間接強制申立事件

1 本件間接強制申立ての趣旨及び理由は別紙の通りである。

2 一件記録(当庁平成17年闘第xx号,同第xxx号,同第xxO号,同第xx,6号事件記録を含む。)によれば,次の事実が認められる。

債権者は,債務者との聞の2人の子の養育費の支払を求め,子の監護に関する処分(養育費請求)の申立て(当庁平成17年家)第xx号,同第xxx号)を,債務者は,上記2人の子の各親権者を債権者から債務者に変更することを求め,親権者変更の申立て(当庁平成17年同第xxO号,同第xx△号)を,それぞれなし,同年12月×日,当庁平成17年家第xx号,同第xxx号事件について「1 債務者は債権者に対し24万円を支払え。2 債務者は債権者に対し平成17年12月から未成年者らがそれぞれ成年に達する月まで1人につき毎月各1万5000円を毎月末日限り支払え。J,当庁平成17年家第xxO号,同第xx△号事件について,「本件申立てを却下する。」との審判(以下「本件審判」という。)がなされ,これに対する即時抗告は棄却され,抗告棄却決定に対する抗告は許可されず,本件審判は,平成18年3月×日,確定した。

3 債務者は,本件審判を不服として, 本件審判で命じられた養育費の支払いを一切していない。不払いの養育費は合計87万円(平成17年4月分から同年11月分までの合計24万円及び同年12月分から平成19年8月分までの合計63万円) である。

4 債権者は,平成18年7月×日,当庁に履行勧告を申し立てたが,債務者が任意の履行を拒絶したので,同年8月×日,履行勧告は終了した。債務者が支払いをしない理由は本件審判の結果に納得できないということであった。

5 債務者は,審尋也において養育費の支払いをなすことは債権者の親権を認めることになるので一切の支払いを拒絶すると述べ,支払能力がない又は債務を弁済することによってその生活が著しく窮迫すると認められる事情については何ら主張しない。

以上によれば,本件申立てを認めるのが相当である。間接強制金の額について未払債務の額その他諸般の事情を考慮し、1日当たり5000円と定めるが,間接強制金の累積により債務者に過酷な状況が生じるおそれのあることを考え、175日聞を限度とすべきである。

よって,主文のとおり決定する。

( 裁判官押切瞳)

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間接強制申立事件

1 本件記録によると,次の事実が認められる。

(1)債権者と債務者との聞で,平成17年2月×日,長女c(平成9年x月×日生)及び長男D (平成11年×月×日生)の親権者をいずれも債権者と定めて和解離婚をすること,そして,債務者が債権者に対し,上記子らの養育費として平成17年3月から上記子らがそれぞれ満20歳に達する月まで,毎月20日限り1人当たり1か月3万円ずつを支払うことなどを内容とする和解が成立した。

(2) ところが,債務者は,初回から全く養育費を支払わず,そのため,債権者は,平成17年5月×日,当庁に履行勧告の申出をした。その結果,債務者は,当庁の家庭裁判所調査官に,同年末までにまとめて支払う旨の回答をしたので,上記履行勧告事件は終了した。しかし,その後,債務者は,債権者に対し,平成18年1月×日に2万円を送金しただけで,それ以外に養育費を全く支払わず,今日に至っている。

(3) 債務者は,本件において,当裁判所から平成19年2月×日の審尋期日の指定を受けたが,その期日に出頭せず,債務者から当裁判所に提出された申述書(債務者用)には,「未払分について一部であっても支払う能力がない」及び「私には財産は全くありません」の各欄にチェックがなされている。そして,債務者からは, 「会社を存続させていくのに必死にやっているなかで,養育費を6万円払うことすら厳しい。」,「養育費は借金をしてでも支払うので,子供と話をさせてほしい。」等の記載がなされた書面も提出されている。

(4) なお,債務者は,「株式会社○○」という不動産の売買や不動産の賃貸等を目的とする会社を経営しており,同社名義で,平成16年8月には自動車を購入し,平成18年6月には新たな不動産を取得するなどしており、経済的に困窮しているような様子はうかがえない。

2 前記1(3)のとおり,債務者は,当裁判所へ提出した申述書において,支払能力がない旨主張するが,それを裏付ける証拠を提出していないし、前記1(4)の債務者の経済状況に照らすと,債務者の上記主張はにわかに信用しがたい。

その他に債務者が前記申述書や書面で述べる点も,債権者からの本件申立てを妨げる理由にはなりえない。

3 以上によると,本件間接強制の申立てを認めるのが相当である。

なお,間接強制金の額については,これまでの支払状況等をも考慮して, 1日当たり1000円と定めるが,間接強制金の累積によって債務者に過酷な状況が生じるおそれがあることを考慮し, 142万円(平成17年3月分から平成19年2月分までの未払養育費の合計金)については120日間を,平成19年3月以降の養育費については各月分ごとに30日間を限度とすることとする。

よって,主文のとおり決定する。(裁判官白井俊美)

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間接強制申立事件

1 申立ての趣旨

1 債務者は,当裁判所平成8年(家イ)第xx号婚姻費用分担調停事件の執行力ある調停調書正本に基づいて,債権者に対し,平成18年4月分以降の未払婚姻費用を平成18年11月17日までに支払え。

2 債務者は,前項の期間内にこれを履行しないときは,債権者に対し,履行期限の翌日から履行に至るまで1日当たり5万円を支払え。

Ⅱ 当裁判所の判断

1 事実経過

一件記録によれば,次の事実が認められる。

i債権者(昭和42年×月×日生)と債務者(昭和43年×月×日生)は,平成2年×月×日に婚姻の届出をし,同年×月×日に長女Cが,平成7年×月×日に長男Dが,それぞれ生まれた。

ⅱしかし,その後,債権者と債務者は不仲となり,債権者は、2人の未成年者を連れて債務者と別居するようになり,当裁判所に婚姻費用分担の調停を申し立てた(平成8年(家イ)第xx号婚姻費用分担調停事件)。

そして,上記調停事件について,平成10年2月×日,下記内容の調停が成立した。

①相手方(本件債務者)は,申立人(本件債権者)に対し,婚姻費用の分担として,平成10年2月から、1か月20万円を,毎月翌月の5日限り,申立人名義の郵便貯金口座に振り込む方法で支払う。

② 相手方の収入が50万円未満に減少した場合は,相手方は,申立人に対し,前項記載の金員に代えて,相手方の収入の40パーセントに相当する金員を,前項と同様の方法で支払う。但し,相手方の収入の40パーセントに相当する金額が12万円に満たない場合には、12万円を前項と同様の方法で支払う。相手方が, 前項記載の金員の支払の額を本項によって減じようとする場合には,給与明細及び預金通帳の写しを添付して申立人に対し通知することを要する。

③ 申立人は,相手方に対し,婚姻継続中は,第l項及び前項記載の金員以外.子供の入学金等の請求はしない。

iii上記調停成立後,債務者から債権者に対し,上記調停条項の①項に従った婚姻費用分担金の入金がされていたが,平成14年の暮れころか平成15年の年明けころに,債務者から,債権者に対し,収入が減ったので支払額を12万円にする旨が伝えられ,債権者も,異議を唱えるよりは,支払ってくれるという金額を確保した方がよいと考え,特に給与明細等の提示を要求することなく,これを受け入れた。

ⅳこの月額12万円の婚姻費用分担金は平成18年3月の支払分まで滞りなく支払がされていたが,同年4月の支払分以降,全額について支払がされなくなったため,債権者は,同年6月,当裁判所に対し履行勧告の申出をし,当裁判所は債務者に対し履行勧告を行ったが,履行はされず,結局,平成18年4月支払分以降の婚姻費用分担金の支払がされないまま経過したことから,債権者は,本件間接強制の申立てをするに至った。

v 当裁判所は.債務者が遠方に居住していることから,債務者に対し,まず書面による審尋を行い,期限を定めてその意見を求めたが,これに対する回答はなく,その後も何の連絡もない。

2 検討

i上記の事実経過よりすれば,債務者において,上記調停の調停条項に基づいて債権者に支払うべき平成18年4月支払分以降の婚姻費用分担金は月額12万円であると認めるのが相当である。

したがって、本件間接強制申立てにおいて債権者が支払を求めている婚姻費用分担金の未払額の合計は,平成18年4月5日支払分から平成19年1月5日支払分までの合計120万円となる。

ⅱ 次に,債務者が上記婚姻費用分担金の未払額合計120万円を本決定で定める期限までに支払わなかった場合に,これに付加して支払うことを命じるべき間接強制金の額及びその支払を命じる態様について検討する。

債権者は,これまで債務者から月額12万円の婚姻費用分担金の支払がされることを前提として、2人の未成年者を育てながら生計を維持してきたのであって,この婚姻費用分担金の支払がされない場合においては,生活が困窮するなど大きな不利益を蒙ることが明らかである。他方,債務者は,平成10年2月の上記調停成立後,月額12万円への減額はあったものの、平成18年3月支払分までは婚姻費用分担金の支払を継続してきたにもかかわらず,同年4月支払分からはその全額の支払をしなくなったところ,これについては,同年3月下旬ころ,離婚問題を巡って債務者と債権者が電話で喧嘩をしてしまったことが直接の契機となった,主として感情的な要因によるものと窺われるのであって,債務者の支払能力ないし資力等の状況に大きな変化があったことによるものではないと窺われるのである。

これらの事情を総合検討すると,債務者が婚姻費用分担金の未払額合計120万円を本決定で定める期限までに支払わなかった場合に,これに付加して支払うことを命じるべき間接強制金としては,直ちに支払うべき金銭として、24万円(これは,未払婚姻費用分担金合計額の2割に相当する金額である。)を定めるとともに,支払の遅滞の期間に応じてさらに付加すべき金銭として、4か月の期間の限度で、 1日当たり2000円(これは,債務者の支払うべき婚姻費用分担額月額12万円を.、1か月を30日として計算した場合の日額である4000円の、 5割に相当する金額である。)を定めるのが相当である。

iii したがって,本件間接強制申立ては, 上記の範囲で認容すべきものである。

3 結論

そこで,主文のとおり決定する。(裁判官川勝隆之)

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祭祀財産の承継者の指定申立事件

第1 事案の概要

被相続人(明治40年×月×日生、平成4年×月×日死亡)の長男である申立人(昭和9年×月×日生)が,被相続人の妻である相手方甲山B子(大正4年×月×日生)、二男である相手方甲山C男(昭和12年×月×日生)、三男である相手方甲山D男(昭和14年×月×日生)、四男である相手方甲山E男(昭和17年×月×日生)及び五男である相手方甲山F男(昭和20年×月×日生)を相手方として,被相続人所有の祭祀財産の承継者を申立人と定める審判及び相手方(相手方5名中いずれの者であるかは特定していない。)占有中の被相続人所有の位牌の引渡しを命ずる審判を求めるものである。

なお,申立人は甲山家の祭祀主宰者を申立人と定める審判並びに高祖父甲山H男の著作及び遺稿原本一冊の引渡しを命ずる審判をも求めている。

第2 当裁判所の判断

1 民法第897条第1項ただし書の「被相続人の指定」の有無について

(1) 申立人は,被相続人が甲山家の祭祀財産の承継者及び祭祀主宰者を申立人と指定した旨主張する。

(2) 本件記録によれば,被相続人は昭和55年2月ころ00株式会社(平成3年の商号変更後は株式会社△△。以下単に「会社」という。)の代表取締役社長の地位を申立人に譲り渡す意向を有しており,昭和56年12月代表取締役社長を退任し,これに代わって申立人が代表取締役社長に就任したという事実を認めることができる。そして,申立人はこのような事実をとらえて,被相続人は会社経営の一切を申立人に託し,それは甲山家の祭祀財産の承継者及び祭祀主宰者を申立人と指定する趣旨でもあった旨主張するようである。

(3) しかし,会社の代表取締役社長の地位と甲山家の祭祀財産の承継者及び祭祀主宰者の地位とが不可分でないことは,申立人の長男I男が会社の代表取締役社長に就任するまでの中継ぎ的な意味合いがあるとはいえ,平成14年申立人が会社の代表取締役社長の地位を相手方甲山D男に譲り渡したことからも明らかである。

そして,①被相続人は会社の代表取締役社長の地位を申立人に譲り渡すこと自体にも少なくとも1年以上躊躇をし,譲り渡した後も会社の取締役会長として経営に関与し続けたこと,②被相続人は昭和55年2月「会長就任について」と題する書面(甲第1号証)を作成したが,当該書面では「社内外の冠婚葬祭等にはつとめて出席する。これも徐々に引継ぐ。」とし,会社の代表取締役社長を退任した後直ちに甲山家として執り行う冠婚葬祭の主宰者としての地位を退くという意思はなかったとうかがうことができること,③被相続人は自分の葬儀を口口寺で執り行うことを強く希望していたが,それ以外に甲山家の祭記に関し何らかの具体的希望を申立人に述べたことはなかったことを併せ考えると,昭和55年文は昭和56年ころ被相続人に甲山家の祭祀財産の承継者及び祭祀主宰者を申立人と指定する確定的な意思があったと認めることはできない。

その他本件記録を精査しても,被相続人が生前甲山家の祭祀財産の承継者及び祭祀主宰者を申立人と指定したことを認めるに足りる的確な証拠はない。

(4) よって,本件では民法第897条第1項ただし書の「被相続人の指定」はなかったと言うべきである。

2 民法第897条第l項本文の「慣習」の有無について

本件記録を総合しても,被相続人の肩書最後の住庁市包地方において民法第897条第1項本文の慣習があると認めることはできない。申立人は一般に旧武家社会では長男が先祖の家督及び祭祀承継をする慣習があった旨主張するが,現行憲法及び民法の下で武家社会なるものの存在を肯定することはできず,現時点でそのような慣習があると言うことはできない。

よって,本件では民法第897条第1項本文の「慣習」はないと言うべきである。

3 当裁判所による祭祀財産の承継者の定めについて

(1) 本件記録によれば,次のような事実を認めることができる。

ア被相続人の死亡に際しては密葬の後社葬が行われ,相手方甲山B子が喪主を,申立人が葬儀委員長をそれぞれ務めた。

なお,申立人は社葬において申立人自身が葬儀の最後に参会者に対する御礼の挨拶をしたことを理由に自分が喪主であった旨主張するが,社葬における葬儀委員長は密葬における喪主に該当すると考えることができるから,申立人が当該挨拶をしたことをもって直ちに申立人が喪家を代表する喪主の立場にあったと言うことはできない。むしろ,申立人が会社を代表し,相手方甲山B子が喪家を代表するという役割分担があったと見るのが自然である。

イ被相続人の死亡後被相続人所有の位牌は相手方甲山B子が一貫して管理している。他方で,申立人は平成19年3月×日に祭祀財産の承継者の指定調停事件(同年(家イ)第xx号)の申立てをする以前にその引渡しを求めたことはなく,位牌の詳細も把握していなかった。

ウ被相続人の死亡後相手方甲山B子は毎朝イの位牌が収められた仏壇に供物を供えて礼拝し供養している。また,被相続人の一周忌,三回忌及び七回忌については日程の決定及び菩提寺の0○寺(東京都○○区△△町)への申込みは申立人が行ったが,関係者に対する連絡その他必要な手筈は相手方甲山B子が調えた。

エ平成13年相手方甲山C男,相手方甲山E男及びこれらの子3名(合計5名)が原告となり,会社(当時の代表取締役は申立人)を被告とする訴えを提起したことを契機として相手方全員は申立人と冠婚葬祭において同席することを避けるようになった。このような状況の中で,申立人は被相続人の十三回思を平成16年×月×日に○○寺において執り行うことを予定していたが,その直前に相手方甲山B子が00寺に十三回忌の中止を依頼する事態となり, 結局申立人は被相続人の十三回忌を中止した。他方で,相手方甲山B子は申立人を除く親族の参加を得て被相続人の供養等のための会合を持った。

オ相手方甲山B子は毎年7月末ころ00寺において執り行われる施餓鬼に出席してきたが,ここ数年相手方甲山C男を代理出席をさせている。ただし,申立人が施餓鬼に出席することが事前に判明したときは会場でのトラブルを避けるため,相手方甲山B子及び甲山C男は出席を差し控えざるを得なかった。

カ申立人は被相続人の十三回思の前ころ被相続人と同じ墓(0○寺所在の墓石正面に「甲山G男家之墓」と刻まれたもの)には入らないと言明した。

なお,申立人は,被相続人の墓は狭いので申立人は入れないと言ったものであると弁解するけれども,このような弁解は○○寺所在の墓地の規模から見て極めて不合理であって信用することができない。

キ本件において,申立人は祭祀財産の承継者を申立人と指定することを求め,相手方甲山B子,甲山C男,甲山E男及び甲山F男は相手方甲山B子を祭祀財産の承継者と指定することを求めている。なお、相手方甲山D男は申立人文は相手方甲山B子のいずれが承継者となるべきかについては意見を留保している。

(2) 以上,被相続人死亡後の祭祀財産の管理状況及び祭祀の執行状況,申立人及び相手方甲山B子の祭祀を主宰する意思の堅固性及び継続性並びに被相続人に対する慕情,愛情,感謝の気持ちの程度の相違,今後の祭祀を円滑に執り行う見通し、関係者の意見を総合すると,その年齢を考慮してもなお相手方甲山B子が承継者として最も適任であるというべきである。

4 結論

よって、主文第1項のとおり被相続人所有の系譜,祭具及び墳墓の承継者を相手方甲山B子と定めることとし,申立人の相手方占有中の被相続人所有の位牌の引渡しを命ずる審判の申立ては理由がないから主文第2項(1)のとおりこれを却下することとする。

なお,申立人の甲山家の祭祀主宰者を申立人と定める審判の申立て及び甲山H男の著作及び遺稿原本一冊の引渡しを命ずる審判の申立てはいずれも家事審判事項に該当しないから,主文第2項(2)及び(3)のとおりこれらも併せて却下することとする。(家事審判官菅家忠行)

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認知請求控訴事件

第1 控訴の趣旨

1原判決を取り消す。2 (主位的申立て)本件訴えをいずれも却下する。3 (予備的申立て)被控訴人らの請求をいずれも棄却する。4 訴訟費用は,第1, 2審とも被控訴人らの負担とする。

第2 事案の概要

本件は、(亡)Fの子である被控訴人らが, (亡)A (以下「被承継人」という。)を相手方として. Fが被承継人の子であることの認知を求めて提起した訴えにおいて、被承継人が死亡したので,控訴人(検察官)を相手方として,当該訴訟を追行している事案である。

事案の概要は,原判決2頁3行自の「被告」の前に「昭和14年×月×日」を加え、4行自の「戸籍」とあるのを「台湾戸籍(本籍・台南市○○xx番地)」と改め. 7行目の次に,改行の上、以下のとおり加え,「被告」とあるのを「被承継人」と改めるほかは,原判決の「事実及び理由」の「第2 事案の概要」の項に摘示のとおりであるから,これを引用する。

「被承継人は,原審口頭弁論終結後である平成19年×月×日死亡し,原審は,その後に被控訴人らの請求を認容する原判決を言い渡した。そのため,本件訴訟の被告の地位は検察官が承継し,控訴人補助参加人らは,検察官に補助参加して,本件控訴を申し立てた。」

第3 当裁判所の判断

1 被承継人は日本人,Fは中国人であるところ,法の適用に関する通則法(以下「通則法」という。) 29条2項は,子の認知は,同条1項によるほか,認知当時における認知する者又は子の本国法によると規定し,さらに同法附則2条は,同法の規定は,施行日(平成19年1月1日)前に生じた事項にも適用するとしている。そこで,Fの子である被控訴人らは,認知する者(被承継者)の本国法である日本国民法787条に基づき,被承継人の嫡出子でなく,かつ認知もなされていないFについて,被承継人の子であることの認知を求めるのに対し,控訴人は本案前の抗弁として, F出生当時の被承継人の本国法によれば,被承継人とFの聞には.すでに法律上の父子関係が形成されており,重ねて認知を求める本件訴えは,訴えの利益を欠く旨主張する。

2 そこで,本案の判断に先立ち,本案前の抗弁につき検討する。

職権によって調査すると, Fが出生した昭和16年当時の台湾地域には, 「民事ニ關スル法律ヲ臺灣ニ施行スルノ件」(大正11年勅令第406号)により,大正12年1月1日から日本国民法が施行されていたが,「臺灣ニ施行スル法律ノ特例ニ關スル件」(同年勅令第407号)により,本島人(日本の施政下にあった台湾地域出身者)のみの親族及び相続に関する事項については, 日本国民法第4編及び第5編の規定を適用せず,別に定めるものを除く他は慣習によるとされており,同地域における当時の慣習法として,正妻を有する男子が,併せて他女子(妾)と婚姻する夫妾婚姻制度が認められ,同婚姻により配偶者に準ずる地位を取得し,夫の家に入るとされていた妾の出生子は,当然に庶子の身分を取得するという血統主義を採用し,これにより認知を要せずして,妾(生母)の夫との父子関係が形成されるという身分法秩序が実施され,これらの身分関係は「戸口規則」(明治38年臺灣総督府令第93号)により戸口調査簿に登載されて公証されることになっていたことが認められる。(甲16,34, 35,乙3,4の1. 7参照)

したがって,その当時は,内地と台湾では.同じ日本圏内ではあっても,本島人同士の父子における非嫡の父子関係の成立については,その他の父子における非嫡の父子関係の成立とは,適用される法令を異にしていたということになる。

そして, この法律関係につき.共通法(大正7年法律第39号) 1条1項は,台湾を1の地域とし,同法2条2項は,民事に関して地域によって異なる法令が適用される場合について,法例を準用するものとし、各当事者の属する地域の法令をもって本国法とすると規定している。

さらに,現時点において,上記法例に相当する法令である通則法29条1項は,非嫡の父子関係の成立について,子の出生当時における父の本国法によると定めている。

以上の法令の定めを本件に適用すると,本件において被承継人とFが,Fの出生時において, ともに本島人であったことは明らかであるから,被承継人とFとの聞の父子関係の成立については,共通法2条2項による法例(現時点では通則法29条1項)の準用により,子であるFの出生当時の父である被承継人の本国法とされる台湾地域に適用されていた慣習法によって決定されることになる。

これによれば,被承継人とFとの父子関係は,被承継人と夫妾婚姻関係にあったGがFを出産することにより,被承継人の認知を待つまでもなく成立しているということができる。そして.このように,父と非嫡出子の聞の父子関係を出生の事実により成立させるという制度が公序良俗(通則法42条)に反するとはいえないから, 日本において,嫡出でない子の父子関係の成立について,上記昭和16年当時の台湾地域の慣習法の適用を否定することはできないというべきである。よって,上記により成立した被承継人とFとの聞の父子関係は,日本においてもその効力を認めることが相当である。

なお,上記の父子関係について, 日本国との平和条約(昭和27年条約第5号) 2条(b)項の定めに基づき, 日本国が台湾に対する全ての権利,権原及び諦求権を放棄し,これに伴って台湾籍の日本人が日本国籍を喪失したことによって,一旦は日本国法による非嫡の父子関係を成立させる法的根拠を失ったとしても、現在の日本国法においても,通則法29条1項は,非嫡の父子関係の成立は,子の出生当時における父の本国法によるとしているのであるから,子の出生当時に父に適用されていた法令が,その当時における台湾地域の慣習法である場合には,それを通則法29条1項にいう本国法とみなすことが相当である。

よって,いずれにしても,被承継人とFとの聞の父子関係は, 日本国民法による認知によることなく,その成立を認めることができる。

被控訴人らは,被承継者の相続には日本国法が適用される(通則法36条)のであるから,たとい上記法律関係が認められるとしても,相続関係を解決するための前提問題では日本国民法による認知が必要であると主張するが,非嫡の父子関係が相続関係を解決するために不可欠の前提問題を構成するとしても,その準拠法は法廷地である日本の国際私法である通則法によるものというべく(最高裁判所平成12年1月27日第1小法廷判決・民集54巻1号1頁),これによっても,非嫡の父子関係は上記夫妾婚姻制度により規律されるべきものであるから,被控訴人らの主張は採用できない。

3 訴えの利益について

以上によれば,被承継人とFの親子関係は,出生により成立しているから,改めて日本国民法による認知によって,これを創設する必要は認められない。

第4 結論

よって,被控訴人らの本件訴えはいずれも訴えの利益がなく不適法であるから,これと異なる原判決を取り消して,本件訴えをいずれも却下することとして,主文のとおり判決する。(裁判長裁判官渡邉安一裁判官安達嗣雄松本清隆)

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性別の取扱いの変更申立却下審判に対する抗告審の却下決定に対する特別抗告事件

理由

性同一性障害者につき性別の取扱いの変更の審判が認められるための要件として「現に子がいないこと」を求める性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律3条1項3号の規定は,現に子のある者について性別の取扱いの変更を認めた場合,家族秩序に混乱を生じさせ,子の福祉の観点からも問題を生じかねない等の配慮に基づくものとして,合理性を欠くものとはいえないから,国会の裁量権の範囲を逸脱するものということはできず,憲法13条, 14条1項に違反するものとはいえない。このことは,当裁判所の判例(最高裁昭和28年同第389号同30年7月20日大法廷判決・民集9巻9号1122頁.最高裁昭和37年(オ)第1472号同39年5月27日大法廷判決・民集18巻4号676頁)の趣旨に徴して明らかである。論旨は理由がない。

よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり決定する。(裁判長裁判官田原陸夫裁判官藤田宙靖堀龍幸男那須弘平近藤崇晴)

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子の監護に関する処分(面接交渉)申立事件

1 申立ての趣旨及び実情

申立人と相手方は,平成12年×月×日,未成年者の親権者を申立人と定めて調停離婚したが,未成年者が相手方に会うことを希望しているので,月1回の面接交渉が実現できるように審判を求める。

2 当裁判所の認定した事実

当庁平成18年俸)第xx号子の監謹に関する処分(養育費増額)申立事件の記録及び本件記録によれば,以下の事実が認められる。

(1) 申立人と相手方は,平成9年×月に婚姻し,平成10年×月×日.長女の未成年者をもうけた。申立人は,出産後実家から自宅に戻って以降,相手方のもとに女性から電話が入ったりすると,不貞関係を疑ったり,相手方が家事育児を何も手伝わないと不満を言ったりして,ときどき夫婦喧嘩をするようになった。

平成11年×月ころ,申立人は.仲人であった相手方の職場の上司に夫婦喧嘩の仲裁を依頼した。しかし,仲裁は効を奏さず,申立人が,相手方の当時の職場の上司に直接抗議したことがあった。申立人が相手方の職場に私的な問題を持ち込んだことにより,申立人と相手方との感情的対立が一層激しくなった。そのころ,申立人の母が,申立人と相手方の自宅を訪れた際,再び喧嘩が始まり,申立人の母が包丁を持ち出したこともあった。

同年×月ころ,申立人は.口口口に直接抗議し, 「職場の人間では役に立たないので,口口口から相手方を説得してほしい。」「相手方を辞めさせて欲しい。」などと申し入れた。そのため,夫婦問の問題が,職場の上部機関にまで知られるところとなった。

(2) 同年×月ころ,夫婦関係調整調停事件を当事者双方から申し立て,平成12年×月×日,調停離婚が成立した。調停では,養育費のほかに,相手方が申立人に対し,解決金150万円を支払うことが定められ,「申立人は,今後電話文は面会により相手方の職場に相手方を誹誘・中傷する言動文は行動をしない。」との条項や清算条項が定められた。相手方と未成年者との面接交渉について定めた条項はない。

相手方は,上記解決金を約定どおり支払を終え,養育費も約定どおり支払い続けている。

相手方は,平成13年×月に,△△△に転勤になり,平成14年×月×日に妻Dと婚姻して,△△市で暮らしていた。妻Dとの聞に,長男E (平成16年×月× 日生)をもうけた。

(3) 申立人と相手方の離婚成立後ほどなく,申立人は,相手方が妻Dの実家を訪問して自動車を止めていたところを見かけた。申立人は,口口口に, 「離婚したばかりで,もう女を作った。」などと電話を入れた。

平成15年×月,申立人は,「婚畑中から交際していた女性と結婚したから,弁護士を立てて裁判にもっていきたい。」旨を相手方の留守番電話に吹き込んだことがあった。また,申立人が,妻Dの実家のある○○市○○区○○の近辺を歩いているのが目撃されたことがあった。

そのため,相手方は,申立人の行動にたまりかねて,同月×日付けの内容証明郵便を申立人の父宛に送付した。その内容は,自宅,妻の実家や職場に,不必要な電話をしないこと,必要な電話は相手方の携帯電話にメッセージを入れておけば,対応すること,自宅,妻の実家や勤務先の周辺で,様子を観察する,尾行するなどの行為をやめてもらいたいこと等であった。

上記内容証明郵便送付後,申立人の行動はなくなったが,平成16年夏ころ,相手方の勤務する△△△に「相手方の妻やその家族が,申立人の周りをつけ回している。」と電話連絡をしたことがあった。

(4) 申立人は,相手方との婚姻中に,相手方から暴力をふるわれたことを訴え, しかも,相手方が離婚前から妻Dと交際していたものと確信しているので,そのような相手方を未だに許すことができないと考えている。したがって,申立人としては, 未成年者が相手方に面接することを希望しているものではない。申立人は,未成年者に対しては,相手方はとてもよい父親であるが,事情があって別々に暮らしているなどと説明している。

(5) 本件が審判移行した後,未成年者は,相手方の住所と相手方の妻の実家の住所に手紙を数通送付したり,申立人から聞いた相手方の携帯電話に電話をかけたりしている。相手方は,これまで手紙の返事を書いたことはなく, 電話にも出ないので,留守番電話に未成年者の伝言が吹き込まれている。

未成年者が手紙や伝言で相手方に述べている内容は, 「会いたい。」,「学校で持久走大会があるから,来てほしい。」.「ディズニーランドに連れて行って。」,「グリスマスにディズニーランドのホテルに泊まるから,一緒に来ないか。」,「返事がほしい。」,「電話ちょうだい。」などというものである。

相手方が未成年者の行動に何らの応答もしないので,申立人は,未成年者に手紙の返事を書いてもらいたいという伝言を相手方の留守番電話に入れた。

(6)相手方の妻Dは,相手方が未成年者と面接することに消極的意見である。相手方は,どのような方法で未成年者に面接するとしても,未成年者を通じて相手方が申立人の生活の中に介在することになるので,従前感情的に対立したままの申立人との聞で,また紛争が生ずることになるのを懸念している。相手方は,目下の状況では,未成年者宛てに手紙の返事を書くことまでは応ずることが可能であると考えている。

3 以上の事実をもとに,本件の面接交渉のあり方について検討する。

(1) 未成年者は,相手方に対して,手紙を送付したり,電話をかけたり(留守番電話へのメッセージの吹き込み)しており,その文面からしても,相手方に会いたいと考えていることが認められる。

しかしながら,未成年者は小学校4年生であり,平成12年×月の離婚時には2歳になったばかりであるから,父親である相手方の記憶は全くないものと考えられ,相手方に会いたいという未成年者の思いは,抽象的な父親像に留まっているものと推察される。また,未成年者は,申立人と相手方が離婚していることなど,正確な事情を伝えられていないことが窺われる。

したがって,申立人や相手方の面接交渉への姿勢を始めとして周辺の環境が整えられないと,面接交渉を実施させることは,未成年者の福祉に沿わない結果を招来する危険がある。

(2) 前記2認定の事実によれば,申立人と相手方は,離婚から6年以上を経ているが,家庭内の不和が生じてから離婚に至るまで及びその後の過程における葛藤は,極めて根深いものがあると推察される。

申立人は,未成年者を相手方に会わせたくないと考えており,相手方に対しては,申立人に暴力をふるい,不貞関係にあった女性と婚姻したなどと主張して,強い憎しみを未だに抱き続けていることを否定しないなど,心理的清算ができていないことが窺われるところであるが,未成年者の気持ちを尊重して本件申立てをしたと主張しており,面接交渉を実施することが,申立人に加重な精神的負担を与える可能性がある。

一方,相手方は,申立人の離婚前後の言動から,面接交渉によって申立人との紛争が再燃することをおそれている。また,再婚家庭を築いているところ,養育費の支払のほかには,妻が,相手方と未成年者との面接交渉について消極的であることからすれば,面接交渉の早急な実施は,再婚家庭の環境を乱し,相手方の精神的不安を招く懸念がある。したがって,相手方には,未成年者の福祉を目指した前向きな姿勢での面接交渉を期待できない状況にあり,面接の実施が,必ずしも未成年者の心情に良い影響を与えられるとは言い切れない。

4 以上を踏まえると,本件においては,将来的に完全に面接交渉を禁止すべき事情は窺われないものであるにしても,相手方と事件本人の直接の面接交渉を早急に実施することは,未成年者の福祉に必ずしも合致するものではなく,消極的にならざるを得ない。

将来的には,環境を整えて,面接交渉の円滑な実施が実現できるようになることが期待されるが,当分の聞は,間接的に,手紙のやり取りを通じて交流を図ることとするのが相当である。したがって,相手方から未成年者宛の手紙を年4回, 3か月ごとに書くことを命ずることとする。

よって,主文のとおり審判する。(家事審判官 生島恭子)

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2012年2月6日 | コメント/トラックバック(0) |

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子の監護に関する処分(面接交渉)審判に対する抗告事件

第1 抗告の趣旨

抗告人は,主文と同旨の裁判を求めた。

第2 事案の概要

1抗告人(昭和46年×月生)と相手方(昭和42年×月生)は,平成6年×月×日に婚姻し,平成7年×月×日に長男Cが,平成9年×月×日に二男Dが出生した。抗告人は,平成13年×月×日に休養のため単身帰省して,そのまま相手方と別居することとなったが,平成14年×月×日,未成年者らを通園先から連れ帰って,以後,未成年者らを監護養育するようになった。それ以来,相手方は,抗告人と未成年者らの居所すら知らされず,相手方と未成年者らとの交流は途絶えている。抗告人が提起した離婚訴訟において,平成16年×月×日,離婚請求を認容し,未成年者らの親権者宏抗告人と定める判決が言い渡され,控訴棄却,上告不受理により,同年×月×日,判決が確定した。

2 本件は,未成年者らの父である相手方が,抗告人に対し,相手方と未成年者らが面接交渉をする時期,方法等を定めることを求めた事案である。原審は,抗告人に対し,未成年者らの通学する学校の夏季休暇中に1回,抗告人の指定する日時に2時間,抗告人の指定する者の立会いの下に,相手方が未成年者らと面接交渉することを許さなければならないと命じたので,これを不服として,抗告人が本件の抗告をした。

3 抗告人の抗告理由は,次のとおりである。子の監護に関する処分は,子の権利面,親の権利面等,各具体的状況に応じて柔軟に対応すべきことはもちろんであるが,本件に関する相手方の行状に即して子の福祉を最重点的に考えた場合,原審判が,両親が感情的争いの渦中にあるにもかかわらず,あえて相手方の面接交渉を認める審判をしたことは,時期尚早である。未成年者らは,母親の心情を考え,また自身も会いたくないと明言し,中学生になったら将来のこともあり,会いに行くことを考えている。原審判は,明らかに子の真意を無視するものであり,子の福祉に反する。

第3 当裁判所の判断

1 本件の事実経過など本件の事実経過や当事者の意向等は,原審判の「理由」第2の1項に記載のとおりであるから,これを引用する(ただし,原審判5頁19行目の「小学5年生」を「小学6年生」に,「小学3年生」を「小学4年生」に改める。)。

2 面接交渉を認めることの当否

(1) 離婚の際に未成年の子の親権者と定められなかった親は,子の監護に関する処分のーっとして子との面接交渉を求めることができるが,その可否は,面接交渉が現実的に子の福祉に合致するかどうかという観点から判断されなければならない。

(2) これを本件について検討してみると,上記引用にかかる認定のとおり,未成年者らは,原審において家庭裁判所調査官に対し,いずれも,将来はともかく現在は相手方(父親)と面接はしたくないと明確にその意思を述べている。その意思の基礎には,以前00家庭裁判所における面接交渉の調停係属中に,相手方が未成年者らに対して,位置情報確認装置を潜ませたラジコン入りの小包を送ったことによる相手方への不信感があり,その不信感には根深いものがあると認められる。

また,抗告人においても,相手方が,上記のとおり調停係属中にもかかわらず位置情報確認装置を密かに送付したり,抗告人ら親子の居所を探索するために親類や恩師に対して脅迫的言辞を用いたことがあったこと(前件審判における認定)などから,相手方が未成年者らを連れ去るのではなし、かとの強い恐怖心をいまだに抱いていることが認められるのであり,相手方の面接交渉に関する行動につき信頼が回復されているとはいいがたい。そして,未成年者らが相手方との面接交渉に消極的な姿勢を示しているのは,このような抗告人の心情を察していることも一因となっているものと考えられる。

相手方は,原審での審聞において,今後,未成年者らを連れ去ったり,居所を調べるなどのことはしないと述べているが,抗告人や未成年者らの原審における発言等に照らしてみると,その相手方に対する不信感は,このような供述があったからといって容易にぬぐい去ることはできない程度に深いものと認められる。

そうしてみると,現在の状況において,未成年者らと相手方との面接交渉を実施しようとするときには,未成年者らに対して相手方に対する不信感に伴う強いストレスを生じさせることになるばかりか,未成年者らを父親である相手方と母親である抗告人との聞の複雑な忠誠葛藤の場面にさらすことになるのであり.その結果,未成年者らの心情の安定を大きく害するなど,その福祉を害するおそれが高いものといわなければならない。したがって,現在の状況においては,未成年者らと相手方との面接交渉を認めることは相当ではない。

(3) ただ,未成年者らが父親との間で言葉を交わすなどして心情の交流を図ることは,未成年者らの精神面の発達, とりわけその社会性の酒養にとって不可欠であることはいうまでもないところであり,母親である抗告人においても,未成年者らの健全な発育,成長を真剣に願うのであれば,その重要性について十分な認識を抱いて,時間の経過にゆだねるのではなく,そのための環境作りに工夫し努力する必要があることも,またし、うまでもないと考える。

記録によれば,原審における調停の過程などで,未成年者らと相手方との接点を設けるためのいくつかの方策が取り上げられたことをうかがうことができるが,今後,双方当事者においては,真に未成年者らのために,まずは手紙の交換など未成年者らと相手方との間接的な交流の機会を設けるなどして,未成年者らと相手方との聞の信頼の回復に努めるなど,面接交渉の環境が整うよう格段の努力が重ねられることを期待したい。

3 よって,未成年者らと相手方との面接交渉を命じた原審判は不相当であるから,原審判を取り消し,相手方の本件申立てを却下することとして,主文のとおり決定する。(裁判長裁判官 安倍嘉人 裁判官 片山良広 内藤正之)

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相続放棄の申述却下審判に対する即時抗告事件

第1 抗告の趣旨及び理由
別紙「即時抗告申立書」に記載のとおりである。
第2 当裁判所の判断
1 一件記録によると,抗告人は,被相続人B (以下「被相続人」という。)の二女であること,被相続人は,平成18年3月29に死亡し,抗告人は,同日,被相続人の死亡を知ったこと,被相続人の遺産には,○○市○○x丁目x番xの土地等の不動産が存在し,抗告人は,被相続人の死亡を知った時点において,被相続人に上記不動産の遺産があることを知っていたこと,しかしながら,抗告人は,昭和54年ころから被相続人と別居しており,先に抗告人の父であり被相続人の夫であるC(平成7年×月×日死亡)の遺産である土地を相続取得していたことや被相続人の遺産の1つである○○市△△丁目×番×号の土地上には被相続人の居宅と共にその長女であるDの居宅が存在したことなどから,被相続人の遺産である不動産はすべてDが相続するものと考えていたこと,また,抗告人は, Dとは日常生活において疎遠であったことなどから, Dと被相続人の遺産分割の話などはしたことがなかったこと,抗告人は被相続人の死後の平成19年3月にDから知らされたことであるが,被相続人は,被相続人の有する一切の財産をDに相続させること等を内容とする遺言公正証書(以下「本件公正証書遺言」という。)を平成18年×月×日○○法務局所属公証人口口口口に帰託して作成していたこと,ところが,抗告人は,平成19年2月28日,東京地方裁判所平成19年(ワ)第xx号譲受債権請求事件(以
下「別件訴訟事件」という。)の訴状を受け取ったことにより,被相続人が,株式会社○○銀行に対する連帯保証債務(Dの夫であるEが代表取締役を務める株式会社△△と同銀行との聞の消費貸借契約に基づく株式会社△△の同銀行に対する主債務一切を保証する内容の連帯保証債務,以下「本件債務」という。)を負担していたことを初めて知ったこと,そこで,抗告人は,平成19年3月14日に岐阜家庭裁判所に対し本件相続放棄の申述を行ったこと等が認められる。
2 民法915条1項所定の3か月の熟慮期間は,原則として, 相続人が,相続開始の原因たる事実及びこれにより自己が法律上相続人となった事実を知った時から起算すべきものであるが,相続人が,上記各事実を知った時から3か月以内に限定承認又は相続放棄をしなかったのが,被相続人に相続財産が全く存在しないと信じたためであり,かつ,被相続人の生活歴,被相続人と相続人との聞の交際状態その他諸般の状況からみて当該相続人に対し相続財産の有無の調査を期待することが著しく困難な事情があって,相続人においてこのように信じるについて相当な理由があると認められるときには,上記熟慮期間は相続人が相続財産の全部又は一部の存在を認識した時文は通常これを認識しうべき時から起算すべきものと解するのが相当である(最高裁昭和59年4月27日第二小法廷判決・民集38巻6号698頁)。
そこで検討するに,抗告人は,被相続人の死亡を知った当時, 被相続人の遺産として不動産が存在することは認識していたものの,上記認定の事情の下で,抗告人は,上記不動産は姉であるDが相続して自らは相続取得しないもの,したがって自らには相続すべき被相続人の相続財産はないものと信じていたことが認められ,かつ,抗告人は後になって知ったこととはいえ,被相続人が平成18年×月×日に被相続人の一切の財産をDに相続させる旨の本件公正証書遺言を遺していること等からすでれば,抗告人が被相続人の死亡時において, 被相続人の遺産をすべてDが相続し自らには相続すべき財産はないと信じたことについて,相当の理由があったものと認めることができる。
また,上記認定の事実によれば,抗告人は,被相続人の遺産に相続債務が存在することを知らず,平成19年2月28日に別件訴訟事件の訴状を受け取って初めて本件債務の存在を知ったことが認められるとともに,本件債務が,Dの夫が代表取締役を務める会社の取引銀行に対する債務を主債務とする連帯保証債務であることや,抗告人,被相続人D及びその夫の居住関係及び交際状況等に鑑みれば,抗告人が被相続人の上記債務の存在を知り得るような日常生活にはなかったものと推認されることなどからすれば,抗告人が上記の時点まで本件債務の存在を認識しなかったことについても,相当な理由があったものと認めることができる。
そうすると,本件における熟慮、期間の起算日は,抗告人が別件訴訟事件の訴状を受け取って本件債務の存在を知った日である平成19年2月28日と解するのが相当である。
3 以上からすれば,平成19年3月14日に行った抗告人の本件相続放棄の申述は,未だ熟慮期間内の申立てであるから,これを受理するのが相当である。
よって,これと結論を異にする原審判を取り消し,抗告人の申述を受理することとして,主文のとおり決定する。(裁判長裁判官 坂本慶一 裁判官 林 道春 山下美和子)

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相続の放棄申述却下審判に対する抗告事件

第1 事案の概要等

1 抗告人は,抗告人の子である被相続人亡B (以下「被相続人」という。)の相続につき,平成18年6月20日に相続放棄の申述をしたところ,原審は,既に法定のj切聞を経過しているとして,抗告人の申述を却下した。これに対し,抗告人が抗告したものである。

2 抗告の趣旨及び理由抗告人は,原審判を取り消し,本件を東京家庭裁判所に差し戻すとの裁判を求め,その理由として別紙即時抗告申立書記載のとおり主張した。

第2 当裁判所の判断

1 本件の事実関係

一件記録によれば,以下の事実が認められる。

(1) 被相続人(昭和26年×月×日生)は,抗告人と亡Cとの六男として出生し.平成17年12月17日死亡した。被相続人の相続人は.母である抗告人のみであった。

(2) 抗告人は,死亡当日,被相続人の死亡を知り, 自己のために相続の開始があったことを知った。抗告人は,耳が悪く,物忘れはあるが,物事の是非弁別についての判断能力を有している。

(3) 抗告人の夫である亡Cは,平成5年×月× 日死亡した。同人の相続人は,妻である抗告人.長男であるD,二男であるE,三男であるF,四男であるG,五男であるH,六男である被相続人の7名であった。

(4) 亡Cの相続人らは,平成5年×月XB,その相続財産につき,遺産分割協議をし,抗告人民わ区Cわ×丁目×番×の宅地XXXm2及びその他の財産を,被相続人は同町×丁目×番XXの土地××m2 (以下「本件相続財産」という。)及び100万円を取得することとなった。

(5) 本件相続財産は, 00電力の高圧送電線用鉄塔に隣接する面積約4坪程度の変則的な三角形状の土地で,送電線路の設置及びその保全の為の土地立入等のため地役権が設定されており,単独での資産価値はほとんどない。

(6) 抗告人は,被相続人の死亡時,被相続人に本件相続財産があることを知っていたが,負債があることは知らなかった。抗告人は明治43年生まれで相続開始当時95歳で,相続開始の前後において,被相続人と抗告人あるいは抗告人の同居家族との日常的な交際はほとんどなかった。

(7) 抗告人は,平成18年4月20日, その親族が本件相続財産の登記事項全部事項証明書を入手したことにより,同相続財産には,平成11年×月× 日, 極度額xx万円の根抵当権設定の仮登記(権利者株式会社○○○)がなされていることを知ったιそこで,抗告人の長男であるDが弁護士Iに依頼し,被相続人の債務を調査したところ,被相続人が債権者・根抵当権権利者を株式会社Cにわとする債務につき,連帯保証(主債務者は自己破産)をしている事実が判明した。上記債務の残元本は平成13年時点で1200万円に達しており.超過利息の元本算入をしても,残元本の額は600万円を下回らない。

(8) 抗告人は,平成18年6月20日,本件相続放棄申述受理の申立てをした。

2 以上の事実によれば,抗告人は,平成5年×月×日,抗告人の夫Cの死亡に伴い遺産分割協議をし,被相続人が本件相続財産及び現金100万円を取得したことを知っていたもので,平成17年12月17日の被相続人の死亡という相続開始の原因たる事実を知った時点で, 自己が相続人となったこと及び被相続人には本件相続財産が存していることを知っていたとみられる。しかしながら,相続人において相続開始の原因となる事実及びこれにより自己が法律上相続人となった事実を知った時から3か月以内に限定承認又は相続放棄をしなかったのが,相続財産が全く存在しないと信じたためであり,かつ,被相続人の生活歴,被相続人と相続人との聞の交際状況その他諸般の事情からみて当該相続人に対し相続財産の有無の調査を期待することが著しく困難な事情があって,相続人において上記のように信ずるについて相当な理由がある場合には,民法915条1項所定の期間は,相続人が相続財産の全部又は一部の存在を認識した時又はこれを認識し得ベかりし時から起算するのが相当である(最高裁昭和59年4月27日判決・民集38巻6号698頁)。そして,上記判例の趣旨は,本件のように,相続人において被相続人に積極財産があると認識していてもその財産的価値がほとんどなく,一方消極財産について全く存在しないと信じ,かっそのように信ずるにつき相当な理由がある場合にも妥当するというべきであり、したがって,この場合の民法915条l項所定の期間は,相続人が消極財産の全部文は一部の存在を認識した時又はこれを認識し得べかりし時から起算するのが相当である。

これを本件についてみるに,抗告人は,平成17年12月17日の相続開始の時点で,被相続人には本件相続財産が存していることを知っていたが,本件相続財産にほとんど財産的価値がなく,一方被相続人に負債はないと信じていたものであり,かつ抗告人の年齢,被相続人と抗告人との交際状況等からみて,抗告人においてそのように信ずるについては相当な理由があり,抗告人が被相続人の相続債務の存在を知ったのは.早くとも平成18年4月20日以降とみられるから,本件の場合,民法915条1項所定の期間は,向日から起算するのが相当である。

そして,抗告人は,平成18年6月20日,本件相続放棄申述をしたものであるところ,上記申述は,上記の同年4月20日から3か月の熟慮期間内に行われたものであるから,適法なものというべきである。

3 結論

以上によれば,本件相続放棄の申述は受理すべきであり,本件抗告は理由があるから,原審判を取り消し,審判に代わる裁判をすることとして,主文のとおり決定する。(裁判長裁判官 青柳 馨 裁判官 豊田建夫 長久保守夫)。

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