日,ムムムム番 l から同番 6 ,同番 7 の土地が分筆された。
(8) 未成年者は,平成18 年×月,高校を卒業して大学に進学し,現在は00 で単身生活している。未成年者は,大学の学費については奨学ら同番 4 ,事件本人は,平成15 年×月×日共有物分割を原因として,の甲の持分25 分の日を取得した。また,同月×日,金を受給したが,生活費については申立人から月額 8 万円程度の仕送りを受けている。事件本人から仕送り等の援助は受けていない。ギャンブJ レ及ひ6飲酒代のために相当 事件本人は,離婚時,生活費,
(9) 額の負債を抱えていた。事件本人は,債務の返済のために,平成17 年×月×日, 0 00 0番 7 の土地の持分 2 分の l とムムムム番札口口口口番 4 ,同番 5 のその際,0000 番 7 の土地の未成年者の持分 各土地を乙に売却し,2 分の l についても,上記乙に売却した。ー 上記未成年者の持分を売却するに当たり,事件本人は未成年者に対し,借金があり,取り立てられているので土地を売却したい, 1300 万円で売れる予定であとi などと持ちかけた。未成年者は事件本人に対うち200 から250 万円は大学の授業料としてもらいたいと伝えて売 し,その後,事件本人から未成年者に入金されることは 却芦了承したが
(10) 事件本人は,その後,平成19年×月×日,0000番1の土地を丙に売却し,同年×月×日,ムムムム番7,口口口口番lの各土地を丁に売却した。
(11) 申立人は,未成年者が大学進学のために家を出た後も,事件本人方で事件本人と同居していた。平成19年×月下旬ころ, 申立人は,不動産業者らしき者が本件不動産を見に来ていたことから,事件本人が同土地を売却しようとしていることに気づいた。申立人が調査したところ,事件本人は本性不動産を代金約900万円で売却する予定であること,既に同年×月× 日ころに契約書を作成し,手附金100万円を受領していること,最終決済日は同年×月×日であることが判明した。そこで, 申立人は,未成年者の財産を守るため,同月×日,本件審判の申立てをするとともに,管理権者の職務執行停止を求めて審判前の保全処分を申し立てた(平成19年(家ロ)第000号)。当裁判所は,同日,事件本人の未成年者に対する職務の執行を停止し,申立人を職務代行者に選任する等の審判をした。ω その後,口口口口番6の土地には,平成19年×月×日,事件本人を債務者,戊を抵当権者として,①原因平成19年×月×日売買契約解除による手附金償還請求権問日設定,債権額100万円,②原因平成19年×月×白金銭消費貸借同日設定,債権額40万円の各抵当権設定登記がされている。同事件本人は,平成20年×月×日に行われた家庭裁判所調査官の面接調査の際,不動産の処分について以下のとおり説明していた。
ア3年ほど前に借金の返済のため,未成年者と共有名義の口口口口番5の土地(約00坪)を600万円で売却した。これについ.ては未成年者には知られていないと思うが,売却後しばらくして申立人に知られた。
イ平成19年×月には0000番lの土地を1180万円で売却した。,これについて未成年寄に伝え存ところ,未成年者は大学の費用にし・たいから100万円は欲しいと主張していたが,申立人を介して30万円を渡した。
ウ事件本人は,上記と閉じ平成19年×月ころ,自宅の敷地である0000番2とムムムム番1の土地を知人に約1000万円で売却し以後,事件本人は知人から自宅を5万円で賃借する旨合意した。
2 上記認定のとおり,事件本人は未成年者の親権者となったが,離婚当時から生活費,ギャyブル及び飲酒代のために相当額の負債を抱えていたこと,事件本人は,債務の返済のために,平成17年×月×日には未成年者所有の不動産を売却し,未成年者の申入れにもかかわらず,その売買代金を未成年者の希望どおり大学の授業料として使うことはなかったこと,平成19年×月下旬ころには今度は未成年者に無断で未成年者の不動産を売却しようとしたことが認められる。なお,上記1U3)記載のとおり,事件本人が説明する不動産の所有者及び処分の経過は前記の事実(不動産の登記全部事項証明書から認められる。)と一致しておらず, このことは,事件本人が未成年者の所有不動産を正確に把握していないことを示している占と同時に,事件本人は,未成年者の所有不動産を未成年者に無断で売却したこと,未成年者の希望にもかかめらず,事件本人の説明によっても売却代金のうち30万円しか未成年者の学費のために使用していないのであり,未成年者の所有不動産について事件本人の説明を前提としても,その管理が適切でないことは明らかである。以上の事実jこよれば,事件本人は,管理が失当であったことによって未成年者の財墜を危うくしたもの(民法835条)と認めら札る。よって,本件申立τには理由があるから,主文のとおり審判する。(家事審判官大薮和男)〔編注〕別紙は省略した。

タグ

トラックバック&コメント

この投稿のトラックバックURL:

コメントは受け付けていません。

このページの先頭へ