児童福祉施設入所措置等の期間更新の承認申立事件

第1 申立ての趣旨
主文同旨
第2 当裁判所の判断理由
1 一件記録によれば,次の事実が認められる。
(1)事件本人は, 平成12年×月×日,事件本人親権者母(以下「実母」という。)の非嫡の子として出生した。事件本人出生後まもなく,実母は,事件本人親権者養父(以下「養父」という。)と交際を始め,平成14年×月×日婚姻し,同年×月×日,養父及び実母と事件本人とは養子縁組をした。
(2) 実母及び養父は,平成16年×月ころ,事件本人とともに○○区○○のマンションに引っ越し,同所で生活していたが,養父は定職に就かず,覚せい剤を常習的に使用し,その影響で暴れたり,また,養父と実母とが事件本人の面前で, しばしば暴力を伴う喧嘩をするような生活状況であった。また,事件本人は,実母及び養父の双方から.「しつけ」と称して,日常的に暴行を受け,同年×月末ころには,事件本人がガスコンロをいじっていたことに腹を立てた実母から,調理に使用しまだ熱い状態にあるフライパンを左ほほと右足ふくらはぎに押しつけられ,全治1か月余を要する熱傷等の傷害を負い,また,そのころ,事件本人が養父の説教をよそ見して聞いていない様子であることに腹を立てた養父から,スプーンを投げつけられ,頭部に全治約1週間を要する傷害を負った。事件本人は,同年×月× 日.○○児童相談センター(以下「児相Jという。)に一時保護されたが,その際,事件本人には虐待によると認められる複数の傷痕やPTSD症状が見られた。養父は,同年×月×日,覚せい剤取締法違反で逮捕され,平成17年×月× 日同罪(自己使用,所持)により懲役2年の実刑判決を受け,刑務所に服役した。
(3) 平成17年9月5日,東京家庭裁判所は,前記(2)のとおりの事実を認定した上,事件本人については,精神面においても実母らによる身体的虐待や父母の喧嘩が絶えない等の家庭環境による影響が認められ,今後も落ち着いた環境において継続的に専門的な手当を行う必要があること,他方,実母は定職に就かず,生活は極めて不安定であり,またこれまでの安易に暴力を振るう傾向は直ちに解消されるものではないと考えられること,養父は従前の生活態度に対する反省が深まっておらず,出所後事件本人らと生活するようになるとこれまでと同様な事態となる可能性が高いことなどから,事件本人を実母及び養父に監護させることは著しく事件本人の福祉を害するとして,申立人が事件本人を児童養護施設に入所させることを承認する旨の審判(以下「前審判」という。)をし,併せて,申立人に対し,下記のとおり,実母及び養父に対して必要な指導措置を採ることを勧告した(以下「前審判指導勧告」という。)。前審判は,同月×日確定した。

「保護者(実母及び養父)に対し,適切な指導措置を採ることを勧告する。特に,実母に対しては,子の養育に対する考え方(特に「しつけ」の問題)の不適切さを認識させてその改善に向けて努力させ,また,定職に就くなど生活態度を改善させること。特に,養父に対しては,子の養育に対する考え方を改善させ,また,覚せい剤等薬物との関係を断ち切り,定職に就くなど健全な社会生活を営めるようにすること。」
(4)ア申立人は,平成17年×月×日,事件本人を児童養護施設に入所させる措置をとった(以下「本件入所措置」という。)。イ事件本人は,本件入所措置後,同施設で生活し,現在施設近くの小学校の2年に在籍している。事件本人は,施設ではムードメーカー的存在で,友達も多く,安定した生活を送っている。しかし,その一方,事件本人に対しては,施設と児相とが連携し,定期的にカウンセリングを行うなどの心理的なケアが継続されているが,事件本人は,実母にフライパンで火傷をさせられたことや,実母及び養父から受けた暴力がトラウマになっており,フライパンを見て実母から叩かれたことを思い出すなど,被虐体験による精神症状が依然として続いていて,施設入所後現在に至るまで,虐待児にまま見られる夜尿がほぼ毎日見られる。また,学習面では,潜在的な知的能力の低さによるものと思われる学習の遅れや授業に集中できない落ち着きのなさなどが認められ,今後学習内容の抽象度が増し,対人関係が複雑になってくる小学校高学年あたりでの不適応やつまずきが心配される。さらに,事件本人には,うつぶせの女性の尻にまたがり腰を動かして「こうすると気持ちいいんだよ。」と言ったり,性器を見せたりするなどの性的問題行動も散見されている。ウ当庁家庭裁判所調査官(以下「調査官」という。)に対し,事件本人は,実母については, 「会いたい。(施設に)会いに来て欲しい。」と述べ,事件本人からへその緒のことを持ち出し, 「ママのお腹にいるときへその緒でつながってたんでしょ。」と述べている。事件本人は,施設の職員に対しでも,実母に会いたいと言うことはあり,他の子の親が面会に来たりするとうらやましがっている。一方で,調査官に対し,養父に対する話題は事件本人自身からは積極的に語られることはなく,調査官から,養父に会いたいかと尋ねると, 「なんか(実母と)別れたらしいよ。」と述べ,特に会いたい気持ちなどは表現しなかった。
(5)ア実母は,平成17年×月×日から生活保護を受けて生活し,その後,上記マンションから現在の住民票上の住所に転居した。しかし,実母は, 生活保護のケースワーカーからの就労指導に体調不良を理由に従わず,平成18年×月×日に生活保護を打ち切られた。実母は,養父が平成19年x月に刑務所から出所すると, 再び養父と同居を再開したが,同年×月,養父と共に現在の住所地の10畳くらいの広さのワンルームマンションに転居した。イ児相では,本件入所措置後,養父が刑務所に服役中であったため,これまで実母との関わりを主に行ってきた。しかし,実母は,児相から親子再統合のための治療的プログラムへの参加を促されても,「子育ては慣れているから自分だけでできる。」などと主張して拒否的な態度を取り,一度も参加していない。また,体調不良などを理由に,児相との面接や家庭訪問なども予定どおりに行われていない。実母及び養父は,事件本人との面会を希望しているが,児相から,面会の実現に向け,面会時の約束事を決めるために来所を促されてもこれを拒否しているため,現在まで事件本人との面会も実現していない。ウ平成19年×月×日の調査官調査期日の呼出に,養父は出頭したが,実母は体調不良を理由に出頭しなかった。そこで,養父に実母の出頭確保を要請の上,養父の同意を得て第2回調査期日が同年×月×日に設定されたが,当日,養父及び実母とも連絡なく不出頭であった。そこで,同月×日午前×時に審問期日を指定し,実母及び養父に対し,出頭しない場合は本件に対する意見がないものとみなす旨の添え書きをした通知書を送付し,審問期日を通知した。当日,実母から仕事(居酒屋の手伝い)のため出頭できないとの電話連絡があったため,調査官が対応、の上,同年×月×日に調査期日をもうけることになった。ところが,同月×日,実母から電話で,養父が同月×日に警察に逮捕され,実母も体調不良のため×月x日の調査期日には出頭できない旨の連絡があった。結局,実母の出頭は得られなかったが,同年×月×日受理の調査官の照会に対する回答書によれば,実母は.「事件本人の引き取りを希望する。」.引き取り後の生活については「これから生活保護の手続をする予定です。」.施設入所には「同意しない」.「子供は母と一緒にいるのがペストだと思うし,私も生きがいになります。1からやり直したいです。」と回答している。養父は,平成19年×月×日の調査期日において,調査官に対し,「現在求職中であり,実母は体調が良いときは○○のスナックでアルバイトをしている。」旨述べ,本件に対する意向については,「事件本人を引き取って育てたいが,現在の住居は子が育つ環境として良いとは言えないため, 引き取った場合は例えば口口口のように子にとって環境の良い所に転居したい。また,経済的にも不安定なので,知人の会社で働き,稼ぎを得たいと,思っている。」旨述べていた。しかし,養父は,同年×月x日,党せい剤取締法違反で逮捕され,同年×月x日.○○地方裁判所において, 同罪(使用)により懲役2年の実刑判決を受けた。
2 以上認定の事実に基づき検討するに,実母は,児相の指導に拒否的であり,その結果,事件本人が家庭において健全な養育を受けるための環境作りや,実母の盤育に対する考え方の修正に向けた働きかけは全く進展していない状況であること,実母の事件本人に対する養育態度は,本件入所措置以前と何ら変化はなく,実母には自身が行った養育の不適切さに対する認識も乏しいこと,また,実母は,定職にはついておらず,恒常的に体調不良を訴えるなど,生活状況も安定していないこと,養父は,出所後わずか数か月で,再び覚せい剤取締法違反の罪により実刑に処せられたものであり,従前の生活態度に対する反省が全く認められず,今後,本人自身によほどの覚悟がない限り,これまでと同様の事態が繰り返される可能性が高いこと,他方,事件本人は,現在施設で安定した生活を送っているものの,フライパンをみて実母に叩かれたことを思い出したり,ほほ毎日のように夜尿があるなど,実母及び養父から受けた被虐体験による精神症状が依然として続いているほか,学習の遅れや性的な問題行動がみられるなど,事件本人については,日常的な支援や指噂,継続的な心理的ケアが必要な状況にあることなどにかんがみれば,現状で,事件本人を実母の元に返すことは,著しく事件本人の福祉を害するおそれがあるといわざるを得ず,事件本人に対しては,引き続き,安心できる施設の人間関係の中で,落ち着いた生活を保障していくと同時に,事件本人が抱えている問題について留意しながら,関係機関協力の下で,適切な支援や心理的なケアを行っていく必要があることは明らかである。したがって,本件入所措置を継続しなければ著しく事件本人の福祉を害するおそれがあると認められるから,措置の期間を更新することが相当である。
3 また,前審判に併せ,申立人に対し,前審判指導勧告がなされたが,現在に至るも,その内容に沿った指導が進展している状況にないことは,前記lで認定のとおりである。しかし,本件入所措置の期間の更新後,親子再統合のためには,実母及び養父の養育に対する考え方や養育環境を改善させることが必要であり,そのために,児相による実母らに対する指導を現実化していくことがなにより重要となる。そこで,本件期間更新の承認に併せ,申立人に対し,前審判指導勧告と同内容の事項について,実母及び養父に対し、必要な措置を採ることを勧告する。よって,主文のとおり審判する。(家事審判官土居葉子)

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2012年2月25日 | コメント/トラックバック(0) |

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夫婦同居審判に対する抗告事件

第1 抗告の趣旨
原審判を取り消し,本件を大阪家庭裁判所堺支部に差し戻すとの裁判を求める。
第2 事案の概要
1 事案の要旨相手方(妻昭和35年×月×日生)が,別居中の抗告人(夫昭和48年×月×日生) に対し,同居を求めた事案である(平成20年×月×臼婚姻費用分担調停と共に調停申立て。平成20年×月×日調停不成立〔婚姻費用分担調停は同日成立〕により審判手続移行)。
2 原審判原審は,平成21年3月13日,夫婦関係が悪化したのは専ら抗告人の不倫に原因があり,抗告人の不倫を知った後の相手方の言動がかなり激しいものであったとしても,相手方は現在円満な夫婦関係を切望していることなどの事情に照らし,夫婦関係の修復は可能であるというべきであるとして,抗告人に対し,相手方との同居を命じる審判をした。
3 抗告理由の要旨相手方の抗告人に対する激しい行動は今後も収まることはなく,抗告人としても相手方と通常に接することはできなし、から,相手方との同居は,抗告人にとって精神的に耐え難し、。別居も1年以上が経過し,夫婦関係の修復は不可能であって.相手方と同居することはできない。
第3 当裁判所の判断
1 事実経緯等(一件記録により認める。)
原審判1頁19行目から同4頁9行固までに記載のとおりであるから,これを引用する。ただし,つぎのとおり改める。
(1) 原審判2頁11行自の「平成19年×月下旬ころ, 」を「平成19年×月~×月にかけて,」に改める。
(2) 同2頁14行自の後に「しかし,抗告人は,機会があれば相手方と別居するか,離婚する考えであったと述べている。」を加える。
2 判断
(1) 上記の事実経緯によれば,別居状態に至ったのは,主に抗告人の不貞行為にその原因があると認められる。ところで,相手方は,抗告人と同居を再開すれば,円満な家庭生活が回復すると述べて抗告人を受け入れる姿勢を示しており,また,抗告人がCとの交際を再開し,ほとんど相手方のもとに帰らずに外泊するようになってからl年9か月程度が,全く帰宅しなくなってからは1年数か月が経過したにすぎなし、。したがって,抗告人の不倫が発覚した後,相手方においてかなり激しい言動があったことは否定できないとしても,今後の抗告人の相手方に対する接し方と相手方の努力に期待して,夫婦関係の修復は,なお可能であるとし,抗告人に対して同居を命じた原審の判断は.必ずしも不当であったとまではいえない。
(2) ところで,抗告人と相手方は,婚姻中であり,互いに同居義務を負っている(民法752条)。そして,家庭裁判所の同居審判は,この同居義務の存在を前提として,その具体的内容を形成するものであるが(最高裁大法廷昭和40年6月30日決定民集19巻4号1089頁参照),同居義務は,夫婦という共同生活を維持するためのものであることからすると,共同生活を営む前提となる夫婦聞の愛情と信額関係が失われ,仮に,同居の審判がされて,同居生活が再開されたとしても,夫婦が互いの人格を傷つけ文は個人の噂厳を損なうような結果を招来する可能性が高いと認められる場合には,同居を命じるのは相当ではない(東京高裁平成13年4月6日決定家庭裁判月報54巻3号66頁参照)。
(3) 相手方は,いったん抗告人がCと別れることにした後も,抗告人に対して不倫を責め立て,これが原因で激しい口論となることもあったことなどから,抗告人は,相手方とのこれ以上の婚姻生活の継続は不可能であると考えるようになった。また,相手方は,自分が納得できなし、ことがあると,激情して取り乱すなど,衝動的な行動をとったり,抗告人が勤務する小学校に行って,抗告人が不倫をして帰宅しないなどと話したりしたことがあり,抗告人は今後もこのようなことが繰り返されるのではないかと考えている。そして,このような抗告人の考えは,同居を命じる原審判がされた後も変わらず,抗告理由では,相手方と同居することは抗告人にとって精神的に耐えがたいものであって,夫婦関係の修復は不可能であると断言している。また.当事者双方から円満同居に向けた具体的な提案がされたことを窺わせる資料もなし、。そうすると,抗告人が審判(決定)に基づいて任意に同居を再開することはほとんど期待できず(同居審判の性質上.履行の強制は許されない。).仮に,同居を再開してみたところで,夫婦共同生活の前提となる夫婦聞の愛情と信頼関係の回復を期待することも困難であり,かえって,これによって,互いの人格を傷つけ又は個人の尊厳を損なうような結果を招来する可能性が高いと認められる。したがって,現時点において,抗告人に対し,同居を命じることは相当ではない。3 以上のとおりであって,本件抗告は上記説示に沿う範囲で理由があるから,家事審判規則19条2項により,審判に代わる裁判をすることとし,主文のとおり決定する。(裁判長裁判官赤西芳文裁判官小野木等粛木稔久)

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2012年2月25日 | コメント/トラックバック(0) |

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児童養護施設入所措置等承認申立事件

第1 申立ての趣旨
主文同旨
第2 当裁判所の判断
1 家庭裁判所調査官の調査報告書を含む一件記録によれば,以下の事実が認められる。
(1) 親権者父B (昭和40年x月×日生,以下「実父」という。)は,平成3年×月×日, cと婚姻し,両名の間には,長女である事件本人及び長男D(平成4年×月×日生)が出生した。
(2) 実父とCは,平成5年×月×日協議離婚し, cが事件本人及びD(以下,事件本人とDを併せて「事件本人ら」という。)の親権者となった。その後, cは,事件本人らと共にCの実家で暮らし,実父は,仕事が休みの日に,事件本人らを自宅に連れてきて遊ばせていたが,同年×月×日から, cは,実父宅で,実父及び事件本人らと同居するようになった。
(3) ところが,同年×月×日, cは,事件本人らを無認可保育園に預けたまま,行方不明となり,実父が,児童相談所に相談したところ,平成6年×月×日,事件本人らは,乳児院(○○○)に入所措置された。
(4) 実父は,事件本人らの親権者変更を求め,平成7年×月×日,事件本人らの親権者は, cから実父に変更された。
(5) その後,事件本人については平成7年x月×日, Dについては平成8年×月x日,それぞれ満年齢によって乳児院入所措置は解除となり,それぞれ口口口に里親委託された。
(6) ところが,口口口では,平成8年×月×日ころから, Dの端息への対応が困難となったため,同月×日,事件本人らは, ○○市児童相談所の一時保護所に一時保護され,平成9年×月x日,一時保護が解除され,同日付で児童養護施設である△△△に入所した。(7) 事件本人は,△△△で生活していたが,学園の集団生活に適応できず,中学校も休みがちとなり,△△△での措置継続が困難な状況となった。そこで,児童相談所は,事件本人のペースに沿い,より個別に細やかな対応ができる里親への委託が有効と考え,平成18年の年末から,里親委託に向けて,事件本人の里親宅への外泊を繰り返し,調整を始めた。また,事件本人は,中学校卒業後の進学先として○○への進学を決めた。
(8) 一方,児童相談所は,実父に対し,事件本人について,里親委託への措置変更の同意を求めたが,実父は,事件本人とDが別々のところで生活することになる点に難色を示し,同意しなかった。
(9) 事件本人は,平成19年×月00に進学し,現在,△△△から通学している。また,事件本人は. 2週間に一度くらいの割合で,週末に里親宅に2泊ないし3泊し,里親宅から通学することもある。事件本人と里親との関係は良好であり,事件本人は,里親宅で生活し,里親宅から学校に通うことを希望している。また,事件本人は,当面はDと別々の生活になることについても,それで構わないと述べている。
(10) 申立人によれば.Dについては,現時点では無理だが,いずれ事件本人と同じ里親に委託される可能性もあるとのことである。
2 前記認定の事実関係によれば,事件本人は,平成6年以降現在まで,乳児院,里親及び児童養護施設において生活していたが,児童養護施設での入所継続が困難な状況となっているところ,集団生活にうまく適応できない事件本人にとっては,個別的に細やかな対応のできる里親委託が有効であり,事件本人も里親宅への外泊を繰り返した結果,現在,事件本人は,里親と良好な関係を築き,里親の下で安定しており,事件本人も里親に委託されることを希望していることが認められ,また,実父の反対の理由も,事件本人とDが別々になることを懸念してのものであるところ,事件本人自身はDと別々になることを納得していること,児童相談所も,将来的にはDも同じ里親に委託することも想定していることが認められ,かかる事情に照らせば,事件本人の福祉のためには,事件本人を里親委託させることが相当であると思料する。
3 よって,主文のとおり,審判する。(家事審判官脇由紀)

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児童福祉施設入所の承認申立事件

第1 申立ての趣旨
申立人が,事件本人を知的障害児施設(第一種自閉症児施設),情緒障害児短期治療施設,児童養護施設又は児童自立支援施設に入所させることを承認する。
第2 事案の概要
本件は,事件本人の親権者である母が,事件本人の養育に当たり,育児を放棄し,健全な養育環境を整えて基本的生活習慣を身につけさせるという責任を果たさず,事件本人を不衛生な生活環境に置いたまま何らの改善もしないので,事件本人を施設に入所させ,事件本人に身辺自立の習慣及び自己表現力を身につけさせることが重要であるのに,母が施設入所に同意しないとして,申立人が,児童福祉法28条1項1号に基づき,事件本人を施設(平成20年×月末までと入所期間を設定している知的障害児施設(第一種自閉症児施設)のほか,次の措置先とすることが適当であると考えられる情緒障害児短期治療施設,さらには,その後の措置先として検討している児童養護施設又は児童自立支援施設)に入所させることの承認を求めた事案である。
第3 当裁判所の判断
1 一件記録によると,次の事実が認められる。
(1) 事件本人Aは,平成6年×月×日, 事件本人親権者母Bの娘として生まれたが,父は,不明で, Aを認知していない。
(2) その後, Bは, Aと2人で生活保護を受けて暮らしていたが,平成8年×月ころ,Aの首を絞めたり,叩いたり,風日場やトイレに閉じこめたりすることがあったため,保育所からの通告によって,児童相談所がAを乳児院に一時保護委託した。一時保護委託は,すぐに解除されたが,児童相談所の関与は継続された。Bは,自宅で何匹も猫を飼っていたが,十分な世話をしないため,不衛生な状況であった。
(3) 平成12年x月ころには,Bから児童相談所にAが自宅の金銭を持ち出したり,勝手に家を出て迷子になることがあり,施設に入所させたいとの相談があり, Aは,一時保護された。そのころ, Aには, Bから叩かれたことによると思われる痣が認められ, Aは,昼夜の逆転した生活を続けていた。
(4) 平成13年×月からAは,小学校に入学したが,遅刻が多く,朝食を摂らずに登校したりした。そして,小学校の担当者がBに接触できないことも多く, Aに痣があり,自宅も不衛生な状況であったことから,児童相談所は, Bに対して今後も暴力が続くようであれば,Aを保護せざるをえない旨警告した。
(5) その後も通所指導が続けられ, BのAに対する暴力の兆候はほとんどなくなった。しかし, Aは,小学校1年生のときには10日, 2年生のときには40日欠席し, 3年生のときには118日, 4年生のときには170日, 5年生のときには187日欠席して欠席日数が増加し, 6年生のときには一時保護されるまでにわずか5日,しかも1時間程度登校したに過ぎなかった。Aは,日中は自宅におり,夕方から外出して夜中まで俳個するといった昼夜逆転の生活を続けており,朝に起床できないことが不登校の一困となっている。Aは,小学校4年生のころには,夜に外出して深夜1,2時に帰宅することもあったが,これについてBは,よくある話だという態度であった。また, Aは,月に1,2回程度入浴するのみで,同じ服を繰り返し着たりして,体臭がし,生理で汚れた下着もそのままの状態であった。自宅には,飼い犬がいて,壁に排便したりする状況であり, Bは,食器等の片づけをせず,よくコンビニエンスストアで買ってきた食事をしていた。このような状況下で, Bは, Aの担任教師が家庭訪問をしても,全く面談しない状況であった。
(6) Bは,平成18年×月以降,申立人の担当者からAの生活環境の改善がない場合には, Aを施設に入所させなければならない旨の注意を受けたが,生活環境の改善は見られなかった。しかし,Bは, Aを施設に入所させることについて同意しなかった。
(7) そのため,申立人は,平成19年×月x日, BにはAの生活環境を改善する意欲もないとして, Aを一時保護し,同年×月×日,一時保護委託により知的障害児施設(第一種自閉症児施設)に入所させた。
(8) Aは,基本的な生活習慣が身についておらず,施設に入所後も,トイレの後始末,入浴して身体を清潔に保つことや生理の手当ができず,下着が汚れたまま過ごしたりしていた。また, Aは,ほとんど人と話をせず,相手に極度に顔を近づけ,小さな声でほそぼそと話をし,他人の問いかけに対し,自分の言葉で説明することができない状況にあり,他の子供と問題が生じた場合には,足で蹴ったり,手で叩くなどの暴力行為に出ることもある。しかし, Aは,しばらく施設で生活する聞に入浴も自ら希望するようになり,院内学級へも毎日通学し,表情も明るくなって,他の子供とも交流できるようになり,急速に,社会生活能力を向上させている。もっとも, Aは,自宅の方が自由だからという理由で帰宅を希望することもある。また, Aは,現在,小学校4年生レベルの勉強をしている(なお,学力が低いのは,通学していなかったことが主な原因と思われる。)。
(9) 一方, Bは,申立人の担当者との接触も絶ち,家庭裁判所調査官の調査のための呼出に応じないばかりか,自宅を訪問しても接触ができない状況であり,本件審問期日にも出頭しなかった。
2 以上の事実によると, BのAに対する監護態度は極めて不適切であったと認められ,そのためにAは,昼夜の逆転した不規則な生活をして不登校となり,入浴回数も極端に少なく,不衛生な状態で生活してきたこと, しかし, Aは,平成19年×月×日に一時保護委託されて施設に入所後は,急速に,社会生活能力を向上させていること, Bは,学校関係者や申立人の担当者等との接触を避け,その指導に従わず,その改善も当面見込めないことが認められる。そうすると, BにAを監護させることは,著しく児童の福祉を害することになり, Aには,知的面及び情緒面での治療的な関わりが必要と認められるから,これが可能な知的障害児施設(第一種自閉症児施設)に入所させるのが相当である。Aは,帰宅を希望することもあるが,その理由は,自宅の方が自由だからという理由であり,現在は不登校もなく,表情も明るくなっていることからすると, Aの上記希望が,前記認定を左右するに足るものではない。なお,申立人は,知的障害児施設(第一種自閉症児施設)については,平成20年×月末までと入所期間を設定していることを理由に次の措置先となることが想定される諸施設についての承認も求めるが,種々の事情から知的障害児施設(第一種自閉症児施設)での入所に期間の限定があり,次の措置先となる施設が予想されるとしても,情緒障害児短期治療施設,児童養護施設,児童自立支援施設は,それぞれ処遇内容が異なり,単に年齢のみによって区別されるというものでもなく, Aについて,なお知的障害児施設(第一種自閉症児施設)での入所を継続し,その結果を見た上で次の具体的な措置先を決定する必要があると認められるから,知的障害児施設(第一種自閉症児施設)の次の措置先につき承認を与えることは相当ではない。
3 よって,申立人の申立ては, Aを知的障害児施設(第一種自閉症児施設)に入所させることの承認を求める限度で理由があるから,主文のとおり審判する。(家事審判官小野木等)

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養育費減額申立事件

第1 申立ての趣旨
申立人・相手方間のCD法務局所属公証人口口口口作成平成16年第xx号離婚給付契約公正証書(以下「本件公正証書」という)により,申立人が相手方に支払うべきものとされる養育費の額を毎月3万円に減額する。
第2 当裁判所の判断
1 一件記録によれば,次の事実を認めることができる。
(1) 申立人と相手方(以下「両名」という)は,平成15年×月×日婚姻し,同年×月×日,事件本人をもうけたが,平成16年×月×日,事件本人の親権者を相手方と定めて協議離婚した。
(2) 両名は,相手方の求めにより,同年×月×日,概要次のとおりの本件公正証書を作成した。ア申立人は,相手方に対し,次のとおり,事件本人の養育費を毎月末日限り支払う(以下「本件養育費条項」という)。(ア)平成16年4月から平成17年9月まで毎月3万円あて(イ)同年10月から平成28年7月まで・毎月6万円あて(ウ)同年8月から平成35年11月まで毎月12万円あて(エ)前記(ア)ないし(ウ)のほか事件本人が入学・入院等特別の出費を必要とする場合には,相手方の申出により,当事者協議の上,その必要費用について申立人の分担額を定め,申立人はその分担額を遅滞なく相手方に支払う。イ申立人は.相手方に対し,離婚に伴う慰謝料及び財産分与として. 842万円の支払義務があることを認め,これを次のとおり148回に分割して,毎月末日限り支払う(以下「本件慰謝料等条項」という)。(ア)平成16年4月から平成17年9月まで毎月3万5000円あて(イ)同年10月から平成28年6月まで毎月6万円あて(ウ) 同年7月5万円あて同申立人が前記(ア)ないし(ウ)の分割金を期限に支払わないときは直ちに期限の利益を失い,申立人は相手方に対し,即時に残額及びこれに対する期限の利益を喪失した日の翌日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金を支払う。ウ申立人は,本証書記載の金銭債務を履行しないときは,直ちに強制執行に服する旨陳述した。
(3)ア両名は,約6年前に知り合い,その約1年後に相手方が申立人の子を妊娠したが,両名とも年齢が若く子供を育てられないとの理由で中絶し, その後,相手方が事件本人を妊娠したことから,両名は結婚することとなった。しかし,両名が入籍する前に申立人の浮気が発覚し,申立人は,当初,浮気相手と一緒になるとの意向を示したが,家族会議の結果,浮気相手とは別れて,相手方と婚姻することが確認された。イ両名は,平成15年×月×日に婚姻し,相手方は,申立人の実家に入り,事件本人を出産することとなったが,同年×月ころ,申立人が前記の浮気相手と関係を続けており,浮気相手が妊娠していることが判明した。この時も,申立人は,浮気相手とはもう会わない旨を相手方に話したが,相手方は申立人を信頼することができなくなって両名の関係は悪化し,事件本人が誕生した後もその状況は変わらず,平成16年×月には離婚の話が出て,本件公正証書が作成された。ウこの間の平成15年×月×日,両名の結婚式が行われたが,その費用合計206万6295円と事件本人の出産費用40万4620円は,相手方の両親が負担した(なお,結婚式のお祝い金のうち43万円は,相手方家族が受領したが,その余のお祝い金の行方は判然としない)。本件慰謝料等条項の金額は,前記の結婚式費用及び出産費用に慰謝料相当額を加算したもので,相手方が提示した額に申立人が同意して,合意されたものである。
(4) 申立人は,平成19年×月× 日.Dと婚姻し,同年×月×日, 長男Eをもうけた。
(5) 申立人は,株式会社○○に勤務しており,平成18年分の給与収入は. 322万3665円(支給総額)であった。Dは,平成19年6月×日から平成20年4月×日まで育児休暇を取得しており,現在収入はない。申立人は、D及びEと賃貸物件に居住しており,家賃・共益費・駐車場代,食料費,光熱費等,医療費,被服費,雑費,生命保険(月額4185円). 自動車経費(うち自動車ローン月額1万8600円).Dの奨学金返済(月額1万円).公租公課等を負担している。
(6) 相手方は,株式会社△△に勤務しており,平成18年分の給与収入は. 145万5278円(支給総額)である(なお,相手方は,同年中に2回転職している)。相手方は,実家に事件本人,両親,祖父母,曾祖母と居住しており,住居費,食料費,光熱費は負担していないが,実家に生活費として月額4万円を入れているほか,教育費,医療費,被服費,雑費,学資保険(月額5万2246円).自動車経費(うち父による自動車購入費の立替金の返済として月額l万円).両親からの婚姻中の借入金の返済(月額5万円).公租公課を負担している。
(7) 申立人は,相手方に対して,本件費育費条項及び本件慰謝料等条項の履行として,平成17年7月以降,月に5万円を支払うなどしたが,相手方は,平成19年4月×日付けで.本件養育費条項の未払分(履行期到来分全額)及び本件慰謝料等条項の未払分718万円を請求債権とする債権差押命令により,申立人の給料を差し押さえた。
(8) 申立人は,同年6月×日,相手方に対し,本件養育費条項減額の調停を申し立て,同年×月× 日,審判に移行した。
2 本件申立ては,申立人が相手方に対して,本件養育費条項について,再婚をし第1子も生まれ現在の給料の支給額では生活が困難であるとして,その減額を求めるものであるところ,そのような事情変更に基づく養育費の減額(民法880条)は,当初の協議の際,当事者が予見し得ない事情の変更が後になって生じ,協議が実情に合わなくなった場合にのみすることができると解するのが相当である(なお,申立人は,審尋期日において,本件慰謝料等条項の減額も求めたい旨陳述しているが,同条項についていわゆる一般的な事情変更の原則が適用されるか否かはともかく,かかる変更は,家事審判でなく民事訴訟の対象であるから.本件養育費条項の減額の当否についてのみ判断する)。前記認定によれば,本件養育費条項が合意された平成16年4月×日時点では,相手方が再婚し,子をもうけることは抽象的には想定されるものの,具体的な事情として存在していたとは認められず,現実に予想することはできないから,申立人が,平成19年×月×日,Dと婚姻し,同年×月×日, Eをもうけたという事情は,本件養育費条項を変更すべき事情に当たるとするのが相当である。
(1) そこで検討するに,申立人は,相手方に対して,本件養育費条項により.平成17年10月から平成28年7月まで毎月6万円あて,同年8月から平成35年11月まで毎月12万円あての養育費を支払うことを約している。
(2) ところで,子の養育費については,養育費の支払義務者(本件では申立人)と子が同居していると仮定した場合に捻出することができる生活費を基準に算出すべきものであり,そこでは,成人の生活費の指数を100,15歳未満の子のそれを55とするのが相当である。すると,現時点において,申立人と事件本人が同居していると仮定した場合の事件本人の生活費の割合は, D及びEの存在を考慮しなければ55/(100 + 55) となるのに対し, D及びEの存在を考慮すれば55/(100 x 2+55 x 2) となり,後者は前者の2分のlの割合となっている。これによれば,本件養育費条項は,現時点において,その額を2分のlに変更するのが相当ということになる。
(3) 他方,以上の検討は,Dに収入がなく, Eの養育費全額を申立人が負担することを前提としたものである。前記認定のとおり,Dの育児休業期間は平成20年4月×日まであり,その後はDもEの養育費を負担できるようになることが予想されるから,本件で本件養育費条項の減額を認める期聞は,同月までとし,その後必要があれば申立人において再度減額等の申立てをするのが相当である。
(4) なお,前記認定のとおり,相手方は実家の援助を受けているが,これは好意に基づく贈与であって,養育費の額を定めるに当たって考慮すべきでなく,また,両名の支出について,一般家庭の平均的な支出を越えるものはなく,養育費の額を定めるに当たって特別に考慮すべき事情はない(この点,申立人は,本件慰謝料等条項の支払を負担しているが,前記認定によれば,両名の婚姻関係が破綻した主たる理由は,申立人の不貞行為にあるどするのが相当であり,本件慰謝料等条項の内容が.社会通念上著しく合理性を欠き公序良俗に反するとまですることはできず,その負担を理由に本件養育費条項の額を減額するのは相当でない)。
3 以上によれば,本件養育費条項については,本件調停申立てのあった日の属する月の翌月である平成19年7月から平成20年4月までの間,月額3万円に減額するのが相当であるから,主文のとおり審判する。
(家事審判官増永謙一郎)

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子の監護に関する処分(養育費請求)審判に対する抗告事件

第l 事案の概要等
l 事案の概要
(1) 抗告人(元夫)と相手方(元妻)は,昭和62年×月×日婚姻し,平成元年×月×日未成年者をもうけたが.平成7年×月×日,未成年者の親権者を相手方と定めて協議離婚し,以後.相手方が未成年者を監護養育している。この間,抗告人は,離婚時における未成年者が18歳に達するまで養育費を支払うとの合意に従い, 相手方に対し,月額5万円の養育費を支払ってきた。
(2)相手方は,平成18年12月×日,原審に対し,未成年者が大学進学を希望しているがその費用を捻出できないなどとして,未成年者が22歳に達する月まで引き続き月額5万円の養育費の支払を求める調停の申立てをした(平成19年×月×日調停不成立により,原審判手統に移行。)。
(3) 原審は,平成19年6月22日,平成19年3月から未成年者が成年に達する月までの聞の抗告人の分担すべき未成年者の養育費の額を月額l万5000円(月末払い)と定め,抗告人に対し,審判時までの未払分4万5000円(3か月分)の即時支払及び平成19年6月から未成年者が成年に達する月まで,月額1万5000円の支払いを命じる旨の原審判をした。

(4) 本件は,これに対する抗告人からの不服申立て事件である。
2 抗告の趣旨及び理由
(1) 抗告人は,原審判を取り消し,本件を大阪家庭裁判所に差し戻す旨の裁判を求めた。
(2)抗告の理由は、別紙のとおりである。
第2 当裁判所の判断
1 事実関係
(1) 記録によれば,原審判1頁24行目から3頁12行目までの事実が認められる。
(2) 記録(当審分を含む。)によれば,更に,次の事実も認められる。ア抗告人は平成9年×月×日相手方がDと再婚したことに伴い,未成年者も同人と養子縁組をしたことを知り,その後も,「抗告人は相手方に対し,未成年者が18歳に達する月までその養育費として月額5万円を支払う。」旨の相手方との協議離婚時の合意(以下「本件合意」という。)に従い平成19年2月まで毎月5万円を支払い続けたが(このうち,未成年者の養子縁組から養父の死亡時までの間の支払分は相当額に達している。)、上記養子縁組の事実をもって本件合意により定められた抗告人の養育費分担義務を変更すべき事情として問題を提起することをしなかった。イまた,抗告人は,平成9年×月×日に再婚し,妻との聞に,同年×月×日長男を,平成12年×月×日長女を,それぞれもうけたが,これらの事情についても,本件合意に定められた養育費分担額の減額事情として問題を提起することはなかった。
2 上記の事実関係に基づき,相手方の原申立ての当否を検討する。
(1) 当事者の合意によって養育費の分担額や分担期間を定めた場合も,その後,事情変更が生じて,従来の養育費の定めが実情に適さなくなった場合には,これを変更することができると解される。したがって,本件において,相手方が,本件合意による養育費分担の終期(未成年者が18歳に達する月,すなわち,平成19年2月まで)以降も,更に抗告人に対し,養育費の分担を求めるためには,上記合意による終期の定めを維持することが,その実情に照らして相当でないと認め得るような事情変更があることを要する。
(2) ところで,上記認定事実によれば,本件合意後,未成年者と相手方の再婚相手との養子縁組,抗告人の再婚及び子の誕生という本件合意に定められた養育費の分担義務を減免させるような事情変更が生じたが,これらについては,当事者間において一切考慮されず,その結果,抗告人は,相手方に対し,本件合意どおりの養育費分担額を支払い続けたものである。このような本件合意後の経緯に照らせば,未成年者の大学入学やその準備に費用を要することをもって,本件合意による養育費分担義務の終期の定めの延長を認めるべき事情変更があったとみることは相当でない。
(3) そうすると,抗告人は,本件合意に従った養育費分担義務をすべて履行しており,平成19年3月以降も抗告人に未成年者の養育費分担義務を認めることはできないから,相手方の本件申立てを却下するのが相当である。以上を指摘するものと解される抗告人の主張は理由があるものというべきである。
3 以上の次第で,本件抗告は理由があるから,家事審判規則19条2項に従い,これと異なる原審判を取り消し,上記説示に沿った審判に代わる裁判をすることとして,主文のとおり決定する。(裁判長裁判官田中止士太裁判官松本久久保井恵子)
(別紙)抗告の理由今まで10数年間、5万を送り続けました。その間,会社が倒産し、その倒産する2年ほど前から給料も下がり続けました。その時に親や姉夫婦にお金を借りながら工面してきました。その借りたお金もまだ返せずにいます。そして、親の商売も行き詰まり,連名で借りたお金の督促状も返せずにいます。私の給料も少なく,これ以上はできません。今,家族4人,最低限の生活をしています。どうか私の家族のこともお考えください。その給料からまだ交通手段として,車で通勤しています。そのガソリン代も月に2万前後いります。年金で生活している両親も,その年金ですら借金の方に回しています。

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養育費減額審判に対する抗告事件

第l 事案の概要

1 抗告人(原審相手方。昭和39年×月×日生)と相手方(原審申立人。昭和39年×月×日生)は婚姻し,未成年者らをもうけたが,平成15年×月×日,未成年者らの親権者を抗告人と定めて協議離婚した。
2 抗告人は,相手方に対し,未成年者らの養育費として1人につき月額3万円を支払うよう求めて東京家庭裁判所八王子支部に調停を申し立て(東京家庭裁判所八王子支部平成18年(家イ)第xx号ないし第××号。以下「別件調停」という。),平成18年6月×日,相手方が未成年者1人につき月額2万2000円を支払う旨の調停が成立した。
3 本件は,相手方が, 上記の未成年者らの養育費をl人につき月額1万1000円に減額するよう求めた事案である。原審は,相手方の養育費減額の申立てを認め,相手方が支払うべき養育費の額を未成年者1人につき月額1万5000円に変更する旨の審判をした。この原審判に対し,抗告人が,原審判を取り消して本件を東京家庭裁判所八王子支部に差し戻すことを求めて即時抗告を申し立てた。本件抗告の理由は,別紙即時抗告申立書に記載のとおりである。

第2 当裁判所の判断
1 当裁判所は,原審判と異なり,相手方の養育費減額の申立ては理由がないから却下すべきであると判断する。その理由は以下のとおりである。
2 記録によれば,以下の事実が認められる。
(1)抗告人と相手方は,平成15年×月×日,協議離婚をするに際し,相手方が抗告人に対し,養育費として未成年者1人につき月額3万円を支払う旨合意し,相手方は抗告人に対し,離婚から平成16年5月まではこの合意のとおり養育費を支払ったが,その後,養育費の減額を主張し, 平成16年6月からは未成年者1人につき月額2万円を支払うようになった。
(2) この間,相手方は,平成17年×月×日, Fと再婚し,平成18年×月×日,Fの長女であるG(平成7年×月×日生)と養子縁組をした。
(3) 抗告人は,平成18年×月×日,相手方に対し,養育費として未成年者1人につき月額3万円を支払うことを求めて別件調停を申し立てた。相手方は,未成年者l人につき月額2万円を支払うことを主張したが,平成18年6月×日,ア相手方は未成年者1人につき月額2万2000円を平成18年6月から未成年者らがそれぞれ成年に達する月まで毎月末日限り支払うこと,ィ相手方が未成年者ら3人の養育費として,離婚後平成16年5月まで月額9万円,平成16年6月から平成18年5月まで月額6万円を支払ったことを確認すること,ウ抗告人が相手方に対し,相手方の実家を介して未成年者らに連絡を取ることを認めること、以上を内容とする調停が成立した。
この調停の際,当事者双方から各自の平成17年分の所得税の確定申告書が提出され,これらの収入を養育費算定の基礎収入とした上で話合いが行われた。相手方は,調停成立時において,当時仕事に使用していた自己所有のトラックを買い換えるか,又は会社からトラックをレンタルで借りるかしなければならないという事情を認識していた。
(4) 相手方は,平成18年9月から仕事に使用するトラックをレンタルで借りるようになり, レンタル料として月額10万5000円を支払うようになった。
(5) 相手方は,平成18年8月分の養育費の支払を怠ったため,抗告人は履行勧告の申出をし,相手方は,平成18年9月×日に8月分の養育費を支払った。相手方は平成18年9月分の養育費について別件調停における合意額の半額しか支払わなかったため,抗告人は,再び履行勧告の申出をしたが,相手方が上記のレンタル料の支払等を理由にこれに応じなかったため,抗告人は,相手方の財産に対して強制執行をした。
(6) 相手方は,平成18年12月×日,養育費減額の調停(以下「本件調停」という。)を申し立て,減額の理由として,借金の返済が多くなったこと,税金も未払になっていること, トラックのレンタル料を支払うようになったことを挙げた。
(7) 別件調停において相手方が提出した平成17年分の所得税の確定申告書及び所得税青色申告決算書によれば,相手方の収入は671万9243円であり,経費242万9361円及び青色申告控除10万円を差し引いた所得金額は418万9882円であった。この金額から社会保険料控除6万3200円,生命保険料控除5万円,損害保険料控除3000円,配偶者控除38万円,扶養控除38万円,基礎控除38万円を差し引いた結果,課税される所得金額は293万3000円であった。本件調停において相手方が提出した平成18年分の所得税の確定申告書及び所得税青色申告決算書によれば,相手方の収入は680万4411円で,ここから経費376万6657円及び青色申告控除10万円を差し引いた所得金額は293万7754円であった。この金額から社会保険料控除82万1500円,生命保険料控除5万円,損害保険料控除3000円,配偶者控除38万円,扶養控除38万円,基礎控除38万円を差し引いた結果、課税される所得金額は92万3000円であった。
3 (1)上記2の事実によれば,相手方の平成18年の課税される所得金額は平成17年の課税される所得金額と比較して.収入が約10万円増加し,経費が約134万円,社会保険料が約76万円増加したことから,合計で約200万円減少したことが認められ,それに伴って養育費の算定の基礎となる相手方の総収入も減少したことが認められる。そして,この総収入の減少の原因となった経費の増加は月額10万5000円のトラックのレンタル料の支払によるものであり,社会保険料の増加は婚姻と養子縁組によるものであると認められる。
(2) しかし,上記のとおり,別件調停の成立時において,相手方は既に再婚し,再婚相手の長女と養子縁組をしており,当時仕事に使用していた自己所有のトラックを買い換えるか又は会社からトラックをレンタルで借りるかしなければならないという事情を認識していたのであるから, トラックを利用した事業者というべき相手方としては, レンタル料がいくらであるかは重大な関心事であり, レンタル料の額,ひいては(1)の総収入の減少についても相手方は具体的に認識していたか,少なくとも十分予測可能であったというべきである。なお,原審判は,その理由として,収入減少の程度が大きく予想できた減収の範囲を超えていることを掲げているが,関係記録によっても,相手方がどの程度の減収を予想していたかなどを含め上記事情を認めるに足りる証拠はないといわざるを得ない。また,相手方の本件調停の申立書によれば,相手方が別件調停で定められた養育費の支払をしばしば怠っている理由は, トラックのレンタル料の支払のみではなく,それ以外の借金や税金の滞納にもよるのであって,これらの点について,相手方において別件調停の成立時に予測不能であったと認めるに足りる証拠はない。しかも相手方は, トラックのレンタル料の支払が必要になった平成18年9月に先立つ平成18年8月の段階で、養育費の支払を遅滞し始めているのであって,相手方が養育費の支払をしない理由は,必ずしもトラックのレンタル料の支払のみであるとはいえない。
(3) 調停は当事者双方の話合いの結果調停委員会の関与の下で成立し,調停調書の記載は確定判決と同ーの効力を有するのであるから,その内容は最大限尊重されなければならず,調停の当時,当事者に予測不能であったことが後に生じた場合に限り,これを事情の変更と評価して調停の内容を変更することが認められるものであるところ,上記の事情に照らすと,相手方の収入の減少は相手方に予測可能であって,これをもって養育費を減額すべき事情の変更ということはできない。したがって,その余について判断するまでもなく,相手方の養育費の減額の申立ては理由がない。
第3 結論
よって、原審判は相当ではないからこれを取り消すこととし,当裁判所として審判に代わる裁判をすることが相当であるから,主文のとおり決定する。(裁判長裁判官安倍嘉人裁判官片山良広後藤健)

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業務上横領被告事件

被告人3名の弁護人○○○○、同○○○○の上告趣意のうち、憲法違反をいう点は,実質は単なる法令違反の主張であり,判例違反をいう点は,原判決は刑法244条所定の親族の範囲につき民法の定めるところと異なる判示をしたものではないから,所論は前提を欠き,その余は単なる法令違反の主張であって,刑訴法405条の上告理由に当たらない。なお,所論にかんがみ,被告人Aの業務上横領罪について,職権で判断する(以下,同被告人を,単に「被告人」という。)。
1 本件は,家庭裁判所から選任された未成年後見人である被告人が,共犯者2名と共謀の上,後見の事務として業務上預かり保管中の未成年被後見人の貯金を引き出して横領したという業務上横領の事案であるところ,所論は,被告人は,未成年被後見人の祖母であるから,刑法255条が準用する同法244条1項により刑を免除すべきであると主張する。
2 しかしながら,刑法255条が準用する同法244条l項は,親族間の一定の財産犯罪については,国家が刑罰権の行使を差し控え,親族間の自律にゆだねる方が望ましいという政策的な考慮に基づき,その犯人の処罰につき特例を設けたにすぎず,その犯罪の成立を否定したものではない(最高裁昭和25年(れ)第1284号同年12月12日第三小法廷判決・刑集4巻12号2543頁参照)。一方,家庭裁判所から選任された未成年後見人は,未成年被後見人の財産を管理し,その財産に関する法律行為について未成年被後見人を代表するが(民法859条1項)、その権限の行使に当たっては,未成年被後見人と親族関係にあるか否かを問わず,善良な管理者の注意をもって事務を処理する義務を負い(同法869条, 644条),家庭裁判所の監督を受ける(同法863条)。また,家庭裁判所は,未成年後見人に不正な行為等後見の任務に適しない事由があるときは,職権でもこれを解任することができる(同法846条)。このように,民法上,未成年後見人は,未成年被後見人と親族関係にあるか否かの区別なく,等しく未成年被後見人のためにその財産を誠実に管理すべき法律上の義務を負っていることは明らかである。そうすると,未成年後見人の後見の事務は公的性格を有するものであって,家庭裁判所から選任された未成年後見人が,業務上占有する未成年被後見人所有の財物を横領した場合に,上記のような趣旨で定められた刑法244条1項を準用して刑法上の処罰を免れるものと解する余地はないというべきである。したがって,本件に同条項の準用はなく,被告人の刑は免除されないとした原判決の結論は,正当として是認することができる。よって,刑訴法414条, 386条1項3号により,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり決定する。(裁判長裁判官甲斐中辰夫裁判官横尾和子泉徳治才口千晴涌井紀夫)

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遺留分減殺、建物明渡等請求事件

上告代理人○○○○の上告受理申立て理由について

l 本件は,Aの相続について,遺留分権利者である上告人らが, Aからその遺産を遺贈された被上告人らに対し,民法1041条l項に基づく価額弁償として,弁償金及びこれに対する相続開始の日から支払済みまでの遅延損害金の支払を求める事案であり,その遅延損害金の起算日はいつであるのかが争われている。
2 原審が適法に確定した事実関係の概要等は次のとおりである。
(1) A (大正13年×月×日生)は,平成8年×月×日に死亡した。その法定相続人は,妻であるB,実子である上告人Xl,被上告人Y1及び被上告人Y2並びに養子である上告人X2及びCである。
(2) Aの相続について,上告人X2及び上告人X1の遺留分は各20分の1である。
(3) Aは, ○○法務局所属公証人作成に係る平成7年第xx号公正証書により,第1審判決別紙遺産目録1ないし2記載のとおり, Aの遺産を被上告人ら及びBにそれぞれ相続させる旨の遺言をした。
(4) 上告人らは,平成8年8月18日,被上告人ら及びBに対して遺留分減殺請求権を行使し, 被上告人ら及びBがAから前記公正証書遺言により取得した遺産につき,それぞれその20分のlに相当する部分を返還するように求めた。

(5) 上告人らは,平成9年11月19日に本訴を提起し,遺留分減殺を原因とする不動産の持分移転登記手続等を求めたところ,被上告人Y2は平成15年8月5日,被上告人Y1は平成16年2月27日,それぞれ第1審の弁論準備手続期日において上告人らに対し価額弁償をする旨の意思表示をした。これに対し,上告人らは,平成16年7月16日の第1審の口頭弁論期日において,訴えを交換的に変更して価額弁償請求権に基づく金員の支払を求めるとともに,その附帯諦求として,相続開始の日である平成8年×月×日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた。
3(1) 第1審は,上告人らの価額弁償請求を一部認容したが,その附帯請求については,上告人らが被上告人らに対して遺留分減殺請求をした日の翌日である平成8年8月19日から支払済みまでの遅延損害金の支払を求める限度で認容した。
(2) 原審は,次のとおり判示して,第1審判決を変更し,上告人らによる価額弁償請求に係る附帯請求について,判決確定の日の翌日から支払済みまでの遅延損害金の支払を求める限度で認容すべきものとした。
特定物の遺贈につき履行がされた場合に、民法1041条の規定により受遺者が遺贈の目的の返還義務を免れるためには,単に価額の弁償をすべき旨の意思表示をしただけでは足りず,価額の弁償を現実に履行するか又はその履行の提供をしなければならない(最高裁昭和53年同第907号同54年7月10日第三小法廷判決・民集33巻5号562頁)。もっとも,遺留分減殺請求をした遺留分権利者が遺贈の目的である不動産の持分移転登記手続を求める訴訟において,受遺者が,事実審口頭弁論終結前に,裁判所が定めた価額により民法1041条1項の規定による価額の弁償をする旨の意思表示をした場合には,裁判所は,同訴訟の事実審口頭弁論終結時を算定の基準時として弁償すべき額を定めた上,受遺者がその額を支払わなかったことを条件として,遺留分権利者の請求を認容すべきものである(最高裁平成6年同第1746号同9年2月25日第三小法廷判決・民集51巻2号448頁)。そして,この理は,本件のように,受遺者が民法1041条所定の価額の弁償をする旨の意思表示をしたのに対し,遺留分権利者が訴えを変更してその弁償金の支払を求めるに至った場合においても異なるものではなく、遺留分権利者の訴えの変更によって受遺者のした意思表示の内容又は性質が変容するものとみることはできないから,遺留分権利者は.裁判所が受遺者に対し民法1041条の規定による価額を定めてその支払を命じることによって初めて受遺者に対する弁償すべき価額に相当する額の金銭の支払を求める権利を取得するものというべきである。したがって,上告人らの遅延損害金の請求は,本判決確定の日の翌日以降の支払を求める限度で理由がある。
4 しかしながら,原審の上記判断は是認することができない。その理由は,次のとおりである。
(1) 受遺者が遺留分権利者から遺留分減殺に基づく目的物の現物返還請求を受け,遺贈の目的の価額について履行の提供をした場合には,当該受遺者は目的物の返還義務を免れ,他方,当該遺留分権利者は,受遺者に対し,弁償すべき価額に相当する金銭の支払を求める権利を取得すると解される(前掲最高裁昭和54年7月10日第三小法廷判決,前掲最高裁平成9年2月25日第三小法廷判決参照)。また,上記受遺者が遺贈の目的の価額について履行の提供をしていない場合であっても,遺留分権利者に対して遺贈の目的の価額を弁償する旨の意思表示をしたときには,遺留分権利者は,受遣者に対し,遺留分減殺に基づく目的物の現物返還請求権を行使することもできるし,それに代わる価額弁償請求権を行使することもできると解される(最高裁昭和50年同第920号同51年8月30日第二小法廷判決・民集30巻7号768頁,前掲最高裁平成9年2月25日第三小法廷判決参照)。そして,上記遺留分権利者が受遺者に対して価額弁償を請求する権利を行使する旨の意思表示をした場合には,当該遺留分権利者は,遺留分減殺によって取得した目的物の所有権及び所有権に基づく現物返還請求権をさかのぼって失い,これに代わる価額弁償請求権を確定的に取得すると解するのが相当である。したがって,受遺者は,遺留分権利者が受遺者に対して価額弁償を請求する権利を行使する旨の意思表示をした時点で,遺留分権利者に対し.適正な遺贈の目的の価額を弁償すべき義務を負うというべきであり,同価額が最終的には裁判所によって事実審口頭弁論終結時を基準として定められることになっても(前掲最高裁昭和51年8月30日第二小法廷判決参照).同義務の発生時点が事実審口頭弁論終結時となるものではない。そうすると,民法1041条1項に基づく価額弁償請求に係る遅延損害金の起算日は,上記のとおり遺留分権利者が価額弁償請求権を確定的に取得し,かつ,受遺者に対し弁償金の支払を請求した日の翌日ということになる。
(2) これを本件についてみると,前記事実関係等によれば,遺留分権利者である上告人らは,被上告人らがそれぞれ価額弁償をする旨の意思表示をした後である平成16年7月16日の第1審口頭弁論期日において,訴えを交換的に変更して価額弁償請求権に基づく金員の支払を求めることとしたのであり,この訴えの変更により,被上告人らに対し,価額弁償請求権を確定的に取得し,かつ,弁償金の支払を請求したものというべきである。そうすると,上告人らは,被上告人らに対し,上記価額弁償請求権について,訴えの変更をした日の翌日である同月17日から支払済みまでの遅延損害金の支払を請求することができる。
5 以上と異なる原審の判断には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。論旨は,上記の趣旨をいうものとして理由があり,原判決のうち,価額弁償請求に係る遅延損害金について上記訴えの変更をした日の翌日から判決確定の日までの請求を棄却した部分は破棄を免れない。そして, 上告人らの価額弁償請求は,被上告人らに対して各弁償金及びこれに対する訴えの変更をした日の翌日である平成16年7月17日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があり,その余は理由がないから,原判決のうち遺留分減殺請求に係る部分を主文第1項のとおり変更すべきである。よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。(裁判長裁判官泉徳治裁判官横尾和子甲斐中辰夫才口千晴涌井紀夫)

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2012年2月25日 | コメント/トラックバック(0) |

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間接強制申立事件

第1 申立ての要旨

債務者は,債権者に対し, 広島家庭裁判所平成16年岡第xx号子の養育費申立事件の執行力ある審判正本に基づいて,未成年者の養育費として,平成15年8月から未成年者が満20歳に達する日の属する月まで,毎月末日限り5万円を支払うべき債務を有しているが,債務者は平成19年1月以降, 同債務を履行しない。

よって,債務者は,債権者に対し,本件申立てを認容する決定の送達を受けた日から10日以内に下記(1)ないし(3)(但し,下記(2)の金員のうち, この期間内に弁済期が到来しない部分については,それぞれ弁済期が経過するまでに)の金員を支払わないときは,各支払期限の翌日から支払済みまで相当な金員を支払う旨の決定を求める。

(1) 平成19年1月分から同年10月分の合計50万円

(2) 同年11月分から平成20年4月まで毎月末日限り5万円

(3)執行費用

第2 当裁判所の判断

1 一件記録(当庁平成16年俸)第xx号子の養育費申立事件の記録を含む。)によれば,次の事実が認められる。

(1)債権者と債務者は婚姻し,平成11年×月×日未成年者をもうけたが,同年×月×日,未成年者の親権者を債権者と定めて協議離婚した。

債権者は,平成15年8月×日,債務者に対して,養育費の支払を求める調停を申し立てたが(当庁同年(家イ)第xxx号子の養育費調停申立事件).平成16年2月×日,同調停事件は不成立となって審判に移行した。当庁は,債務者が株式会社00に勤務し平成15年分の給与収入として724万7360円を得ていること等を認定して,同年3月×日,平成15年8月から平成16年2月までの未払分35万円を直ちに,同年3月から未成年者が満20歳に達する自の属する月まで,毎月末日限り5万円の支払を命じる旨の審判をし(当庁平成16年岡第xx号,以下「本件審判」という。)同審判は同年3月×日債務者に対して送達がなされ、同年4月×日確定した。

(2) その後,債権者は,債務者が平成19年1月以降の養育費の支払をしないと主張して,同年3月×日,当庁に対して履行勧告の申立てをしたが,債務者は全く回答しなかった。

そこで,債権者は,同年3月×日,本件を申し立てたが,債務者は,当庁からの審尋に対して何らの主張立証をしない。

2 ところで,養育費の間接強制について、「債務者が支払能力を欠くためにその金銭債権に係る債務を弁済することができないとき,又はその債務を弁済することによってその生活が著しく窮迫するとき」はできないものとされ(民事執行法167条の15第l項ただし書)、それらの事実は債務者が主張立証すべきであるが,債務者は,当庁の審尋に対して何らの主張立証をしない。

3 そして,間接強制金の金額については,債務の性質,不履行によって債権者が受けるべき不利益,債務者の資力,従前の債務の履行の態様を特に考慮して定めるべきところ(同法167条の15第2項)、債務の性質が養育費であること,債務者は,本件審判時,年額724万7360円の給与収入を得ていたこと,債務者は,平成18年12月までは支払をしていたが,その後、10か月間にわたって不履行を続けていること等を考慮し. 1日当たり1000円と定めることとする。

但し,間接強制金の累積によって債務者に過酷な状況が生じるおそれがあることから,間接強制金の支払を命じる限度を,平成19年1月から同年10月までの提育費については180日間,同年11月以降の養育費については各月ごとに30日間と限定することとする。

よって,主文のとおり決定する。(裁判官佐藤道恵)

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2012年2月21日 | コメント/トラックバック(0) |

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