間接強制申立事件

1 申立ての趣旨

1 債務者は,当裁判所平成8年(家イ)第xx号婚姻費用分担調停事件の執行力ある調停調書正本に基づいて,債権者に対し,平成18年4月分以降の未払婚姻費用を平成18年11月17日までに支払え。

2 債務者は,前項の期間内にこれを履行しないときは,債権者に対し,履行期限の翌日から履行に至るまで1日当たり5万円を支払え。

Ⅱ 当裁判所の判断

1 事実経過

一件記録によれば,次の事実が認められる。

i債権者(昭和42年×月×日生)と債務者(昭和43年×月×日生)は,平成2年×月×日に婚姻の届出をし,同年×月×日に長女Cが,平成7年×月×日に長男Dが,それぞれ生まれた。

ⅱしかし,その後,債権者と債務者は不仲となり,債権者は、2人の未成年者を連れて債務者と別居するようになり,当裁判所に婚姻費用分担の調停を申し立てた(平成8年(家イ)第xx号婚姻費用分担調停事件)。

そして,上記調停事件について,平成10年2月×日,下記内容の調停が成立した。

①相手方(本件債務者)は,申立人(本件債権者)に対し,婚姻費用の分担として,平成10年2月から、1か月20万円を,毎月翌月の5日限り,申立人名義の郵便貯金口座に振り込む方法で支払う。

② 相手方の収入が50万円未満に減少した場合は,相手方は,申立人に対し,前項記載の金員に代えて,相手方の収入の40パーセントに相当する金員を,前項と同様の方法で支払う。但し,相手方の収入の40パーセントに相当する金額が12万円に満たない場合には、12万円を前項と同様の方法で支払う。相手方が, 前項記載の金員の支払の額を本項によって減じようとする場合には,給与明細及び預金通帳の写しを添付して申立人に対し通知することを要する。

③ 申立人は,相手方に対し,婚姻継続中は,第l項及び前項記載の金員以外.子供の入学金等の請求はしない。

iii上記調停成立後,債務者から債権者に対し,上記調停条項の①項に従った婚姻費用分担金の入金がされていたが,平成14年の暮れころか平成15年の年明けころに,債務者から,債権者に対し,収入が減ったので支払額を12万円にする旨が伝えられ,債権者も,異議を唱えるよりは,支払ってくれるという金額を確保した方がよいと考え,特に給与明細等の提示を要求することなく,これを受け入れた。

ⅳこの月額12万円の婚姻費用分担金は平成18年3月の支払分まで滞りなく支払がされていたが,同年4月の支払分以降,全額について支払がされなくなったため,債権者は,同年6月,当裁判所に対し履行勧告の申出をし,当裁判所は債務者に対し履行勧告を行ったが,履行はされず,結局,平成18年4月支払分以降の婚姻費用分担金の支払がされないまま経過したことから,債権者は,本件間接強制の申立てをするに至った。

v 当裁判所は.債務者が遠方に居住していることから,債務者に対し,まず書面による審尋を行い,期限を定めてその意見を求めたが,これに対する回答はなく,その後も何の連絡もない。

2 検討

i上記の事実経過よりすれば,債務者において,上記調停の調停条項に基づいて債権者に支払うべき平成18年4月支払分以降の婚姻費用分担金は月額12万円であると認めるのが相当である。

したがって、本件間接強制申立てにおいて債権者が支払を求めている婚姻費用分担金の未払額の合計は,平成18年4月5日支払分から平成19年1月5日支払分までの合計120万円となる。

ⅱ 次に,債務者が上記婚姻費用分担金の未払額合計120万円を本決定で定める期限までに支払わなかった場合に,これに付加して支払うことを命じるべき間接強制金の額及びその支払を命じる態様について検討する。

債権者は,これまで債務者から月額12万円の婚姻費用分担金の支払がされることを前提として、2人の未成年者を育てながら生計を維持してきたのであって,この婚姻費用分担金の支払がされない場合においては,生活が困窮するなど大きな不利益を蒙ることが明らかである。他方,債務者は,平成10年2月の上記調停成立後,月額12万円への減額はあったものの、平成18年3月支払分までは婚姻費用分担金の支払を継続してきたにもかかわらず,同年4月支払分からはその全額の支払をしなくなったところ,これについては,同年3月下旬ころ,離婚問題を巡って債務者と債権者が電話で喧嘩をしてしまったことが直接の契機となった,主として感情的な要因によるものと窺われるのであって,債務者の支払能力ないし資力等の状況に大きな変化があったことによるものではないと窺われるのである。

これらの事情を総合検討すると,債務者が婚姻費用分担金の未払額合計120万円を本決定で定める期限までに支払わなかった場合に,これに付加して支払うことを命じるべき間接強制金としては,直ちに支払うべき金銭として、24万円(これは,未払婚姻費用分担金合計額の2割に相当する金額である。)を定めるとともに,支払の遅滞の期間に応じてさらに付加すべき金銭として、4か月の期間の限度で、 1日当たり2000円(これは,債務者の支払うべき婚姻費用分担額月額12万円を.、1か月を30日として計算した場合の日額である4000円の、 5割に相当する金額である。)を定めるのが相当である。

iii したがって,本件間接強制申立ては, 上記の範囲で認容すべきものである。

3 結論

そこで,主文のとおり決定する。(裁判官川勝隆之)

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