財産分与申立事件

1 申立ての要旨
る。申立人は「相手方は,申立人に対し財産分与する。」と申し立て,その理由として以下のとおり主張した。
(1) 申立人と相手方とは,平成7年5月26日婚姻の届出をしたが,平成12年11月14日協議離婚した。
(2) 申立人と相手方とは,婚姻中, 日米に分かれて別居していたところ,申立人は,相手方に対し,婚姻費用分担金等として,別紙のとおり金員を交付したほか,相手方の米国滞在中や申立人の日本滞在中の相手方の生活費を負担していた。
(3) 協議離婚時,申立人は格別の資産を有しておらず,相手方の資産内容については不明であるものの,相手方が婚姻後形成した財産があるとすれば,申立人の寄与が大きいから,その2分の1が申立人に分与されるべきである。
(4) ところで,本件申立ては,離婚後2年以上経過した後に申し立てられたものであるところ, その間,申立人は,相手方の財産に対する寄与を相手方に対する貸金及び寄託金と構成し,相手方を被告としてその返還を求める訴えを提起し,平成16年1月30日上告棄却等により申立人の請求棄却判決が確定した経緯があり, この経緯に鑑みれば,財産分与請求権についての2年間の時効期聞は停止していたものと解され,本件申立ては,上記判決確定後6か月以内に申し立てられたものであるから,財産分与請求権が時効消滅することはない。
2 当裁判所の判断
(1) 本件記録によれば,申立ての要旨(1)の事実のほか,①申立人が相手方を被告として,平成13年3月8日, 当事者双方婚姻中の申立人の相手方に対する5回にわたる貸金合計184万5280円及び3回にわたる寄託金合計596万3500円等の各支払を求めて新潟地方裁判所新発田支部に訴えを提起したところ,同裁判所は,平成14年10月4日, 貸金合計184万5280円及び寄託金合計595万4750円の返還義務を認めた上,相手方の相殺の抗弁をいれて,申立人の相手方に対する離婚慰謝料として350万円の支払義務を認めて,結局.相手方に対し430万0030円及び平成13年3月29日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払を命じ,その余の請求を棄却する旨の判決を言い渡したこと,②当事者双方が控訴し,平成15年8月27日,控訴審の東京高等裁判所は,相手方の控訴に基づき,上記判決中の相手方敗訴部分を取り消した上,取消部分における申立人の請求を棄却したこと,③申立人が上告及び上告受理の申立てをしたが,平成16年1月30日,上告棄却及び上告不受理決定があり,申立人の請求を棄却する判決が確定したこと,④その後,申立人は,同年7月1日,本件審判事件移行前の調停事件(仙台家庭裁判所平成16年(家イ)第000号)を申し立て,同年8月12日,申立人代理人弁護士及び相手方出頭の下,第1回調停期日が聞かれたが,不調に終わり,上記調停事件が本件審判に移行したことが認められる。
(2) 以上によれば,申立人と相手方との協議離婚日は平成12年11月14日であり, 本件申立ては平成16年7月1臼であるから,その間2年を超える歳月が経過していることになる。
ところで,民法768条2項は,家庭裁判所に対する財産分与の請求は離婚の時から2年以内に行使しなければならない旨規定している。
そこで,この期間の性質について検討する。この点,申立人は,この期聞を時効期間であるとしてその停止中断を主張する。しかしながら,離婚後の財産関係はできるだけ速やかに確定されるべきものであるから,財産分与請求権の行使期間についてもその趣旨に則った解釈をすべきである。また,そもそも財産分与請求権は,離婚の効果として当然に発生するものの,その具体的内容の確定は当事者聞の協議又は調停,審判等の裁判上の処分によって形成的になされる性質のものであるから,その期間内に行使されることによって目的を達して消滅し,仮にその期間内に行使されなければ以後行使し得ないものとして消滅するものと解すべきであり,翻って,このような性質を有する権利の行使期間について,中断を認める時効期間と解する必要はない。したがって,財産分与請求権の行使期間は除斥期間と解すべきであり,これを消滅時効期間と解する申立人の主張は,前提において失当であるといわざるを得ない(除斥期聞についても期間の進行の停止が考えられなくはないが,不可抗力等の特段の事情がある場合に限られると解すべきであり,本件においてそのような事情は認められない。)。
そして.(1)記載①の訴え提起は,その請求内容からして財産分与諦求と解することはできないし,財産分与詰求事件に職分管轄を有する家庭裁判所に対する申立てでもないから,これを財産分与請求権の行使とみることもできない。以上により,本件申立ては,除斥期間経過後の申立てであり不適法であるから却下するのが相当である。
よって.主文のとおり審判する。(家事審判官 菊池憲久)

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