特別養子縁組成立申立事件

1 申立の趣旨
主文同旨
2 当裁判所の判断本件記録によれば,次の各事実を認めることができる。
(1) 申立人(養父となる者)A (以下「申立人A」という。)と申立人(養母となる者)B (以下「申立人B」という。)は,平成16年×月×日に婚姻した夫婦であり,いずれも現在25歳以上の者であるが,申立人Bは.Cわ症候群で,子を産むことができなかった。
(2) 事件本人(養子となる者の父)0 (以下fDJという。)と,事件本人(養子となる者の母)Eは,夫婦であり,申立人Bは,両名聞の長女である。
(3) 事件本人(養子となる者の母)E (以下fEJという。)は.申立人ら夫婦のためにし、わゆる代理出産することを決意し,申立人ら夫婦,D等の家族の了解を得た。Eは.平成19年×月.00県所在のクリニッグを受診し,ホルモン治療を受けた上申立人Bの卵子と申立人Aの精子を受精させた匪の移植を受けて妊娠し,平成20年×月×日,事件本人(養子となる者)c (以下「事件本人」という。)を出産した(なお.女性が自己以外の女性の卵子を用いた生殖補助医療により子を懐胎し出産した場合における出生した子の母は,その子を懐胎し出産した女性であることについては,最高裁判所第二小法廷平成19年3月23日決定,平成18年(許)第47号,最高裁判所民事判例集61巻第2号619頁参照。)。
(4) 申立人Bは,事件本人の出生に合わせて母乳を出すための薬を飲み,事件本人に与えた。申立人ら夫婦は,平成20年2月下旬に,事件本人を自宅に引き取り,以後,約10か月間,事件本人を監護養育してきている。
(5) Eは,事件本人を申立人ら夫婦のために妊娠.出産したと考えている。E及びD夫婦は.いずれも稼動して収入を得ており.経済的な不安はないが,申立人ら夫婦が事件本人を責任を持って育てるべきであると考えており,事件本人を自身らの子として育てる意思はなく,本件特別養子縁組を希望している。
(6) 申立人ら夫婦は,事件本人の血縁上の親であり,事件本人を責任を持って育てる意向である。申立人ら夫婦は.仲が円満で,愛情を持って事件本人を監護養育しており,その心身の健康状態,居住環境,経済状態等も安定している。申立人ら夫婦による事件本人の監護養育は.(4)のとおり約10か月が経過し,良好に推移しており.事件本人の発育・発達状況も順調である。当裁判所家庭裁判所調査官の調査においても,申立人ら夫婦に養親としての適格性が認められること及び申立人ら夫婦と事件本人聞の適合性が良好であることが確認されている。
3 以上のとおり,本件は,いわゆる代理出産により出生した事件本人について,卵子及び精子を提供した申立人ら夫婦との特別養子縁組許可の申立てをした事件である。いわゆる代理出産については.医学的,倫理的・社会的,法的各側面から,その是非を含めた様々な議論がされ,上記最高裁判所決定においても,法制度としてどう取り扱うか改めて検討されるべき状況にあり,医療法制,親子法制の両面にわたる検討を経て,立法による速やかな対応が強く望まれるとされている(なお,いわゆる代理出産の検討状況について, 日本学術会議生殖補助医療の在り方検討委員会平成20年4月8日報告「代理懐胎を中心とする生殖補助医療の課題一社会的合意に向けて一J参照)。しかし.出生した子と,血縁上の親との聞にどのような関係を成立させるかについては,代理出産の是非と必然、的に連動するものではなく,出生した子の福祉を中心に検討するのが相当であり.上記最高裁判所決定の補足意見においても,事案によっては,法的に親子関係を成立させるため.現行法において,特別養子縁組を成立させる余地がある旨が指摘されている。
4 そうすると,本件においては,申立人ら夫婦の養親としての適格性及び事件本人との適合性にはいずれも問題がない上,申立入ら夫婦は,事件本人の血縁上の親であり,事件本人を責任を持って監護養育していく其撃な意向を示していること,他方. E及びD夫婦は,申立人ら夫婦が事件本人を責任を持って育てるべきであると考えており,事件本人を自身らの子として監護養育していく意向はなく,かかるE及びD夫婦に事件本人の監護養育を委ねることは.その監護が著しく困難文は不適当であることその他特別の事情があると認められるから,事件本人を申立人ら夫婦の特別養子とすることが,その利益のために特に必要があるというべきである。よって,本件申立てを相当と認め,主文のとおり審判する。(家事審判官菊池絵理)

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