移送審判に対する抗告事件

第1 抗告の趣旨及び理由
本件抗告の趣旨及び抗告の理由は,別紙「即時抗告申立書」記載のとおりである。
第2 当裁判所の判断
1 事案の慨要抗告人が,平成21年×月×臼,横浜家庭裁判所(川崎支部)に対し,被相続人Cの遺産につき,遺産分割審判を申し立てたところ(平成21年岡第164号).同裁判所(同支部)は,同月×日,家事審判法11条によりこの審判事件を自庁の家事調停に付し(平成21年(家イ)第197号).さらに,同年×月×日,家事調停事件の管轄裁判所は,家事審判規則129条により,相手方住所地を管轄する家庭裁判所文は当事者が合意した家庭裁判所であるところ,同規則4条l項ただし啓を適用して管轄のない横浜家庭裁判所()II崎支部)が自庁処理すべき特段の必要性は認められないとして,上記各事件を相手方住所地を管轄する広島家庭裁判所(福山支部)に移送する旨の審判をした。これを不服として,抗告人が抗告を申し立てた。
2 判断
(1) 家事審判法11条により家事審判事件を家事調停に付す場合に,どこの裁判所の調停に付すべきかについては,現に審判事件を取り扱っている裁判所に限るとする立場と,現に審判事件を取り扱っている裁判所に限らず調停事件の管轄がある裁判所ならばその裁判所の調停に付することもできるとの立場があるが,いずれの説においても,審判事件の管轄を有する裁判所が自ら調停を行うことを認める趣旨であると解されるから,同条は,本来は調停事件の管轄を有しない審判事件の管轄裁判所に,調停事件の管轄を生じさせる規定であると解される。したがって,原裁判所は,イサ調停により調停事件についての管轄を有するに至ったものというべきであり,家事審判規則4条l項ただし蓄を適用した場合にのみ当該調停を取り担えるものと解すべきではない。
(2)原審判は,上記遺産分割調停事件につき,横浜家裁(川崎支部)には管轄がなく,上記家事調停の相手方の住所地が広島家庭裁判所(福山支部)管内にあることから同裁判所(同支部)のみが管轄を有するとの前提に立ち,家事審判規則4条1項ただし書の適用の有無を論じているが, これは相当でない。もとより,付調停に係る調停事件文はこれと審判事件とを併せて移送することも可能であると解されるが, この場合には,同規則4条2項によるべきであり,移送しないことを特に必要とするか否かではなく,移送することが適当であると認める事由があるか否かを判断すべきものである。ところが,原審判は,上記遺産分割審判事件等を移送することが適当であると認め石事由については述べていない。
(3) よって,原審判は相当でないからこれを取り消すこととし,上記の点を更に調査の上で判断させるため,本件を横浜家庭裁判所(jl崎支部)に差し戻すこととして,主文のとおり決定する。(裁判長裁判官大橋寛明裁判官佐久間政和見米正)

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