所得税更正処分取消請求事件

上告代理人0000.上告復代理人ムムムムの上告受理申立て理由について以下に摘示する相続税法及び所得税法の各規定は,それぞれ別表記載のものをいう。
l 本件は,年金払特約付きの生命保険契約の被保険者でありその保険料を負担していた夫が死亡したことにより,同契約に基づく第l回目の年金として夫の死亡日を支給白とする年金の支払を受けた上告人が,当該年金の額を収入金額に算入せずに所得税の申告をしたところ.00税務署長から当該年金の額から必要経費を控除した額を上告人の雑所得の金額として総所得金額に加算することなどを内容とする更Eそ受けたため,上告人において,当該年金は,相続税皆3条l項1号所定p保険金に該当し,いわゆるみなし相続財産に当たるから,所得税法9・条1項目号により所得税を課することができず.上記加算は許されない旨を主張して,上記更正の一部取消しを求めている事案である。2 原審の適法に確定した事実関係の概要は,次のとおりである。
(1) 上告人の夫であるAは. B生命保険相互会社(以下rB生命」という。)との間で.Aを被保険者,上告人を保険金受取人とする年金払特約付きの生命保険契約(以下「本件保険契約」という。)を締結し,その保険料を負担していたが,平成14年×月×日に死亡した。上告人は,これにより,本件保険契約に基づく特約年金として,周年から同23年までの毎年×月×日に230万円ずつを受け取る権利(以下「本件年金受給権」ーという。)を取得した。上告人は,平成14年×月×日.B生命から,同年×月×臼を支給日とする第1回目の特約年金(以下「本件年金Jという。)として,230万円から所得税法208条所定の蹄泉徴収税額22万0800円を控除した金額の支払を受けた。
(2) 上告入札平成14年分の所得税について,平成15年×月XB.総所得金額22万7707円,課税総所得金額O円,源泉徴収税額及び還付金の額2664円とする確定申告をし,次いで,同年×月× 日,総所得金額37万7707円,課税総所得金額O円,源泉徴収税額及び還付金の額22万3464円(本件年金に係る源泉徴収税額22万0800円を加算した金額)とする更正の請求をしたが,これらの確定申告及ひ’更正の請求を通じて,本件年金の額を各種所得の金額の計算上収入金額に算入していなかっfこ。他方,上告人は.Aを披相続人とする相続税の確定申告においては,相続税法24条l項l号の規定により計算した本件年金受給権の価額1380万円を相続税の課税価格に算入していた。
(3) 00税務署長は,本件年金の額から払込保険料を基に計算した必要経費9万2000同を控除した220万8000円を土告人の平成14年分の雑所・得の金額と認定し,平成15年×月×日,総所得金額258万5707円,課税総所得金額219万円,源泉徴収税額22万3464円,還付金の額4万8264円とする更正をし,次いで,同16年×月×日,所得控除の額を加算して課税総所得金額を32万円に減額し,これに伴い還付金の額を19万7864円に増額する再更正をした(以下,この再更正後の上記更正を「本件処分」という。)。
3 原審は,上記事実関係の下において,次のとおり判示し,本件処分は適法であると判断して, 上告人の請求を棄却すべきものとした。所得税法9条1項目号は,相続,遺贈文は個人からの贈与により取得し文は取得したものとみなされる財産について,相続税文は贈与税と所得税との二重課税を排除する趣旨の規定である。相続税法3条1項l号により相続等により取得したものとみなされるf保険金」とは保険金請求権を意味し,本件年金受給権はこれに当たるが,本件年金は,本件年金受給権に基づ・いて発生する支分権に基づいて上告人が受け取った現金であり,本件年金受給権とは法的に異なるものであるから,上記の「保険金」に当たらず,所得税反9条1項目号所定の非課税所得に当たらなし、。
4 しかしながら,原審の上記判断は是認することができなし、。その理由は,次のとおりである。
(1)ア所得税法9条1項は,その柱書きにおいて「次に掲げる所得については,所得税を課さない。」と規定し,その15号において「相続,追贈又は個人からの贈与により取得するもの(相続税法の規定により相続,追贈文は個人からの贈与により取得したものとみなされるものを含む。)J を掲げている。同項柱書きの規定によれば,司,号にい,う「相続,遺贈又は個人からの贈与により取得するもの」とは,相続等により取得し文は取得したものとみなされる財産そのものを指すのではなく,当該財産の取得によりその者に帰属する所得を指すものと解される。そして,当該財産の取得によりその者に帰属する所得とは,当該財産の取得の時における価額に相当する経済的価値にほかならず, これは相続税文は贈与税の課税対象となるものであるから,同号の趣旨は,相続税文は贈与税の課税対象となる経済的価値に対しては所得税を課さないこととして,同ーの経済的価値に対する相続税又は贈与税と所得税との二重課税を排除したものであると解される。イ相続税法3条l項l号は,被相続人の死亡により相続入が生命保険契約の保険金を取得した場合には,当該相続人が,当該保険金のうち被相続人が負担した保険料の金額の当該契約に係る保険料で被相続人の死亡の時までに払い込まれたものの全額に舟する割合に相当する部分を,相続により取得したものとみなす旨を定めている。上記保険金には,年金の方法により支払を受げるものも含まれると解されるところ,年金の方法により支払を受ける場合の上記保険金とは,基本債権としての年金受給権を指し,これは同法24条1項所定の定期金給付契約に関する権利に当たるものと解される。.そうすると,年金の方法により支払を受ける上記保険金(年金受給権)のうち有期定期金債権に当たるものについては,同項l号の規定により,その残存期間に応じ,その残存期間に受けるべき年金の総蓄えに同号所定の割合を乗じて計算した金額が当該年金受給権の価額として相続税の課税対象となるが, この価額は,当該年金受給権の取得の時における時価(同法22条),すなわち,将来にわたって受け取るべき年金の金額を被相続人死亡時の現在価値に引き直した金額の合計額に相当し,その価額と上記残存期間に受けるべき年金の総額£の差額は,当該各年金の上記現在価値をそれぞれ元本とした場合の運用益の合計額に相当するものとして規定されているものと解される。したがって,これらの年金の各支給額のうち上記現在価値に相当する部分は,相続税の課税対象となる経済的価値と同ーのものということができ,所得税法9条1項目号により所得税の課税対象とならないものというべきである。ウ本件年金受給権は,年金の方法により支払を受ける上記保険金のうちの有期定期金債権に当たり,また,本件年金は,披相続人の死亡日を支給日とする第l回目の年金であるから,その支給額と被相続人死亡時の現在価値とが一致するものと解される。そうすると,本件年金の額は,すべて所得税の課税対象とならないから,これに対して所得税を課することは許されないものというべきである。
(2) なお,所得税法207条所定の生命保険契約等に基つく年金の支払をする者は,当該年金が同法の定める所得として所得税の課税対象となるか否かにかかわらず,その支払の際, その年金について同法208条所定の金額を徴収し, これを所得税として国に納付する義務を負うものと解するのが相当である。したがって.B生命が本件年金についでした同条所定の金額の徴収は適法であるから,上告人が所得税の申告等の手続において上記徴収金額を算出所得税額から控除し文はその全部若しくは一部の還付を受けることは許されるものである。(3) 以上によれば,本件年金の額から必要経費を控除した220万8000円を上告人の総所得金額に加算し,その結果還付金の額が19万7864円にとどまるものとした本件処分は違法であり,本件処分のうち総所得金額37万7707円を超え,還付金の額22万3464円を下回る部分は取り消されるべきである
。5 これと異な・る原審の判断には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。論.旨は理由があり,原判決は破棄を免れない。そして,以上説示したところによれば,上告人の譜求には理由があり,これを認容した第l審判決は結論におーいて是認することができるから,被上告人の控訴を棄却すべきである。よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。(裁判長裁判官那須弘平裁判官堀寵幸男田原睦夫近藤崇暗)

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2012年2月26日 | コメント/トラックバック(0) |

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婚姻費用分担(減額)審判に対する抗告事件, 同附帯抗告事件

第l 抗告及び附帯抗告の趣旨及び理由
l 抗告人
抗告人は, 原審が,平成21年×月×日,当事者聞の和歌山家庭裁判所平成20年(家イ)第000号婚姻費用分檀調停事件(以下「前件調停事件」という。) について平成20年×月×日に成立した調停(以下「前件調停」・という’0) の調停条項l項で相手方が抗告λに対して支払う婚姻費用分担金を,平成21年×月以降分について,月額l万.円に減額するとの審判をしたのに対して抗告し,原審判を取り消し,本件を和歌山家庭裁抑所に差し戻すとの裁判を求めた。抗告理由の要旨は, ①相手方は,前件調停において月額6万円を支払うと約束したばかりであり,自らの意思で病院を辞めたからといって,給料が下がったことを理由年婚姻費用分担金の減額を認めるのは不当である,②相手方は歯科医で・あげ,その月収は18万7000円である旨主張するが,支出は月額30万円であり,その差額は10万円以上であーるから,これに見合うアルバイト収入があるはずである,というものである。
2 相手方
相手方は,上記原審判に対して附帯抗告し,前件調停において当事者が合意した婚姻費用分担金を, 平成21年×月分以降月額l万円に変更するとの裁判を求めた。附帯抗告理由の要旨は,相手方は平成21年×月に人事の都合で病院を辞めざるを得ず,同年×月から大学の研究生として勤務しながらアルバイトをして生計を立てるようになり,交通費(実費)を除くと手取収入は1か月約18万7000円と大きく減少したのであるから,本件調停を申し立てた同年×月には婚姻賀用分担金を減額する必要性が大きかった上,抗告人は結婚を機に辞めた00の職に優帰して360万円もの年収を得ているのであるから,婚姻費用分担金を減額する始期は同月とすべきである, というものである。
第2 当裁判所の判断
l 本件及び、前件調停事件の各記録によれば,次の事実が認められる。
(1) 抗告人(昭和57年×月×日生)と相手方(昭和55年×月× 日生)は,平成18年×月×日に婚姻し,・平成19年×月×日に長女が出生しTこ。
(2) 抗告人と相手方は,長女が出生したころから夫婦喧嘩が絶えなくなり,相手方の転勤を機に平成20年×丹下旬から別居していたところ,相手方において,同年×月×日離婚を求めて調停を申し立て,抗告人において,同月×日,婚姻費用分担金として月額6万円の支払を求める前件調停事件を申し立てた。そして,同年×月×日に前件調停が成立し,相手方は抗告人に対し,婚姻費用の分担金として,同月から双方が別居文は婚姻の解消に至るまで,月額6万円宛を毎月末日限り,抗告人の指定する預金口座に振り込んで支払う( ただし平成20年×月分は,既に支払済みであることを確認する。),との合意がされた。上記離婚調停は,平成21年×月×日不成立となり,相手方から離婚訴訟が提起され,平成22年×月×日,離婚を認容する判決が言い渡され,同判決は同月×白確定した。
(3) 相手方は,平成21年×月×日,前件調停により合意した婚姻費用分担金を月額l万円に減額することを求める調停を申し立てたが,同年×月×日,調停は不成立となり,本件審判手続に移行した。
(4) 相手方は,歯科医であり,平成20年×月×日から平成21年×月×日まで00病院に勤務し,給与及び賞与として,平成20年中は558万4439円を,平成21年中は191万0090円を支給された。相手方比平成21年×月×日付けで上記病院を退職しJ同年×月×日から大学の研究生として勤務しながら,病院でもアルバイトをしている。相手方は,同年中に大学から給料等として91万6600円を,アル62・11-98裁判例(家事)バイト先の病院竺ら給料及び賞与として117方1200円の支払を受けfこ。
(5) 抗告人はJ平成初年×月×日から00として勤務するようになり,給料及び賞与として平成20年中に297万8884円低’平成21年中に362万8050円の支払を受けた。
2 上記事実関係を前提に,前件調停で合意した婚姻費用分担額を変更するのが相当か,変更するのが相当な場合にその額について検討する。
(1) 調停において合意した婚姻費用の分担額について,その変更を求めるに・は,それが当事者の自由な意思に基づ‘いてされた合意であることからすると,合意当時予測で、きなかった重大な事情変更が生じた場合なと\分担額の変更をやむを得ないものとする事情の変更が必要である。そこで,本件についてこれをみるに,前記認定のとおり,相手方は前件調停が成立してから×か月後に就職先を退職し,大学の研究生として勤務して収入を得る状況となっており,平成21年の収入は合計399万7890円となり,前件調停成立時に比して約3害Jj減少していることを認めることができる0 ・相手方は,退職の理由について,人事の都合でやむを得なかった旨主張するが,実際iこPむを得なかったか否かはこれを明らかにする証拠がない上,仮に退職がやむを得なかったとしても,その年齢,資格,経験等からみて,同程度の収入を得る稼働能力はあるものと認めることができる。そうすると,相手方が大学の研究生として勤務しているのは,自らの意思で低い収入に甘んじていることとなり,その収入を生活保持義務である婚姻費用分担額算定のための収入とすることはできない。したぞって,本件においては,相手方の転職による収入の減少は,前件調停で合意した婚姻費用分担額を変更する事情の変更とは認められない。
(2) 次に,相手方は,抗告人が00に復職して年360万円の収入があると主張するが,抗告人は前件調停時には既に00に復職しており,前件調停はこれを前提に合意されたものということができるから,この収入があることをもって,前件調停で合意した婚姻費用分担額を変更する事情の変更は認められない。,,
第3 結論
以上によれば,相手方の婚姻費用分担額の減額壱求める本件申立.ては失当であり,抗告人の本件抗告は理由があるから原審判を取り消して,相手方の本件申立てを却下し,相手方の本件附帯抗告は理白がないから棄却することとし,主文のとおり決定する。(裁判長裁判官松本哲弘裁判宮田中義則永井尚子)

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婚姻費用分担審判に対する抗告事件

第l 抗告の趣旨及び理由
本件抗告の趣旨は,原審判を取り消し,本併を東京家庭裁判所に差し戻すとの裁判を求めるというものであり,その理由は,別紙「抗告理由暫」記載のとおりである。
第2 事案の概要
1 本件は,妻である相手方(昭和49年×月×日生)が,夫である抗告人(昭和46年×月×日生)に対し婚姻費用の分担金として,毎月20万円の支払を求めた事案である。62・11-88裁判例(家事)なお,当事者聞には長男(平成17年×月×日生)があり,相手方と同居している。
2 原審は,抗告人に対し,平成20年×月から平成21年×月までの聞の婚姻費用分担金の未払金合計額50万円及び同年×月から当事者の別居解消文は離婚に至るまでの婚姻費用分担金月額17万円を相手方に・対して支払うよう命じたところ,これを不服とする抗告人が本件即時抗告を申し立てた。
第3 当裁判所の判断
l 当裁判所も,抗告人は相手方に対し,照審判が認めた婚姻費用分担額の支払をすべきであると判断した。その理由は,原審判の理由の「第2 当裁判所の判断J1から5まで(原審判l頁21行日から4頁6行自まで)に記載のとおりであるから,これを引用する。ー.
2 抗告人は,平成21年×月×日付けで課長職に昇格し,超過勤務手当が支給対象外となった上,賞与も昨今の世界的不況の影響によ,り大幅に減額となっていると主張するところ,確かに,抗告人が同日付けで課長職に昇格し,超過勤務手当が支給対象外となったことは上記引用に係る原審判が認定するとおりであり,また,乙第9号証のl及び第11号証によれば,抗告人の×月期の賞与は,平成20年は129万円で・あったのが,平成21年は79万円となったことが認められるが,抗告人の収入が平成17年以降平成20年まで毎年増加していたことは上記原審判が認定するとおりであり,平成21年のベース給月額が増加していることは抗告人の自認するところであっーて,抗告人が課長職に昇格していることにも照らすと,抗告人の平成包1年の年収が平成20年のそれよりも減少するのかどうか,減少するとして,いくら減少するのかは予測が困難であって,平成21年の年収額を推計することができないから,婚姻費用分担額は,平成20年分の雫収に基づ・いて算定するほかなーいというべきである。
3 よって,原審判は相当であり,本件抗告は理由がないから, これを棄却することとし,主文のとおり決定する。(裁判長裁判官一宮なほみ裁判官田川直之始関正光)

(別紙)抗告理由書平成21年×月×日東京高等裁判所御中抗告人代理人弁護士000 0
抗告人は,次のとおり抗告理由を陳述する。
1 原審判は, 1相手方(抗告人)の年収が平成20年に比し200万円減少するとの主張はにわかに採用することができず,その他,相手方(抗告人)の年収が郁少することを裏付ける的確な証拠はないというべきである。Jとして,1相手方(抗告人)の収入は, .平成20年の年収相当額である約1080万円と認めるのが相当である。」と審判している。しかしながら,抗告人は,平成21年×月×日付で課長職に昇格はしたものの,原審判が認定しているとおり, 1超過勤務手当が支給対象外となった」ものであって,次に述べるとおりこれだけで約131万円の減収となるものであり,また賞与も昨今の世界的不況の影響により本年え月に支給された賞与は,昨年×月の立与の約61%に大幅に減額となっている。
2 これを明らかにするためにJ昨年1年間(平成20年)の毎月の給与額及び×月と×月のボーナス(業績給)支給額,及び本年1月から最新月までの毎月の給与額と×月のボーナス(業績給〉支給額とを一覧表にまとめたものが,別紙12008年/2009年給与及び業績給明細」である。62・11-90裁判例( 家事)また,その証拠として,昨年12か月分の給与月額につき給与明細表を乙8号証の1ないし12として,また昨年のボーナス(業績給)につき一時金/業績給明細を乙9号証の1及び2として,それぞれ提x出する。さらに,本年×月分及び×月分の給与月額につき乙10尋証のl及び2 (1月分から×月分までの書証は乙2の1ないし5として提出済み).として,また本年×月支給のボーナス(業績給)につき乙11として,それぞれ提出する。
3 而して,別紙12008年/2009年給与及ひe業績給明細」を見れば明らかなとおり,本年(2009年) x月以降の月額ぺース給は55万円であって昨年(2008年)のそれとは月額2万円前後の差しかなく年間で20万円程度多いにすぎない。他方,超過勤務手当(第1休日勤務手当及び第2休日勤務手当)は,昨年(2008年)の合計は204万1519円であるのに対し,本年(2009年)×月分までの合計は73万0566円であり(x月分以降はゼロである),その差は131万0953x円であり(さらに翌年の2010年には全くゼロとなる。),実質的にはその差額分だけ減収になることは明瞭である。また,ボーナス(業績給〉については,昨年(2008年)x月には129万円であったのに対し本年(2009年) x月には50万円も減額の79万円というほぼ4割近い減収となっている。これは,昨年秋以来の世界的不況・の影響により,00といえども人員削減,経費削減等の構造改革を進めなけれは.生き残れない状況になっているためである(乙12)。したがって,本年×月のボーナス(業績給)も,良くても本年×月の昨年比と同程度の割合しか期待できない経済状況であって,昨年より4割減の40万円程度の減額となることは必至の情勢にある。なお,一昨年(2007年) x月のボーナス(業績給〉は124万円であって(乙13) ,昨年 (2008 年)x月は,アメリカ金融界の不況はしりを反映して約14 %も減額されている。
4以上によりベース給月額で,年額20 万円程度増額するものの,月の確定した50 万円減及び×月の40 万円減の見込み)程度減額となるさらに超過勤務手当が約131 万円減額となるので,本年 見込みであり,(2009 年)の年収額は差引約200 万円の減収となることは明らかである。これに相手方の年収を約.1. 47 万円(原審判認定)と して,表11 の算 り,定表にあてはめれば,婚姻費用月額は 112~14万円」のゾー ンに入るべ別紙 12 008 年/2 009 年給与及び業績給明細」は省略した。 〔編注〕ボーナ ス( 業績給)では90 万円 (xしかるときは,抗告人の年収は880 万円程度であると認むべきであんことを求める。きものとなる。
5 したがって,原審判は,抗告人の年収の認定を誤り,その結果婚姻費用月額の認定を誤ったものであって,取消しを免れない。よって,本件を東京家庭裁判所に差し戻し適正な婚姻費用を認定され昨年と本年との年収を比較すると,

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子の監護者の指定申立及び子の引渡し申立却下審判に対する即時抗告申立事件

第l 抗告の趣旨及び理由等
1抗告の趣旨
(1) 原審判を取り消す。
(2) 本件を広島家庭裁判所へ差し戻す。
2 抗告の理由の要旨未成年者らの監護者は,抗告人が適当である。幼児期における母親の存在は,子の健全な成長発育には不可欠なものであり,母親自身が子の監護をする意思がない場合など特段の事情のない限り,母親が監護者ひいては親権者に指定されるのが子の福祉に適うものである。
3 抗告の理由に対する反論の要旨未成年者らの監護者は,相手方が適当である。幼児期の子の健全な成長発育に不可欠なのは,母親だけではない。父親も同様に不可欠であ’る。単に抗告人が母親であるとし、う理由だけで,抗告人が監護者りいては親権者に指定されるべきだというのはし、ささか乱暴な論理であ篭る。未成年者らが相手方の下で・順調に成長発育していることをも踏まえると,監護者は相手方がふさわしい。
第2 当裁判所の判断
1 認定事実当裁判所が認定する事実は,以下のとおり.付加・訂正するほかは,原審判の「第2 当裁判所の判断Jの1に記載のとおりであるから,これを引用する。
(1) 原審判2頁2行目から同7行目までを次のとおり改める。i(l) 抗告人は.昭和48年,cxx)で出生し,平成5年ころ,最初の婚姻をしυE(平成8年×月×日生)をもうけたが,平成12年ころ, Eの親権者を抗告人と定めて協議離婚したρ 同じころ.抗告人は,別の男性と内縁関係になり,同人との間の子供を妊娠したことから婚姻屈を提出したが,子供が生まれてしばらくすると,主として経済的な問題が原因となって夫婦関係が悪化し,平成15年に別居。した。平成15年7月ころ,抗告人が都内の00で働いていたとき.客として来庖した相手方と知り合い,交際するようになった。抗告人は,当時の失と協議離婚をしたが,その際,夫との間の子供の親権者は夫に定めた。相手方は,当時,△△をしていたが,廃業して○○市に帰る予定であったので,抗告人と相手方は,00市で生活することにし,ひとまず先に抗告人とEが00で生活を始めた。抗告人の実家は,離婚にも相手方との再婚にも反対で,抗告人と実家は絶縁状態になった。相手方は,口口の事情で廃業が平成16年8月まで遅れたが,廃業後,広島県00市△△町のマンションで,抗告人及びEと同居を始めた。抗告人と相手方は,’平成16年×月×日,長男Cをもうけたことから同日婚姻届出をし(同日,相手方とEとの養子縁組届出も行われた。),平成17年×月×日には長女Dをもうけた。そのころから,主として経済的な問題で,夫婦聞の不和が高まった。抗告人は,出産前後の時期を除いてほとんどの期間就労していたため,未成年者らとも0歳のときから保育所に預け,夜間もO口で働くなど家を空けざるを得ないこともあったが,家事や育児は,抗告人が中心となって行い,相手方がこれに補助的に関わっていた。J
(2) 原審判2頁9行、自の「暴力をふるっていた」の次に「(なお,相手方は,未成年者らに体罰を加えることはなかった。)」を,同13行目末尾に「相手方の両親は,未成年者らが生まれたときから行き来が多かったので,監護養育の当初から未成年者らは相手方の両親によく懐いていた。Jをそれぞれ加える。
(3) 原審判2頁18行自の「係争中であるが」を「係争中であり,当事者聞に離婚すること自体に時争いがなし、が」に改める。
(4) 原審判2頁21行目末尾に改行の上,次のとおり加える。「現在の抗告人方から,自転車で数分のところに保育所がある。’抗告人は,未成年者らを引き取ったら,当面は現在の住居で生活し,抗告人一人で未成年者らを養育する予定である。近くに友人もいるので,いざというときにはその援助も期待している。また,離婚訴訟が解決したら,実家のあるCDに帰るつもりでいる。抗告人は,実家の援助や友人の援助も受けることができるのではなーし、かと期待している。抗告人と実家とは,相手方との婚姻当初から,絶縁状態になっており,現在に至るも父は抗告人の行動に対する怒りが強く,抗告人が実家に直接連絡戸ることはできない状況にある。ただし,抗告;人は,母に対しては父に知られないように連絡を取ることはできる。もっとも,母に対しでも,まだ具体的な協力は求めていない。」
(5) 原審判2頁24行目末尾に改行の上,次のとおり加える。「相手方は,仕事の都合上,未成年者らを養育するのに相手方両親の助力を得ることが必要である。相手方両親は,協力的であり,今後も引き続きその援助が期待できる。なお,相手方は,平成18年4月,抗告人から受診を勧められ, 0O検査等を行った結果,CD障害によってCわを呈しているものと診断された。当初,薬を服用していたがγ 調子の思いこともないので,現在はやめている。」(6) 原審判3頁l行目末尾に「未成年者らが家にいるときは,相手方かその両親のいずれかが面倒をみている。時間的には,相手方両組が多く関わっているが,相手方も帰宅した後に入浴させたり,休日には遊びの相手を務めるなど、している。Jを加える。
2 判断(1)上記のとおり,抗告人と相手方との婚姻関係は既に破綻に瀕しており,・未成年者らを共同で監護するとし、う実態は失われているから3 このような場合には,民法766条を類推適用し,家事審判法9条l項乙類4号により,親権者の一方を未成年者の監護者に指定することができると解される。
(2) そこで,この指定の必要性の点も踏まえて,監護権者として抗告人と相手方のいずれが適当であるかにつき判断する(子の監護に関する処分は,子の福祉に直接に関係し,裁判所による後見的関与の必要性が高い込のであること,本件においては,現に未成年者らの住所をどこに定めるかとし、う監護の基本的な事項についても抗告人と相手方との間で対立しており,抗告人はI未成年者らが通っている保育所を変えたいとの意向を漏らしている午と」現在離婚訴訟が係属中て・あってもその確定長でには時間を要することに照らすと,監護者の指定申立てを受けた裁判所としては,監護者の指定をせずに上記実態を放置するのは相当ではなく,適切な監護者を定めるべきである。)。上記認定事実によれば,抗告人・相手方とも,監護者として適性を欠くとまではし、えない(相手方にはCわの診断もあるが.普段の生活に支障があるようではなく,未成年者らに対して感情的行動を、するなど,監護に支障をきたす事実があるとも認められない。)。また物的な養育環境の面でも,抗告人・相手方とも未成年者らが安定して生活するに足りる住居や保育所などの環境を整えており,この面で両者に有意な差があるとはいえない。しかしながら,今後の未成年者らの人的な養育環境の面を考えると,抗告人は,当面は抗告人一人で現在の住居に持いてEの外,未成年者らを養育し,いざというときには友人の援助も期待しているが,養育の意欲に欠ける点微ないとしても,一人で未成年者らの監護を全うするのは現実的には困難であるとしみ外なく,友人の援助なるものも具体性に乏しく,これを安易に期待することはできなし、。また,抗告人は,いずれC丈ト転居して実家の母を監護補助者とし,その援助を受けることをも期待しているが,これまでの経緯にかん品みると,その現実的な可能性には疑問を差し挟まざるをえないし,その具体的な態様も明らかではない。これに対し,相手方に関しては,現在の人的な養育環境に大きな変化のないまま,安定的に推移するであろうことが期待できる。以上によれば,将来の人的な養育環境が不分明なまま現在の監護状況を変化させることはし、たずらに監護の安定性を欠くことになる.のであって,相手方の下で生活する方が,未成年者らの福祉にかなうというべきである。この点,抗告人は,幼児期における母親の存在は,子の健全な成長発育には不可欠なものであるとして,抗告人を監護者とするのが適当であると主張するが,相手方の母によって母性的な監護もなされているのであって,抗告人が母親であるという点は,上記の判断を覆すほどに重視すべきものではない。したが4て,未成年者らの監護者については,当面,いずれも相手方と定めるのが相当である。
(3) 次に,未成年者らの引渡しの申立てについては,監護者でなし、抗告人が監護者である相手方に対して引渡しを求める理由は存しないから,これを認めることはできない。
3 結論ー以上のとおりであって,未成年者らの監護者をいずれも相手方と定め,抗告人の相手方に対する未成年者らの引渡しの申立てを却下すべきところ,原審判はし、ずれの申立ても却下しており,上記と一部趣旨を異にするので,家事審判規則19条2項に基づき,原審判を変更することとし,主文のとおり決定する。(裁判長裁判官康田聴裁判官山本和人山口浩司)

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2012年2月26日 | コメント/トラックバック(0) |

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離婚等本訴、認知無効本訴、損害賠償反訴請求控訴事件

第1
当事者の求めた裁判
1 控訴人A
(1) 原判決中控訴人A敗訴部分を取り持す。(2) 控訴人Aと被控訴人Cとを離婚する。(3) 被控訴人Cは,控訴人Aに対し, 1000万円及びこれに対する平成19年×月×日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。(4)ア主位的申立て主文第3項と同旨イ予備的申立て控訴人Aと被控訴人Cの長男B(平成7年×月× 日生)の62・10-68裁判例( 家事)親権者を被控訴人Cと定める。(5) 控訴人Aと被控訴人Cの二男E(平成14年×月× 日生)の親権者を控訴人Aと定める。ー(6) 上記(1)の取消部分に係る被控訴人Cの請求を棄却する。(7) 主文第6項と同旨(8) 訴訟費用は,第1,2審とも被控訴人らの負担とする。
2 控訴人D(1) 原判決中控訴人D敗訴部分を取り消す。(2) 前項の取消部分に係る被控訴人Cの請求を棄却するo(3) 訴訟費用は,第1,2審とも被控訴人Cの負担とする。
3 被控訴人ら(1) 本件各控訴をいずれも棄却する。(2) 控訴費用は控訴人らの負担とする。
第2.事案の概要
l 本件の事案の概要停次のとおりである。
(1) 第1事件は,夫である控訴人Aが,妻である被控訴人Cに対し,民法770条l項1号及び5号に基づく離婚,慰謝料1000万円及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平成19年×月×白から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めるとともに,二男の親権者を控訴人Aと定めーるよう求めた事案である。
(2) 第2事件は,控訴人Aが,戸籍上の長男である被控訴人Bに対し,平成14年×月×日付け届出による認知の無効確認を求めた事案である。なお,控訴人Aは,原審において,被控訴人Bの親権者を被控訴人Cと定めるよう申し立てていたが,当審においては,同申立てを第2事件の芦求が棄却された場合に備えた予備的なーもlDした。
(3) 第3事件は,被控訴人Cが,控訴人A及び控訴人Dに対.し,控訴人らが肉体関係を持ったことが被控訴人Cに対する共同不法行為を構成するとして,連帯して慰謝料3000万円及びこれに対する反訴状送達の日の後の日である平成19年×月×白から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案(第1事件の反訴)である。
(4)ー第4事件は,控訴人Aが被控訴人Bに対して認知の無効確認を求めたことによって,同人を事実上の養子として成人に達するまで養育していく旨の約束に違反したとして,被控訴人Bが,控訴人Aに対し,満12歳から満20歳までの8年間の養育費相当額1920万円(月額20万円)の損害を被ったとして,同額の損害賠償及びこれに対する反訴状送達の日の翌日である平成19年×月×日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案(第2事件の反訴)である。
(5) 原審は,控訴人Aが控訴人Dと肉体関係を持った有賀配偶者であるとして第l事件の離婚請求及び損害賠償請求をいずれも棄却し被控訴人Cの控訴人らに対する第3事件の損害賠償請求を連帯して慰謝料500万円及びこれに対する反訴状送達の日の後の日である平成19年×月×日から支払済みまで民法所定の年5分の1lIJ合による遅延損害金の支払を求める限度で認容した。また,原審は,控訴人Aは, ・自らが被控訴人Bの実父ではないことを認識しながら任意に認知をしたのであるから,被控訴人Cとの婚姻関係が継続する以上,認知の無効確認を求めることはできないとして第2事件の請求を棄却し,被控訴人Bの控訴人Aに対する第4事件の損害賠償請求は,第2事件の請求が棄却されることを解除条件とする予備的な反訴請求であるとして,請求の当否について判断しドかった0.そこで,控訴人らが各自の敗訴部分を不服として控訴を申し立てた。
2 前提事実及び当事者の主張
の要旨は,次のとおり付加訂正し,当審における当事者の主張を3に付加するほかは,原判決「事実及び理.由」中の第2のlないし3(原判決3頁11行目から7頁16行固まで)に記載のとおりであるから,これを引用するov (1) 原判決4頁7行目. 5頁6行自の各「証人FJ. 同5頁7l子自の「同証人」をいずれもrFJに改める。(2) 原判決5頁2行目「周年」を「平成17年」に改める。(3)原判決5頁21行自及び同7頁5行自の各「不貞行為J. 同5頁22行自の「不貞関係」をいずれも「肉体関係」に改める。
3 当審における当事者の主張
(1) 控訴人Aの主張ア離婚請求及び慰謝料請求次のとおり,控訴人Aを有責配偶者で・あると非難することは妥当ではなく,被控訴人Cとの婚姻関係は既に破綻しているのであるから,離婚請求は何ら信義に反するものではなく,認容されるべきである。
(ア) 婚姻関係の破綻時期控訴人Aと被控訴人Cの婚姻関係は,平成17年夏以前の早い段階で破綻していた。写真(乙10. 11)によって,節目節目に家族揃って控訴人Aの自宅(以下rA宅」という。)で祝い事をしたり零族旅行をしたことが認められでも.,円満な夫婦関係が継続していたことまでが証明されるものではない(上記写真は被控訴人Cによって日付等に工作が加えられている疑いが濃厚である。)。また,上記写真には平成18年×月×日の被控訴人Bの誕生日のもの等も含まれるのに,原判決は「少なくとも平成17年夏ころまでは」夫婦関係が円満であったと認定しており,時期の区分の根拠が不明である。そもそも控訴人Aと被控訴人Cは,婚姻後,別居状態が続いていたのであり,その事情が吟味されるべきである。
(イ) 被控訴人Cの不員Fが平成18年×月×日から×日にかけて被控訴人Cの自宅マンション(以下rc宅」という。)に宿泊したことに関する被控訴人Cの説明は,明ちかに不自,然、であり虚偽である。それまで個人的な相談をする間柄ではなかったFに対し. 10年振りに突然相談をすることは通常あり得ないし,当日も大人数で飲食を重ねており個人的な相談をする状況になかった。Fが宿泊した理由も.c宅にいなかったはずの被控訴人Cの母Gが,飲酒運転になるので宿泊を勧めたというものであるし.Fも.c宅やG宅からかなり離れた場所に自動車を駐車させるなど,最初からC宅に宿泊することを前提とする行動をとっ?いた。そして. 10年振りに会ったという男女が深酒をして深夜に男が女の肩を抱いて女の家に宿泊するというのは,通常は男女関係にあるからである(Fは,上記以外にもC宅に宿泊したことがあった。)。また, 甲8 (同年×月に被控訴人Cがピルを飲んでいた旨の会話の録音)及び甲12(被控訴人Cの自動車の位置情報)は.Fとの不貞を甚付けるものである。イ認知無効確認請求控訴人Aが被控訴人Bを認知したのは,被控訴人Cとの円満な夫婦関係を前提-としていたのであり,婚姻関係の破綻を理由に離婚請求が認められるべきである以上,控訴人Aが真実に反する認知の無効を主張することは何ら信義則に反七ない。
(2) 控訴人Dの主張被控訴人Cの異常な性格傾向により,控訴人λとの婚姻関係は,婚姻直後のころより破綻していた(被控訴人Cは,原判決が認定した夫婦の破綻時期より前からFと交際している。)仮にそうではないとしても,両名の別れ話のけんかから,控訴人Dが,控訴人Aに妻子があることを知った平成15年秋ころには,夫婦関係は完全に破綻していた。控訴人Aが温情豊かな大人の男性であることにかんがみれば,クリスマスや子らの誕生日等の節目に子らとの面接交渉を重ねてきたのは当然であtJ.そのことをもって被控訴人Cとの夫婦関係が円満であったと推認することはできなし、。被控訴人Cは,控訴人Aのこのような性格を見透かして子らを利用し,夫婦の関係が円満であるかのように装っていたにすぎないのであり,夫婦関係の認定においては,控訴人Aと披控訴人Cが一度も同居していない事実を等閑視すべきではない。よって,控訴人Dには,賠償貸任はない。
(3) 被控訴人Cの主張控訴人Aと被控訴人Cの婚姻関係が円満であったことは,写真だけではなく. DVDによっても証明されている。平成17年や平成18年にも正月の会や誕生日の会が催されてーおり,控訴人Aと被控訴人Cは,二人の子ともども時聞を作つては交流していた。なお,両者の婚姻関係は現在も完全には破綻していない。控訴人らは,長期にわたって何度もニ人で海外旅行に行くなどして肉体関係を持っていた。他方,被控訴人CがFとの間で不貞行為をしたことを裏付ける的確な証拠はない(なお,甲7は, プライパシーを侵害玄る違法収集証拠として排除されるべきものである。)0Fが被控訴人Cと肩を組んだとしても,酒に酔っていたからにすぎない。また,平成18年×月×自の他にFがC宅に宿泊したのは,被控訴人Cの兄やその友人も来た際のことである・0したがって,有賀配偶者である控訴人Aの離婚請求は認められず,控訴人らは500万円の損害賠償義務を負う。被控訴人Bの主張認知した本人である父が自らの認知の無効確認請求をするのは,民法785条に反するもので,認められない。
第3当裁判所の判断
1認定事実
(1) 証拠(甲1, 5,7 のし2,甲17のlないし3,乙A2,8ないし10, 11のlないし7,乙A15ないし18,37ないし40,44のlないし乙A45,乙B1,丙1, 3, 4,証人F,控訴人A本人,被控訴人C本人,控訴人D本人〔これらの人証はいずれも原審におけるものである。以下閉じ。))及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。ア控訴人Aと被控訴人Cは,平成10年春ころ被控訴人Cがホステスとして勤務していた00のクラブに控訴人Aが客として訪れたことから出会い, それから半年程したころ,大阪府Oム市にあるA宅で初めて肉体関係を持ち, その後,被控訴人CがA宅をしばしば訪れるようになって交際を深めていった。控訴人Aは,平成12年×月には被控訴人Cと被控訴人Bを連れて遊園地に出かけたり, A宅で被控訴人Bの誕生祝いをしており, また,平成13年×月にはA宅で被控訴人Bを交えて被控訴人Cの誕生祝いをしたことがあった。被控訴人Cは,平成14年×月×日ころ,控訴人Aの子(戸籍上は両者の聞の二男であるE) を懐妊したことに気付いた。控訴人A,被控訴人C及び被控訴人Bは,同月×日ころから周年×月×日ころまで, 000に旅行した。控訴人Aは,平成14年×月×日, 0ム市役所において,被,湾訴人Cとの婚姻及び被控訴人Bを認知する旨の届出をした。この認知の届出は,控訴人Aが,被控訴人Cとの婚姻に伴い,被控訴人Cの子である被控訴人Bを家族の一員として養育していく意思でなされたものであった。控訴人Aは婚姻後もA宅で一人暮らしを続け,被控訴人C及ぴ被控訴人Bは口口のC定で暮らしながら, A宅に通うという生活となった。控訴人Aは,被控訴入Cに対し,毎月の婚姻費用として, 50万円程度を渡すようになった。被控訴人Cは,平成14年×月×日, 二男Eを出産したが,その数日前にはA宅で被控訴人Bの誕生祝いを行った。控訴人D (昭和44年×月×日生)は,平成12年ころ,被控訴人Cが勤務していた00のクラブに入庖し,控訴人A及び被控訴人Cと面識を持つようになった。控訴人Aと控訴人Dは,平成14年×月X日から同月.X日ころまで000に旅行し,その際に肉体関係を持ち,両者の交際が始まった。両者は,平成15年×月,平成16年×月,同年×月,同年×月,平成17年×月及び同年×月にも一緒に海外旅行をLた。控訴人Dは,上記交際中,遅くとも平成J5年秋ころには,控訴人Aには,被控訴人Cという妻があることを明確に認識した。この間,控訴人Aは,平成14年×月にA宅において控訴人A.被控訴人C.被控訴人B及び二男Eの家族4人でクリスマスパーティーをし,平成15年×月×日には被控訴人Cと二人で大阪のムムホテルに宿泊し, 同年×月× 日から同月×日ころまで家族4人で000に旅行し,周年×月×自には’A宅において家族で二男Eの誕生祝いをし,同年×月には家族でクリスマスノfーティーをし,平成16年×月には被控訴人Bの誕生祝いをし,同年×月には被控訴人Cの誕生祝いやクリスマスパーティーをし平成17年×月には家族でム口に泊まりがけで遊びーに行くなどした。ウ被控訴人Cは,平成17年×月ころ,控訴人Aが当時控訴人Dの住んでいたO口のマンションに出入りしていることを知り.両名が交際しているのではないかと疑うようになっナこが,両名が関係を否定したことから確証を得られなかった。ただ,被控訴人Cは,同年×月ころ,控訴人Dの勤務先に複数回電話をかけたり,控訴人Dの自宅マンションを訪問して同人を詰問し,同人が警察官を呼んだこともあった。-控訴人Aは,調査会社に依頼して被控訴人Cの身辺を調査していたところ,平成18年×月×白から×日にかけてFがC宅に宿泊したことを知った。エ控訴人Aは,大阪家庭裁判所に夫婦関係調整調停事件(平成18年(家イ)第xx号)を申し立てたが,平成19年×月×日,同調停は不成立となった。なお,被控訴人Cは,同調停において,調停委員から離婚に応じる場合の条件を尋ねられ,取得を希望する不動産の折り込みチラシを裁判所に持参したほか,養育費とし裁判例( 家事)て9000万円を一括で支払うことを求める旨の回答をした。控訴人Dは,同月中旬ころ, 0臼のマンショシから現住所地のマンションに転居したが,被控訴入Cは,同月×日ころの深夜,控訴人Aが転居先マンションから出てきた現場を押さえ,控訴人Aと誇いになった。このため,控訴人Dは.0ム署の警察官を呼んだ。被控訴人Cは,この誇いの際に控訴人Aから暴行を受けたとしてOム署に被害屈を提出した。控訴人Aは,同年×月×日,被控訴入Cを相手方として大阪地方裁判所平面談強要禁止仮処分命令の申立てをしたが(平成、.19年(ヨ)第xxx号),同月×日,同事件の審等期日において,被控訴人Cが,その代理人弁護士を通じでする以外は,控訴λAに直接接触しないことを約束したため,控訴人Aは同申立てを取り下げた。
(2) 控訴人らは,被控訴人CがFと肉体関係を持った旨主張する。証拠(甲7の1, 2. 甲29. 証人F. 当審証人G,被控訴人C本人)によれば,被控訴人Cが.Fのxxを訪問し平成18年×月×日から×日にかけ.Fと深夜まで飲食を共tごした後.Fの運転する自動車でC宅まで送ってもらい,FをC宅に泊めたこと,上記自動車の駐車場所からC宅へ向かう途中,酪町していたFが被控訴人Cの・肩を抱いたことがあったこと, 上記訪問の何日か後にも.FがC宅を訪問したことがあったことが認められる。これらの状況からすると,控訴人らが,被控訴人CとFに男女関係があると主張することも理解できなくはない。しかしながら,証拠(証人R 当審証人G,被控訴人C本人)によれば,Fと被控訴人Cは.Fの後輩と被控訴人Cの兄が友人であったことから10等以上前からの知人であったこと,平成18年×月×日の深夜に被控訴人CがFを伴って帰宅した際, C 宅には,被控訴人Cから依頼されて被控訴人B及びEの世話をしていたG (被控訴 . 人C の母)がいたことγG は,飲酒により酷前していたFをそのまま帰宅させると飲酒運転をさせることになってしまうためh F に対.Fは子供部屋で,被控訴 してC宅に泊まっ・ ていくよう勧めたこと,人C;G 及び子らは別の和室で別々に就寝したことが認められ,上記認定に反する証拠はなし、。そして,これらの認定事実によれば,Fと被控訴人Cとが深夜まで飲食を共にして, F が被控訴人Cを自その際に被控訴人Cの肩を抱いたという行動があったからといって,直ちに両者が男女関係にあったとまで推認す宅まで送り届け,同日に被控訴人CがFと肉体関係を持つ まして, ることはできず,たことを認めるに足りないというべきである。(平 なお,控訴人Aは,被控訴人C の不貞の証拠として,成18 年×月に被控訴人Cがピんを飲んで=いた旨の会話の録音),甲8甲12 ( 被控訴人Cの自動車の位置情報)を提出するが,いたことや被控訴人Cが自動車でFの自宅付近等を通行したことがピルを飲んで直ちにFとの肉体関係を推認させるものということはできない。ま甲34 ,38 ( 同年×月 ×日に被控訴人CがFO)X X近くの飲食 f こ,居前に自動車を駐車していた写真)も,直ちに被控訴人CとFとが男女交際していたことを推認させるものではなし、。甲7 が違法収集証拠であるから排除される また,被控訴人Cは,べきである旨主張するが,調査会社に依頼して行動を調査することが著しく反社会的な手段であるということはできず,被控訴人Cの上記主張は採用する ことができない。2控訴人Aの離婚請求及び慰謝料請求(第 l 事件)について上記のとおり,被控訴人Cに不貞な行為があったとは認め られな ) – (いから,民法770 条 l 項 l 号に基づく控訴人Aの離婚請求は理由がない。
(2)控訴人Aは,被控訴人Cとの婚姻関係は,被控訴人Cの浪費癖,嫉妬心, 暴力及ひー暴言等によって平成14 年夏前ころには完全に破綻するに至った旨主張し,控訴人A本人も同旨の供述をする。しかしながら,被控訴人Cが控訴人らの男女関係を疑い出した平成17 年×月より前の時点における被控訴人Cの暴力及び暴言等の・事実を認めるに足りる的確な証拠はないし(甲28 も, それ自体から衣服等の損壊時期や損壊布為の主体を示す証拠ではない。) ,上記 lの認定事実によれば,控訴人Aは,平成14 年×月 ×日の婚姻後も被控訴人C ,被控訴人B 及びFと同居したことはなかった. ものの,夫 ・ 父として毎月婚姻費用を50 万円程度負担し,平成17 年 ×月に至るまでの 3 年以上にわたって度々被控訴人Cや子らの誕生祝いや家族旅行等の交流を重ねていたのであるから,実質的な婚姻共同生活が営まれていたというべきである振り返って控訴人Aが被控訴人Cの平成17 年×月より前の過去の(したがって,仮に現時点から言動に不満を有することがあったとしても,婚姻関係を破綻させるほどのものではなかったと評価せ古るを得ない。 ) 。同月以降,被控訴人Cが, そして,上記 l の認定事実によれば,控訴人ちの男女関係について疑いを深めていったことによって被控訴人Cと控訴人Aの婚姻関係が円満を欠く状態になっていったことは明らかであるが,控訴人らの男女関係がそれより 3 年前の平成14年×月から継続していたものであることからすれば,婚姻関係がもっぱら控訴人Dと 上記のように円満を欠く状態になった責任は,の交際をした控訴人Aにあるというべきである。
(3 ) 離婚請求は,信義誠実.の原則に照らしでも容認されうるものでなければならないが,男IJ居が年齢及び同居期間との対比において相当の長期間に及び,未成熟子が存在しない場合には,相手方配偶者が離婚により極めて過酷な状態に置かれる等著しく社会正義に反する特段の事情がない限り,有賀配偶者からの離婚請求であるとの一事をもって許されないとすることはできない(最高裁昭和62年9月2日大法廷判決・民集41巻6号1423頁参照)。これを本件についてみると,控訴人Aと被控訴人Cの婚姻関係は,当初から同居を伴わないものであったものの,平成17年×月ころまでは順調なものであったのであり,その後円満を欠く状態になってから現時点までの期間は4年程度にすぎないし,両者の聞の実子であるEが現在7歳にすぎないことを考慮すると,自ら不貞行為をした控訴人Aが,現時点において被控訴人Cに対して離婚を求めることは,信義誠実の原則に照らして容認されないというべきであり,控訴人Aの民法770条1項5号に基づく離婚請求も理由がなし、。したがって,控訴人Aの離婚請求及び離婚に伴う慰謝料の請求はいずれも理由がなし、。
3 被控訴人Cの慰謝料請求(第3事件)について
(1) 上記1の認定事実のとおり,控訴人らは,平成14年×月以降a少なくとも平成17年×月ころまでの3年近くにわたって男女関係を継続し,控訴人Dにおいても遅くとも平成15年秋ころには,控訴人Aに被控訴人Cという妻があることを知っていたのであるから,その後も控訴人Aとの男女関係を継続したことは,被控訴人Cの婚姻共同生活の平和の維持という権利文は法的保護に値する利益を違法に侵害した共同不法行為を構成するというべきである。
(2) そ.して,上記認定の平成17年×月までの被控訴人Cと控訴人A62・10-80裁判例( 家事)の婚姻関係の状況及びそれより.後の婚姻関係の悪化の状況に,上記判示のとおり控訴人Aからの離婚請求が棄却されるべきものであー弘法律上の婚姻関係は今後も継続していくこと等,本件における一切の事情を考慮すると,上記共同不法行為による被控訴人Cの精神的苦痛に対する慰謝料としては. 150万円をもって相当と認められる。したがって,被控訴人Cは,控訴人らに対し,連帯して慰謝料150万円及びこれに対する反訴状送達の日の後の日である平成19年×月×日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めることができる。4 控訴人Aの認知無効確認請求(第2事件)について(1) 前提事実及び上記1の認定事実によれば,控訴人Aと被控訴人Bとの聞には,血縁上の父子関係がないにもかかわらず,控訴人Aは,被控訴人・Cとの婚姻に伴い,同人の子であった被控訴人Bの父として養育する意思で認知をしたということができる。
(2) 上記のような認知(不実認知)の無効を認知者自身が主張することができるかについては,認知者自身による認知の取消しを否定する民法785条との関係で, これを消極に解する見解もあり得るところでtある。しかしながら,認知が,血縁上の父子関係の存在を確認し,その父子関係を法律上の実親子関係にするための制度であり,同法786条が,子その他の利害関係人が,認知に対して反対の事実を主張すること(不実認知の無効確認を求めること)ができる旨規定することからすれば,認知者自身も不実認知の無効を主張することができると解するのが相当である。そして, このことは,上記認知が母との婚姻に伴って子を養育する意思てなされたもので・あり,認知者と81母との法律上の婚姻関係が継続しているといった事情があっても同様で・ある(ただし, このような事情が,認知者が被認知者の母である妻に対して負担するべき婚姻費用の金額の算定において,民法760条の「その他一切の事情」として考慮されるかどうかは別の問題であり,認知者が認知の際に自分の子として養育する意思を有していた以上,婚姻費用の増額事由として考慮されるべきであると解される。)。
(3) したがって,控訴人Aは,被控訴人Bに対し,認知の無効確認請求をすることができる。
5 被控訴人Bの.損害賠償請求(第4事件)について
(1)控訴人Aは,被控訴人Bの損害賠償請求は,本訴である認知無効確認請求の請求原因事実と関連性がなく,不適法であると主張する。しかしながら,上記反訴請求は,本訴である認知無効確認が認容されて控訴人Aと被控訴人Bとの聞の実親子関係が否定されることを請求原因事実としているのであるから,本訴の目的である請求と関連するものであると解するのが相当である。
(2) そこで,上記損害賠償請求が認められるかを検討すると,仮に認知の際に認知者が子として養育していく意思を有していたとしても,本来無効である不実認知について無効確認を求めることが違法な行為ということはできないし,上記判断のとおり,仮に認知が無’効であることが確認されたとしても,婚姻に伴って養育する意思で認知がなされた事実は,認知者が被認知者の母である妻に対して負担するべき婚姻費用(夫婦聞に未成熟子がある場合には当然にその設育費を含むものとして算定される。)を算定する際に増額事由として考慮されるべき場合があると解されるから,認知が無効とされ62・10-82裁判例( 家事)ることによって養育費相当額’の逸失利益が生じるとの主張は採用できない。.
(3) したがって,被控訴人Bの控訴人Aに対する損害賠償請求は理由がなし、。6 結論以上の次第で,第l事件及び第4事件の請求はいずれも棄却すべきであり,第2事件の請求は認容すべきであり,第3事件の請求は控訴人らに対して連帯して慰謝料150万円及びこれに対する反訴状送達の甲の後の日である平成19年×月×日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で認容するべきである。よって,当裁判所の上記判断と一部異なる原判決を上記のとおり変更することとし,主文のとおり判決する。(裁判長裁判官安原清議裁判官坂倉充信和田健)・

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2012年2月26日 | コメント/トラックバック(0) |

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財産分与審判及び請求すべき按分割合に関する処分申斗却下に対す る抗告事件,同附帯抗告事件

第l 本件抗告及び本件附帯抗告それぞれの趣旨及び理由
l 本件抗告
抗告人は,原審が,平成21年4月17日,平成20年開第1307号事件(以下「第l事件」としづ。)につき,相手方に対し,抗告人に対ずる財産分与として52万円の支払を命じ,同第1467号事件(以下「第3・事件Jという。)につき,抗告人と相手方との閣の原審判別紙2記載の情報に係る年金分割についての請求すべき按分割合を0.5と定めることを求めた申立てを却下する審判をしたのに対して抗告し,①原審判中第l事件に関する部分を取り消し,相手方に対して506万円の支払を命じ,②第3事件に関する部分を取り消し,抗告人と相手方との閣の康審判別紙2記載の情報に係る年金分割についての請求すべき按分割合を0.5と定めるとの裁判を求めた。第1事件についての抗告理由の要旨は,原審判が,相手方が抗告人に対して財産分与として支払うべき506万円から,実際に支払った婚姻費用のうち標準的な額(月額20万円,年額240万円)を上回る額が454万円余りになるとして,これを事後的扶養というべき財産分与の前渡しとして控除したが,①扶接的財産分与は,清算的財産分与や慰謝料だけでは離婚後の生活保障として不十分であるような要扶養状態にある場合に,扶養能力ある扶盤義務者に対して支払わせるものであり,清算的財産分与から控除するのは扶養的財産分与の趣旨に反する,②平成6年×月の別居後に相手方が支払った婚姻費用は,相手方がその都度相当額を判断してきたもので,家賃だけみても変動しているように,婚姻費用算定の条件はそのときどきで異なるから,平成17年×月の調停合意の存在をもって,過去に遡って婚姻費用が過大であったなどと判断するのは本末転倒である,というものである。第3事件についての抗告理由の要旨は,別居していても, 夫婦が共同して保険料を負担していることを基本認識とする年金分割の制度趣旨に加えて,平成20年×月以降は第3号被保険者期間は自動的に2分の1に分割されるから, これと異なる解釈が採用されるべきではなしず, というものである。
2 本件附帯抗告
相手方は,原審が,平成21年4月17日,第l事件につき,相手方に対し,抗告人に対する財産分与として52万円の支払を命じ,平成20年関第1308号事件(以下「第2草件」という。)につき,抗告人と相手方との聞の原審判別紙l記載の情報に係る年金分割についての請求すべき按分割合を0.5と定める審判をしたのに対して抗告し,これらを・いずれも取り消し,抗告人の各申立てをいずれも却下するとの裁判を求めた。第l事件についての附帯抗告の理由の要旨は,①財産分与においては,夫婦の一方が過大に負担した過去の婚姻費用の償還を考慮すべきであるところ,二女は高校卒業後進学せず,要扶養状態を脱していたから,平成8年に成年に達する前でも,この点を考慮すべきである,②平成17年×月に調停合意した以降の婚姻費用の相当額b 客観的にみて相当な額であるか否かを判断すべきであり,相手方が抗告人に対して分与すべき財産はない,③抗告人は過大な婚姻費用の支払を受けてきたから十分な財産を形成しているはずである上,扶養すべき者もいないから要吠盤状態にあるとはいえず,他方,相手方は再婚した妻を扶養しなければならない上:老母とも同居しているから,抗告人を扶養する能力はない”というものである。第2事件についての附帯抗告の理由の要旨は,①抗告人は相手方と同居中も宗教活動に専念、して相手方との家庭生活を顧みることがなし相手方には筆舌に尽くし難い心労があり,精神的にも物質的にも抗告人は相手方の保険料納付に寄与したとはいえない, ②年金分割では個別具体的な事情を考慮した清算的要素が重視されているので,過62・10-56裁判例( 家事)剰な婚姻費用を取得し続けた抗告人は,保険料納付に寄与したどころか,経済的な障害でさえあった,というものである。
第2 当裁判所の判断
1 事実関係次のとおり付加訂正するほかは,原審判(2頁4行目から4頁2行目)のとおりであるから,これを引用する。
(1) 2頁11行自の「婚姻費用分担分担」を「婚姻費用分担」に改め,同頁14行自の「調停」の次にI(以下「婚姻費用分担調停」という。)Jを加える。
(2) 2頁16行自の「年金分害IJ (jの次に「原審判別紙l記載の情報に係るもの。」を,同頁刊行自の「年金分割Jの次にI(原審判別紙2記載の情報に係るもの。)Jをそれぞれ加える。
(3) 3頁7行自の11030万3700円」の次にI(ただし,税引き後の額は1013万7100円)Jを加える。
(4) 3頁11行自の「平成6年×月からは」の次に1,賃貸住宅である」を力日える。
(5) 3頁13行自の13月まで」の次に1,以下,平成10年度まで同じ。」を加え, 1252万7910円Jを1252万6392円」に, 1246万7932円」を1246万7032円」に,同頁14行自の1255万3114円」を1255万3814円」に, 同頁16行自の1180万7358円」を1230万0104円〉にそれぞれ改め,1平成12年」の次にI(周年1月から12月まで,以下,閉じ。)J を,同頁19行目から20行自にかけた1240万円」の次に1,平成20年×月には20万円Jを, 1送金していた」の次にI(平成6年×月から平成20年×月までの送金額の総計は3919万9880円となり,平成17年×月分以降は,婚姻費用分担調停に基づ.いて,.月額20万円の割合による送金がなされた。なお,相手方の給与明細が提出された平成11年×月去での相手方の送金額は,賞与を除く給与の手取額の2分のlをやや下回る額であった。)Jをそれぞれ加える。
(6) 3頁21行自の「葬儀や」を「葬儀の連絡をせず,また,相手方は」に改める。
(7) 4頁2行目末尾を改行の上,r相手方の給与収入は,平成6年度(同年4月から翌年3月まで,以下,平成10年度まで同じ。)が728万7910円,平成7年度が979万0613円,平成8年度が1004万7150円, 平成9 年度が1143万07 1 8 円, 平成1 0年度が1137万88~9円,平成11年(同年4月から12月まで)が926万2897円,平成12年(同年l月から12月まで, 以下, 同じ。)が1086万9929円,平成13年が~O?O万0200円,平成14年が1107万4113円,平成15年が1118万0813円,平成16年が1103万3094円,平成17年が1106万5225円,平成18年が1073万4103円,平成19年が1099万4350円であった。」を加える。
2 以上認定の事実を前提に,本件財産分与の申立て(第l事件)について検討する。
(1) 財産分与の対象となるのは,同居中に形成された夫婦財産に限られるところ,抗告人と相手方は,相手方が平成6年×月に目宅を出て実家で生活をするようになり,以来,離婚判決が確定するまでの約14年間別居し,ほとんど交流する’ことなく生活していたことにがんがみると,財産分与の対象となる財産は,相手方が婚姻後に就職して平成6年×月×日に退職した口口から支給された退職金受領額1013万7100円及び00銀行00支庖の相手方名義の普通預金の周年×月×日付け残高18万5427円の合計1032万2527円である。
(2) そして,抗告人が昭和59年×月ころから宗教活動に多くの時間を割くようになったものの.平成5年×月までの間,.長女及び二62・10-58、、裁判例( 家事)女を養育し, それなりに家事をこなしていたことが認められるから,上記(1)の財産の形成についての抗.告人の寄与は, 2分のlと認められる。
(3) 相手方は,抗告人に対して送金した婚姻費用のうち,抗告人にも.賃金センサスに基づく相応の稼働能力を推計した上で算定される標準的な婚姻費用の額を超える分は,財産分与の前渡しと評価すべきであると主張するので, この点について検討する。相手方は,平成6年×月から平成20年×月までの13年10か月(166か月)の婚姻費用として合計3919万9880円を送金し,このうち,平成17年×・月から平成20年×月までの28か月は月額20万円の割合により送金(20万円x28か月=560万円〉しているから, 平成6年×月から平成17年×月までの138か月に合計3359万9880円を送金したことになり,これを月平均すると,24万3477円(円未満切捨て)となり,この額は,賞与を除く給与の月額手取額の2分のlをやや下回る額に相当する。ところで,別居中の夫婦の婚姻費用分担については,その資産,収入その他一切の事情を考慮して定められるものであり(民法760条),当事者が婚姻費用の分担額に関する処分を求める申立てをした場合(家事審判法9条l項乙類3号)には,調停によ手合意をするか,審判をすることになる(同法26条l項)。したがって,当事者が自発的に,あるいは合意に基づいて婚姻費用分担をしている場合に,その額が当事者双方の収入や生活状況にかんがみて,著しく相当性を欠くような場合であれば格別,そうでない場合には,当事者が自発的に,あるいは合意に基づいて送金した額が,審判をする際の基準として有用ないわゆる標準的算定方式(判例タイムズ1111号285頁以下)に基づいて算定した額を上回るからといって,超過分を財産分与の前渡しとして評価するζ とは相当ではない。そして,本件では,抗告人は相手方と婚姻後,家事?育児に専念し,婚姻して10年ほど経ったころから宗教活動に多くの時聞を割く’ようになったが,更に12年ほどは相手方と同居し,宗教活動をしながら育児や家事をする生活を続け,長期間就労していなかったこと,相手方が抗告人や子らを残して出た自宅には家賃を要したこと.などにかんがみると,相手方が送金していた,賞与を除く給与・の月額手取額の2分のlをやや下回る額(平成17年×月以降はこれを更に下回る月額20万円)が著しく相当性を欠いて過大であったとはいえない。ちなみに,抗告人の収入ーをOとして,標準的算定方式に基づく標準的算定表に相手方の各年度の収入を当てはめると,婚姻費用の標準月額は,平成6年が14万円から16万円の範囲内,平成7年が18万円から20万円の範囲内,二女が成年に達した平成8年×月以降は14万円から16万円の範囲内,あるいは, 16万円から18万円の範囲内であるから,ーこの点でも,相手方が抗告人に対して送金した婚姻費用が著しく相当性を欠いて過大であったとまではいえなし、。したがって,相手方の上記主張は,理由がない。
(4) 以上によれば,抗告人が00銀行00支庖の相手方名義の口座を管理していることにかんがみ,相手方が財産分与として抗告人に対して支払手べき額は,以下のとおりである。1032万2527円ー2ー18万5427円=497万5836円(円未満切捨て)
3 次に,原審判別紙l及び同2記載の情報に係る年金分割についての請求すべき按分割合について検討する。
(1) 年金分筈1は,被用者年金が夫婦双方の老後等のための所得保障と62・10-60裁判例(家事)しての社会保障的機能を有する制度であるから,対象期間中の保険料納付に対する寄与の程度は,特別の事情がない限り,互いに同等とみて,年金分割についての請求す今き按分割合を0.5と定めるのが相当であるところ,その趣旨は,夫婦の一方が被扶養配偶者である場合についての厚生年金保険法78条の13(し、わゆる3号分割)に現れているのであって,そうでない場合であっても,基本的には変わるものではないと解すべきである。そして,上記特別の事情については,保険料納付に対する夫婦の寄与を同等とみることが著しく不当であるような例外的な事情がある場合に限られるのであって,抗告人が宗教活動に熱心であった,あるいは,長期間別居しているからといって,上記の特別の事情に当たるとは認められなし、。したがって,第2事件についての相手方の抗告理由①は理由がない。
(2) 相手方の抗告理由②については,前記2(3)のとおり,相手方が抗告人に送金した婚姻費用が過大であったとはいえないから,理由がなし、。
4 よって,本件抗告は上記説示の限度で・理由があるから第l事件及び第3事件について家事審判規則19条2項により原審判を変更することとし,本件附帯抗告は理由がないから棄却することとし,主文のとおり決定する。(裁判長裁判官松本哲也裁判官田中義則永井尚子)

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遺産分割審判に対する即時抗告事件

第1 抗告の趣旨及び理由
別紙抗告理由書(写し)のとおり
第2 当裁判所の判断
1 相続関係及び公正証書遺言について
原審判2頁7行目から3頁19行固までの記載のとおりであるから,これを引用する。
2 遺産分割対象財産の範囲及びその評価について
原審判3頁21行目から5頁3行自までの記載のとおりであるから,これを引用する。
3 被相続人の相手方に対する遺言について
(1)一件記録によれば,相手方は,前記公正証書遺言第2条,第3条に基づき,遺言執行者から現金8754万7395円及び家財道具(評価額30万円)並びに電話加入権(評価額2万円)の引渡を受けていることが認められるところ,抗告人らは,相手方は,前記公正証書遺言により,上記のとおり,合計8786万7395円にのぼる法定相続分を超える多額の特別受益を既に受領ずみであるから,民法903条により,Gの遺贈放棄分については, もはや取得分はない旨主張する。
(2)特定の遺産を特定の相続人に「相続させる」旨の遺言は,遺言書の記載から,その趣旨が遺贈であることが明らかであるか又は遺贈と解すべき特段の事情のない限り,当該遺産を当該相続人をして単独で相続させようとする趣旨のものと解すべきであり,また,上記のような遺言があった場合には,遺産分割の方法が指定されたものとして,当該遺言において相続による承継を当該相続人の受諾の意思表示にかからせたなどの特段の事情のない限り,当該遺産は,被相続人の死亡の時に直ちに相続により承継される(最高裁判所第二小法廷平成3年4月19日判決・民集45巻4号477頁)ところ,被相続人の前記公正証書遺言第2条が第1条の不動産に存する家財道具その他一切の動産,電話加入権,現金等を相手方に単独で相続させる旨明記し,第3条第3項が第1条及び第2条の財産を除くその他の一切の有価証券・預貯金・信託・相互掛金等の金融財産のうち第2項の遺贈の後の金融財産の175/1000を相手方に相続させる旨明記していることは前記認定のとおりであり,その遺言記載に照らして,それが追贈の趣旨であることが明らかであるとは到底認め難い上に,遺贈の趣旨と解すべき特段の事情も見当たらないほか,被相続人の遺産につき相続による承継を相手方の受諾の意思表示にかからせたなどの特段の事情も見当たらないところであるから,上記逃言記載は,上記動産や金融財産等を相手方をして単独で相続させる趣旨の遺産分割の方法を指定したものと認めるのが相当であり.追贈の趣旨と認めることはできない。
なお,抗告人らは,被相続人の前記公正証器遺言の「相続させる」旨の遺言記載について,法定相続人に対しては「相続させる」との文言を,それ以外の者に対しては「遺贈する」との文言を使い分けたにすぎず,いずれも追贈の趣旨である旨主張するが. 「相続させる」と「遺贈する」とでは明らかに法律的な効果を異にするというほかなく,一般的に上記主張のような使い分けが行われているとは認められないのみならず,公正証書遺言に当たって被相続人及び公証人がそのような使い分けの意思を有していたことをうかがわせるような資料も見当たらない。
また,抗告人ら及び相手方は,被相続人を巡る親族聞の確執等に関する経緯について種々主張するが,いずれも上記「相続させる」旨の遺言記載の解釈に影響を及ぼすものではない。
(3) 以上のとおり,被相続人の公正証書遺言の「相続させる」旨の記載は,遺贈の趣旨であるとは解されないのであるが,特定物を相続させる旨の遺言により,当該特定物は,被相続人の死亡と同時に当該相続人に移転しており,現実の遺産分割は,残された遺産についてのみ行われることになるのであるから,それは,あたかも特定遺贈があって,当該特定物が遺産から逸出し,残された遺産について遺産分割が行われることになる場合と状況が類似しているといえる。したがって,本件のような「相続させる」趣旨の遺言による特定の遺産承継についても,民法903条1項の類推適用により,特別受益の持戻しと同様の処理をすべきであると解される。なお,相手方代理人は,被相続人の公正証書遺言は,抗告人らに対しては相続させないという趣旨であるから,被相続人にとって想定外の残余財産の分割とし、う事態に至ったときは,相手方にもその遺産分割への参加を容認するものであると主張し,同遺言により相手方が取得した金融資産等を具体的相続分の算定に当たって無視すべきであると主張する。しかし.Gの遺贈の放棄によって,間違贈部分につき,被相続人の死亡時に遡って抗告人ら及び相手方について相続の効果が生じたものであり,同遺贈部分について上記遺言は何ら触れていないといわざるを得なし、から,上記主張は採用できない。
4 具体的相続分に算定について
(1) 本件遺産分割対象財産は,以下のとおりである。

別紙目録ー1,2記載の各不動産評価額2742万5540円
同目録二記載の預金遺言執行費用を除く残額
5488万2795円
同目録三記載の還付金7万4685円
合計8238万3020円
(2) 前記3のとおり,前記公正証書遺言による特定の遺産承継についても,民法903条1項の類推適用により, 特別受益の持戻しと同様の処理をすべきであると解されるから,上記遺産合計額8238万3020円に,相手方が前記公正証書遺言により取得した額(現金並びに家財道具及び電話加入権の各評価額) 8786万7395円を加えた合計額1億7025万0415円が,みなし相続財産の価額ということになる。
そして,抗告人ら及び相手方は,法定相続分1/5宛において分割すべきであるから,相続分額は各自3405万0083円となる。
しかし,相手方は,上記額を超える8786万7395円を既に取得しているから,具体的相続分額は0円となる。
抗告人らの具体的相続分額は,以下の計算のとおり,2059万5755円となる。

8238万3020円x3405万0083/(1億7025万0415-3405万0083)=2059万5755円
(3) なお,抗告人らは,さらに,相手方が,前記公正証書遺言によって法定相続分を超えて取得した額につき,抗告人らに対し,代償金を支払うべきであると主張する。しかし,本件のように,遺言により承継された特定物の価額が,当該相続人の法定相続分を上回っている場合であっても,その超過取得額につき,他の共同相続人に対して代償金の支払を命じることは,被相続人の合理的意思に反することになると解されるから,この点に関する抗告人らの主張は採用できない。
5 分割に関する希望について
抗告人Dは,代償金を支払ってでも別紙目録- 1, 2記載の各不動産を単独で取得することを希望し,その余の抗告人らは,同目録二及び三各記載の金融資産を平等の割合で取得することを希望している。
6 遺産分割の方法について
(1) 以上の抗告人ら及び相手方の各具体的相続分額,対象財産の管理,保管の状況や分割に関する希望等を総合考慮すると,抗告人ら及び相手方の聞においては本件遺産分割対象財産を以下のとおり分割するのが相当である。
ア抗告人Dの取得分
別紙目録ー1,2記載の各不動産
イ抗告人Aの取得分
別紙目録二記載の預金のうち1829万4265円
別紙目録三記載の還付金のうち2万4895円
ウ抗告人Bの取得分
別紙目録二記載の預金のうち1829万4265円
別紙目録三記般の還付金のうち2万4895円
エ抗告人Cの取得分
別紙目録二記載の預金のうち1829万4265円
別紙目録三記載の還付金のうち2万4895円
オ相手方の取得分
なし
(2) そうすると,抗告人Dの取得額は,2742万5540円となって,具体的相続分額を682万9785円超過することになるから,代償として,抗告人Dは,抗告人A抗告人B及び抗告人Cに対し,各227万6595円を支払うべきである。
第3 結論
よって,原審判を変更し,主文のとおり決定する。(裁判長裁判官 前坂光雄 裁判官 岩坪朗彦 横溝邦彦)

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子の監護に関する処分(監護者指定)申立事件

第1 申立ての要旨
申立人は,本件未成年者の母方の祖母であり,本件未成年者と同居
しているところ,本件未成年者の実父母である相手方らは本件未成年者の監護に著しく欠けるところがあるから,主文同旨の審判を求める。
第2 当裁判所の判断
1 一件記録によると,次の事実が認められる。
(1) 当事者等
申立人は,相手方Cの実母である。申立人の実子は,相手方Cのほかに,同人の妹であるE及び弟がいる。相手方Bと相手方Cは,平成5年12月20日婚姻屈を提出した夫婦である。
相手方Bと相手方Cとの聞には,長女F(平成6年4月22日生。以下「長女」という。).長男G (平成8年2月3日生。以下「長男」という。).二女H (平成9年1月6日生。平成10年12月24臼死亡。以下「二女」という。)及び本件未成年者の4名の子がいる。
(2) 二女の死亡に至る経緯
相手方らは,婚姻後,大阪市○区に居住していたが,平成7年12月ころ,三重県〇〇市内の住宅に転居した。これは,相手方Bが相手方Cの父(申立人の夫)経営の会社で勤務することとなったためである。ところが,その後,相手方Bは, 一時申立人の夫方で養育されていた長男及び二女が相手方ら宅に引き取られた後も相手方Bに懐かないこと,相手方Cが家事や家計にだらしがないこと及び同人が次々と妊娠し一時は堕胎を承諾したのに結局出産したことなどを不満に思い,平成9年初めころから長男に対し乱暴を加えた。さらに,相手方Bは,平成10年初めころからは,望まなかった子であり,叱っても泣かずに相手方Bをにらむような仕草をするこ女の頭部や顔面を殴ったり,身体を蹴るなどした。

相手方Bは,平成10年10月ころ,上記会社の倒産により担保目的物であった上記自宅を明け渡し,三重県△△市内の二階建ての貸家に転居した。ところが,そのころから同人は,職を失ったいらだちなども加わり,二女に対する暴行の回数も増え.さらには, 二女の食事を1日2食に制限したり,風呂の回数を少なくしたり,家族で外出するときには二女を家に残したり,玩具が多くある長女の部屋に二女を1人で入らせないなどした。そして,相手方Bは,平成10年12月24日昼,相手方C. 長女,長男及び本件未成年者とともに出かけた玩具庖で長女及び長男のクリスマスプレゼントを買い,同日午後2時とろ,上記自宅に帰宅して相手方Cとともに夕食の支度をしていたところ,同日午後3時ころ. 2階で玩具が床に落ちたような物音がしたことから,二女(当時約1歳11か月)が. 1人で入ることを禁止していた長女の部屋に入り込んで遊んでいると思い.2階に上がると,二女が長女の部屋で玩具を散らかし,仰向けの状態で二段ベッドの下段に1人で横たわっているのを見て立腹し「入ったらあかんやろ。」と怒鳴りつけ,二女の頭部,顔面を手拳で手加減せずに数回殴打した上,その両足首をつかみ,床面から高さ約40センチメートルのベッド上から引きずり降ろし,その身体を床板に叩き付けるなどの暴行を加えて,二女に頭部顔面打撲傷等の傷害を負わせた。その後,相手方Cが二女を2階6畳和室に寝かせるなどしたが,同日午後8時ころ,二女の容態が悪化していたことから救急車を呼んで病院に搬送してもらったものの,二女は,同日午後11時35分ころ,上記病院で右頭部顔面打撲傷による急性硬膜下血腫に基づく脳圧迫により死亡した。
なお,二女は,生前.相手方Bから継続的に虐待を受けた結果,高度のストレスにより.発育遅延,栄養不良で,胸腺が通常児童の約3分の1までしか発育していない状態に陥っていた。
(3) 上記犯行後の経過
相手方Bは,平成11年4月7日,上記(2)の犯行が傷害致死罪に該当するとされて懲役4年6月の実刑判決を受け,他方で,相手方Cは,相手方Bの服役中である平成11年から同15年の間,石川県
口口市△△町で子らとともに生活していた。
相手方Bは,平成15年7月,その刑の執行を終了して刑務所を出所し,相手方C及び子らとともに奈良県〇〇郡に居住した。
ところが,相手方Cは,上記奈良県〇〇郡への移転後である同年9月,本件未成年者の面倒を見きれないとして,三重県在住の相手方Cの父のところに本件未成年者を連れてきた。これに対し.Eは,同月中に,本件未成年者を,当時夫と別居していた申立人とともに居住する石川県口口市の自宅に連れて帰り,申立人は,本件未成年者の旋育を開始した。
申立人が本件未成年者と同居開始後同人から聞き取ったところによると,同人は.相手方らにご飯を食べさせてもらえなかった,寝かせてもらえなかった,相手方らから保育困に行かせないと言われた,などと訴えた。
(4) 念書作成に至る経緯
その後,相手方Cは,家庭内暴力を理由に相手方Bと別れるといい,同年12月10日,長男と共に申立人のもとを訪れた。その際,相手方Cは,同日付けで,本件未成年者が自分で判断して生活できるまで申立人に預けると述べ,同趣旨の記載がある念告を作成の上,指印して申立人に交付した。
(5) 本件未成年者の現在の生活状況
本件未成年者は,現在,申立人及び同人の実母と居住している。本件未成年者は,昼は保育園に通っている。また,申立人は,午後6時から午後10時の間はパートに出かけて生活費を得ているが,その間の本件未成年者の世話は,申立人の実母がしている。さらに本件未成年者は,少なくとも治療を要する病気には擢患していない。
申立人宅の住環境は,概ね清潔を保たれ格別の問題はない。また,家庭裁判所調査官による調査の際.本件未成年者は,申立人に対して懐いた様子で接していたのに対し,相手方らに関して
は. 「パパに何も食べさせてもらえなかった。」などと述べ,その心情において相手方らに好感情を有していないことが推測された。
(6) 本件審判手続における相手方らの応訴態度
本件審判申立ては平成16年2月25日になされたところ,相手方らは,同年4月26日受付で同人らの主張を記載した書面及び資料等を提出したものの,その後は何ら住面等を提出せず,本件審問期日にも出頭せず,家庭裁判所調査官による,郵便や,相手方ら宅の留守番電話に連絡事項を録音させる方法を利用した照会にも何ら応答しなかった。さらに,相手方らは,最終の本件審問期日である平成17年2月16日の期日呼出状の送達が適式になされたにもかかわらず,同期日に出頭しなかった。
2 判断
(1) 子の監護に関する処分事件(家事審判法9条l項乙類4号)の申立権を子の祖母に認めることができるか,についてまず検討する。
ア民法766条1項は. 「父母が協議上の離婚をするときは,子の監謹をすべき者その他監護について必要な事項は,その協議でこれを定める。協議が調わないとき,又は協議をすることができないときは,家庭裁判所が,これを定める。」と規定しており,問項の文言上は,同項は父母が協議離婚をする場合の規定とされている。しかしながら,父母の婚姻が継続していても父母が共に子に対して虐待・放置を行うごとき場合など,父母が子の監護権に関する合意を適切に成立させることができず子の福祉に著しく反する結果をもたらす事態は父母が離婚する場合に限定されないのであるから.同条は,父母が子の監護に関する適切な合意を形成できない場合に,家庭裁判所が,子の福祉のために適切な監護者等を決定する権限を定める趣旨の条項であると解するべきである。
このような解釈は,民法834条が存在することによっても根拠付けられるというべきである。すなわち,民法834条によれば,父母が親権を濫用し,又は著しく不行跡であるときは,家庭裁判
所は,子の親族等一定の範囲の者の請求に基づき父母の親権の全部を喪失させる権限を有するとされているのである。したがって,家庭裁判所は,上記一定の範囲の者の請求がある場合には,親権の一部である父母の監護権を制限する権限もまた有すると解するのが,同条の趣旨に沿うものというべきである。加えて,児童虐待の防止等に関する法律15条は,民法に規定する親権の喪失の制度は児童虐待の防止及び児童虐待を受けた児童の保護の観点からも適切に運用されなければならないと定めており,同条の趣旨からは民法766条l項及び同法834条を制限的に解
釈することは相当とはいえない。
イ以上からすれば,父母が子の監護権に関する合意を適切に成立させることができず子の福祉に著しく反する結果をもたらしている場合には,家庭裁判所の権限につき民法766条を,請求権(申立権)者の範囲につき民法834条をそれぞれ類推適用し,子の親族は子の監護に関する処分事件の申立権を有し,同申立てに基づいて,家庭裁判所は,家事審判法9条l項乙類4号により子の監護者を定めることができるというべきである。
ウなお,上記説示に反するごとき決定例として,仙台高裁平成12年6月22日決定・家裁月報54巻5号125ページが存在する。しかし,間決定は,子の親族ではない第三者が申立人となった事案に関するものであり,祖母が申立人となった本件とは事案を異にし,本件に適切ではない。
(2) 次に,子の父母ではない者を子の監護者に指定することができるか,について検討するに,民法766条1項は,家庭裁判所が定める監護者の範囲について,これを父母のみに制限する明文の規定をおかないばかりか,子の福祉の観点から見て父母以外の者が監護者として最適任という場合もあり得るから父母が親権をその本来の趣旨に沿って行使するのに著しく欠けるところがあり,父母にそのまま親権を行使させると子の福祉を不当に阻害することになると認められるような特段の事情がある場合には,父母の意思に反しても,子の父母ではない者を子の監護者に指定することができるというべきである(東京高裁昭和52年12月9日決定・判例時報885号127ベージ参照)。
(3) 以上の説示に基づき,本件につき検討する。
前記1認定事実によれば,申立人は,平成15年9月以降現在に至るまで本件未成年者と同居して同人を適切に監護しており,同人も申立人に対し自然な愛情を感じているというのであるから,申立人が本件未成年者の監護を継続することが同人の福祉に合致する。他方で,同人は,相手方らに対しては好感情を有していないと認められる。かつ,相手方らの本件未成年者自身に対する親権行使の態様は具体的には明らかではないものの,相手方Bは本件未成年者の姉である二女に虐待を加えて死亡させ,また,相手方Cは申立人に対し本件未成年者を同人が自分で判断して生活できるまで申立人に預ける旨述べ,さらには,相手方らは本件申立て後も家庭裁判所調査官らが働きかけたにもかかわらず本件審判手続に積極的に関与しない,など,相手方らは本件未成年者の親権者としての責任ある養育態度や監護に対する意欲を見せていない。
かかる事実関係のもとでは,上記(2)という特段の事情が認められることは明らかである。
(4)相手方らの以上の説示に反する主張はいずれも採用できない。
第3 結論
以上の理由により,主文のとおり審判する。(家事審判官関述之)

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婚姻費用分担に対する即時抗告事件

1 本件抗告の趣旨及び理由は,別紙「即時抗告申立容」(写し)のとおりであり,これに対する相手方の意見は,別紙「意見芯」(写し)のとおりである。
2 当裁判所は,相手方の本件申立ては理由がないと判断する。その理由は,次のとおり補正するほかは原審判「理由」欄の「第2 当裁判所の判断」に記載のとおりであるから,これを引用する。
(1) 原審判1頁23行自の「名義」を「持分」と,同頁24行自の「母親の所有」を「相手方とその母親の共有(持分は各2分の1)」とそれぞれ改める。
(2) 同2頁18行自の「預金を持ち出しておりJを「共有財産たる約700万円の預金を持ち出しており,その中から引越費用,住宅ローン(年2回のボーナス月は19万3533円,その他の月は6万1924円)の支払を行ったため」 と改める。
(3) 同3頁18行自の「しかるに」から同頁25行自の末尾までを次のとおり改める。
「ところで,相手方は,原審判がされた平成16年2月6日時点で抗告人と相手方の共有財産である約550万円の預金を管理しているのであるから,相手方の生活費に充てるためにいつでもこれを払い戻すことができる状態にあるということができる。そして,本件記録によれば,抗告人も相手方が上記預金から払戻しを受けて生活費に充てることを容認していることが認められる。このように,相手方が共有財産である預金を持ち出し,これを払い戻して生活費に充てることができる状態にあり,抗告人もこれを容認しているにもかかわらず,さらに抗告人に婚姻費用の分担を命じることは,抗告人に酷な結果を招くものといわざるを得ず,上記預金から住宅ローンの支払に充てられる部分を除いた額の少なくとも2分の1は抗告人が相手方に婚姻費用として既に支払い,将来その支払に充てるものとして取り扱うのが当事者の衡平に適うものと解する。相手方は,夫婦共有財産があるとしても,それは離婚時に清算すべきもので,抗告人の婚姻費用分担義務はなくならない旨主張するところ,確かに,夫婦共有財産は最終的には離婚時に清算されるべきものではあるが,離婚文は別居状態解消までの間,夫婦共有財産が婚姻費用の支払に充てられた場合には,その充てられた額をも考慮、して清算すれば足りることであるから,相手方の主張は理由がない。しかして,平成16年2月6日時点で相手方が管理している預金約550万円は,相手方が上記預金から住宅ローンを支払っていることを考慮に入れても,相手方が請求する平成15年11月分から現在までの月7万円の婚姻費用の分担額を優に賄うに足りるものであるし,当分の聞は抗告人が負担すべき婚姻費用の分担額に充て得るものである。したがって,現時点においては,抗告人には婚姻費用分担義務はないというべきであるから,相手方の本件申立ては理由がない。」
3 よって,原審判は不当であるからこれを取り消して相手方の本件申立てを却下することとし,主文のとおり決定する。(裁判長裁判官 坂本慶一 裁判官 北津晶 石橋俊一)

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子の監護に関する処分(養育費請求)審判に対する即時抗告事件

第1 抗告に至る経緯
一件記録によれば,次の事実が認められる。
l 抗告人と相手方は,平成11年,同じゲームセンターのアルバイト庖員として稼働していたことから知り合い,相手方がその職場を退職した平成12年8月ころから交際を始めた。
2 相手方は,上記退職後間もなく,母方叔父(実母Dの弟)Eが経営する〇〇織布株式会社に正社員として入社し,以後〇〇織布で稼働している。
〇〇織布は,昭和25年にEの先代が創業した会社であり,昭和53年以降.Eが先代を承継してその経営者となった。
〇〇織布は, 家具等に使用するレザー基布の製造販売を主な業務とする会社であり,正社員が12名ないし13名,パート従業員が7名ないし8名という規模の会社である。
相手方は,以前から〇〇織布でアルバイトをしていたがDやEの勧めで〇〇織布に入社したものである。
3 抗告人は,平成13年12月10日,相手方との間の女児である未成年者を出産した。未成年者は,平成15年3月21日確定の家事審判(大阪家庭裁判所堺支部平成14年(家イ)第△△△△号事件につき家事審判法23条に基づいてされた合意に相当する審判)により,相手方の子であることが認知された。
4 抗告人は,平成15年4月2日,未成年者の認知に関する戸籍の届出をし,同年4月19日. 相手方に養育費の分担を求める家事調停を申し立てたが(大阪家庭裁判所堺支部平成15年(家イ)第〇〇〇号),同調停は同年11月11日に不成立となって審判手続(原審)に移行した。
5 相手方が,その収入を証明するため原審裁判所に提出した資料は次のとおりである。
(1) 平成13年分の給与所得の源泉徴収票
ここに記載された支払総額は154万円であり,Dが相手方の扶養家族とされている。
(2) 平成14年分の給与所得の源泉徴収票
ここに記載された支払総額は158万円であり.やはりDが相手方の扶養家族とされている。
(3) 平成13年1月ないし12月の給与支払明細書12通
相手方に対する支給額として「基本給10万円」「勤務手当1万円」「職能手当1万円」「交通費l万円」との記載がある。その支給額の合計は156万円となり,平成13年分の源泉徴収票の支払総額よりも2万円多い。これら明細書には,時間外手当や夏季・冬季の一時金の記載は存在しない。
(4)平成14年4月ないし6月の給与支払明細書3通
相手方に対する支給額として「基本給10万円Ji家族手当l万円」「職能手当l万円」「交通費1万円」との記載がある。その支給額の12か月分は156万円となり,平成13年分の源泉徴収票の支払総額よりも2万円多い。これら明細書には,やはり時間外手当や一時金の記載は存在しない。
(5)上記(3)(4)の給与支払明細書に記載された相手方の手取額は,平成13年1月から3月までが月額12万9800円(社会保険料の控除がされていない。),平成13年4月以降が月額11万1901円である。
6 抗告人は,未成年者を出産後,現住所地で実母Fと同居しているが,稼働していない。世帯の生計は月額4万2370円の児童扶養手当(平成14年1月以降受給),Fのパート収入(月額6万円ないし7万円)及び実兄Gからの援助によって維持されている。未成年者は,平成16年4月,近隣の保育所に通い始めたが,気管支瑞息の症状が悪化したため,同月28日以降,保育所に通所できない状
態にある。
7 原審裁判所は,平成15年12月4日,未成年者の養育費について,平成14年6月分以降の相手方の分担額を定めるのが相当であると判断し,かつ,抗告人の収入が零円,相手方の収入が年額158万円であると認定し,相手方の分担額を月額2万円と定め,相手方に対しその給付を命ずる審判をした。
第2 抗告の趣旨及び理由
抗告人は,原審判を不服として即時抗告し,原審判を取り消し,本件を大阪家庭裁判所堺支部に差し戻すとの裁判を求めた。その抗告の理由は,要するに,相手方提出の収入に関する資料は信用できず,これに基づいてされた相手方の収入に関する原審判の認定額は少なすぎるというものである。
第3 当裁判所の判断
1 養育費分担の始期について
前記第1の1ないし4の事実経過に照らせば,未成年者の養育費については,その出生時に遡って相手方の分担額を定めるのが相当である。
原審判は,抗告人が養育費の支払を求めた平成14年6月を分担の始期としているが,未成年者の認知審判確定前に,抗告人が相手方に未成年者の養育費の支払を求める法律上の根拠はなかったのであるから,上記請求時をもって分担の始期とすることに合理的な根拠があるとは考えられない。本件のように,幼児について認知審判が確定し,その確定の直後にその養育費分担調停の申立てがされた場合には,民法784条の認知の遡及効の規定に従い,認知された幼児の出生時に遡って分担額を定めるのが相当である。
2 相手方の就労及び生活等の状況について
一件記録によれば,次の事実が認められる。
(1) 相手方は,平成6年に実父を亡くし,以後,実母Dと2人で現住所の自宅で生活している。相手方は,自宅の土地建物を相続しているため(相手方と父方祖母との共同相続).家賃は不要である。
(2) Dは,平成11年ころまでは,実家(E家)の賄いの仕事をしており,これによる収入と相手方のアルバイト収入とで世帯の生計を維持していた。Dは,自家用車(ホンダ・プレリュード)を保有しており.これを運転して仕事等にでかけていた。
(3) 相手方は.〇〇織布に入社することになった際,通勤に使用する車がないことをEに相談したところ. Eは,平成12年9月,約500万円でメルセデスベンツ(以下「本件事両」という。)を購入し,これを相手方の通勤用にあてがった。相手方は,幼いころからEに可愛がられており.Eは,相手方にとっては非常に頼りになる親戚であった。
Eは,自分用には,本件車両と別に会社名義でリース契約を締結した車両を使用しており,相手方は,ほぽ毎日,通勤及びそれ以外の私用に本件率両を使用していた。
本件車両の購入費は,一部が現金,一部が3年返済の自動車ローンであり,ローン返済額は月額約10万円であった。相手方は,そのローン返済額のうち月額4万円だけを負担し.Eが残余のローンや保険料を負担していた。
本件車両のローンの返済は既に終了したが,相手方は,現在も従前と同様に本件車両を使用しており.Eも,会社名義でリース契約を締結した外国車であるアウディ(圏内販売価格1000万円程度)及び国産車カルディナ(販売価格250万円程度)を使用している。
(4)相手方は.月曜日から土曜日まで週6日間,午前9時から午後6時まで,正社員としてC丈澱布で就業し,主に一般事務に従事している。
〇〇織布の給与事務は.Eの姉が担当しており,相手方が原審裁判所に提出した給与支払明細書も同女が作成したものである。
(5) 大阪府の地域別最低賃金は時給703円であるところ.〇〇織布のパート従業員の時給は750円程度である。
(6) 相手方は,平成12年9月ころ以降週に1. 2回,本件車両を使用して抗告人とデートを重ね,デート費用の7割程度を負担しており,月のデート代だけで少なくとも数万円を支出していた。また,相手方は,抗告人に対し,給料の手取りは月20万円であり,このほかにいくらか賞与がある旨を告げていた。
(7) 抗告人は.Dに対しては,生活費として1か月当たり5万円ないし8万円を渡している。
3 相手方の収入について
(1) 相手方提出の給与支払明細書は,源泉徴収票と概ね一致しているが,給与支払明細書の記載が真実の給与支給額と一致しているとすれば,相手方は,抗告人と交際期間中(平成12年9月から平成13年夏ころまでに毎月,本件車両の自動車ローンの負担金4万円,抗告人とのデー卜費用として数万円を支払い,さらにDに生活費を渡していたということになるが,月々12万円前後の手取り給与だけでそのようなことが可能かどうかは疑問である。
(2)相手方は,当審での審尋の際,相手方が〇〇織布に就職したころ以降.Dが無職・無収入であり,そのため.Dが相手方の扶養家族となっていると述べているが,相手方の給与収入だけで相手方世帯が維持されており,かつ,給与支払明細書の記載が正しいとすれば,抗告人との交際期間中は,自動車さえ保有している相手方世帯の生活費がどのように捻出されたのかも疑問となる。
(3) また.〇〇織布での週6日.1日8時間の就業時聞を前提とすれば,相手方提出の給与明細書に記載された給与支給額は, 月1万円の交通訟を含めて計算しても時給650円となり(交通費を除外すれば時給600円となる。).大阪府の最低賃金よりも少ないし.〇〇織布のパート従業員の時給よりも少ないのであって,相手方は,非常に過酷な労働条件で就労し.Dとの世帯を維持しているということになる。
しかしながら.Eは.Dの弟であり,相手方を幼少のころから非常に可愛がっていた人物であって,相手方が〇〇織布に入社した際には,自らもかなりの経済的な負担をして高級外国車を相手方の通勤用にあてがったほどである。このような好人物が,上記のような過酷な労働条件で相手方を雇用しているとは容易には考えられないし,相手方もこれを不服に思わずに〇〇織布で就労を続けているとも考えにくいところである。
(4) 以上にみたとおりであって,相手方提出の給与支払明細書は,相手方が〇〇織布から受けている給与額を正しく記載したものであると考えるには疑問があるといわざるをえず,相手方は.〇〇織布で稼働することにより,少なくとも,抗告人に告げていた程度の収入を得ていたのではないかと疑われるのであって,この明細書やこれと棋ね一致する源泉徴収票に信頼性を認めて相手方の収入を認定することは困難である。
(5) したがって,未成年者の養育費に係る相手方の分担額を試算する際には,相手方の収入を平成14年賃金センサス(第4巻第1表F.大阪府繊維産業・企業規模計・25歳-29歳男子労働者)により年額378万1000円と推計するのが相当である(この推計額は公租公課を含むものである。)。
4 相手方の養育費分担額について
(1) 上記推計に係る相手方の収入額に,統計上妥当とされる標準的な基礎収入率(40パーセント)を乗じて推計される基礎収入(収入から,公租公課,住居費その他必要経費を控除した後の金額であり,食費等の生活費として通常費消できると認められる金額である。)は151万2400円となる。
次に,統計上妥当とされる標準的生活費率(抗告人:未成年者=100: 55 )を用い, 上記基礎収入のうち未成年者に配分されるべき生活費の額を試算すれば53万6658円(月額4万4721円)となる。したがって,未成年者の養育費に係る平成13年12月以降の相手方の分担額については,これを月額4万5000円と定めるのが相当である。
(2) なお,前記第lに認定の事実関係に照らせば.現時点では,抗告人にも一定の収入がある,すなわち抗告人にも潜在的な稼働能力があるとの前提で相手方の分担額を定めるのは相当ではない。
5 給付命令について
平成13年12月分から平成16年4月分までの分担額の未払額の合計は130万5000円となり,これについては全額の一括給付を命じるのが相当であり,平成16年5月分以降の分担額については毎月末日を弁済期として給付を命じるのが相当である。
6 結論
以上のとおりであって,相手方の収入に関する原審判の認定は相当ではなく,本件抗告は理由があるから.原審判を取り消し,家事審判規則19条2項に基づき,審判に代わる裁判をする趣旨で,主文のとおり決定する。( 裁判長裁判官 下方元子 裁判官 橋詰均 三宅康弘)

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