持分権移転登記手続請求事件
上告代理人○○○○,同○○○○の上告受理申立て理由について
1 本件は,相続人の1人が.被相続人からその財産全部を相続させる趣旨の遺言に基づきこれを相続した他の相続人に対し,遺留分減殺請求権を行使したとして,相続財産である不動産について所有権の一部移転登記手続を求める事案である。遺留分の侵害額の算定に当たり,被相続人が負っていた金銭債務の法定相続分に相当する額を遺留分権利者が負担すべき相続債務の額として遺留分の額に加算すべきかどうかが争われている。
2 原審が適法に確定した事実関係の概要等は,次のとおりである。
(1) Aは,平成15年7月23日.Aの有する財産全部を被上告人に相統させる旨の公正証書道言(以下「本件遺言」という。)をした。本件遺言は,被上告人の相続分を全部と指定し,その遺産分割の方法の指定として遺産全部の権利を被上告人に移転する内容を定めたものである。
(2) Aは,同年企月.ABに死亡した。同人の法定相続人は,子である上告人と被上告人である。
(3) Aは,相続開始時において,第1審判決別紙物件目録記載の不動産を含む積極財産として4億3231万7003円,消極財産として4億2483万2503円の各財産を有していた。本件遺言により,遺産全部の権利が相続開始時に直ちに被上告人に承継された。
(4) 上告人は,被上告人に対し,平成16年4月4日,遺留分減殺請求権を行使する旨の意思表示をした。
(5) 被上告人は.同年5月17日,前記不動産につき,平成15年企月企日相続を原因として.Aからの所有権移転登記を了した。
(6) 上告人は.Aの消極財産のうち可分債務については法定相続分に応じて当然に分割され.その2分のlを上告人が負担することになるから,上告人の遺留分の侵害額の算定においては.積極財産4億3231万7003円から消極財産4億2483万2503円を差し引いたた748万4500円の4分のlである187万1125円に,相続債務の2分のlに相当する2億1241万6252円を加算しなければならず,この算定方法によると,上記侵害額は2億1428万7377円になると主張している。これに対し,披上告人は,本件遺言により被上告人が相続債務をすべて負担することになるから,上告人の遺留分の侵害額の算定において遺留分の額に相続債務の額を加算することは許されず,上記侵害額は,積極財産から消極財産を差し引いた748万4500円の4分のlである187万1125円になると主張している。
3(1 )本 件のように,相続人のうちの1人に対して財産全部を相続させる旨の遺言により相続分の全部が当該相続人に指定された場合,遺言の趣旨等から相続債務については当該相続人にすべてを相続させる意思のないことが明らかであるなどの特段の事情のない限り,当該相続人に相続債務もすべて相続させる旨の意思が表示されたものと解すべきであり,これにより,相続人聞においては,当骸相続人が指定相続分の割合に応じて相続債務をすべて承継することになると解するのが相当である。もっとも,上記述言による相続債務についての相続分の指定は,相続債務の債権者(以下「相続債権者」という。)の関与なくされたものであるから,相続債権者に対してはその効力が及ばないものと解するのが相当であり,各相続人は,相続債権者から法定相続分に従った相続債務の履行を求められたときには,これに応じなければならず,指定相続分に応じて相続債務を承継したことを主張することはできないが,相続債権者の方から相続債務についての相続分の指定の効力を承認し,各相続人に対し.指定相続分に応じた相続債務の履行を請求することは妨げられないというべきである。そして,遺留分の侵害額は,確定された遺留分算定の基礎となる財産額に民法1028条所定の遺留分の割合を乗じるなどして算定された遺留分の額から,遺留分権利者が相続によって得た財産の額を控除し,同人が負担すべき相続債務の額を加算して算定すべきものであり(最高裁平成5年同第947号同8年11月26日第三小法廷判決・民集50巻10号2747頁多照),その算定は,相続人聞において,遺留分権利者の手元に最終的に取り戻すべき遺産の数額を算出するものというべきである。したがって,相続人のうちの1人に対して財産全部を相続させる旨の遺言がされ,当該相続人が相続債務もすべて承継したと解される場合,遺留分の侵害額の算定においては,遺留分権利者の法定相続分に応じた相続債務の額を遺留分の額に加算することは許されないものと解するのが相当である。遺留分権利者が相続債権者から相続債務について法定相続分に応じた履行を求められ,これに応じた場合も,履行した相続債務の額を遺留分の額に加算することはできず.相続債務をすべて承継した相続人に対して求償し得るにとどまるものというべきである。
(2) これを本件についてみると,本件遺言の趣旨等からAの負っていた相続債務については被上告人にすべてを相統させる意思のないことが明らかであるなどの特段の事情はうかがわれないから,本件遺言により.上告人と被上告人との間では,上記相続依務は指定相続分に応じですべて被上告人に承継され,上告人はこれを承継していないというべきである。そうすると,上告人の遺留分の侵害額の算定において,迫留分の額に加算すべき相続債務の額は存在しない乙とになる。
4 以上と同旨の原審の判断は,正当として是認することができる。論旨は採用することができない。よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。(裁判長裁判官堀簡幸男裁判官藤田宙靖那須弘平田原睦夫近藤崇晴)
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名の変更許可申斗却下審判に対する抗告事件
第l 抗告の趣旨反び理由
l 抗告人は,原審が,平成21年×月×日付けで,抗告人の名であるiOJを「ムJに変更することの許可を求める申立てを却下する審判をしたので,抗告人がこれを不服として即時抗告し原審判を取り消し,本件を原審に差し戻すことを求めた事案である。
2 抗告理由の要旨は,次のとおりである。
(1) 抗告人が男性名を使用しなければならないことで多大の精神的苦痛を受けている。
(2) .抗告人は,平成18年×月×日に性同一性障害であるとの診断を受けて以来,女性として生活すべく精神的及び身体的治療(ホルモン療法,精巣摘出)を受け,将来的には性別適合手術を受ける予定である。(3) 変更後の名である「△」の使用実績は少ないが,使用実績の有無・程度を考慮するのは相当でない上,抗告人は.「△」への変更が許可されてから使用する予定であったため,インターネット上でハンドルネームとして「ム口Jという名を使用し,懸賞応募等で「△」という名を使用していたが,それ以外の社会生活では使用実績が少ない。しかし,原審において,使用実績があった方がいいと聞いたので,今夏,親戚,知人に「ム」に改名したことを通知し,公共料金の請求書の宛名も△」にしてもらっており,最近ではiAム」宛の郵便物も増え:てきている。
(4) 抗告人は婚姻しており, また,教職に就いているが,そのような場合でも名の変更が許可されている例もある。
(5) 以上によれば,抗告人の名の変更には「正当な事由」があり,変更を許可しなかった原審判は不当である。
第2 当裁判所の判断
l 本件記録によれば,以下の事実が認められる。
(1) 抗告人は,昭和32年×月×日に父Bと母Cの長男として出生した。
(2) 抗告よは,物心がついたときから自分の生物学的性別(男性)について違和感を感じており,爪にマニキュアを塗るまねをしたり,姉の服や靴を身につけたこともあったが,大学に入ってからは女性的な好みを隠して男性として振る舞うように努力し,大学卒業後,教員として働くようになってからはその方が円滑な社会生活を送れると考えて.自分の中の女性的な面を隠して男性として生活してきfこ。
(3) 抗告人は,昭和58年×月×日.Dと婚姻の届出をし現在まで同居しているが,両名の聞に子はし、なし、。なお,当裁判所の質問に対する回答書によれば.婚姻の点について,抗告人は,当時は,社会生活を円滑に送るために自分が女性であることを封印していたころであり,妻とは仲の良い友達であったことから,婚姻関係を結ぶことで男性であるととを確立できると思い婚姻した,妻とは婚姻初期には性交渉はあったが,徐々に減り,ここ20年間は性交渉はなく,その間,性同一性障害が社会的にも認知されてきたので,妻も抗告人の気持ちを理解してくれるようになり,時にはお互いの服を交換したりもしており,本件の申立てについても支援してくれているというものである。
(4) 抗告人は,性同一性障害というものが医学的にも認められ,恥ずべきことではないと知り,平成17年×月×日に00病院において性同一性障害(疑い)との診断を,平成18年×月×自にはムム病院において同障害である旨の確定診断をそれぞれ受け,平成19年×月か.ら平成21年×月×日まで口口病院でホルモン療法を受けている。さらに,並行して,00市内のxx病院においてカウンセリングを受けた上,平成19年×月×日にホルモンバランスのため,除皐術を受けた。
(5) 平成21年× 月×日付けのムム病院医師の診断書には, I染色体検査では正常男性核型,心理検査では存性への同一化を指摘されている。今後とも女性として生活していく意志は固く,現在ホルモン療法も行っているため,改名は必要であると考える。Jと記載されている。
(6) 抗告人は,女性用の衣服しか持っていないが,勤務先の学校では,勤務の性質上でジャージ一等を専ら使用しており(ただ;し,色は赤やピンクが多い。),特には女性であることを示すような格好をしているわけではないが,抗告人は,私生活と区別して職場では男性として振る舞うことが次第に難しくなっており,また, ホルモン療法等の影響もあって, 自然に女性的な面が出ていると認識している。勤務先の校長,教頭等の上司には説明しており,同僚・職員にも説明しており,保護者等には性同一性障害である旨の説明はしていないが,本件が許可されれば,管理職と抗告人とで保護者に説明をする予定にしている。
(7) 抗告人が申し立てる変更後の名である「△」については,抗告人は,自分が運営するブログのハンドルネーム等に「△」や「△□」という名を使ったり,親しい友人の間で「△」という名を使ったこ62・8ー78裁判例(家事)とはあるが,名の変更許可を受けてから正式に使用することを考えていた。しかし,本件申立て後,知人等にIA.6.Jの氏名で郵便物を出し, IAムJ宛の返事が来ており,また,公共料金の請求先の氏名もIAム」に変更してもらった。
2 上記認定事実に基づき.本件申立ての可否について検討する。
(1) 戸籍法107条の2は,名の変更には正当な事由のあることが必要である旨定めているところ, これは,名は氏とともに人の同一性を明らかにするものであって,名を変更することは一般社会に対して大きな影響を及ぼすものであるから, これをみだりに変更することを許さ江いこととして,呼称秩序の安定を確保するとともに,当人に当該名を使用することによって社会生活上著しい支障があって,当該名の使用を強いることが社会観念上不当であるとか,営業上や技芸上の襲名のように,変更後の名を使用することが当人の社会生活上必要かっ相当であるという場合などには名の変更を認めることとし公益と個人の利益の調和を図ろうとするのがその法意であると解される。
(2) 本件においては,抗告人は,性同一性障害に擢患しており,社会生活上, 自己が認識している性とは異なる男性として振る舞わなければならないことに精神的苦痛を感じ,抗告人の戸籍上の10Jという名は男性であることを表示していることから, FOJという名を使用することにも精神的苦痛を感じていると認められ,抗告人に責めに帰すべき事由があるなど,そのような精神的苦痛を甘受するのが相当であるといえるような事情は認められないから,上記(1)の「当該名の使用を強いることが社会観念上不当である」場合に当たるといえる。もっとも,名を変更することは当人だけの問題ではなく,一般社この点について検討す 会に対しでも影響を及ぼすものであるかぶ,学校に勤務しているが,上司や同僚は抗告人が性 ると,抗告人は,同一性障害に躍患していることを知っており,名の変更によって直ちに職場秩序に混乱を生じさせるとは認められない。また,保護者もともと抗告人は学校内でも女性らしさが表に出ていたと認められる ことも考慮すれば,校長や教頭なと、から適切な方AO 教諭と Aム教諭との聞に誤認混同が生じるおそれも少なく,教育の現場が混乱するとは直ちに認められな等については,法によ り説明すれば,い。また,名の変更によって職場以外の抗奇人の社会生活について一見一読しただけでは性混乱が生じるような事情も認められなし、。なお,抗告人は婚姻しているが,近時,別が明らかでない名も増えてきている ことは明らかであ り,i ム」という名が女性の名であるとも断定できないから, i ム」への名の変更によって直ちに同性婚の外観を呈するといえるか疑問である戸籍上の性別が男性であることは変わりがなく ,そのような外観を呈したことにより一般社会に影響を及ぼすとはいえない。
(3)上記(2) によれば,本件については,変更後の名である「ム」の使用実績が少ないとしても,抗告人の名を iOJから 「ムjに変更することには正当な事由があるといえる。
3 以上によれば,本件申立ては許可すべきであり,(3) これを却下した原審判は相当でないから,原審判を取り消し,家事審判規則19 条 2 項により主文のとおり決定する。(裁判長裁判官3 田 裁判官 松本哲j 弘岡口基一) 中義則
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児童福祉施設入所措置等の承認申立事件
(申立ての要旨)
主文同旨
(当裁判所の判断)
1 一件記録によれば,以下の各事実が認められる。
(1) 事件本人の実父と実母は,平成12年×月×日に婚姻し,同月×日に長男Dが, 平成13年×月×日に二男Eが,平成14年×月×日に事件本人がそれぞれ出生した。Dは,平成14年×月×日に○o乳児院に入所措置となり,平成14年×月×自に措置解除となり家庭引取りとなったものの,同年×月×日からは実母が事件本人を出産するために再度○○乳児院に入所措置となり,平成15年×月×日に措置解除となり家庭引取りとなった。その後.Dは,平成15年×月×日に○○○○に入所措置となったが,平成19年×月×日に家庭引取りとなった。Eは,平成14年×月×日.○○乳児院に入所措置となり,平成16年×月×自には○○○○に措置変更となったが,平成19年×月×日に家庭引取りとなった。なお,事件本人は.D及びEと異なり.出生後から平成19年×月×日に一時保護されるまで施設に入所したことはなく,実父及び実母の下で監護養育されていた。
(2) 事件本人の実母は,平成19年×月×日ころ.Eが失禁したことに立腹し,自宅において.Eに対して頭部や腹部を手けんで殴打し,左大腿部を足げりする暴行を加えた。また.事件本人の実父と実母は.事件本人の実父が運転する車内においてEが再度失禁したことに立腹し,平成19年×月×日午前零時ころ,自宅台所において.Eを正座させ.事件本人の実父が手けんでEの左頬を殴打した。事件本人の実父と実母は,平成19年×月×日,上記の各暴行が原因で逮捕され,その後,実父が暴力行為等処罰に関する法律違反,母が暴行及び暴力行為等処罰に関する法律違反を公訴事実として(x)地方裁判所に起訴され,同年×月×日.両名とも懲役1年6月,執行猶予3年の有罪判決が言い渡されて,同判決が確定した。なお,上記のとおり,事件本人の実父と実母が逮捕されたため.0O警察署長は,平成19年×月×日.00児童相談所長にD及び事件本人を児童福祉法25条により通告し(Eは平成19年×月× 日に同児童相談所に一時保護された。).同日,同児童相談所が一時保護した。そして,事件本人については,平成19年×月× 日から児童養護施設に一時保護委託中である。また,甲第2号証(Eの身体に存する誌や火傷の痕跡の状況を撮影した写真8葉)によれば,上記の公訴事実以外の箇所にも窓や火傷の痕跡が存するから,事件本人の父母らによってEに暴力行為や虐待行為がなされたことが推認される。
(3) 事件本人の両親は,平成15年×月から事件本人《わ保育園に通園させていたほかは, 自宅にて主に実母が監護養育に当たっており,保育園との連絡カードにおいても特に食事や睡眠時間といった点に関して不適切な事情は窺われない。もっとも,事件本人の前歯5本が全て虫歯であり,現在.治療を続けている。
(4) 事件本人の実母は,同人からEに対する平成19年×月×日の暴行については. 1階の階段下の廊下でなされ,その当時,事件本人は台所で遊んでいたとのことであり,同年×月×日の暴行については,事件本人は入浴中であり,暴行現場にはし、なかった旨供述している。なお,事件本人の実母は,当庁の家庭裁判所調査官に対して,そのほかに平成19年×月末ころか同年×月初旬ころに一度,また,同年×月初旬ころに一度,それぞれEに対して暴行に及んだ旨供述しているが.その際,事件本人が臨場していたか否かについては判然としない旨述べている。もっとも,甲第2号証によれば.Eの患は顔面や両手,背部等の広範囲に及んでいる上,左手の甲や右手の掌にはケロイド状の痕跡(左手の甲が直径5センチメートル程度,右手の掌が直径3センチメートル程度)も存し,暴行現場に臨場していなくてもその暴行内容や暴行の程度を幼少者であっても容易に知りうると認められる。
(5) 現在入所中の施設における行動記録によれば,事件本人について,以下の内容の記載が存する。① 事件本人は.DやEが事件本人の父母から暴行を受けていた旨発言をしたことがある。② 事件本人は,極度に火を怖がっており(なお,このことはD及びEにも共通している。).DとEが事件本人の実父から怒られて足に火をつけられた際,自分も同じようにされるのではないかと思って怖かった旨発言している。③ 事件本人は,失禁や夜尿などほとんどないものの,失禁や夜尿をした場合には黙って隠し通そうとしてしる。
(6) 00児童相談所の児童票によれば,事件本人の心理学的所見の要旨は概ね以下のとおりである。事件本人は,知的には普通域であり,発達に問題はなく,身辺自立は年齢相応である。なお.Eに対する実父及び実母の態度に畏怖しており,事件本人の大人の顔色を窺う態度や他の児童への意地悪な態度は,自分が攻撃されないように,両親の顔色を窺いながらEを排斥する行動に加担するとしろ認知・行動パターンができつつあると思われる。また,事件本人は,現在,自宅に帰るよりも,大きいお泊まり保育園に行くことを期待している。
(7) 00児童相談所所属の児童福祉司が平成20年×月×自に実施した事件本人の心理学的所見の要旨は慨ね以下のとおりである。事件本人の気の強さや大人の顔色を窺いながら.大人が見ていないところで自分より弱L、者には強く当たる態度から子供同士の関係ではときおりトラブルが見られるが,大きな問題はなく,概ね安定した生活を送っている。事件本人の実父及び実母から事件本人への暴力は一切語られないが.D及びEへの暴力やそれを目繋したことによる恐怖は継続的に語られている。入所後の変化として,性的な言動,両親に「会いたい」という発言がみられる。両親に対しては,会いたい気持ちはあるものの,恐怖心もあり,帰りたいとは言わない。今後も定期的な関わりが必要である。
(8) ○o児童相談所の心理担当者作成に係る平成20年×月×日付け心理学的所見によれば,事件本人に関する心理学的所見の要旨は以下のとおりである。施設での生活が慣れるにつれ,家庭で起きた事柄を少しずつ言語化できるようになってきている。事件本人に対する直接的な暴力はなかったものの,兄達に対する両親の暴力を見ることで,同じ自に遭わないように蝿をつくというスタイルを身につけ,現在はその罪悪感に苛まれている。兄達と暮らした短期間に相当の恐怖を体験したことが推察され,現状では事件本人への継続的な心理的ケアが必要不可欠である。事件本人自身,単独での家庭復帰を望んでおらず,現段階での家庭復帰は,事件本人の情緒安定のために不適当と判断される。
(9) ○○児童相談所非常勤精神科医師○○○○作成に係る平成20年×月×日付け文岱によれば,事件本人の心理所見としては,①持定の状況での過緊張,不安及び恐怖,②長兄との自然でない関係,③年齢不相応な性的表現が認められ.これらは事件本人に適切でなかった養育環境の影響が現在も残存していることによるものであり,施設の利用によってこれらが改善しつつあることが指摘されている。
(10) 口口児童相談所常勤精神科医師口口口口作成に係る平成20年×月×日付け児童票(6)医学的所見における所見要旨は以下のとおりである。心理司に対しては兄が親権者らに暴力を振るわれた場面を見たと話しているにもかかわらず,精神科医の面接では兄に対する親権者らの暴力を完全に否定し.兄の暴力に関して医師の質問を拒否することから,兄の暴力に対して,解離性健忘かあるいは回避の可能性があると思われる。Eへの暴力があることは事実であるから,事件本人への精神的影響があることは否定できず,安全な児童養護施設で経過をみることが望ましい。(11) Cわ児童相談所は,親権者らと事件本人の再統合フ・ログラムを策定しており,事件本人の児童養護施設への入所が承認された場合には,同プログラムに基づき,指導を実施することを検討している。なお,同プログラムは,①親権者らとともに改めてケースを振り返り,児童相談所の考え方と指導方針を説明すること,②親権者らに対して事件本人の生活状況や発達,成長,心理診断を説明し,親権者らの反応を見ながら,現段階の事件本人に対する想いや認識,自覚を確認すること,③親権者らに対する虐待カウンセリングの実施,④事件本人の状況を慎重に見極め,親権者らとの面会を設定すること,⑤面会の状況を見極めながら,定期的な面会や外出を重ねた上で,外泊が実施可能か慎重に判断すること,⑥外泊の実施,⑦定期的な面会を重ねつつ地域の関係機関によるカンファレンスを実施するとともに家庭引取後の具体的な在宅支援の内容を協議し,役割分担を明確にすること,③事件本人の家庭引取後も地域の関係機関の見守りと児童相談所の指導を継続すること,との内容から構成されており,上記①から⑥まで順番に実施されることを予定している。
(12) 当庁の家庭裁判所調査官による調査報告書によれば,事件本人の現在の生活状況は以下のとおりである。① 事件本人は.現在,施設の寮で生活し,幼稚園の年中として通闘している。② 事件本人の一日の生活は,午前6時50分に起床し,その後着替えをし,布団を畳み,朝食を食べて午前9時ころに施設の他の仲間とともに幼稚園に通園する。幼稚園は,水曜日が午前のみの保育で,水曜日以外は午後2時ころに施設に戻り,その後,午後3時のおやつを食べたり遊んだりして過ごし,午後4時30分から午後6時の間に入浴し,夕食を食べ,午後8時30分から午後9時に就寝している。③ 日常生活面では,以前は幼稚園に行っても,施設の仲間との交流が中心であったが,最近は友達関係が広がっていることが窺える。なお,入所した当初から,特に情緒的に不安定になることなく過ごす様子が窺われ,施設入所歴がないにもかかわらず,施設の生活に順調に適応した。
(13) 事件本人の父母らは,事件本人を児童養護施設に入所させることについて同意していない。
2 以上の事実に基づき本件について判断する。前記認定によれば,事件本人の実父及び実母は,平成19年×月×自にD及びEを家庭に引き取ったが. Eが両親の指導に従わず,年少の事件本人が尿失禁をすることがほとんどないにもかかわらず,尿失禁をした上,両親に隠すなどしていたため,平成19年×月×日に逮捕されるまでの間.Eに対して公訴事実を含む複数回の暴行に及び.Eに窓やケロイド状の痕跡を残す傷害を負わせたことが認められる。そして,事件本人が両親からEに対する暴行行為を直接に目撃したことについては不明であるものの,事件本人の施設内における発言には両親からD及びEに対して暴力行為がなされた旨の発言があること, ζわ児童相談所の事件本人の児童票における心理学的所見に記載されているように,事件本人がEに対する両親の態度に長怖し,大人の顔色を窺う態度が存するため事件本人への継続的な心理的ケアが必要不可欠であると指摘されていること,現在入所中の施設における行動記録にあるように事件本人が極度に火を怖がっており,また,失禁や夜尿をした場合には黙って隠し通そうとすることに照らすと,両親からEに対する度重なる暴行によって事件本人が心的傷害を受けたことが推認される。そして,実兄が暴力を振るわれた記憶が残る環境において,暴力を用いる指導を行う可能性がある父母の下に戻すことは,情緒的にも身体的にら適当であるとはいえず,事件本人を虐待環境から切り離し安定した環境の中で生活させるとともに,ある程度長期にわたって専門的な働き掛けを行う必要がある。他方.Cわ児童相談所所属の児童福祉司が平成20年×月×日に実施した事件本人の心理学的所見によれば,事件本人は現在施設内において概ね安定した生活を送っており,また,当庁の家庭裁判所調査官による調査結果によっても,事件本人の生活状況については特に問題性は窺われない。そして.Cわ児童相談所において,段階的に事件本人を親権者らの下に戻すための親権者らと事件本人の再統合フ.ログラムを策定していることも併せ考慮すると,本件においては,事件本人の父母らに事件本人を監護させることは著しく事件本人の福祉を害するから,児童福祉法28条1項に基づき.事件本人を児童養護施設に入所させることを承認するのが相当である。また,事件本人の施設入所の措置中に,上記の再統合プログラムが円滑に実施されるためには,事件本人の父母らにおいて現状の問題点を認識するとともに適切な養育方法に向けての努力が重要であるから,入所措置の承認と併せて,申立人に対し,この点に関して親権者らに適切な指導の措置をとることを勧告する。
3 よって,主文のとおり審判する。(家事審判官品川英基)
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児童福祉施設入所の承認申立事件
第1 申立ての趣旨と理由
1 申立ての趣旨申立人が,事件本人を乳児院に入所させることを承認する。
2 申立ての理由
(1) 事件本人の父Bと同母Cは,平成18年×月×自に婚姻し,同年×月×日に長女Dが,平成19年×月×日に事件本人がそれぞれ出生した。
(2) 事件本人は,平成20年×月×日深夜,症轡し意識のない状態で救急車でcx)病院に搬送され,次にで○○病院(以下「本件病院」という。)に搬送されたが,症状は脳挫傷,眼底出血,頭蓋骨骨折,前胸部・背部皮下出血であり. 虐待が疑われたことから,同月×日未明,申立人に虐待通告がされた。
(3) 事件本人の上記受傷について,事件本人の父母は,当初,思い当たる原因はないと説明していたが,同年×月×日に至り,父Bがあやしているとき1回事件本人を落としたと言い始め,受傷原因は父Bの過失であると説明するようになった。しかし, 事件本人を診断した医師は,損傷の性状や程度から事故とは考えにくく,意図的な外力が加えられた可能性が高いと判断しており,事件本人の父母の説明に疑問を呈している。このように,事件本人が生後3か月に満たない乳児であり,父母と長女との4人家族の中で生じた結果であることからすれば,事件本人の受傷は父母のいずれかの行為によるものと考えざるを得ないところ,父母の説明が不合理な変遷をしていることに鑑みて,父母が事件本人に生じた事態の重大性を真撃に受け止めているとは考えられず, このまま家庭に帰すと,再び身体的虐待が生じかねず,ひいては生命の危険にもさらされるので,事件本人の福祉を害することは明らかである。
(4) 現在,事件本人は本件病院に入院中であるが,退院後も引き統き厳重な観察と異常時の緊急対応が必要であり,乳児院において専門スタッフによる適切な養育環境が必要不可欠である。しかし, 事件本人の父母は,乳児院では事件本人に発達の保障がないとして,自宅に引き取ることのみに執着しており,事件本人に必要な養育がし、かなるものかについて真剣に考えている様子はない。母方祖父母も同様に事件本人を引き取ることのみに執着しているから,現在の状況では,母方祖父母にも適切な養育を期待することはできない。
(5) したがって,当面は.事件本人を乳児院に入所させ,適切な養育環境を整えて事件本人の生命身体の安全を確保した上で,父母に対しては事態の重丈性を真撃に受け止めさせ,事件本人の障害に適した養育の指導を行いながら,父母の意識改善を図り,その後,家族再統合に向けて,父母と子の関係調整を図っていくことが必要不可欠であるが,父母は施設への入所を拒否している。よって,児童福祉法28条1項1号に基づき施設(乳児院)入所の措置につき承認を求める。
第2 当裁判所の判断
1 一件記録によれば,次の事実が認められる。
(1) 事件本人の父Bと母Cは.平成18年×月×日,婚姻し,同年×月× 日に長女Dが,平成19年×月×日に事件本人がそれぞれ出生した。
(2) 母Cは,平成20年×月×日午後7時ころ,事件本人を入浴させたが,その際には事件本人の背部や胸部に誌は見当たらなかった。夕食後,事件本人を和室のベビーベッドに寝かせたまま,母Cは自ら入浴した。入浴後,母Cは,長女を寝かしつけるために授乳をしたが,ベビーベッドにいる事件本人が泣き出したので,父Bに事件本人をあやすよう頼んで,そのまま授乳を統けた。同日午後11時過ぎころ.父Bが和室で事件本人を抱いているとき,事件本人が突然泣き出した。母Cが代わって抱くと泣き止んだが,ベビーベッドに寝かせるとまた泣き出し,再び抱くと急に泣き止み,動かなくなって症患を始めた。驚いた母Cは,母方祖母に連絡し,救急車を呼んで.CD病院に事件本人を搬送してもらった。同病院では,事件本人が重篤な症状であったので,本件病院に再搬送したが,症状は脳挫傷,眼底出血,頭蓋骨骨折,前胸部・背部皮下出血であり,虐待が疑われた。そのため,同病院は,同月×日午前2時過ぎ,申立人に虐待通告をした。
(3)事件本人の症状は,右後頭部・左前頭部に硬膜下出血があり,脳実質は広範に低限収を呈し(その後,大脳皮質はほぼ全て失われた).両側の眼底出血や右側頭部の頭蓋骨骨折があり,前胸壁・背部にも皮下出血が認められた。これらの症状からみて,眼底出血は頭部への強い揺さぶりが加わり.皮下出血は前胸壁や背部が強く圧迫され,硬膜下出血や頭蓋骨骨折は右後頭部が比較的広い面を持つ鈍体と急激に衝突した結果と判断され,他からの外力により,相当程度の高さから相当程度の加速度で鈍体と衝突して生じた損傷であると認められた。
(4) 父Bと母Cは,同年×月×日の日中に外出を予定していたが,長女が発熱したため,外出を取り止め.1日中家で過ごしていた。当日夜,母Cが入浴を済ませ,長女に授乳したころまでは家族聞に何事もなく平穏であった。母Cは,保育土等の資格を有しており,育児にも熱心で,これまで長女の育児に関して問題が生じたことはなく.事件本人に関しても,本件以外には格別の問題は生じていなかった。父Bは,長女に対する虐待なと・はなかったが,育児にはさほと・熱心ではなかった。
(5) 申立人は,同年×月×日,事件本人の父母に事件本人を病院でー時保護する旨を通告した。母Cは泣いて反対したが,父Bは.r嘘でもよいから僕がやりましたといえば子どもは帰してもらえるのか。Jと尋ねていた。申立人は,同月×日,事件本人を施設(乳児院)に入所させる方針を父母に伝えたところ,母Cは泣いて抗議し,母方祖父母も祖父母宅へ事件本人を引き取る意向を表明して反対した。
2 上記事実によれば,事件本人は.まだ首の据わらない乳児であるにもかかわらず,その受傷は,強く揺さぶりを加えられ,かつ,広い面のある鈍体に一定の高さと速度で急激に衝突させられた結果,発生したものであるから,故意、による外力によって生じたものであり,虐待によるものと認めるべきである。
3 そこで,誰が膚待を加えたかについて検討する。事件本人が受傷したのは当日の午後7時とろから午後11時ころまでの間であり,場所は自宅内であるから,加害者は家族以外にあり得ないところ,年齢からして長女ではあり得ず,母Cも,事件本人が受傷した前後の行動からみて,虐待を加える動機や状況はうかがえないから,結局,父B以外には考えられない。この点につき,一件記録によれば,父Bは,当初,同年×月×日に申立人の担当者と面接した際には,虐待に思い当たることはないと説明し,また,母Cの実父から責任を問われて怒鳴られた際にも,反応、を示していなかったが,同年×月×日に申立人から一時保護の通告を受けると.i嘘でもよいから僕がやりましたといえば子どもは帰してもらえるのか。Jと尋ね,次いで,同年×月×日には,申立人の担当者に対し.i事件本人に『高い高い』をしていた際,事件本人が反り返ったので,びっくりして力一杯握ったが,落としてしまったことがある。」と話すに至り, さらに,同月×日にも,同旨の説明をしていたことが認められる。ところが,審聞においては,父Bは.再び事件本人の受傷の原因に思い当たることはないと陳述し.落としたことがある」と認めたのは,事件本人を自宅に帰してもらうための虚偽の供述であると述べるに至った。このように,父Bの述べる内容は,不自然な変遷を繰り返しているといわざるを得ず,事件本人が症態を起こした前後の状況に関しても.父Bの供述等をそのまま採用することはできない。
4 そこで、次に,事件本人を保護者に監護させることが著しく事件本人の福祉を害するか否かについて検討する。
(1)一件記録によれば.次の事実が認められる。ア父Bと母Cは,母Cの申出により,平成20年×月× 日, 長女Dと事件本人の親権者をいずれも母Cと定めて協議離婚をし,母Cは,婚姻前の姓に復した上,同年×月× 日,子の氏の変更手続をして. 2人の子らにつき母の氏を称する入籍をした。婚姻中の住居は母Cの実母が所有する建物であったが,離婚に伴い,父Bは,同住居から退去した。イ離婚原因は,母Cにとって,事件本人の受傷が父Bの行為に原因しているのではなし、かとの疑念を拭えないことや,父Bの実父が事件本人の受傷につき母Cやその実父母を罵ったり脅迫まがし、の電話を架けたりしたことから,不和となり,親族関係を続けることを嫌ったことなどにあった。父Bも,その実父が母Cやその実父母にした暴言などについては批判的であるが,双方の親同士が不和となったり,事件本人の受傷につき母Cやその実父母から責められたり, 自らも責任を感じていたことなどから,やむなく離婚に応じた。ウ父Bは, 自らが事件本人に傷害を負わせたことは認めていないが,母Cがこれまで長女のみならず事件本人に対しても虐待を加えたことはなかったことは認めている。エ母Cは,事件本人の入院以来,ほぽ毎日本件病院を訪れ,午後3時から午後8時の面会時間一杯に面会を続けて,授乳や投薬,さらには脳機能回復のための感覚刺激などを行っている。現在,事件本人は,症翠抑制薬の投与を受けているが,呼吸に問題はなく,免疫不全はないので集団生活も可能で,手術の必要もなく,診察はニ, 三か月に1回程度でよいので,退院は可能である。ただし,機能回復訓練には週一, 二回の通院が必要であると診断されている。事件本人の症状も,聴力は正常で,明暗の識別がわかる程度の視力はあり,微笑みもできる状態にある。
(2)上記事実によれば,事件本人の症状は,障害の程度はともかくとして,現在では治療上も入院の必要まではなく,診察や機能回復訓練のために通院は要するものの.在宅での監護養育は十分に可能である。申立人は,事件本人につき,退院後も引き統き厳重な観察と異常時の緊急対応が必要であり,乳児院における適切な養育環境が不可欠であると主張する。しかし,上記のとおり,医師の診断によれば, 事件本人については危機的な状況は脱しており,入院による継続的な観察や治療は必要ないとされているのであるから,症状の観察のために乳児院に入所させるまでの必要は認められなし、。また,申立人は,事件本人の父母は,事件本人に生じた事態を軽くみた無責任な対応が目立つので,事態の重大性を其撃に受け止めさせ,父母の意識改善を図った後,家族再統合に向けた関係調整を図る必要があり,その聞は事件本人を乳児院に入所させる必要があるとも主張する。確かに,事件本人の父母が婚姻同居中であれば, 虐待の加害者と疑われる父Bの下に事件本人を戻すことは不適切と考えられるが,現実に離婚にまで至り父Bが自宅を退去した現在では,事件本人を母Cの下に戻すことが袈育上特に不適切とは考えられない。事件本人の父母の離婚が事件本人を親元に取り戻すための仮装や便法であれば,申立人の抱く疑念も理解はできるが.上記(1)で認定したとおり,その離婚は,現実に婚姻関係が破綻した結果と認められるのであって,単なる仮装や便法ではない。そうであれば,父Bに関しては虐待の疑念を抱かざるを得ないものの,母Cに関しては別異に考えるのが相当であり,母Cについては.保育土の資格も有し,これまで長女や事件本人の養育に関して虐待に類する行為は一切うかがわれず,むしろ養育に熱心であったとうかがわれるのであるから,事件本人を母Ctこ監護させることが著しく事件本人の福祉を害するとは認められない。母Cが,申立人に対し.事件本人への虐待を否定し,原因について思い当たることはないと述べたのも,自らの行為に関しては事実に反するものではなく,父Bの行為に気付いていない以上, その対応をもって,事件本人に生じた事態を軽くみた無責任な対応と評することはできない。また,母Cが,一時保護の措置に対し執劫に抗議したのも,熱心に育児に携わっていた母親として自然な感情の表れであると認められ,これをもって事態の重大性を其撃に受け止めていない対応と評することもできなし、。以上のとおり,父Bと母Cの離婚が成立し現実に別居に至っている現在では,母Cに関して,事件本人を監護させることが著しく事件本人の福祉を害するというべき事情は認められない。
5 してみると,現在,事件本人を乳児院に入所させる必要があるとは認められないから,本件申立ては理由がないので却下することとして,主文のとおり審判する。(家事審判官小原卓雄)
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2012年2月26日 | コメント/トラックバック(0) |
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市町村長の処分に対する不服申立却下審判に対する 即時抗告事件
第l 抗告の趣旨
本件抗告の趣旨は, r原審判を取り消す。本件を名古屋家庭裁判所に差し戻す。」との裁判を求めるというものである。
第2 事案の概要
l 本件は,夫婦である抗告人らの聞に出生した二女の父親である抗告人Aが,同女の名を「破OJとする出生届〈本件出生届)を00市00区長に提出したところ,同区長から. 1破Jの文字が戸籍法施行規則60条に定める文字でないこ-とを理由として不受理処分がなされたため,抗告人らが,戸籍法121条に基づき不服を申し立て,上記出生届の受理を命ずる旨の審判を求めた事案である。原審判は,抗告人らの上記申立てをいずれも却下したところ,抗告人らが即時抗告した。
2 上記申立ての趣旨及び実情は,原審判「第1 申立ての趣旨及び実情」に記載のとおりであるから,これを引用する。
3 また,本件抗告の浬由は. ~IJ紙抗告理白書に記載のとおりである。
第3 当裁判所の判断l 当裁判所も,抗告人らによる本件出生届の受理を命ずる旨の審判の申立ては却下すべきであると判断するが,その理由は,以下のとおり,原審判を付加訂正し,抗告理由に対する判断を付加するほか,原審判「理由」欄のl及び2に記載のとおりであるから,これを引用する。2 原審判の付加訂正
(1) 原審判2頁24行自の「ワープロ等で「は」を入力して」を次のとおり改める。「ワープロ等で「はり」と入力して変換すれば「破璃Jと出るソ’フ卜が多いことは認められるものの.1はj の1文字のみを入力して」
(2) 原審判2頁27行自の11破璃Jのみであり.Jを「主として「破璃Jのみであり.Jと改める。
(3) 原審判2頁30行自の「的確な資料はないこと」を次のとおり改める。「的確な資料Jま,その収集のための抗告人らの努力や周囲の者らの協力にもかかわらず,ないといわざるを得ないこと」
(4) 原審判2頁30行目から3頁4行目までの括四番毛削附する。
(5) 原審判3頁7行自の「却下することJを「却下することとするJと改める。
(6) 原審判3頁8行自の「本件出生届をしておらず.Jから10行自の「申立権等があるとしても.Jを次のとおり改める。品「本件出生届の名義人ではなく, したがって.00市00区長が行った不受理処分の名宛人ではないから,法律上の原則的な理解に従えば,同不受理処分に対する不服の申立権ないし申立ての利益はないものと解され,抗告人Bによる本件申立ては不適法である。仮に,同人において,抗告人らの聞の二女を出産した母であり.戸籍法52条1項において,母が父と同列に第一次的な届出義務者とされていること(嫡出子出生の届出の場合。なお,出生届の届出義務者等を規定する戸籍法52条において,出生前に父母が離婚したり,子が嫡出でない場合には,母が第一次的な届出義務者とされている。)なと・から,例外的に本件の不服申立権等があるものと解する余地があるとしても」
(7) 原審判3頁11行目から12行自にかけての1.主文のとおり審判するJを削除する。
3 抗告理由に対する判断
(1) .抗告人らは,要旨次のとおり述べて.1破」の文字が,社会通念上,明らかに常用平易な文字であると主張する。すなわち,抗告人らは,①「破」を実際に氏として使用している数人の者らから間取り調査をしたところ, ワープロ変換の点や.1波」などと記載間違いされがちであるという多少の不便があるにしても,社会生活上の不便や支障は殆どないとの結果であったこと,②ワー.プロ等で「はり」を変換すれば,すぐに「破璃j (ガラスや水品など)が出てくるのであるから,漢字変換をし難いとはいえず,常用平易と認められて現在人名に用いることが許されている他の漢字の中には. i破」よりも変換しにくいものが多数あり.i破Jはむしろ変換が容易な方であること,③「破」の文字は,これを知らない人でも. i波j.「破j. i披j.i頗」なと・・から類推して「は」と読むことは容易であること,④「破」は,画数が9函であり,他の裁判例で認められた「曽(11画)j.i獅(13画)j.i駕(15画)j.i毘(9画)j.i瀧(19画)j.i琉(11画)j.i濯p5画)jに比ーして画数が多いとはいえず,むしろ少ないこと,⑤「破」の文字の構成要紫である「王」と「皮」は,いずれも小学校低学年でー学習する平易な文字であって,理解が容易であること,⑥「破」の文字は,古くから用いられており,用法も多数あり,その意味は美しく高貴なものであって,江戸いろはかるたでは. i瑠璃も破璃も照らせば光る。」として,優れた人物が何処に居ても目立つものという意味で使われていること, したがって,このように美しい文字を名前に使用し守いという需要は実際にも多く. i破」文字は,身の回りに多数存在しており,とりわけ,芸術,文学,著作の分野で幅広く使用され,児童学生向けの図書,高校家庭科の副教材,中学校の図書館の蔵書の中にも見られるほか,マンガ,ゲーム,音楽などのいわゆるサプカルチャーでも使用されている上(今や, 日本のオタク文化は世界に通用する文化の一つであり,海外に大々的に輸出されている。)..公共の場でも使用され. i破Jの文字を使用する氏名や地名も実際に存すること,⑦インターネット上で,戸籍法施行規則的条別表第二(以下「別表第二jという。) に掲記の全漢字と「破」の文字のヒット件数を調べたところ.i破」は上位2割に入っており,別表第二の漢字でもヒット件数が桁違いに少ない文字は少なからず存し,また.i日本の苗字7千傑j.i国土地理院地図閲覧サービス」のサイトで・検出数を調べたところ. i破」は,別表第二の漢字と同等以上であったこと等を主張し, これらを立証するために多数の資料を提出する。
(2) しかしながら,まず,常用性の点について,抗告人らが上記⑥,⑦で主張する諸事実は,抗告人提出の資料により, それらが示す限りで認められるものではあるが,これら資料によれば,却って,「破」の文字が,一般又は児童向けの書物等において必ずしも多用されているとはいえず,辞書での用例も,結局のところ「破璃」に他の漢字を付加したものが殆とであって限定的である上,氏,名,地名,公共施設名,庖舗名,商品名等として用いられている例も多いとまで認めることはできず,特に,氏や名の殆どは,インターネット上で見られるハンドルネームのほか,芸名,雅号,ペンネームで用いられている例があるというにすぎず,広く多用されているとまでは認め難し、。まだ. i破Jの文字のインターネット上でのヒット数や苗字や地名の検出例が,抗告人ら主張のように,別表第二の漢字との対比の上では,少ないとはいえないことが確かであったとじても,それだけで直ちに.i破」の文字が,抗告人らのいわゆるサプカルチャーやオタク文化の方面における少なからぬ使用例を超えて, 一般の新聞, テレビなどで日常的に接する報道や書物等によって,広く国民に知られていることの根拠となるものではなく,そこまでの事実は認められなし、。抗告人らは. i破」の文字のあらゆる用例を自ら及ひ’周囲の者らの協力によって探し当て,証拠等として提出しているものであり,その努力には並々ならぬものが認められるが,逆に,このような非常な努力なしに「破」の用例を収集し得ないこと自体が,その常用性の乏しさを示している正もいえる。
(3) また, i破」の文字の平易性の点についても,抗告人らが上記③において主張するとおり,これを他の漢字から類推して「は」と読むことが容易であり,他の裁判例で認められた漢字の殆どに比べてー画数が少なく,その構成要素である「王」も「皮」も平易な・漢字で.あることは認められるが,例えば,同じく「王」を構成要素とする漢字で,i珂J,i吠J,i現」などのように,偏も芳も平易な文字であり,画数が多いとはいえず, {-也の漢字から類推して音読することが比較的容易な漢字であっても,必ずしも平易であるとはいい難いものも多数存在するところであって,抗告人ら主張のような諸点だけで, i破」の文字が平易であるとは認めることはできない。むしろ,抗告人らが提出した書籍等において「破」の文字が使用されている場合,その殆どに平仮名のルビが付されているところであって(i破Jのみにルビが付されているわけではないが,むしろルビが付されていない漢字の方が多いといえる。),このことは,少なくとも編集者において「破Jが平易な漢字ではないと理解していることを示しているともいい得る。
(4) ところで,抗告人らは,上記①,②の主張のとおり, i破」を氏に使用している人達から間取り調査をした結果, ワープロ等の使用上や,その他の場面における社会生活上の不便や支障は殆どないことを主張しているところ,確かに,戸籍法50条1項が子の名には常用平易な文字を用いなければならないとしているのは,従来,子の名に用いられる漢字には極めて複雑かっ難解なものが多く,そのため命名された本人や関係者に,社会生活上,多大の不便や支障を生じさせたことから,子の名に用いられるべき文字を常用平易な文字に制限し,これを簡明ならしめることを目的とするものと解されている。しかし,同条2項が「常用平易な文字」の範囲を法務省令で定めるよう委任したのは,当該文字が常用平易な文字であるか否かは,社会通念に基づ・いて判断されるべきものであるが,その範囲は,必ずしも一義的に明らかではなく,専門的な観点からの検討を必要とする上,上記の事情の変化に適切に対応する必要があることなどから,その範囲の確定を法務省令に委ねた趣旨であり,戸籍法施行規則60条は,この委任を受けて,専門家の関与等を経て,常用平易な文字を限定列挙したものであって,ただ,同条が,社会通念上,常用平易であることが明らかな文字を子の名に用いることのできる文字として定めなかった場合には, その限りで,戸籍法50条l項の委任の趣旨を逸脱するものとして違法,無効とされ,裁判所において,当該文字を子の名に使用した出生届の受理を命じることができるというにすぎず(原審判の引用する最高裁判所平成15年12月25日決定),具体的に当該文字を使用することによって社会生活上の不便や支障がないかどうかという点が,当該文字を人名漢字として使用することの許否の判断基準となるものではない。したがって,たとえ, i破」を氏に使用している人達のうちの数人が社会生活上のヂ便や支障を感じていないもので・あうたとしても,そのことが直ちに人名漢字とLての使用が認められるべきことの根拠となるものではない(もっとも, ワープロソフト等における「破」の京字の漢字変換の容易性は,その常用平易性に関連するものではあるが,原審判(付加訂正後のもの)も指摘するように, iは」のl文字を入力して変換した場合,全てのソフトでl回で変換がなされるものではない上, ワープロソフト等の性能や利便性は日々向上しているところであって, i破」の文字の変換が比較的容易になってきているからといって明らかに常用平易で 時点において, r 破」の文字が,社会通念上,あると認める ことはできない。
(5) そして、戸籍上の名である以上,以上述べたところによれば,抗告人らの主張にもかかわらず,現戸籍法の趣旨に従い,同法の定 めるところに従って命名しなければならないことはいうまでもないこれと異なる名を命名,呼 (戸籍上の名以外の関係で, ことであり称する. ことまでが法的に禁止されているわけではない。) ,現時点において, r 破」の文字が,社会通念上,明らかに常用平易であると戸籍上その使用が認められないこと 認めることができない以上,やむを得ないというほかはない。
第 4結論
よって,原審判は相当であり, .抗告人らの本件抗告は理由がないかり, これ らをいずれも棄却することとし,主文のとおり決定する。上杉英司) 尾立美子 裁判官 高田健一 (裁判長裁判官別紙は省略した。 〔編注〕それだけで,社会通念上常用平易性が明らかであるとは認め難い。)。
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児童福祉施設入所期間更新承認申立却下審判に対する抗告事件
第1 抗告の趣旨及び理由
抗告人は,原審が,平成21年1月23日,抗告人が事件本人を児童養護施設に入所させる期聞を更新することの承認を求めた申立てを却下する審判をしたのに対し,これを取り消し,主文第2項と同旨の裁判を求めた。抗告理由の要旨は,原審は,事件本人親権者父(以下「父」という。)が事件本人を児童福祉施設等に入所させることについての同意書に署名押印したことを理由に,同意入所に切り替えることに大きな支障がないなどと判断したが,これは,これまでの父の精神的不安定な状況や父の翻意の可能性について配慮、を欠いた軽率な判断であり,著しく事件本人の福祉を害するおそれを生じさせた,というものである。
第2 当裁判所の判断
1 事実関係次のとおり付加訂正するほかは,原審判2頁2行目から4頁10行目(原審判添付別紙を含む。)までに記載のとおりであるから,これを引用する。
(1) 2頁11行自の「審判」の次に「(以下「前件審判」という。同年×月×日確定)」を加える。
(2) 3頁1行自の「父からは.Jの次に「かつての担当職員や事件本人の入所施設に対する危害の告知等の」を加える。
(3) 3頁21行目冒頭から同頁25行目末尾までを,次のとおり改める。「そこで,家庭裁判所調査官は,面接の際に父が示した上記意向に基づいて「事件本人の施設入所の同意について」と題する書面(以下「本件同意書」という。)を作成し,同意の理由について,「本件手続の中で,事件本人が児童福祉施設に入所したままで高校に進学したいと希望していると聞きました。そこで,本人の意思を尊重し,本人が高校を卒業するまで,施設に預けようと考えました。」と記載した。父は,同月×日の家庭裁判所調査官による調査面接の際,本件同意書の氏名欄に署名押印し, 日付欄に当日の日付けを記入した。」
(4) 4頁10行自末尾に改行の上,次のとおり加える。「オ父は,平成21年×月×日に本件児相の職員と面接した際,事件本人が入所施設から高校に通う希望があることを聞いて養女に出すことにしたなどと述べる一方で,事件本人をライターで叩いたり,千枚通しで足を刺しただけで,暴力や虐待はないのに,事件本人を施設入所させられたとして不満を示し,本件児相に対する危害の告知の可能性を示唆する脅迫的な発言をした。また,父は,同年×月× 日に本件児相の職員と面接した際, 事件本人が高校に合格したことを喜ぶ一方で,事件本人に対する暴力については,前同様の説明を繰り返して不満を示し,前同様の脅迫的言辞を述べたり,事件本人が帰って来ないのであれば死ぬ,あるいは,薬物を使用するなどと自暴自棄な発言をするなどした。」
(5) 6頁18行自の「児童養護施設」の次に「(以下「本件施設」という。)」を加える。
(6) 6頁24行自の「平成16年」から同頁25行目末尾までを「そこで,同年×月×日,事件本人につき児童福祉法28条l項1号に基づき施設入所措置の承認を求める前々件が申し立てられ,同月×日,事件本人を児童養護施設に入所させることを承認する旨の審判がなされ,同審判は,平成17年×月×日確定した。」に改める。
(7) 7頁4行自の「施設を」を「本件施設について父に」に改める。
(8) 7頁8行自の「施設」を「本件施設」に改める。
2 以上認定の事実によると,父は,前件審判後,本件児相に頻繁に電話をかけ.数回ではあるが本件児相を訪問し,その際,事件本人の安否を尋ね.事件本人への贈り物を持参する一方で,事件本人の施設入所に対して不満を示し.本件児相の職員等に対する脅迫的な発言をなすことがあり,このような父の対応は原審判後も続き,本件児相の職員に対し,それまでのような脅迫的な発言をしたのに加え,事件本人の引取りをめぐって自暴自棄な発言にも及ぶなど,事件本人の施設入所や引取りをめぐる父の心情は,なお穏やかなものではないというべきである。また,父は,前件審判のころから約6か月間措置入院となり,退院して高齢者住宅に入居した後も他の入居者への暴力等により入居の継続が難しく,平成20年×月中旬ころから任意入院しているところ,今後も投薬の必要があり,退院後に高齢者住宅等に入居することが見込まれるが, 日常生活の援助が必要な状態であるなど,その健康状態や生活状況が安定したものとはいえない。他方,事件本人は,父に対して手紙や贈り物をするなど,以前に比べると父に対する心情は緩和しているが,父との同居を希望するまでには至らず,今後も本件施設で生活し,同施設から高校に通うことを希望している。父は,本件審理を通じて事件本人の上記希望を知り,父なりにこれを了解し,本件同意書に署名押印したものと考えられるが,父の上記心情やこれまでの本件児相への対応,父の健康状態や生活状況等にかんがみると,その同意は必ずしも父の心怖を反映するものではなく,父が事件本人の引取りを希望して,同意を翻意する可能性は大きいといえ,なお,本件入所措置は親権者たる父の意に反する場合に当たるというべきである。事件本人には,今後も本件施設での生活を継続し,本件児相の支援を受けながら自立した生活を目指し,他方,その間,父と事件本人との関係修復の試みを重ねる必要がある。したがって,本件入所措置を継続しなければ事件本人の福祉を著しく害するおそれがあると認められるから,措置の期聞を更新するのが相当である。
3 よって,本件抗告は理由があるから,家事審判規則19条2項により原審判を取り消し,審判に代わる裁判をすることとし,主文のとおり決定する。(裁判長裁判官松本哲也裁判官白石研二永井尚子)
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間接強制申立事件
第1 事案の概要
(申立ての趣旨及び債務者の主張の要旨等)
1 本件は,債権者が,①広島高等裁判所岡山支部平成19年(ラ)第○○号子の監護に関する処分(面接交渉)審判の執行力ある決定正本に基づき,債務者は債権者に対し,当事者聞の長女C,二女D,三女E(以上3名を併せて,以下「未成年者ら」という。)を平成20年× 月×日までに面接させること,②債務者が,上記期間内にこれを履行しないときは,債務者は債権者に対し.履行期限の翌日から履行に至るまで1日当たり5万円の支払を求めた事案である。
2 これに対し,債務者は,①未成年者らは,これまで債権者から怒鳴られたことなどから精神的にめいってしまい債権者を怖がり,また,長女C,二女Dと債権者との試行的面接交渉の場面でも,債権者との面接を嫌がり,その後も動揺が見られたとして,未成年者ら自身が債権者と会うことを嫌がり,裁判所外での面接交渉は未成年者らの精神状態を悪化させること,②債権者は.未成年者らの養育貨を支払っていないこと,③債権者は,面接交渉に際して必要な債権者の交通費を債務者側で負担するよう求めるなど不当な要求をしていること,④債権者は,繰り返し,債務者や未成年者らにとって不要な物品であることを認識しながら,それらの物品を債務者宅に着払いで送りつけるなどの嫌がらせをしていることを理由に挙げて,面接交渉を拒否している。
3 現在,債権者は.東京都内に居住し,債務者及び未成年者らは,岡山県口口口市内に同居している。
第2 当裁判所の判断
1 本件記録,関連事件記録(子の監護に関する処分(面接交渉)審判事件(当庁平成18年同第○○号ないし第○○号事件),同事件の即時抗告事件(広島高等裁判所岡山支部平成19年(ラ)第○○号),履行勧告事件(当庁平成20年(家ロ)第○○号),離婚等請求事件(当庁平成18年(家ホ)第○○号,岡本件の控訴審(広島高等裁判所岡山支部平成19年同第○○号,同事件の上告審(最高裁判所平成20年同第○○号))及び審尋の結果(書面によるもの)によれば,以下の事実が認められる。
(1) 債権者と債務者は,平成11年×月×日に婚姻の届出をし,二人の聞には未成年者c(平成11年×月× 日生),未成年者D (平成13年×月× 日生)及び未成年者E(平成17年× 月×日生)がいる。
(2)債務者は,平成18年離婚調停を申し立てたが,同年×月× 日不成立となり,同年×月× 日当庁に離婚等を.求める訴訟を提起し,当庁は,平成19年×月× 日,未成年者らの親権者を債務者と定め,離婚する旨等の判決をし,債権者において控訴したが.広島高等裁判所岡山支部は, 同年× 月×日,離婚と親権者の部分については控訴棄却の判決をし.同判決は,平成20年×月×日,最高裁判所の上告棄却決定により,同日確定した。
(3) 債権者は,平成18年×月×日当庁に面接交渉を求める審判を申し立て,その後,同審判は調停に付されたが,その調停は,平成19年×月×日に不成立となった。そして,当庁は,平成19年×月×日,債権者と未成年者らとの面接交渉に関して,要旨,①回数について,毎月1回,②日時について,毎月第1日隔日の午前10時から午後2時までとする(ただし,未成年者らの急病等で,上記日時に面接交渉できない場合は,翌週の日曜日に実施するものとする。).③方法について,面接交渉の開始時に,債務者の住所地又は債務者が指定する場所において,未成年者らを債務者から債権者に号|き渡し,面接交渉の終了時に,債務者の住所地文は債務者が指定した場所において,未成年者らを債権者から債務者へ引き渡す,といった事項を定めて面接交渉を認める旨の審判をした(以下「第一次審判」という。)。
(4) 債務者は,第一次審判に対し即時抗告の申立てをしたが,広島高等裁判所岡山支部は,平成20年×月×日,第一次審判の内容の一部を変更したものの,債務者が債権者に対し,別紙面接実施要領のとおり(以下「本件要領」という。).未成年者らを債権者と面接させる義務があることを定めるとともに,債権者及び債務者は,本件要領を遊守し,本件要領を履行せよとの決定をした(以下「第二次決定」という。また,第二次決定は,間決定後,債務者が任意に面接交渉に応じない場tぎには,これまでの経緯に照らして,まず家庭裁判所の履行勧告手続の中で,更に面接交渉に関する調整活動を実施することが適当である旨勧告している。)。
(5) 債権者は,平成20年×月×日付けで,債務者に対し,同年×月中の期間の中で,債権者と未成年者らを面接させる日時,場所を指定するよう求めたが,債務者は弁護士を通じてこれを拒否する姿勢を示した。その後,当庁は,家庭裁判所調査官を通じて,債務者に対して本件要領に従って債権者を未成年者らに面接させる旨の履行勧告を行ったが(当庁平成20年(家ロ)第(x)号).債務者がこれに応じる姿勢を見せず,同履行勧告事件は平成20年×月×日に終了した。そして,現在に至るまで,本件要領に基づく債権者と未成年者らとの面接交渉は実施されていない。
2 検討
(1) 第二次決定は,上記のとおり,面接交渉の権利者,義務者,子,面接交渉の時期及び一定期間内における面接交渉を行うべき回数(頻度)のみならず,面接交渉の場所. 1回あたりの面接交渉の時間(開始時刻及び終了時刻).面接日時場所の指定,面接交渉(号|渡し)の方法,第三者の立会いなど債権者の面接交渉権についての内容を具体的に特定して定めたものであるから,面接交渉義務を負う債務者が,面接交渉義務を履行しない場合には,債務者に対し,間接強制として,その義務の履行を確保するために相当と認める額の金銭を債権者に支払うべき旨を命じることができる。
(2) この点,債務者は,上記のとおり,要旨,①未成年者ら自身が,債権者を怖がり,試行的面接交渉の場で見られたように債権者との接触を拒否しており,裁判所外で面接交渉を行うことは未成年者らの情操に悪影響を及ぼすこと,②債権者は,未成年者らの袈育費を支払わないこと,③債権者は,面接交渉の為の交通費の負担を債務者に求めるなど不当な要求をしていること,④債権者は,債務者宅へ,着払いで債務者らが不要な物品を送りつけるなどの嫌がらせをしていることを理由に挙げて,面接交渉を拒否している。しかし.家庭裁判所調査官の調査も含む審理を経た結果,本件要領が審判事項として決定され,その内容は,上記のとおり面接交渉実施に関して必要かつ重要な事項が特定されており.債務者としては.本件要領に従って未成年者らを債権者に面接させる債務を負っているのだから,債務者が面接交渉を拒否することにつき正当な理由として挙げる事情は,請求異議の事由として主張し得るにとどまるし,第二次決定後に生じた新たな事情によって面接交渉を行うことが子の福祉を害することになったなどという理由も.事情変更による面接交渉禁止文は内容の変更を求める調停,審判の中で,その具体的事情を明らかにして主張すべきものである。そうすると,本件において,債務者が本件要領に従って債権者と未成年者らを面接させない場合には,間接強制として債務者に一定の金銭給付を求めること自体は許されるというべきである。
(3) 次に債務の不履行に際して債務者が支払うべき金額について検討する。この点,本件要領の面接交渉の回数が3か月に1回と比較的少ない頻度であり. 1回あたりの面接交渉の時間も2時間30分と決して長時間とはし、えないこと,その場所も債務者及び未成年者らの居住地である岡山県口口口市からそう遠く離れていない同県△△△市内及びその周辺とされていること,面接日時場所の指定や引渡しの方法については債務者が前もって決定することができ,かつ,債務者が指定した第三者の立会いが可能とされるなど,その内容は,面接交渉によって未成年者らの情操に悪影響を与えないよう,かつ,面接交渉に際しての債務者,未成年者らの時間的.経済的負担が過重にならないように配慮されると同時に面接交渉の方法についても債務者側の意向を反映できるものであるといえる。それにもかかわらず,債務者は,これまで面接交渉を拒否し続けており,このような債務者側の姿勢に照らすと,債務者が今後,任意に面接交渉義務を履行する可能性が高いとはいえないし,このような債務者側の拒否的な姿勢は.履行確保のために必要な金額の算定にあたって軽視することはできない事情の一つとして考えられる。しかしながら,第二次決定が,債権者が未成年者らの一部との試行的面接交渉の場面では.未成年者らの年齢や親子の関係を度外視したいわば形式的対当を主張するなど,債務者との従来の協議においても,対当の名の下に自己の主’張に沿った結論を正当化しているのではないかと窺われる面がある旨摘示するように,このような債権者の態度弘債務者側の事情を相当程度配慮したうえで本件要領が慎重に定められた主な要因のーっといえる。そして,養育費の支払と面接交渉の実施は直ちに対価関係に立たないが,現段階,債権者が債務者に対して,未成年者らの護育費等の名目で定期的な経済的給付を行っているような事実は認められず,逆に,債務者や未成年者らにとって,必要とは言い難い物品までを着払いで債務者方に送りつけて,債務者に経済的負担をかけていることすら窺われる。そうすると,本件で・面接交渉が実現していないことについては,債務者の拒否的な姿勢のみならず,債権者側の上記のような態度にも起因するところがあるといわざるを得ない。以上によれば,不履行の場合の金銭支払額は,債務者の拒否的な姿勢のみを重視するのではなく,債務者の現在置かれている経済的状況や一回あたりの面接交渉が不履行の場合に債権者に生じると予測される交通費等の経済的損失などを中心に算定するのが相当である。この点,一件記録によれば,債務者は未成年者らの年齢が幼少期から学宜期にあることなどから.就労することができず,その生活費の多くを児童扶養手当等の公的な扶助や親族からの援助等から賄っている状況にある。また,面接交渉を行う際に債権者が負担すべき一回当たりの費用(なお,本件要領によれば,面接交渉は,東京都内に居住する債権者が債務者及び未成年者らが居住する岡山県口口口市からそう遠く離れていない岡県△△△市内及びその周辺まで移動して行うとされ,それに伴う交通費等の諸費用の負担について特別の定めがない以上,その諸費用は債権者側において当然負担すべきものである。)のうち,交通費(新幹線代・高速パス代)は往復三,四万円であることが認められる。そして,上記諸事情を総合考慮すれば,不履行1回につき, 5万円の限度で定めるのが相当である。
(4) 以上によれば,本件間接強制の申立ては, これを認谷し,本決定の告知を受けた日以後に期日が到来する面接交渉義務につき,その履行を確保するために相当な金額の支払を債務者に命じるべく.その金額は,不履行1固につき, 5万円と定めるのが相当と認め,主文のとおり決定する。(裁判官角田康洋)
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2012年2月26日 | コメント/トラックバック(0) |
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児童福祉施設入所措置の承認申立事件
第l 申立ての要旨及びその実情
事件本人は,これまで2回(平成18年×月と平成21年×月×日(以下平成21年×月×臼の誤飲を「本件誤飲」という。))にわたり,事件本人親権者母B(以下「実母」という。〕が服用していた精神薬を誤飲もしくは実母による投与により服薬し,いずれも救急車で搬送された。主治医の所見では,実母の代理ミュンヒハウゼン症候群の疑いがあるとされ,仮に故意の投薬でないとしても1薬の管理についての監護能力が疑めれる。また,実母はムム県口口児童相談所(以下「口口児相Jという。)と関わり,精神的不安定さから事件本人の一時保護を繰り返した後,事件本人は施設入所となり,00へ来てからもショートステイを複数回利用するなどしており,安定した養育環境とはいえなし、。そこで00児童相談所(以下iOO児相」という。)は,事件本人を児童養護施設へ入所させることを決定した。これに対し,実母は,施設入所に同意せず,児童相談所に対し,異議を述べたので,申立人は,児童福祉法28条に基づき,事件本人を児童援護施設に入所させることを承認する旨の審判を求める。
第2 当裁判所の判断
家庭裁判所調査官作成の平成21年×月×日付け調査報告官(以下「本件調査報告書」という。)及び当裁判所の審問結果を総合すると,次の事実を認めることができる。
l 事件本人の出生及び現在の入所に至るまでの経過
(1) 事件本人は平成17年×月ムム県口口市で出生した。未熟児であったため, 2か月間岡市内00病院に入院した。
(2) 平成17年×月, 00病院から実母の盤育能力を理由に通告が,同年×月に口口警察署からネグレクト通告がそれぞれあった(受理年月日平成17年×月×日の虐待通告受付票,本件調査報告書12頁)。事件本人は児童養護施設に平成20年×月まで預けられて,平成20年×月から実母が事件本人とその兄を転居していた00市の自宅に引き取って3名で生活するようになった。
(3) 平成18年×月×日事件本人は実母の精神薬を服用したため,ベンゾジアゼピン系及ひ’パ‘ルピツール系の中毒を起こし(受理年月日平成17年×月×日の虐待通告受付票2枚目,本件調査報告書12頁), 00病院に緊急入院となった(以下この日の誤飲を「平成18年×月の誤飲」という。)口口児相の児童記録票,本件調査報告書4頁)。このときの実母の発言は次のとおりである。すなわち,「実母が帰宅したら睡眠薬が2錠なくなっていることに気づいた。ソファーに寝かせて様子を見ていたら午前2時半寝返りを打ち, ソファーから落ちたので,抱きかかえるとだらっとしていたので救急車を昭んで搬送した」というものである。同月×日実母の精神不安定のために,事件本人は口口児相に一時保護となった。その後も実母の体調不良のために一時保護が繰り返された。後記00児相は,実母が本件誤飲が故意に事件本人に薬を投与したものでないとしても,平成18年×月の誤飲の後も,実母が事件本人を精神薬を誤飲するような護育環境におくこと自体に問題があり,実母の薬の管理能力にも問題があると考えている(本件調査報告書4頁の00児相児童福祉司の陳述)。
(4) 平成19年ころ,実母の体調不良等のために事件本人は,口口児相で2度一時保護されている。平成19年×月事件本人は00乳児院’に入所した。同年×月事件本人は児童養護施設(ムム県00市の00学園)に入所した(本件調査報告哲12頁)。
(5) 平成20年×月実母はムム県口口市から00市へ転居した。周年×月,事件本人とその兄c(平成13年×月×臼生,以下「実兄」という。)は実母の00市の住居に引き取られた。平成20年×月から×月にかけては,実母の体調不良で合計4回ショートステイで児童養護施設rOOJなどの入所措置がとられている。
(6) 平成21年×月×日00病院から00県00児相へ虐待通告がなされた。同通告の内容は次のとおりである。すなわち,事件本人の状況について「立てない,歩けない, g律が回らない等の症状があり,尿検査を実施したところ,薬物反応が出る。薬物を故意に服用させた疑い。代理ミュンヒハウゼン症候群の疑いもありJというものである(家事審判申立書ケース概要資料,平成21年×月×日当庁受付の「ケースの概要」と題する書面)平成21年×月×日の項)。同日,00警察署からも00児相に虐待通告があり00警察署長作成の平成21年×月×日付け児童通告書),同通告を00児相は児童虐待受理した。その内容は,00病院において,事件本人について尿検査をしたところ,薬物反応(ベンゾジアゼピン中毒)が出ており,実母の事件本人に対する不適切な養育や不衛生な自宅環境が児童虐待に当たるというものである(本件調査報告官4頁)。
(7) 平成21年×月×日事件本人が00病院を退院したと同時に00児相は一時保護した(本件調査報告書4頁, 13頁)。同日, 00児相職員が実母宅を家庭訪閉じたところ,実母は薬は事件本人が自分で服用した旨の話をしていた。
(8) 平成21年×月×日00児相は援助方針会識を開催した。その内容は次のとおりの趣旨である。すなわち,r実母は薬(実母の睡眠薬等)の誤飲と説明しているが,事件本人の症状からl度だけの服薬とは考えにくい。過去にも薬の誤飲がある。このことから,事件本人と実母を分離する。実兄については学校等と連携して状況を把握することとした。」というものである。
(9) 平成21年×月×日00児相職員が実母宅を訪問した。実母は事件本人の施設入所には同意しないと言った。
(10)平成21年×月×自社会福祉審議会は児童福祉法28条l項の措置をとることが適当であるとし,同月×日00児相は,その援助方針会議で事件本人を児童養護施設に一時保護委託とする旨決定し(本件調査報告書4頁,13頁),同年×月×日事件本人を某児童養護施設に移送した。
2 代理によるミュンヒハウゼン蛮候群(日本小児科学会子と・も虐待問題プロジェクト, 2006. 4による)
子どもに病気を作り,かいがいしく面倒をみることにより,自らの心の安定をはかる,子どもの虐待における特殊型。加害者は母親が多く,医師がその子ぷもに様々な検査や治療が必要であると誤診するような,巧妙な虚偽や症状を埋造する。加害者は, 自分が満足で・きる結果がでて,処置をしてもらうまで「その」状態を続けるため,必要のない検査が延々と続く。ときには子どもの症状がどんどんと重篤になり,致死的な手段もいとわなくなることがあるので,十分注意が必要である。医療関係者が疑いを持っと,急に来院しなくなり,別の医療機関を受診したり, これまで学習した知識を基に,さらに巧妙な症状を作り出すこともある。本症候群には様々なタイプがあるが,その一つのタイプに,子どもに薬物等を飲ませる,窒息させるなどの行為を行い,子どもに実際の身体不調や病的状態を作り出し,そのことを病気の症状として訴えるものである。子どもにとっての不利益としては,身体的異常(最悪の場合,死亡),不必要な検査や治療,保護者への恐怖感・不信感の形成などがあるというものがある。
3 実母による精神薬の保管状況についての説明(本件調査報告書6頁)
(1) 事件本人に故意に薬を飲ませたようなことはない。
(2) 事件本人は,実母が普段パッグに入れている薬入れ(チャックの付いた小銭入れ)(以下上記パッグを「薬入れ入りバッグjという。)の中にあった薬を誤飲したのではないかと思う。事件本人は,実母の化粧品, タバコ, ライタ一等に興味を示し,パッグ入りの薬の存在も知っていたし,実母が薬を飲むところも見ていたし,実母が薬を飲むのをまねしたこともある。薬入れ入りバッグはリビングか寝室に置いていたのではなし、かと思う。上記バッグ中の薬入れ中には,デバス(ベンゾジアゼピン系抗不安薬), メイラックス(ベンゾジアゼピン系抗不安薬),ロキソニン(鎮痛・解熱薬),メプチン〈気管支拡張薬), ブスコバン(消化性法第治療薬),ガスモチン(健,胃消化薬・官腸機能調整薬)などを入れていた。他方,比較的強い薬,ロヒプノール(ベンゾジアゼピン系睡眠薬),ベンザリン(ベンゾジアゼピン系睡眠薬),ベゲタミン(フェノチアジン系抗精神薬)などは,薬用木箱に保管し,子どもの手が届かない棚の引き出しに入れていた。
(3) 平成18年×月の誤飲は,実母が飲み残した糖衣錠様のベゲタミンなどを飲んだのではないか。このとき,実母は,別れた元夫や病院関係者から薬の管理について注意され,実母自身も反省した。
4 本件誤飲した薬物について実母が通院する100内科」からの嘱託回答結果によれば,実母は13種類の薬を処方されて服用し,処方された薬の中には,薬物反応(ベンゾジアゼピン中毒)を引き起こすべンゾジアゼピン系の精神薬が含まれていることが認められる。
5 本件誤飲が実母の故意による服薬によるものかについて00病院医師0000ほか1名作成の平成21年×月×日付け診療情報提供書中には,本件誤飲について「入院前は症状が徐々に悪化したことを考えると,単回投与ではなく,継続的に内服していた可能性も考えるべきでしょうか?Jとの記載があり,平成21年×月×日当庁受付印がある「心理診断哲J中には,本{牛誤飲の薬について(事件本人が)1あーんってしたらママが飲ませた」と話している旨の記載があり,本件誤飲は実母の故意による服薬によるものではないかが疑われるo,しかし,前記3のとおり,実母は故意に薬を飲ませたようなことはない旨述べており, 事件本人は本件誤飲当時4歳であり,同人の発言をうのみにするのは蹄踏されるし,実母が代理ミュンヒハウゼン症候群であることを裏付ける具体的資料はない。結局,実母が故意による服薬をさせたことを否定する以上,他に証拠がない本件では,本件誤飲が実母による故意による服薬とすることは困難である。
6 事件本人の入所を家認するかどうかについて前記1の事実によると,現在に至るまで,実母の体調不良のためしばしば,事件本人は援護施設などに一時保護され,実母の体調不良が事件本人の養育に支障を来しており,一度平成18年×月本件誤飲した薬物に含まれているベンゾジアゼピンとパルピツール系の中毒を起こして,当時関係者から薬物の管理について注意指導を受け,実母自身も反省したと述べており,薬物の管理には十分注意しなければならないことは実母6認識していたはずであるにもかかわ.らず,前件事故と同様に事件本人について誤飲が生じており,実母の薬物管理には問題があるといわざるを得ず.これは,1保護者に監護させることが著しく当該児童の福祉を害する場合Jに当たるというべきである。申立ノト提出資料,当庁家庭裁判所調査官作成の報告舎について実母に対し,閲覧・謄写,反論書面の提出のそれぞれの機会を与えたところ,実母から反論書面が提出された。実母の反論を要約すると,次のとおりとなる。すなわち,①実母は,精神安定淘J,.睡眠剤等の薬物を処方され,所持しているが,多量摂取・常用の事実はない,②実母は「うつ病Jという診断書名を記載されたことはあるが,rうつ病」ではなく,単なる不眠であり,rうつ病」で入退院を繰り返した事実もない,③薬物の保管について十分な注意が足りなかったことを認めて反省し,現在は薬物は金庫に入れて保管している,④事件本人に薬を投与したり,煙草の股引を強制した事実は一切なく,自宅内を安全な環境にするため整理整頓している,⑤長男,長女が一般常識を備えるような教育方針をとっている,⑥実母自身がその親から虐待を受けた事実はない,⑦人格形成途上の事件本人が母親と離されることは事件本人の心に傷を与えることが心配される,③ショートステイの利用は実母の体調不良等のため事件本人の食事等の生活維持のためにしたことである,⑨事件本人の年齢からみた成長具合が平均以下と指摘した資料もあるが,子供には個別の性質があり,数値だけで比べることは疑問である,⑪ネグレクトと記載された資料もあるが実母自身一度も育児放棄をしたことはない,⑪事件本人には実父母の離婚などで寂しい思いをさせたが,母子家庭云々は差別に他ならない,⑫事件本人は好き嫌いはない,食べ物の大切さを教えて,事件本人もこれを理解している, というものである。しかし.①,②,⑤ないし⑫と前記の薬物管理の問題性とは直接関わりがないし,③,④については,実母が薬物管理の不十分さを率直に反省し,現在薬物の保管を厳重にし.自宅を整理整頓していることは評価できるが,薬物事故は今回で二度目であり,実母が今後薬物保管を厳重にし,自宅内を整理整頓するという意思の表明だけでは薬物事故が事件本人に生命健康に重大な危険を及ぼす可能性があること,事件本人が満4歳という幼少であって薬物事故に対し無防備であることなどを総合考慮すると,実母の上記反論の中で事件本人と実母を離すことで生じる問題点や心配,懸念といったことを考慮しでも,事件本人を危険な状況においたままにすることは相当でない。そうすると,本件においては,児童福祉法28条に定める児童福祉機関の措置権を行使すべき事態にあるというべきであるところ,事件本人の福祉のためには,事件本人を施設に入所させるのが相当であると判断される。よって,申立人の本件申立てを認容することとし,主文のとおり審判するo.(家事審判官永留克記)
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2012年2月26日 | コメント/トラックバック(0) |
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相続権不在確認請求事件
上告代理人〇〇〇〇,同△△△△の上告受理申立て理由について
1 記録によれば,本件の概要は,次のとおりである。
(1) Cは,平成9年3月14日死亡した。その法定相続人は,妻であるD並びに子である上告人,被上告人,E及びFである。
(2)上告人は,被上告人がCの遺言告を隠匿し,又は破棄したものであり,被上告人がした上記行為は民法891条5号所定の相続欠格事由に当たると主張し,被上告人のみを被告として,被上告人がCの迫産につき相続人の地位を有しないことの確認を求める本件訴訟を提起した。
2 被相続人の遺産につき特定の共同相続人が相続人の地位を有するか否かの点は,遺産分割をすべき当事者の範囲,相続分及び遺留分の算定等の相続関係の処理における基本的な事項の前提となる事柄である。そして,共同相続人が,他の共同相続人に対し,その者が被相続人の遺産につき相続人の地位を有しないことの確認を求める訴えは,当該他の共同相続人に相続欠格司王白があるか否か等を審理判断し,遺産分割前の共有関係にある当該遺産につきその者が相続人の地位を有するか否かを既判力をもって確定することにより,遺産分割審判の手続等tとおける上記の点に関する紛議の発生を防止し,共同相続人間の紛争解決に資することを目的とするものである。
このような上記訴えの趣旨,目的にかんがみると,上記訴えは,共同相続人全員が当事者として関与し,その間で合ーにのみ確定することを要するものというべきであり,いわゆる固有必要的共同訴訟と解するのが相当である。
3 以上によれば,共同相続人全員を当事者としていないことを理由に本件訴えを却下した原審の判断は,正当として是認することができる。所論引用の判例は,事案を異にしs本件に適切なものとはいえない。論旨は採用することができない。
よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。(裁判長裁判官 上田豊三 裁判官 金谷利蹟 積回邦夫 藤田宙靖)
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2012年2月26日 | コメント/トラックバック(0) |
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報酬付与審判に対する即時抗告事件
第1 抗告の趣旨及び理由
抗告の趣旨及び理由は, 別紙即時抗告申立書写し及び即時抗告申立書補足書面写しの該当欄記載のとおりである。
第2 当裁判所の判断
1 家事審判法14条は. i審判に対しては,最高裁判所の定めるところにより,即時抗告のみをすることができる。J旨を規定し,家事審判に対する不服申立の方法を即時抗告のみとし,それを最高裁判所規則の定める特定の場合に限定しているところ,家事審判規則は,家事審
判法9条1項甲類36号による遺言執行者に対する報酬の付与の審判については即時抗告を認めてレないので,同審判に対して即時抗告をすることは許されないものである。
2 よって,本件抗告は不適法であるからこれを却下することとし,主
文のとおり決定する。(裁判長裁判官 西由美昭 裁判官 森高重久 高野伸)
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