婚姻費用分担に対する即時抗告事件

1 本件抗告の趣旨及び理由は,別紙「即時抗告申立容」(写し)のとおりであり,これに対する相手方の意見は,別紙「意見芯」(写し)のとおりである。
2 当裁判所は,相手方の本件申立ては理由がないと判断する。その理由は,次のとおり補正するほかは原審判「理由」欄の「第2 当裁判所の判断」に記載のとおりであるから,これを引用する。
(1) 原審判1頁23行自の「名義」を「持分」と,同頁24行自の「母親の所有」を「相手方とその母親の共有(持分は各2分の1)」とそれぞれ改める。
(2) 同2頁18行自の「預金を持ち出しておりJを「共有財産たる約700万円の預金を持ち出しており,その中から引越費用,住宅ローン(年2回のボーナス月は19万3533円,その他の月は6万1924円)の支払を行ったため」 と改める。
(3) 同3頁18行自の「しかるに」から同頁25行自の末尾までを次のとおり改める。
「ところで,相手方は,原審判がされた平成16年2月6日時点で抗告人と相手方の共有財産である約550万円の預金を管理しているのであるから,相手方の生活費に充てるためにいつでもこれを払い戻すことができる状態にあるということができる。そして,本件記録によれば,抗告人も相手方が上記預金から払戻しを受けて生活費に充てることを容認していることが認められる。このように,相手方が共有財産である預金を持ち出し,これを払い戻して生活費に充てることができる状態にあり,抗告人もこれを容認しているにもかかわらず,さらに抗告人に婚姻費用の分担を命じることは,抗告人に酷な結果を招くものといわざるを得ず,上記預金から住宅ローンの支払に充てられる部分を除いた額の少なくとも2分の1は抗告人が相手方に婚姻費用として既に支払い,将来その支払に充てるものとして取り扱うのが当事者の衡平に適うものと解する。相手方は,夫婦共有財産があるとしても,それは離婚時に清算すべきもので,抗告人の婚姻費用分担義務はなくならない旨主張するところ,確かに,夫婦共有財産は最終的には離婚時に清算されるべきものではあるが,離婚文は別居状態解消までの間,夫婦共有財産が婚姻費用の支払に充てられた場合には,その充てられた額をも考慮、して清算すれば足りることであるから,相手方の主張は理由がない。しかして,平成16年2月6日時点で相手方が管理している預金約550万円は,相手方が上記預金から住宅ローンを支払っていることを考慮に入れても,相手方が請求する平成15年11月分から現在までの月7万円の婚姻費用の分担額を優に賄うに足りるものであるし,当分の聞は抗告人が負担すべき婚姻費用の分担額に充て得るものである。したがって,現時点においては,抗告人には婚姻費用分担義務はないというべきであるから,相手方の本件申立ては理由がない。」
3 よって,原審判は不当であるからこれを取り消して相手方の本件申立てを却下することとし,主文のとおり決定する。(裁判長裁判官 坂本慶一 裁判官 北津晶 石橋俊一)

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