財産分与申立事件

1 申立ての要旨
る。申立人は「相手方は,申立人に対し財産分与する。」と申し立て,その理由として以下のとおり主張した。
(1) 申立人と相手方とは,平成7年5月26日婚姻の届出をしたが,平成12年11月14日協議離婚した。
(2) 申立人と相手方とは,婚姻中, 日米に分かれて別居していたところ,申立人は,相手方に対し,婚姻費用分担金等として,別紙のとおり金員を交付したほか,相手方の米国滞在中や申立人の日本滞在中の相手方の生活費を負担していた。
(3) 協議離婚時,申立人は格別の資産を有しておらず,相手方の資産内容については不明であるものの,相手方が婚姻後形成した財産があるとすれば,申立人の寄与が大きいから,その2分の1が申立人に分与されるべきである。
(4) ところで,本件申立ては,離婚後2年以上経過した後に申し立てられたものであるところ, その間,申立人は,相手方の財産に対する寄与を相手方に対する貸金及び寄託金と構成し,相手方を被告としてその返還を求める訴えを提起し,平成16年1月30日上告棄却等により申立人の請求棄却判決が確定した経緯があり, この経緯に鑑みれば,財産分与請求権についての2年間の時効期聞は停止していたものと解され,本件申立ては,上記判決確定後6か月以内に申し立てられたものであるから,財産分与請求権が時効消滅することはない。
2 当裁判所の判断
(1) 本件記録によれば,申立ての要旨(1)の事実のほか,①申立人が相手方を被告として,平成13年3月8日, 当事者双方婚姻中の申立人の相手方に対する5回にわたる貸金合計184万5280円及び3回にわたる寄託金合計596万3500円等の各支払を求めて新潟地方裁判所新発田支部に訴えを提起したところ,同裁判所は,平成14年10月4日, 貸金合計184万5280円及び寄託金合計595万4750円の返還義務を認めた上,相手方の相殺の抗弁をいれて,申立人の相手方に対する離婚慰謝料として350万円の支払義務を認めて,結局.相手方に対し430万0030円及び平成13年3月29日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払を命じ,その余の請求を棄却する旨の判決を言い渡したこと,②当事者双方が控訴し,平成15年8月27日,控訴審の東京高等裁判所は,相手方の控訴に基づき,上記判決中の相手方敗訴部分を取り消した上,取消部分における申立人の請求を棄却したこと,③申立人が上告及び上告受理の申立てをしたが,平成16年1月30日,上告棄却及び上告不受理決定があり,申立人の請求を棄却する判決が確定したこと,④その後,申立人は,同年7月1日,本件審判事件移行前の調停事件(仙台家庭裁判所平成16年(家イ)第000号)を申し立て,同年8月12日,申立人代理人弁護士及び相手方出頭の下,第1回調停期日が聞かれたが,不調に終わり,上記調停事件が本件審判に移行したことが認められる。
(2) 以上によれば,申立人と相手方との協議離婚日は平成12年11月14日であり, 本件申立ては平成16年7月1臼であるから,その間2年を超える歳月が経過していることになる。
ところで,民法768条2項は,家庭裁判所に対する財産分与の請求は離婚の時から2年以内に行使しなければならない旨規定している。
そこで,この期間の性質について検討する。この点,申立人は,この期聞を時効期間であるとしてその停止中断を主張する。しかしながら,離婚後の財産関係はできるだけ速やかに確定されるべきものであるから,財産分与請求権の行使期間についてもその趣旨に則った解釈をすべきである。また,そもそも財産分与請求権は,離婚の効果として当然に発生するものの,その具体的内容の確定は当事者聞の協議又は調停,審判等の裁判上の処分によって形成的になされる性質のものであるから,その期間内に行使されることによって目的を達して消滅し,仮にその期間内に行使されなければ以後行使し得ないものとして消滅するものと解すべきであり,翻って,このような性質を有する権利の行使期間について,中断を認める時効期間と解する必要はない。したがって,財産分与請求権の行使期間は除斥期間と解すべきであり,これを消滅時効期間と解する申立人の主張は,前提において失当であるといわざるを得ない(除斥期聞についても期間の進行の停止が考えられなくはないが,不可抗力等の特段の事情がある場合に限られると解すべきであり,本件においてそのような事情は認められない。)。
そして.(1)記載①の訴え提起は,その請求内容からして財産分与諦求と解することはできないし,財産分与詰求事件に職分管轄を有する家庭裁判所に対する申立てでもないから,これを財産分与請求権の行使とみることもできない。以上により,本件申立ては,除斥期間経過後の申立てであり不適法であるから却下するのが相当である。
よって.主文のとおり審判する。(家事審判官 菊池憲久)

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2012年2月26日 | コメント/トラックバック(0) |

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婚姻費用分担申立却下審判に対する即時抗告事件

1 抗告の趣旨及び理由
本件抗告の趣旨及び理由は,別紙の「申立ての実情」欄記載のとおりである。
2 事案の概要
(1) 本件は,抗告人が,妻である相手方との聞で,別居後,抗告人が相手方に対し婚姻費用を負担して支払う旨の契約を締結したところ,その負担額は事情の変更により高額に過ぎるものとなっているとして,適正な額に減額する審判を求める事案である。
(2) 原審は,次のとおり判断して,抗告人の本件申立てを却下した。抗告人は,別居中の妻である相手方との聞で,抗告人が相手方に対し婚姻費用分担金として月額15万円を支払うとする契約を締結したこと,相手方はこれに基づき,抗告人を被告として,千葉地方裁判所松戸支部に婚姻費用の支払を求める訴訟を提起し,抗告人は契約の効力などを争ったところ,同裁判所は相手方の請求を認容し,東京高等裁判所も抗告人の控訴を棄却したが,これは原審判時において未確定の状態にある。この事実によれば,契約の効力は金額の当否を含めて通常裁判所の判決手続において確定されるべきものであり,本件申立ては通常裁判所の判決の変更を求めるもので許されず,不適法である。
(3) 抗告人の抗告の要旨は,家庭裁判所は, 当事者間で合意した婚姻費用の分担額を変更することができ,これは婚姻費用の分担義務の存否に関する通常裁判所の判決が存在しでも異ならないというものである。
3 当裁判所の判断
(1) 本件記録によれば,次の事実が認められる。
ア 抗告人と相手方は,平成4年2月17日婚姻の届出をした夫婦であり,同年7月17日長男をもうけたが,平成13年7月末から別居状態(長男は相手方の下で生活している。)にある。
イ 抗告人と相手方は,同年11月3日,抗告人が相手方に対し,婚姻費用分担金として,同月以降毎月末日限り15万円,同年12月25日限り50万円, 平成14年以降毎年6月末日及び12月25日限り30万円を支払う旨の契約を締結した。
ウ 相手方は,抗告人を被告として,平成14年9月,千葉地方裁判所松戸支部に,上記契約に基づき,平成14年3月分以降の未払分(ただし,同月分の未払は10万円)及び将来分に係る婚姻費用の支払を求める訴訟(同支部平成14年(ワ)第○〇〇号。以下「本件民事訴訟」という。)を提起し,抗告人は,婚姻費用分担は家事審判事項であり通常裁判所の判決手続により求めることはできないし, 将来の婚姻費用を求める部分は訴えの利益がないから本件民事訴訟に係る訴えは不適法であること,あるいは錯誤無効,詐欺による取消などの抗弁を主張して争ったところ,同支部は,平成16年1月28日, 訴えは適法であり,抗弁は認められないとして相手方の請求を認容し,東京高等裁判所(東京高等裁判所平成16年同第△△△号)も同年6月1日,抗告人の控訴を棄却し,上告期間経過により確定した。
エ 抗告人は,平成16年4月20日, 相手方に対し,千葉家庭裁判所松戸支部に,上記契約に基づく婚姻費用の分担額を平成16年3月から当事者が離婚するまで月額4万円に減額して変更する婚姻費用の分担調停申立て(同支部平成16年(家イ)第口口口号。以下「本件申立て」という。)をした。同調停事件は,平成16年6月2日調停不成立により審判(同支部平成16年依)第xxx号)移行し,同年6月8日,本件申立てを不適法とし,これを却下する旨の原審判がされた。
(2) 夫婦聞において婚姻費用に関する協議が成立した場合には,権利者は義務者に対し, その協議に基づいて,通常裁判所の判決手続により,婚姻費用の支払を求めることができることはいうまでもないところである。一方,当該協議が成立した後,事情に変更を生じたときは,民法880条の類推により,家庭裁判所は,各自の資力その他一切の事情を考慮し,事情に変更を生じた過去の時点にさかのぼって従前の協議を変更して新たな婚姻費用の分担額を審判により決定することができ,通常裁判所に従前の協議に基つ’く婚姻費用の支払を求める訴訟が現に係属中であるからといって,そのことが障害事由になるものではないと解される。そして,通常裁判所の判決が確定した後,家庭裁判所による新たな婚姻費用の分担額を定める審判が確定した場合には,義務者は,判決手続により命じられた従前の協議による分担額と審判による減額後の分担額との差額について強制執行の不許を求めるため請求異議の訴えを提起することができると解するのが相当である。
そうすると, 抗告人の本件申立ては,本件民事訴訟の係属及びこれについての判決の確定の有無にかかわらず,適法というべきである。
(3) 以上によれば,本件申立てを不適法であるとして却下した原審判は相当でなく,本件抗告は理由がある。よって,原審判を取り消し,減額の要否及び時期について更に審理を尽くさせるため,本件を原審に差し戻すこととし, 主文のとおり決定する。(裁判長裁判官 福岡右武 裁判官 納谷監 畠山稔)

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移送審判に対する抗告事件

第1 抗告の趣旨及び理由
本件抗告の趣旨及び抗告の理由は,別紙「即時抗告申立書」記載のとおりである。
第2 当裁判所の判断
1 事案の慨要抗告人が,平成21年×月×臼,横浜家庭裁判所(川崎支部)に対し,被相続人Cの遺産につき,遺産分割審判を申し立てたところ(平成21年岡第164号).同裁判所(同支部)は,同月×日,家事審判法11条によりこの審判事件を自庁の家事調停に付し(平成21年(家イ)第197号).さらに,同年×月×日,家事調停事件の管轄裁判所は,家事審判規則129条により,相手方住所地を管轄する家庭裁判所文は当事者が合意した家庭裁判所であるところ,同規則4条l項ただし啓を適用して管轄のない横浜家庭裁判所()II崎支部)が自庁処理すべき特段の必要性は認められないとして,上記各事件を相手方住所地を管轄する広島家庭裁判所(福山支部)に移送する旨の審判をした。これを不服として,抗告人が抗告を申し立てた。
2 判断
(1) 家事審判法11条により家事審判事件を家事調停に付す場合に,どこの裁判所の調停に付すべきかについては,現に審判事件を取り扱っている裁判所に限るとする立場と,現に審判事件を取り扱っている裁判所に限らず調停事件の管轄がある裁判所ならばその裁判所の調停に付することもできるとの立場があるが,いずれの説においても,審判事件の管轄を有する裁判所が自ら調停を行うことを認める趣旨であると解されるから,同条は,本来は調停事件の管轄を有しない審判事件の管轄裁判所に,調停事件の管轄を生じさせる規定であると解される。したがって,原裁判所は,イサ調停により調停事件についての管轄を有するに至ったものというべきであり,家事審判規則4条l項ただし蓄を適用した場合にのみ当該調停を取り担えるものと解すべきではない。
(2)原審判は,上記遺産分割調停事件につき,横浜家裁(川崎支部)には管轄がなく,上記家事調停の相手方の住所地が広島家庭裁判所(福山支部)管内にあることから同裁判所(同支部)のみが管轄を有するとの前提に立ち,家事審判規則4条1項ただし書の適用の有無を論じているが, これは相当でない。もとより,付調停に係る調停事件文はこれと審判事件とを併せて移送することも可能であると解されるが, この場合には,同規則4条2項によるべきであり,移送しないことを特に必要とするか否かではなく,移送することが適当であると認める事由があるか否かを判断すべきものである。ところが,原審判は,上記遺産分割審判事件等を移送することが適当であると認め石事由については述べていない。
(3) よって,原審判は相当でないからこれを取り消すこととし,上記の点を更に調査の上で判断させるため,本件を横浜家庭裁判所(jl崎支部)に差し戻すこととして,主文のとおり決定する。(裁判長裁判官大橋寛明裁判官佐久間政和見米正)

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離婚等請求事件

上告代理人〇〇〇〇の上告受理申立て理由について
1 原審が適法に確定した事実関係の概要等は,次のとおりである。
(1)被上告人(昭和44年11月25日生)は,平成元年7月ころから〇〇税務署に勤務し,平成3年夏ころ,同署においてアルバイトとして働いていた上告人(昭和45年6月30日生)と知り合い,交際を始めた。
(2) 被上告人は,x x税務署への転勤後の平成6年11月19日に上告人と〇〇市内で結婚式を挙げ(婚姻の届出は同年12月2日), x x市内の公務員宿舎で新婚生活を始め,平成8年3月26日に長男をもうけた。
(3) 被上告人は,婚姻をした当初は, 上告人がきれい好きな人であるとして好感を持っていた。しかし,被上告人は,上告人の要望により,①帰宅すると,玄関で靴下を脱いで室内用靴下に履き替え,玄関のすぐ横の被上告人の部屋で,室内用の服に着替えをして敷いた新聞紙の上にかばんを置くものとされたこと,②衣類は一度洗濯してから着るものとされ,被上告人が子供と公園の砂場等で・遊んで・帰ってきたときには,居間等に入る前に必ず風呂場でシャワーを浴びるものとされたこと,③居間等で寝転ぶときは,頭の油で汚れることを理由に,頭の下に広告の紙を敷くものとされたことなどから,次第に, 上告人との生活に不快感を覚えるようになった。
(4) 被上告人は,平成10年7月に△△税務署へ転勤となり,家族3人で△△市内の公務員宿舎で生活をするようになった。
(5) 被上告人は,平成11年7月から平成12年6月まで,埼玉県○△市所在の○口校で研修を受け,その間,同校の独身寮で単身生活をし,同期の女性の研修生Cと知り合った。上告人と長男は,その間,〇〇市所在の上告人の実家で過ごした。
(6) 被上告人は,上記研修後の同年7月に○×国税局に転勤となり,家族3人で○×市内の公務員宿舎で生活をするようになった。
被上告人は,同月1日, 上告人に対し,「友達が来るから飲んで泊まるかもしれない」などと言って外出し同日から翌日にかけて, cのために×○市内の観光案内をし,同市で一泊した。
(7) 被上告人は,上記公務員宿舎が古くて狭く,汚い状況にあることについて上告人が不満を述べたことから,上司に相談したところ,上司から,同年秋に完成予定の新築の宿舎があり,被上告人が入居できる見込みがあることを告げられた。そこで,被上告人は, 上告人に対し,上記宿舎が完成するまで実家に帰ることを勧め,これに応じて,上告人と長男は,実家で暮らすようになった。
(8)上記宿舎が完成したことから,被上告人は,同年9月,上告人及び長男と共に,上記宿舎に入居し,家族3人の生活を再開したが,同年10月初めころ,被上告人は,突然,上告人に対し「好きな人がいる,その人が大事だ」. 「2馬力で楽しい人生が送れる」.「女の人を待たせている」などと言って,離婚を申し入れた。その際,被上告人は,上告人からその女性との関係を問いただされ,その女性と「ホテルにもよく行く」などと性関係を持っていることを認める趣旨の発言をした。
被上告人は,遅くとも同年7月ころからcと性関係にあったものと推認される。
(9) 被上告人は,上告人に対し,同年10月か11月に九州でCと会う約束をしていることを明らかにしたので,上告人は,双方の両親に事情を話して相談した。その結果,家族会議を聞くこととなり,同年11月4日,被上告人のxxの実家で,上告人,被上告人夫婦及び双方の両親が一堂に会して被上告人の女性問題について話合いをした。その際,被上告人の母親が,被上告人に対しcとの結婚は許さないと断言したことから,被上告人は,上記の九州への旅行を断念した。
その後,平成13年3月及び同年4月に,上告人.被上告人夫婦聞の離婚問題について双方の両親を交えた話合いが行われたが,合意には至らなかった。
(10)被上告人が離婚話を持ち出して以降,夫婦聞にはほとんど会話がなくなり,上告人は被上告人に対し極めて冷淡になった。上告人は,被上告人がトイレを使用したり,蛇口をひねって手を洗ったりするとすぐにトイレや蛇口の掃除をしたり,被上告人が夜遅く帰宅すると,起床して被上告人が歩いたり触れたりした箇所を掃除したりするようになった。
(11) 被上告人は,同年6月,上記宿舎を出て○×市内のアパートで一人暮らしをするようになり,それ以降,長男と会うこともないまま,別居生活を続けている。
被上告人は, 別居後,上告人に対し,毎月,給与(手取り額約30万円)の中から生活費として8万円を送金し,かつ,上告人が居住する上記宿舎の家賃や光熱費等を負担している。
上告人は,被上告人と一緒に暮らしたいとは思っていないが,子宮内膜症にり患しており,就職して収入を得ることが困難であり,将来に経済的な不安があることや子供のためにも,離婚はしたくないと考えている。
2 本件は,被上告人が,上告人に対し.両者の聞の婚姻関係は既に破たんしており,民法770条1項5号所定の事由があると主張して,離婚を求めるとともに,長男の親権者を被上告人と定めることを求める事案である。
3 原審は,前記の事実関係の下において,次のとおり判断し,被上告人の離婚を請求を認容し, 長男の親権者を上告人と定めた。
(1)上告人は,離婚を拒絶しているが,それは,法律的な婚姻関係の継続により経済的な安定を維持できるからであって,被上告人に対する情愛によるものではなく,被上告人と同居して生活する意思はないこと,被上告人が上告人及び長男と別居してから約2年4か月が経過しており,その間,被上告人は長男とさえ会っておらず,家族としての交流がないこと等を併せ考慮すると,上告人と被上告人とが,将来,婚姻関係を修復し,正常な夫婦として共同生活を営むことはできないものと解され,その婚姻関係は既に破たんしており,民法770条1項5号所定の事由があるというべきである。
(2)被上告人は,遅くとも平成12年7月ころから,cと性関係にあったものと推認されるのであり,これが婚姻関係破たんの原因となったことは明らかであるから,被上告人は,上記破たんにつき主たる責任があるというべきである。
(3) しかしながら,上告人は,かなり極端な清潔好きの傾向があり,これを被上告人に強要するなどした上告人の前記の生活態度には問題があったといわざるを得ず,上告人にも婚姻関係破たんについて一端の責任がある。これに加えて,上記のとおり,上告人と被上告人とは互いに夫婦としての情愛を全く喪失しており,既に別居生活を始めてから約2年4か月が経過していること,その間,上告人,被上告人夫婦間には家族としての交流もなく,将来,正常な夫婦として生活できる見込みもないこと,上告人の両親は健在であり,経済的にも比較的余裕があること等の点を考慮すると,被上告人が不貞に及んだことや上告人が子宮内膜症にり患しているため就職して収入を得ることが困難であることを考慮しても,被上告人の離婚請求を信義誠実の原則に反するものとして排斥するのは相当ではないというべきである。
4 しかしながら,原審の上記(3)の判断は是認することができない。その理由は,次のとおりである。
民法770条l項5号所定の事自による離婚請求がその事自につき専ら文は主として責任のある一方の当事者(以下「有責配偶者」という。)からされた場合において,当該請求が信義誠実の原則に照らして許されるものであるかどうかを判断するに当たっては,有賀配偶者の責任の態様・程度,相手方配偶者の婚姻継続についての意思及び請求者に対する感情,離婚を認めた場合における相手方配偶者の精神的・経済的状態,夫婦間の子,殊に未成熟の子の監護・教育・福祉の状況,別居後に形成された生活関係等が考慮されなければならず,更には,時の経過とともに,これらの諸事情がそれ自体あるいは相互に影響し合って変容し,また,これらの諸事情の持つ社会的意味ないしは社会的評価も変化することを免れないから,時の経過がこれらの諸事情に与える影響も考慮されなければならないものというべきである。そうだとすると,有責配偶者からされた離婚請求については,①夫婦の別居が両当事者の年齢及び同居期間との対比において相当の長期間に及んでいるか否か,②その聞に未成熟の子が存在するか否か,③相手方配偶者が離婚により精神的・経済的に極めて苛酷な状況に置かれる等離婚請求を認容することが著しく社会正義に反するといえるような事情が存するか否
か等の諸点を総合的に考慮して当該請求が信義誠実の原則に反するといえないときには,当該請求を認容することができると解するのが相当である(最高裁昭和61年同第260号同62年9月2日大法廷判決・民集41巻6号1423頁参照)。
上記の見地に立って本件をみるに,前記の事実関係によれば,①上告人と被上告人との婚姻については民法770条1項5号所定の事由があり,被上告人は有責配偶者であること,②上告人と被上告人との別居期聞は,原審の口頭弁論終結時(平成15年10月1日)に至るまで約2年4か月であり,双方の年齢や同居期間(約6年7か月)との対比において相当の長期間に及んでいるとはいえないこと,③上告人と被上告人との聞には,その監護,教育及び福祉の面での配慮を要する7歳(原審の口頭弁論終結時)の長男(未成熟の子)が存在すること,④上告人は,子宮内膜症にり息しているため就職して収入を得ることが困難であり,離婚により精神的・経済的に苛酷な状況に置かれることが想定されること等が明らかである。
以上の諸点を総合的に考慮すると,被上告人の本件離婚請求は, 信義誠実の原則に反するものといわざるを得ず,これを棄却すべきものである。
5 以上によれば,被上告人の本件離婚請求を認容した原審の判断には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。論旨は理由があり,原判決は破棄を免れない。そして,以上説示したところによれば,被上告人の請求は理由がなく,これを棄却した第1審判決は相当であるから,被上告人の控訴を棄却すべきである。
よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。(裁判長裁判官 横尾和子 裁判官 甲斐中辰夫 泉徳治 島田仁郎 才口千晴)

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遺産分割申立て事件の審判に対する抗告棄却決定に対する特別抗告事件

抗告代理人○○の抗告理由について非嫡出子の相続分を嫡出子の相続分の2分のlと定めた民法900条4号ただし香前段の規定が態法14条1項に違反するものでないことは,当裁判所の判例とするところであり(最高裁平成3年(ク)第143号同7年7月5日大法廷決定・民集49巻7号1789頁).憲法14条1項違反をいう論旨は,採用することができない。その余の論旨は,明らかに民訴法336条1項に規定する事由に該当しない。よって,裁判官今井功の反対意見があるほか,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり決定する。なお,裁判官竹内行夫の補足意見がある。裁判官竹内行夫の補足意見は,次のとおりである。
1(1 )法 定相続分を決定するに当たっては.相続発生時において有効に存在した法令が適用されるのであるから.本件における民法900条4号ただし書前段の規定(以下「本件規定」という。)の憲法適合性の判断基準時は,相続が発生した平成12年6月30日(以下「本件基準日Jという。)ということになる。したがって,多数意見は.飽くまでも本件基準日において本件規定が憲法14条1項に違反しないとするものであって,本件基準日以降の社会情勢の変動等によりその後本件規定が逸話の状態に至った可能性を否定するものではないと解される。
(2) 本件基準日以降も,本件規定の態法適合性について判断をするための考服要素となるべき社会情勢,家族生活や親子関係の実態.我が国を取り巻く国際的環境等は,変化を続けている。民法施行後の社会経済構造の変化に伴い,品業を営む家族に典型的にみられるような,家族の構成員の”協働によって形成された財産につき被相続人の死亡を契機として家族の構成員たる相続人に対してその潜在的な持分を分配するといった形態の相続が減少し,相続の社会的な意味が,被相続人が個人で形成した財産の分配といった色彩の強いものになってきているといえることに加え,本件基準日以降に限っても,例えば,人口動態統計によれば,非嫡出子の出生割合は平成12年には出生総数の1.63%であったのが,平成18年には2.11%に増加していることは,我が国における家族観の変化をうかがわせるものといえるし,平成13年にフランスにおいて姦生子(婚姻中の者がもうけた非嫡出子)の相続分を嫡出子の2分のlとする旨の規定が廃止され,嫡出子と非嫡出子の相続分を平等とすることは世界的なすう勢となっており,我が固に対し,国際連合の自由権規約委員会や児童の権利委員会から嫡出子と非嫡出子の相続分を平等化するように勧告がされていることなどは,我が国を取り巻く国際的環境の変化を示すものといえよう。
(3) そして,非嫡出子に相続権を認めることがさほど一般的ではなかった時代においては,非嫡出子にも一定の法定相続分を認める本件規定は,法律婚の尊重と非嫡出子の保護の調整を図るものとして,その正当性を肯定できたものの,以上のような社会情勢等の変化を考慮、すれば,本件規定が嫡出子と非嫡出子の相続分に差をもうけていることを正当化する根拠は失われつつある一方で,本件規定は非嫡出子が嫡出子より劣位の存在であるとし、う印象を与え,非嫡出子が社会から差別的な目で見られることの重要な原因となっているという問題点が強く指摘されるに至っているのである。そうすると,少なくとも現時点においては,本件規定は,違態の疑いが極めて強いものであるといわざるを得ない。
2 (1) ところで,本件規定は,相続制度の一部分を構成するものとして,国民の生活に不断に機能しているものであるから,これを違憲としてその適用を排除するには,その効果や関連規定との整合性の問題等について十分な検討が必要である(前記大法廷決定における大西勝也,園部逸夫,千種秀夫,河合伸一各裁判官の補足意見最高裁平成11年同第1453号同12年1月27日第一小法廷判決・裁判集民事196号251頁における藤井正雄裁判官の補足意見及び最高裁平成14年同第1963号同15年3月31日第一小法廷判決・裁判集民事209号397頁における島田仁郎裁判官の補足意見参照)。しかるに,最高裁判所が,過去にさかのぼった特定の日を基準として,本件規定は違憲無効となったと判断した場合には,当該基準日以降に発生した相続であって相続人中に嫡出子と非嫡出子が含まれる事案において.本件規定を適用した判決(最高裁判所の判決も含む。)や遺産分割審判,本件規定が有効に存在することを前提として成立した遺産分割調停,遺産分割協議等の効力に疑義が生じ,新たな紛争が生起し,更には本件規定を前提として形成された権利義務関係が覆滅されることにもなりかねない。かかる事態は,本件規定に従って行動した者に対して予期せぬ不利益を与えるおそれがあり,法的安定性を害することが著しいものといわざるを得なし、。特に,本件においては本件基準日から既に9年以上が経過しているという事情があるので\本件規定が違態無効であったと判断した場合にその効力に疑義が生じる判決等は,相当な数に上ると考えられるのである。前記大法廷決定における5名の裁判官の反対意見は,本件規定の有効性を前提としてなされた従前の裁判,合意の効力を維持すべきであると述べるが,違憲判断の効力を遡及させず.従前の裁判等の効力を維持することの法的な根拠については,上記反対意見は明らかにしておらず,学説においても十分な議論が尽くされているとはいい難い状況にある。また,上記反対意見に従えば,同じ時期に相続が発生したにもかかわらず,本件規定が適用される事案とそうでない事案が生ずることになるとし、う問題も生じかねない。
(2) これに対し,立法府が本件規定を改正するのであれば,相続をめぐる関連規定の整備を図った上,明確な適用基準時を定め.適切な経過規定を設けることで,容易にこれらの問題や不都合を回避することができる。そして,平成8年には法制審議会により非嫡出子の相続分を嫡出子のそれと同等にする旨の民法改正案が答申されているのである。これらのことを考慮すると,私は,前記1(2)のような社会情勢等の変化にかんがみ,立法府が本件規定を改正することが強く望まれていると考えるものである。
(3) なお,私が以上に述べたところは,立法による解決が望ましいという考えであって,立法による解決が望ましいことを理由に最高裁判所は違憲の判断をすることを差し控えるべきであるという趣旨で・ないことはいうまでもない。裁判官今井功の反対意見は.次のとおりである。わたくしは,非嫡出子の相続分を嫡出子の相続分の2分のlとする本件規定は,詰法14条1項に違反すると考えるので,これを合意とした原決定を破棄し,本件を原審に差し戻すべきものと考える。その理由は次のとおりである。
1 多数意見の引用する前記大法廷決定は,本件規定は合理的理由のない差別といえず,憲法14条1項に違反しないとしている。その理由として.同決定は,本件規定の立法理由は,法律婚の尊重と非嫡出子の保護の調整を図ったものと解されるとした上で,このような本件規定の立法理由にも合理的な根拠があるというべきであるから,非嫡出子の法定相続分を嫡出子の2分の1としたことが,立法理由との関連において著しく不合理であり,立法府に与えられた合理的な裁量判断の限界を超えたものということはできないとしている。.
2 憲法13条は.「すべて国民は.個人として尊重される。」と規定し,憲法24条2項は.「相続.(中略)及び家肢に闘するその他の事項に関しては,法律は,個人の噂厳と両性の本質的平等に立脚して,制定されなければならない。」と規定している。憲法14条1項は,法の下の平等を定めており,この規定は,事柄の性質に即応した合理的な根拠に基づくものでない限り.法的な差別的取扱いを禁止する趣旨であると解すべきである。本件規定は,相続分につき嫡出子と非嫡出子との聞に差別を設けている。この差別は,被相続人の子が嫡出子で・あるか非嫡出子で-あるか,換言すれば,婚姻関係から出生した子であるかそうでないかということを理由として,相続分に差を設けたものである。その立法目的は,前記大法廷決定の述べるように,法律婚の尊重ということにある。しかし,法律婚の尊重という立法目的が合理的であるとしても,その立法目的からみて,相続分において嫡出子と非嫡出子との聞に差を設けることに合理性があるであろうか。憲法24条2項は,相続において個人の尊厳を立法上の原則とすることを規定しているのであるが,子の出生について責任を有するのは被相続人で・あって,非嫡出子には何の責任もなし、。婚姻関係から出生するかそうでないかは,子が, 自らの意思や努力によってはいかんともすることができない事柄である。このような事柄を理由として相続分において差別することは,個人の尊厳と相容れない。法律婚の尊重という立法目的と相続分の差別との聞には,合理的な関連性は認められないといわざるを得ない。最高裁平成18年(行ツ)第135号同20年6月4日大法廷判決・民集62巻6号1367頁は, 日本国籍の取得について定めた国籍法の規定について,閉じく日本国民である父から認知された子であるにもかかわらず,準正子は国籍が取得できるのに,非準正子は国籍が取得できないとした当時の国籍法3条1項の規定を,合理的な理由のない差別であって態法14条1項に違反すると判断したのであるが,このことは,本件のような相続分の差別についても妥当するといわなければならない。
3 非嫡出子の相続分を嫡出子の2分のlとする規定は,明治の旧民法当時に設けられたものであり,太平洋戦争後の民法の改正においても維持されて現在に至っている。その当時においては,合理的なものとして是認される余地もあったことは認めざるを得ないが,その後の社会の意識の変化,諸外国の立法の動向,圏内における立法の動き等にかんがみ当初合理的であったとされた区別が,その後合理性を欠くとされるに至る事例があることは,国籍法についての前記大法廷判決からも明らかである。まず,我が固における社会的,経済的環境の変化等に伴って,夫婦共同生活の在り方を含む家族生活や親子関係に関する意識も一様ではなくなってきており,今日では,出生数のうち非嫡出子の占める割合が増加するなど,家族生活や親子関係の実態も変化し,多様化してきていることを指摘しなければならない。また, ヨーロッパを始め多くの国においても,非嫡出子の相続分を嫡出子のそれと同等とする旨の立法がされている。我が国においても,後に述べるように,非嫡出子の相続分を嫡出子のそれと同等とする旨の民法の改正意見があり,平成8年には,法制審議会総会が,その旨の改正案要綱を決定し,法務大臣に答申したが,未だ改正が実現していないという状況にある。
4 本件規定は親族相続制度の一部分を構成するものであるから,これを変更するに当たっては,これらの制度の全般にわたっての目配りや関連する諸規定への波及と整合性の検討が必要であり, また,木件規定による相続関係の処理は,永年にわたって行われてきたものであるから,本件規定を変更する場合には,その効力発生時期等についても慎重な検討が必要であり,これらのことは,本来国会における立法によって行われるのが望ましいものというべきである。このことは,上記大法廷決定における千種秀夫,河合伸一裁判官の補足意見で・述べられ,その後の本件規定を合誌と判断した最高裁判所の小法廷判決における補足意見においても指摘されているとおりであり(前記平成12年1月27日第一小法廷判決における藤井正雄裁判官の補足意見前記平成15年3月31日第一小法廷判決における島田仁郎裁判官の補足意見参照にわたくしもこれらの意見に共感を覚えるものである。このように本来立法が望ましいとしても,裁判所が違憲と判断した規定について,その規定によって権利を侵害され,その救済を求めている者に対し救済を与えるのは裁判所の責務であって,国会における立法が望ましいことを理由として違憲判断をしないことは相当でない。なお,本件規定を違憲無効と判断したとしても,そのことによって本件規定を適用した確定判決や確定審判について再審事由があるということにはならないし,本件規定が有効に存在することを前提として成立した遺産分割の調停や遺産分割の協議の効力が直ちに失われるものではない。遺産分割の調停や協議は,当事者の思惑や譲歩など様々な事情を踏まえて成立するものであるから,本件規定が無効であることによって当然に錯誤があるということにはならない。本件規定を違態と判断することによって,法的安定性を害するおそれのあることは否定できないが,その程度は補足意見が述べるほど著しいものとはいえないと考える。
5 非嫡出子の相続分が嫡出子のそれと差があることの問題性は,古くから取り上げられ,昭和54年には,法制審議会民法部会身分法小委員会の審議を踏まえて, 「非嫡出子の相続分は嫡出干のそれと同等とする」旨の改正要綱試案が公表されたが,改正が見送られた。さらに平成6年に同趣旨の改正要綱試案が公表され,平成8年2月の法制審議会総会において同趣旨の法律案要綱が決定され,法務大臣に答申されたが,法案の国会提出は見送られて,現在に至っている。前記大法廷決定の当時は,改正要綱試案に基づく審議が法制審議会において行われており,改正が行われることが見込まれていた時期であった。ところが,法制審議会による上記答申以来十数年が経過したが,法律の改正は行われないまま現在に至っているのであり, もはや立法を待つことは許されない時期に至っているというべきである。
6 以上のような理由から.わたくしは,本件規定は憲法14条l項に違反すると考えるので,これと異なる原決定を破棄して本件を原審に差し戻すべきであると考えるものである。(裁判長裁判官古田佑紀裁判官今井功中川了滋竹内行夫)

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2012年2月26日 | コメント/トラックバック(0) |

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死亡給付金等請求,民訴法260条2項の申立て事件

上告代理人○○の上告受理申立て理由(ただし,排除されたものを除く。)について
l 原審の適法に確定した事実関係の概要は,次のとおりである。
(1) Aは,昭和62年8月12日.Bとの間で,被保険者をA.保険金受取人を同人の妻であるCとして生命保険契約(以下「本件契約」という。)を締結した。Dは.Bの保険契約を包括的に承継し,その後,上告人がDの保険契約を包括的に承継した。
(2) 平成13年7月20日.AとCの両名が,一方が他方の死亡後になお生存していたことが明らかではない状況で死亡した。A とCとの聞には子はなく.Aの両親及びCの両親は.いずれも既に死亡していた。Aには弟であるE以外に兄弟姉妹はおらず.cには兄である被上告人以外に兄弟姉妹はいない。
2 本件は, 上記事実関係の下において.cの兄である被上告人が,商法676条2項の規定により保険金受取人になったと主聾して,保険会社である上告人に対し, 保険金等の支払を求めた事案である。所論は,保険契約者兼被保険者と保険契約者によって保険金受取人と指定された者(以下「指定受取人」という。)とが同時に死亡した場合には,商法676条2項の規定により保険金受取人を確定すべきであるが,同項の規定を適用するに当たっては,指定受取人が保険契約者兼被保険者よりも先に死亡したものと扱うべきであるから,本件においては.cの相続人である被上告人とCの順次の相続人であるEの両名が保険金受取人となるはずであるのに,被上告人のみを保険金受取人とした原審の判断には法令解釈の誤りがあるというのである。
3 商法676条2項の規定は,保険契約者と指定受取人とが同時に死亡した場合にも類推適用されるべきものであるところ,同項にいう「保険金額ヲ受取ルヘキ者ノ相続人Jとは,指定受取人の法定相続人又はその順次の法定相続人であって被保険者の死亡時に現に生存する者をし、ぃ(最高裁平成2年同第1100号同5年9月7日第三小法廷判決・民集47巻7号4740頁).ここでしの法定相続人は民法の規定に従って確定されるべきものであって,指定受取人の死亡の時点で生存していなかった者はその法定相続人になる余地はない(民法882条)。したがって,指定受取人と当該指定受取人が先に死亡したとすればその相続人となるべき者とが同時に死亡した場合において,その者又はその相続人は,同項にいう「保険金額ヲ受取ルヘキ者ノ相続人」には当たらないと解すべきである。そして,指定受取人と当該指定受取人が先に死亡したとすればその相続人となるべき者との死亡の先後が明らかでない場合に,その者が保険契約者兼被保険者であったとしても,民法32条の2の規定の適用を排除して,指定受取人がその者より先に死亡したものとみなすべき理由はない。そうすると,前記事実関係によれば,民法32条の2の規定により,保険契約者兼被保険者であるAと指定受取人であるCは同時に死亡したものと推定され.AはCの法定相続人にはならないから.Aの相続人であるEが保険金受取人となることはなく,本件契約における保険金受取人は,商法676条2項の規定により.cの兄である被上告人のみとなる。これと同旨の原審の判断は,正当として是認することができる。論旨は採用することができない。よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。(裁判長裁判官藤田宙靖裁判官堀龍幸男那須弘平田原睦夫近藤崇晴)

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執行官の処分に対する執行異議事件

第1 事案の概要
本件は,申立人(妻)に対し子の引渡しを命ずる東京家庭裁判所八王子支部の確定審判に基づき,東京地方裁判所八王子支部執行官(現立川支部執行官)が子の引渡しの執行を行い,子を申立人の夫に引き渡したところ,申立人が執行官の行った子の引渡執行は違法であるとして,民事執行法11条に基づき執行官の執行処分の取消しを求めて執行官の処分に対する執行異識を申し立てた事案である。
第2 申立ての趣旨及び理由本件申立ての趣旨は,東京地方裁判所八王子支部執行官平成21年(執ロ)第000号子の引渡事件において,同支部執行官が平成21年×月×自に行った子の引渡執行の取消しを求めるものであり,その理由は, (1)申立人は, Bと平成12年×月×日に婚姻し,平成13年×月×日,両名の聞に長男c(以下「未成年者」という。)をもうけたが,Bと別居するに至った経緯や,申立人による未成年者の監護養育状況(出生から執行当時まで,未成年者の監護養育については主として申立人が行っている。)等をふまえると,未成年者をBに引き渡すのは不当である, (2)子の引渡執行における直接強制は認められるべきではないし,少なくとも当時7歳9か月であった未成年者のように,意思能力が認められる児童に対する直接強制は許されない, (3)仮に,直接強制が認められるとしても,基本事件において,執行官は,申立人に対し子の引渡しの履行の催告もせず,未成年者が一人で帰宅するところを路上で連れ去っているから,同執行は明らかに未成年者を物と同視し,未成年者の人権を無視する不当なものである,というものである。
第3 当裁判所の判断
1 事実経過記録によれば,次のとおり認めることができる。
(1) 申立人は,平成12年×月×日, Bと婚姻し,平成13年×月×日,長男である未成年者が出生した。
(2) 申立人とBは,申立人の不貞等が原因で不仲となり, Bは,平成20年×月,東京家庭裁判所八王子支部に対し,離婚を求める夫婦関係調整の調停を申し立てたが,子の親権者について合意が得られなかったため,同調停は不調に終わった。
(3) 申立人は,平成20年×月×日, Bに無断で未成年者を連れてBと別居した。
(4) Bは,平成20年×月×日,東京家庭裁判所八王子支部に対し,子の監護に関する処分(子の監護者の指定,子の引渡し)を申し立て(同裁判所平成20年闘第1678号),同時にこれを本案とする審判前の保全処分を申し立てたが,同保全処分の申立ては同年×月×日に取り下げられた。
(5) 東京家庭裁判所八王子支部は,平成21年1月22日, 上記子の監護に関する処分申立事件について,未成年者の監護者をBと定め,申立人に対し未成年者をBに引き渡すように命じる審判をした。
(6) 申立人は,上記審判について,東京高等裁判所に即時抗告をしたが,同裁判所は,平成21年×月×日,抗告を棄却する旨の決定をした。
(7) Bは,平成21年×月×日,東京地方裁判所八王子支部執行官に対し,東京家庭裁判所八王子支部の上記審判を債務名義として,未成年者をBに引き渡すことを求める強制執行の申立てをした。
(8) 東京地方裁判所八王子支部執行官は,平成21年×月×日午後×時×分,申立人の住所地付近路上で未成年者を確認し,同所で執行に着手した。同執行については, B及びその代理人弁護士○○が立ち会い,同執行官は,同日午後×時×分,未成年者を執行場所でBに引き渡した(以下「本件処分」という。)。上記執行現場において,未成年者が申立人に電話をかけたので,執行官は,申立人に対し,上記審判書に基づき未成年者をBに引き渡す旨の告知をした。(9) 申立人は,平成21年×月×日,東京地方裁判所八王子支部(現立川支部)に対し,本件執行異議の申立てをした。

2 以上の事実によれば,東京地方裁判所八王子支部執行官の行った本件処分は,適式に確定した東京家庭裁判所八王子支部の審判書を債務名義としてなされたものであり,その執行方法や執行態様においても格別違法,不当な点は認められず,本件処分は適法なものというべきである。なお,仮に,執行官の本件処分が違法であるとして取り消された場合に,申立人が現実に未成年者を取り戻すことができないとしても,本件処分の違法性は,申立人の未成年者に対する監護の継続性の判断に影響を及ぼすといえるから,申立人には異議申立ての利益があると解するのが相当である。
3 申立人の主張に対する判断
(1) 申立人は. Bと別居するに至った経緯や,申立人による未成年者の監護養育状況等に照らすと,未成年者をBに引き渡すのは不当である旨主張する。しかし,民事執行法11条に基づく執行官の処分に対する執行異議は,執行官が調査又は判断すべき執行手続上の法定要件の存否についての判断を誤り,あるいはその方式に違背した場合に,その違法を是正することを目的とする不服申立手段であるから,強制執行手続の基となった債務名義の判断についての不服を主張して,執行異議を申し立てることは許されないというべきである。したがって,申立人の主張には理由がない。
(2) 申立人は,子の引渡執行において直接強制は許されない旨主張する。子の監護者指定及び子の引渡しの審判は,父母が事実上の離婚状態で別居し,子の監護について協議が整わないときに.家族聞の紛争の処理に関して専門的調査機闘を備える家庭裁判所が,その後見的立場から,子の福祉のために必要があると認められる場合に,子の監護状況,父母の子に対する愛情,家庭環境,子の年齢,子の意向等を慎重に総合考慮した上で,民法766条1項,家事審判法9条l項乙類4号を類推適用して,夫婦の一方を子の監護者として定め,監護権を優先的に行使し得る地位を確認又は形成するものであると解される。ところで,このような審判に基づいて子の引渡しを直接強制することができるかどうかについては争いがあり,直接強制を否定する見解もないわけではない。しかしながら,子の監護者指定及び子の引渡しは,子の監護に関する問題について,家庭裁判所調査官や医務室技官等の専門的知見を有するスタッフが配置され,心理テストその他の実施が可能な諸施設の整備された家庭裁判所が,その専門性を生かして判断するものであるから, このような専門性の高い家庭裁判所の審判が確定し,夫婦の一方が子の監護者としての地位を認められた以上は,その判断は最大限尊重されるべきであって,可及的速やかに審判結果が実現され,監護親の下において子の監護養育をさせることが,子の不安定な立場を解消し,その心情の安定や健全な成長に資するものであって,子の最善の福祉に合致するものというべきである。したがって,親権ないし監護権に基づく子の引渡請求の法的性質は,単なる妨害排除請求権にとどまらず,引渡請求権としての性質をも有すると解すべきであり,その実現にあたっては,民事執行法169条に基づく動産の引渡執行の規定を類推適用して,直接強制を行うことが許されると解するのが相当である。仮に,子の引渡請求について間接強制しか許されないとすると,間接強制の制裁を受けても頑なに引渡しに応じない者に対しては,子の引渡しを命ずる審判がなされても,何ら実効性を伴わない画餅に帰することになりかねず,また,人身保護請求制度を利用するにしても,さらに多大な時間,費用等を要することとなり,そのような結果は,家庭裁判所の審判制度への信頼を損ない,ひいては自力救済を助長することにもなりかねず.著しく相当性を欠くものというべきである。もっとも,動産の引渡執行の規定を類推適用するとはいえ,執行対象が人格の主体である児重である以上,児童の人格や情操面への配慮を欠くことはできなし、から,執行官は,直接強制にあたり,児童の人格や情操面へ最大限配慮した執行方法を採るべきことはもとより当然のことである。
(3) 申立人は,未成年者は当時7歳9か月であり,意思能力が認められるから,未成年者に対する直接強制は許されない旨主張する。しかしながら,一般的にし、えば,小学校低学年の年齢程度の児童は,多少の個体差が存在するとしても,客観的に善悪,適否の判断力を備えているとはし、いがたく,意思能力を有していないと解すべきである。本件の未成年者は,執行当時7歳9か月の児童であり,小学校2年生に進学したばかりであるから,一般的には, その当時意思能力を有していたものと解することはできない。また,本件処分当時,未成年者が意思能力を有していたと認め得る特段の事情もうかがわれなし、から,執行官が未成年者をBに引き渡した本件処分が違法,不当なものであるということはできなし、。したがって,申立人の主張は採用できない。
(4) 申立人は,基本事件において,執行官は,申立人に対し子の引渡しの履行の催告もせず,未成年者が一人で帰宅するところを路上で連れ去っているがら,同執行は明らかに未成年者を物と同視し,未成年者の人権を無視する不当なものである旨主張する。そこで検討すると,前記認定のとおり,執行官は,平成21年×月×日午後×時×分,申立人住所地付近の路上で・未成年者を確認し,同所において執行に着手したこと,本件処分には,基本事件の債権者であるB及びその代理人が立ち会ったこと,同所において,未成年者が申立人に電話を掛けたので,執行官から申立人に対し,本件審判書に基づき未成年者をBに引き渡す旨を説明したこと,執行官は,同日午後×時×分,未成年者をBに引き渡し,本件処分を終了したことが認められるのであって,執行官の本件処分の方法及び態様に違法,不当な点はないというべきである。したがって,申立人の主張は採用できない。
4 以上によれば,申立人の本件申立ては理由がなく,これを却下すべきであるから,主文のとおり決定する。(裁判長裁判官小林崇裁判官河野泰義松永晋介)

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子の監護に関する処分(面接交渉)審判に対する抗告事件

第1 抗告の趣旨及び理由
奈良家庭裁判所が平成20年同第○○号子の監護に関する処分(面接交渉)申立事件につき,平成20年×月×日付けでした審判は,これを取り消し,本件を奈良家庭裁判所に差し戻すとの裁判を求めた。抗告理由の要旨は,①抗告人は,奈良家庭裁判所平成15年岡第○○号子の監護に関する処分(面接交渉)申立事件(以下「前件審判」という。)についての平成16年×月×日付け前件審判で認められた未成年者への誕生日とクリスマスのプレゼントの送付を,入国管理局により収容されていた期聞を除いて毎年欠かさず送り続け,また,同審判において相手方が抗告人に送付することとされた未成年者の写真を相手方に送付するよう求める働きかけをしてきたのに,これと反する認定をした原審判は不当である,②相手方は審判で面接交渉が定められれば,立ち会う意向であるから,抗告人と未成年者の直接の面接交渉が可能であるのに,これを認めなかった原審判は不当である,③前件審判で命じられた義務さえ守ろうとしない相手方は,前件審判と同様の内容を維持した原審判による義務も守らず,未成年者の福祉に反することになり,また,抗告人が退去強制となった場合には,未成年者が父である抗告人と会う機会はほぼ永久に失われることになり,未成年者の福祉に反し,不当である,というものである。
第2 当裁判所の判断1 事実関係一件記録によれば,以下の事実が認められる。
(1) cx.コ国国籍を有する抗告人(1966年×月×日生)は,平成5年×月ころ,短期滞在の在留資格で・来日し,残留期間が経過したまま4年間不法に残留し,その後は日本人女性と2回婚姻し, 日本人の配偶者等の在留資格を得て日本に在留していたところ,平成12年ころ相手方(昭和55年×月×日生)と知り合い,平成13年×月×日に婚姻した。抗告人と相手方との聞には,同月×日,長男である未成年者が出生したが,平成14年×月末文は×月初めころ別居し,同月×日,未成年者の親権者を相手方と定めて協議離婚した。未成年者は,出生以来,相手方の実家で相手方及び相手方の両親とともに生活している。
(2) 抗告人は,平成14年×月×日,未成年者との面接交渉を求める調停を申し立てたが,調停は不成立となって審判手続に移行し,平成16年×月×日,抗告人と未成年者が面接交渉する時期,方法等を定めることを求めだ主位的申立てが却下され,相手方に対し,① 3か月に1回.3か月以内に撮影した未成年者の写真3枚を送付すること及び②抗告人が未成年者にクリスマス及び誕生日にカード及びプレゼントを送付することを妨げてはならないとの内容の前件審判がなされ,確定した。なお,上記調停事件と並行して,抗告人から親権者変更調停事件及び子の監護に関する処分(養育費支払)調停事件が申し立てられたが,いずれも取り下げられた。
(3) 抗告人は,相手方との離婚後の平成14年×月×日に在留期間が満了した後も, 日本に不法に残留していたところ,平成18年×月×日,在留特別許可を求めて入国管理局に出頭し,同年×月×日に収容令書が執行されて収容された。抗告人は, co入国管理局入国審査官から出入国管理及び難民認定法(以下「入管法」という。) 24条4号ロ(不法残留)に該当するなどの認定を受け,○○入国管理局特別審査官から同認定に誤りがないとの判定を受けて異議の申出をしたが,同年×月×日にco入国管理局長から,上記異議には理由がなく,在留を特別に許可しない旨の裁決を受け,同月×日に00入国管理局主任審査官から退去強制令書が発せられた。抗告人は,平成19年×月×日に上記裁決及び上記退去強制令書発付処分の取消しを求める訴えを提起し,①抗告人は未成年者との面接交渉権を有し,未成年者の健全な成長のためにも抗告人と面接交渉することは極めて重要であるのに,退去強制となれば,事実上未成年者と面接交渉することはほぼ不可能であり.抗告人及び未成年者にとって回復不可能な損害となり,特に未成年者の最善の利益に反し,児童の権利条約等の条約に抵触すること,②抗告人は来日して以来約13年間,入管法違反以外に何らの違法行為も行わず, 日本でまじめに生活し,十分な日本語能力もあり,日本での生活に十分に馴染み,不法残留は未成年者の養育及び成長を気にかけ,面接交渉を強く望んでし、たためであって,その情状は重くないこと,③抗告人の00国での稼動経験,経済状況,親族の経済的余力の点から,抗告人がco国で生活することは困難であることなどを主張した。抗告人は,同年×月×日に仮放免され,その後は一時期友人宅で生活し,平成20年×月に現住所に転居した。
(4) 抗告人は,前件審判確定後,前記(3)の収容令書の執行を受けるまで,未成年者にクリスマス及び誕生日にカード及びプレゼン卜を送付したほか,相手方と別居した当初は月額10万円を,その後は概ね毎月l回3万円程度を未成年者の養育費として相手方に送金した。他方,相手方は,抗告人に対し,前件審判の約1か月後及び平成18年×月ころに未成年者の写真を送付したが,それ以外には写真を送付しなかった。抗告人は,相手方の実家に電話をかけ,相手方の両親又は相手方から未成年者の様子を聴くことがあった。抗告人は,平成18年×月×日,行政書士の立ち会いの下,相手方の父と面談して未成年者の様子について聴き,そのころ,相手方の父から,未成年者の写真並ひ・にco入国管理局及び法務大臣に宛てた,抗告人の望む処分をすることを嘆願する旨の陳述書の交付を受けたが,未成年者との面接交渉は,相手方の強い反対により実現しなかった。
(5) 抗告人は,仮放免された直後である平成19年×月×日,未成年者との面接交渉を求める調停を申し立てたが,相手方が抗告人と未成年者との面接交渉に応じる姿勢をみせなかった。抗告人は,平成20年×月×日付け及び同年×月×日付けの未成年者宛ての手紙を相手方に送付したが,未成年者に会いたいなどと記載されていたため,相手方はこれらを未成年者に見せなかった。同調停は,平成20年×月× 日に不成立となり,審判手続に移行し.同年×月×日,抗告人と未成年者との直接の面接交渉を認めず,相手方は抗告人と未成年者との間の手紙のやりとりを妨げてはならないとの内容の原審判がなされた。相手方は,同年×月になってから.未成年者の写真3枚を抗告人に送付した。(6) 抗告人が提訴した前記(3)の訴訟につき,同年×月×日,大阪地方裁判所は,抗告人の請求をいずれも棄却する旨の判決をなした。同判決において,抗告人が相手方に対して未成年者の養育費を送金したり,未成年者に対してプレゼン卜を送付して面接交渉の実現を望みながら,面接交渉をめぐる紛争が未解決のまま推移した点で,抗告人の不法残留に至った経緯については酌むべきところがないとはいえないとしながら,抗告人が短期滞在の在留資格で来日して以来,約4年聞にわたり不法残留して不法就労を続け,その後, 日本人女性2名と婚姻し,2人目の妻と別居して事実上の離婚状態にありながら,婚姻同居が継続しているかのような書類を作出して在留許可を受けるなど,このような抗告人の在留状況が,在留特別許可の許否の判断に当たり,抗告人に不利益にしんしゃくされてもやむを得ないと指摘した。そして,抗告人は未成年者の出生後約半年間同居したのみで,その後, 今日に至るまで一度も直接面接交渉していない上,相手方による未成年者の養育状況には特段の問題はうかがわれないことなどからして,退去強制令魯発付等の結果として抗告人と未成年者との面接交渉が困難になるとしても,そのことが未成年者の福祉に反するとは直ちに認めがたいことなどをも併せ考えると,前記(3)の裁決において,抗告人の在留を特別に許可しなかったCわ入国管理局長の判断に裁量権を逸脱し,文は濫用した理庇は認められず,また,同裁決の思庇を前提とする前記(3)の退去強制令書発付処分が取り消されなければならない旨の主張は理由がないとして,抗告人の請求を棄却した。
(7) 抗告人の生活状況及び意向ア抗告人は,不法滞在により就労が禁止されているため収入がなく,在日○国人の団体や親族から援助を受けて生活している。イ抗告人は,未成年者が日本人の両親を持つ子に比べて自らの出生について関心を持つことが予想されるとして,仮に退去強制となっても,一目でも未成年者と会っておく意義があると考えており,未成年者に○国のことを話したいし,来日してから肌の色のため差別を受けることがあったため,その対処方法についても話しておきたいとの意向である。また,抗告人は,相手方を嫌つてはいないが,未成年者との面接交渉の機会を利用して,相手方との復縁を求めるつもりはないと述べた。抗告人としては,相手方が面接交渉の条件とした後記(8)エの条件を概ね了承するが,回数については,相手方の仕事の繁忙期を除いて,毎月1回を希望している。なお,抗告人は,相手方が指定する待合せ場所について,抗告人がCわ県外に出る場合には, 事前にCわ入国管理局の許可を得る必要があるため,早めに場所を指定してもらうことを希望している。(8) 相手方及び未成年者の生活状、況及び意向ア相手方は,抗告人と離婚した後も未成年者とともに実家で両親と生活し,相手方の父が経営する学校教材等の販売をする会社で営業職として働いている。そのため,毎年,新学期が始まる前後の3月から5月及び年末の12月が特に忙しし、。イ未成年者は,小学校1年生に在籍し,平日の放課後並びに春,夏及び冬の長期の休みの聞は,学童保育で過ごしている。未成年者は,外国人の親を持つことが分かる風貌であり, 3歳のころ,父がCわ国人であることを伝えたが,それ以上に詳しい事情は伝えていなし、。また.自宅には抗告人の写真もないため,未成年者は抗告人のことは全く知らない状態である。相手方は,原審判に移行する前の調停段階で,未成年者に対し,抗告人と会いたいかどうかを尋ねた際. i会いたいかどうかわからない。とりあえず,やめておく。」と答えていたと述べた。ウ相手方は,抗告人が日本での在留資絡を得る手段として未成年者との面接交渉を求めていると考えており,その動機が信用できないとして面接交渉には反対している。また,抗告人が,未成年者との面接交渉の機会を利用して相手方に復縁を求めてくる可能性があるとも考えている。さらに,相手方は,未成年者が抗告人に馴染まない可能性があるし,仮に馴染んでも,抗告人が退去強制されると,未成年者にショックを与える可能性があるから,このまま抗告人に未成年者を会わせないのが一番ょいとの意向である。エ相手方は,どうしても抗告人と未成年者との面接交渉をさせなければならないのであれば,面接には相手方が付き添いたいし,頻度は半年に1回程度とし,仕事の繁忙期は避けてほしい,曜日は土曜日とし,昼間の1時間から2時間程度とし,抗告人は,相手方に対し,面接交渉に必要なこと以外に連絡をしないでほしいし,相手方の了解なく,未成年者と直接約束事をしないでほしいなどと述べた。
2 前記の事実関係を前提に,抗告人と未成年者との面接交渉について検討する。
(1) 面接交渉の可否子と非監護親との面接交渉は,子が非監護親から愛されていることを知る機会として,子の健全な成長にとって重要な意義があるため,面接交渉が制限されるのは,面接交渉することが子の福祉を害すると認められるような例外的な場合に限られる。ところで,相手方は,抗告人が未成年者との面接交渉を求める動機を疑問視し,仮に未成年者が抗告人と馴染んだ後に抗告人が退去強制された場合に未成年者に与える影響をも懸念して面接交渉に反対している。確かに,抗告人は,前記1(3)の訴訟において,未成年者との面接交渉が抗告人及び未成年者にとって極めて重要であり,抗告人が退去強制となると抗告人と未成年者にとって回復不可能な損害となる旨主張しているが,これは,抗告人が日本での在留許可を求める理由のーっとして主張するものであり,そのことゆえに抗告人が日本で・の在留許可を求めるために未成年者との面接交渉を利用しているとまで・は認められなし、。また,抗告人が未成年者との面接交渉の機会を利用して相手方との復縁を求める可能性があるとも認められない。抗告人は,上記訴訟の1審で敗訴したことをも踏まえ,仮に退去強制となる場合でも, 日本に滞在している聞に未成年者と面接交渉し,未成年者に抗告人が父であることを知らせ,母国00固について話をするなど,直接の面接交渉を実現することに意義があると考えている。確かに,未成年者が抗告人と面接交渉し,抗告人への愛着を感じるようになったのに抗告人が退去強制となった場合には,未成年者が落胆じ悲しむことも考えられるが,未成年者が父を知らないまま成長するのに比べて,父を認識し,母だけではなく,父からも愛されてきたことを知ることは,未成年者の心情の成長にとって重要な糧になり, また,父が母国について未成年者に話すことは,未成年者が自己の存在の由来に関わる固について知る重要な機会となる。抗告人が日本を退去強制となると,当面は未成年者との直接の面接交渉は困難になるが,手紙等の交換を通じての交流が統けば,未成年者が成長した後も親子聞の交流は可能であることにかんがみると,未成年者の福祉を図るためには,現時点で抗告人と未成年者との直接の面接交渉を開始する必要性が認められる。したがって,相手方は,抗告人に対し, 抗告人と未成年者との面接交渉をさせる義務が認められる。
(2) 面接交渉の条件前記のとおり,抗告人と未成年者との面接交渉を認めるとしても,その条件については,未成年者の年齢やこれまで未成年者が抗告人を知らなかったこと,相手方の生活状況や意向等にかんがみると,面接交渉の頻度は3か月に1固として相手方の仕事の繁忙期を外し(平成21年2月以降,毎年2月. 6月. 8月及び11月).開始時聞は午後O時とし,初回は1時間.2回目以降は2時間とし,相手方が付き添うことなどを内容とする主文第2項のとおりとするのが相当である。
3 以上のとおり,相手方には,抗告人に対し,主文第2項の条件で,抗告人と未成年者との面接交渉をさせる義務があると判断する。よって,本件抗告は,上記説示に沿う限度で理由があるから,家事審判規則19条2項により,原審判を変更することとし,主文のとおり決定する。(裁判長裁判官松本哲拡裁判官白石研二永井尚子)

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2012年2月26日 | コメント/トラックバック(0) |

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子の監護に関する処分審判に対する抗告事件

第1 抗告の趣旨及び理由
本件抗告の趣旨は,原審判を取り消し,未成年者の監護者を抗告人単独に変更し,未成年者の養育場所を日本国に変更する旨の裁判を求めるものであり,その理由は,別紙「抗告理由書」に記載のとおりである。
第2 当裁判所の判断
1 当裁判所も,未成年者の監護者を抗告人単独に変更し,未成年者の養育場所を日本国に変更するよう求める抗告人の本件各申立ては,我が固に国際裁判管轄を認めることができず不適法であると判断する。その理由は,後記2のとおり付加するほかは,原審判の理由説示のとおりであるから,これを引用する。
2 抗告人は,未成年者の児童育成手当及び児童手当の受給を開始し,未成年者の国民健康保険証や乳幼児医療証の発行を受け,未成年者が保育園に通園を始めているから,未成年者が抗告人の住所において共に生活を送っていることは明らかであり,その住所地に国際裁判管轄があることは明らかである旨主張する。しかし,上記引用の原審判の理由説示のとおり,抗告人は,アメリカ合衆国内を未成年者の居住場所とする内容の監護計画に合意し,その監護計画は同国の裁判所の命令として承認されたものである。その命令の居住スケジュールの下において,抗告人が,未成年者を連れて一時帰国し,そのまま滞在を続け,未成年者の児童育成手当及び児童手当の受給を開始し, 未成年者の国民健康保険証や乳幼児医療証の発行を受け,未成年者を保育園に通固させているとしても,上記命令に反して一方的に作出した状態を理由として,未成年者の住所又は常居所地が日本にあると認めることはできないというべきである。したがって,本件各申立てについて我が国に国際裁判管轄を認めることはできなし、。抗告人の主張は採用することができない。
3 よって,原審判は相当であり,本件抗告はいずれも理由がないから棄却することとして,主文のとおり決定する。(裁判長裁判官石川善則裁判官菊池洋一徳増誠一)

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性別の取扱いの変更申立事件

第1
申立て申立人の性別の取扱いを男から女に変更する。
第2 認められる事実戸籍及び除籍各謄本,戸籍及び除籍各記録全部事項証明書,改製原戸籍謄本,各診断書,染色体検査報告書.証明ID.陳述書によれば,以下の事実が認められる。
1 申立人の身分関係等に関係する事実
(1) 申立人は,昭和40年生まれの男性である。
(2) 申立人は,昭和63年×月にBと婚姻し.平成2年×月に同人と協議離婚した。
(3) その後.cが申立人の子を妊娠し,平成3年×月に同人と婚姻して長女D (平成3年×月×日生まれ)をもうけた。しかし,平成6年×月には,同人と協議離婚した。
(4) さらに,申立人は,平成6年×月にEと婚姻し,平成11年×月に同人と協議離婚し,現在は婚姻していない。(5) 長女Dは,平成20年6月23日. F (昭和31年×月×日生まれ)と婚姻し,同年7月4日協議離婚した。
2 性同一性障害等に関係する事実
(1) 申立人は,遅くとも.cとの離婚.Eとの婚姻のころには性別違和が持続するようになっていたところ,妻Eにそれを打ち明けた上でその理解を得て,平成9年からホルモン療法を開始し,平成10年に顔の女性化手術を受けた。(2) さらに,平成11年×月,タイの病院で2段階の性別適合手術を受けた。その結果,申立人の生殖腺の機能は永続的に失われ,性器に係る部分の状態は女性の性器に係る部分ととれる状態となっている。
(3) 申立人は,平成12年×月に名を「(X)」から現在の名に変更した。また,同年中に.声を女性化する声帯手術を受けた。
(4) 申立人は,平成20年×月及び平成21年×月.○○クリニック○○医師及びロロクリニック口口医師から,一致して,性同一性障害者であると診断された。第3 当裁判所の判断第2の各事実を前提に判断する。なお,本件は平成20年12月18日に申し立てられたものであり.同日施行された性向一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律の一部を改正する法律(同年法律第70号)による改正後の性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律(以下,単に「法J-という。)が適用される。1 法2条については) 申立人の陳述書中の陳述によっても,申立人が心理的には女性であるとの確信を抱いた時期は明らかではないが,前記認定の申立人の婚姻史および治療史を総合して判断すれば,遅くとも,平成9年にホルモン療法を開始したころ以降は,現在に至るまで,心理的には女性であるとの持続的な確信を持ち,かつ自己を身体的および社会的に女性に適合させようとする意思を有しているものと認められる。(2) そして,前記第2, 2(4)の診断のうち平成21年×月のものにおいては,申立人の婚姻史を勘案しても,申立人には上記持続的確信および性別適合意思があるとの診断が一致している。
(3) したがって,申立人は,法2条に定める性同一性障害者である。2 法3条1項1号, 2号, 4号及び5号について前記認定事実によれば,申立人は,法3条l項1号, 2号, 4号及び5号の各要件に該当する。3 法3条l項3号について(1) 前記第2, 1 (3)及び(5)認定のとおり,申立人の長女Dは平成3年×月×日生まれ(17歳)であるが,同人は,平成20年6月23日の婚姻の届出により,成年に達したものとみなされるから(民法753条),申立人は,形式的には,現に未成年の子がいないとの要件(法3条1項3号)に該当する。
(2) しかし,前掲各資料及び職権により行った事実の調査(関係人D審問及び申立人審問の各結果)によれば,上記婚姻についてはさらに以下の事実が認められる。長女Dは婚姻届出時16歳(高校1年生),夫Fは同51歳であるところ, Dは, FはDが12歳くらいのころから申立人とDの自宅に同居していると述べ,申立人も, Fは申立人とD双方の友人であるが年齢的にも近い申立人が先に知り合ったと述べている。Dは,家事審判官の質問に対し, Fの年齢については「50くらい」と,職業については「知らない」と,結婚した理由については「結婚したいからじゃないっすか」,「好きだったんじゃないっすか」としか答えない。さらに, DとFについては,婚姻届の11日後である平成20年7月4日に離婚届が提出されている。Dは,家事審判官の質問に対し,離婚したのはr7月4日だから独立しようって感じだったJ,「離婚したかったから離婚したって感じです」と答え,離婚後も,婚姻前,婚姻中と同様に,申立人, D, Fの3人での同居生活が続いている。(3)上記(2)の各事実及び本件に現れた一切の事情を総合的に考慮すれば,申立書の申立ての実情欄及び第2, 2 (4)の診断書の家庭環境等の欄に「申立人は平成15年から交際していた男性と長女とともに同居している」と記載されているその男性がFであり, DとFは,平成20年6月18日に同年法律第70号が公布されたことを受けて,同法が施行されれば申立人が性別取扱い変更の申立てをすることができるよう,DとFの聞には実質的な婚姻意思がないのにDについて婚姻による成年擬制を受けることを目的として同月23日に婚姻の届出をしたものと強く推認される。そして,申立人は,申立人とFの関係, Dの生活実態等から, Dの婚姻が婚姻意思を欠くものであったことを知る立場にありながら,父としてこれに同意した上で(民法737条1項),同婚姻によって戸籍上はDについて成年擬制が及ぶことを利用して, Dが満20歳に達するのを待つことなく平成20年法律第70号の施行当日に本件の申立てを行ったものであり,本件申立ては法の趣旨に反し,法により認められる申立権を濫用したものと認めるべきである。なお,申立人は,審聞において, DとFの婚姻,離婚については申立人の申立てとは関係がなくその全部の経緯は知らない等と述べ,またFも婚姻は当事者聞の意思によるものである旨の意見曹を提出したが,いずれも採用することができない。
第4 結論よって,申立人の申立ては不適法であるからこれを却下することとして,主文のとおり審判する。(家事審判官松村徹)

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