遺留分減殺請求事件
上告代理人0000ほかの上告受理申立て理由第2について
l 本件は.被上告人が,亡Aがその遺産の多くを上告人に相続させる旨の遺言をしたことにより.Aの養子である被上告人の遺留分が侵害されたと主張して.上告人に対し民法1041粂l項に基づく価額の弁償及び遅延損害金の支払を求める事案である。
2 原審の適誌に確定した事実関係の概要は.次のとおりである。
(1) Aは,大正6年9月17日.Bとの聞で.同人を養親とする養子縁組をし同人が戸主である家(以下iB家Jという。) に入か大正8年6月8日.同人の死亡によりその家督を相続した。
(2) 被上告人は.昭和14年8月30日実姉であるAとの聞で同人を養親とする養子縁組をした。
(3) Aは,同年11月2日隠居した上.同月29日.Cと婚姻してB家を去った。
(4) Aは,平成10年11月17日長男である上告人にAの遺産の多くを相続させることなどを内容とする公正証住造言をした。
(5) Aは.平成15年5月24日死亡した。
(6)被上告人は,平成16年5月13日,上告人に対し遺留分減殺の意思表示をした。
3 原審は.上記事実関係の下において.被上告人がAの盛子であることを前提として被上告への上記意思表示による遺留分減殺の効果を認め,被上告人の請求を一部認容した。
4 しかしながら.原審の上記判断は是認することができない。その迎由は.次のとおりである。.昭和22年法律第222号による改正前の民法730粂2項は.i養親カ養家ヲ去リタルトキハ其者…ト聾子トノ親抜関係ハ之二国リテ止ムjと定めるところ.養親自身が婚姻又は養子縁組によってその家に入った者である場・合に.その養親が養家を去ったときは. この規定の定める場合に該当すると解すべきである(最高裁昭和42年(オ)第203号同43年7月16日第三小法廷判決・裁判集民事91号721頁参照)。前記事実関係によれば.Aは.Bとの養子縁組によりB家に入った者であって,被上告人と養子縁組をした後.Cと婚姻してB家を去ったというのであり.Aの去家により. 同項に基づき.Aと被上告人との養親子関係は消滅したものというべきである。
5以上と異なり,被上告人がAの養子であるととを前提として被上告人の前記意思表示による遺留分減殺の効果を認めた原審の判断には.判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。 論旨は理由があり,以上説示したとこ 原判決中上告人敗訴部分は破棄を免れない。そして.ろによれば.被上告人の請求を棄却した第 l 審判決は結論において正当上記部分につき.被上告人の控訴を棄却すべきである。裁判官全員一致の意見で,であるから主文のとおり判決する。(裁判長 よって.竹内行夫) 古田佑紀 中川了滋 裁判官 功 今井 裁判官
上告人の上告受理申立て理由
(中略)
第 2 原審が法定相続人でない者に遺留沿を認めた点について
1原判決の判示内容
原判決は,本件の被相続人たる亡Aと遺留分請求者である相手方とl の相続関係について,相手方が亡Aの法定相続人である こと を前提に「控訴人(相手方) の亡Aに対する相続権は,戦後の相続法の改正によっこれを軽々に否定 民法が認める効果であって,する ことができない。 Jと述べる。て生じたものであり,この判断は.相手方を亡Aの法定相続人として相続権をそしかし認めている点で旧民法730 条 2 項の解釈適用を誤ったものであり .の点で,法令の解釈にl 刻する重要な事項について誤りがある。その理由を以下に述べる。旧民法(明治民法)の養子制度の概要申立人の主張) – ( 2 「家」は,戸主と家. 族から構成されに記載され,同じ「家Jに属するか否かは,その「家Jの戸籍に記載されているか否かにより定まつ手。当時の戸籍は.r 家Jの構成員は現在のように二世代に限られず.r 家Jの構成員すべてがひと戸主を中心とした 「 家J制度のひとつの家はひとつの戸籍旧民法の親族・相続法の目的は,維持で、あった。.つの戸籍に記載され,制度的に「家Jと戸籍は完全に一致していた。そして 「家」の中心的存戸である戸主には. r 家」の統宇者として戸主権が与えられ.家族に対する扶養の義務を負担するとともに,家族の婚姻・養子縁組に対する同意権や家族の居所指定権を有し.戸主の同意なしに居所を定めた家族や婚姻 ・ 養子縁組をした家族に「家」の戸籍から離籍させることすらできる権限を有し 対してはていた。この戸主の地位は家督相続により承継され. そじて. これによっ家の再興等て「家」が存続することが予定されていた。一旦戸主となった者は,本家を継承するとか. また.もとの 「 家Jを離脱して家を廃する ( 元 の正当な理由がなければの家すなわち戸籍を消滅させる) ことは許されていなかった(ただし戸主が自分で家を興した場合は別。 ) 。戸主が結婚のために他家に入ることも許されず,家督相続人がいない場合は養子をとるな戸主の地位を譲るために裁判所 どして家督相続人を定めたうえで,の許可を得て隠居しなければできなかったのである。このように旧民法は. r 家Jの存続を至上命題としており,これに資するためのもの‘であった。当然,法定の推定家督相続人である男子がある者は,男子を養子とするこたとえば,①他家の家督承継者を奪うことを防止する趣旨から.養子縁組制度は,とは禁止され, ・②家の存続を容易にす7るため遺言による養子縁組を可能にしていた。また.このような家制度のもとでは,異なる家に所属している者の間で養親子関係が成立あるいは存続することはなく, 家を異にした場合は.当然に養親子関係は消滅するものとされていた。この点は改正後民法が家制度を廃止して.夫婦とその間の子という新しい家族関係を前提とした統しい養子制度理念とは,基本的に制度目的を異にするのである。
(2) 旧民法730条2項の内容及び立法趣旨!日民法730粂2項は,「養親が養家を去りたるときは其の者及び其実方の血族と養子との親族関係は之に因りて止むJ. 同3項は.r養子の配偶者,直系卑属又は其の配偶者が養子の離縁に因りて之と共に養家を去りたるときは其の者と差養E親及び之に因りて止む」と規定している。ここで「養家を去りたる」とはー養家の戸籍から離れることであり, これを「去家Jという。参考のためにまず第3項を説明すると. 離縁しでも.養子の配偶者.直系卑属またはその配偶者が,当該養子に追随して養家を去る場合(随伴去家という)は. それら去家する者と養親お£びそのi血族との親族関係も消滅するという意味である。旧民法では.いったん養子にともなつで「家Jの構成員となった場合は,その者を保護する見地から, 原則としてその意思に反して「家Jの構成員たる地位を奪われることはなく, 養子に従って去家するのた養子と雌婚するなどして「家Jにとどまるのかを選択することができる。しかし養子の配偶者.直系卑属またはその配偶者が,養子とも|姐伴去家して.他家に帰属することを選択した場合は,養家どの親族関係は全て終了することになっていたのである。これもまさに旧民法の家制度の現れであってきには説明できない規定である占当時の家制度を抜そしてその養親及び養親の実方の血族と養子との親族関係は終了すると規定されている。2項では養親が婚姻等により養家を離脱した場合,同条2項は,養親子関係は,あくまで「家」存続のための制修であるから養親の養家からの離脱の場合に闘から離れて会親子関係を継続させる意味がないために養親及びその実方の血族と養子との親族関係を終了させる趣旨である。これもまさに家制度を象蝕する規定である。
(3)本件の事実経過
本件に関連する嬰実経過の概略は次のとおりである。
大正6年×月×日A (生後約6カ月).Bと養子縁組。実父母たるD’Eが代諾。A. B姓に。
同年9月17日同年11月2日A出生。
大正8年6月8日B死亡。A (2歳)がB家を家督相続。
昭和4年×月×日F出生。(Aの妹,本件相手方
昭和14年8月30日)F (9歳).実姉であるA (22歳)と養子縁組。(本件養子縁組〉実父母たるD’Eが代諾。F B姓』こ。
同年11 月29 日A婚姻のため隠居届出。F がB 家を家督相続。Cと結婚。 A. C 姓に。B 家から離籍。これにより .旧民法によりAとF の相続関係を金皇盟韮関係が消滅。
Gと結婚。G 姓に。F. 今 昭和28 年×月×日A. 00 発症。
平成 9 年×月×日 C 死亡。平成 9年
平成15 年5月24 日A死亡。
旧民法730 条2 項の本件への適用
(4 ) 本件養子縁組の養親たる亡Aは.昭和14 年11 月29 日この事実は.r 養親が養家を去りたるときJ(旧民B 家の戸籍から に亡C と結婚しC の戸籍に入籍することによって除籍されており.したカf って,法730 粂2 項)に該当する。亡Aと養子たる相手方との養親子関係は,昭和 その効果として,14 年11 月29 日に消滅した。民法の改正による本件への影響
( 5 ) 亡Aの去家に この旧民法の去家による養親子関係消滅の効果は,ょっτ 確定的に生じた効果であって, 昭和23 年の民法「親族編J.r 相続編Jの改正によって養親子関係が復活する ものでもない。なぜなら.車rr 法令施行前に生じた事由により旧法令が適用されるその後に成立施行された新法令を適用することは,法律秩序 のにを混乱させ.社会生活を著しく不安定にすることから厳に禁止されそし-hH4 4 時世 -TJ , q 勾『dMU 々 人 み HC づ 基 れ そそのようにj 押さなければ,当時の家制度のもと. ている。また.れなりに首尾一貫した法制度が確立し過去ピ消滅した養親子 ていたにもかかわらず.民法の改正により . 関係が突如として復活することになってしまうからである。本件についていえば,そもそも家制度を前提として.戸主である亡Aが結婚してC 家に入ろうとすれば隠居するほかなく. そのためべき者を定め7 その承認を得る必要があった ( 1 日法75 4 条 l 項 753 条)。 その場合には,家督相続人候補者と養子縁組をするのが当然には,法定の家督相続人がいない場合はあらかじめ家督相続人たるの前ゃあり 本件もそのようなスキームにしたがい 養子縁組をして隠居することによって.B 家に新たなる戸主を得て 家督が相亡AがB家を去ったことによって養親子関係は存続の意味がなく当然に消滅したのである。これは主に亡Aと相手方の両.親が主導して行ったものではあるが,亡Aらの両親も明治民法の法制下でその概要は認識して行動し当時の民法にしたが:っ 亡Aが結婚すればその時点で相手方との護親子関係が消滅することを認識してい て,たはずであか亡Aの嫁ぎ先であるC 家の財産について相手方が相続上の権利主張をすることなとe 予想だにしなかったはずである。ま続されたが故に.亡Aカ沼家から去ったのである。そして.ていたのであるから本刊二縁組があくまでB家の存続のために その認識及び期待はなされたものであり.亡Aと相手方を親子とすることは意図していた.なかったこ・ ととも一致すぶものである。現行の家族法は,戦後.アメリカの占領政策と新憲法の成立によって,新しい家族制度の導入が必要であったため制定されたものであるが・現行家族法は,旧民法と同一性をもった法律であり・特別に旧民法の適用を排除し現行民法を遡友 して適用するなどの特別の経過措置規定がない限ι過去に一度発生した旧民法の効力を否定
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2012年2月26日 | コメント/トラックバック(0) |
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預金取引記録開示請求事件
上告代理人○○○○, 同○○○○.同○○○○の上告受理申立て理由について
1 本件は,被相続人である預金者が死亡し,その共同相続人の一人である被上告人が,被相続人が預金契約を締結していた信用金庫である上告人に対し,預金契約に基づき,被相続人名義の預金口座における取引経過の開示を求める事案である。
2 原審の適法に確定した事実関係の概要等は,次のとおりである。
(1) Aは被上告人の父であり, Bは被上告人の母である。Aは平成17年11月9日に, Bは平成18年5月28日に,それぞれ死亡した。被上告人はA及びBの共同相続人の一人である。
(2) 平成17年11月9日当時, Aは上告人a支屈において1ロの普通預金口座と11口の定期預金口座を有しており, Bは同支庖において1ロの普通預金口座と2口の定期預金口座を有していた。
(3) 被上告人は,上告人に対し,A名義の上記各預金口座につき平成17年11月8日及び同月9日における取引経過の開示を, B名義の・上記各預金口座につき同日から平成18年2月15日までの取引経過の開示を,それぞれ求めたが,上告人は,他の共同相続人全員の同意がないとしてこれに応じない。
3 預金契約は,預金者が金融機関に金銭の保管を委託し,金融機関は預金者に同種,同額の金銭を返還する義務を負うことを内容とするものであるから,消費寄託の性質を有するものである。しかし,預金契約に基づいて金融機関の処理すべき事務には,預金の返還だけでなく,振込入金の受入れ,各種料金の自動支払,利息の入金,定期預金の自動継続処理等,委任事務ないし準委任事務(以下「委任事務等」という。)の性質を有するものも多く含まれている。委任契約や準委任契約におい仏,受任者は委任者の求めに応じて委任事務等の処理の状況を報告すべき義務を負うが(民法645条, 656条),これは,委任者にとって,委任事務等の処理状況を正確に把握するとともに,受任者の事務処理の適切さについて判断するためには,受任者から適宜上記報告を受けることが必要不可欠であるためと解される。このことは預金契約において金融機関が処理すべき事務についても同様であり,預金口座の取引経過は.預金契約に基づく金融機関の事務処理を反映したものであるから,預金者にとって,その開示を受けることが,預金の増減とその原因等について正確に把握するとともに,金融機関の事務処理の適切さについて判断するために必要不可欠であるとし、うことができる。したがって,金融機関は,預金契約に基づき,預金者の求めに応じて預金口座の取引経過を開示すべき義務を負うと解するのが相当である。そして,預金者が死亡した場合,その共同相続人の一人は,預金債権の一部を相続により取得するにとどまるが,これとは別に,共同相続人全員に帰属する預金契約上の地位に基づき,被相続人名義の預金口座についてその取引経過の開示を求める権利を単独で・行使することができる(同法264条,252条ただし書) というべきであり,他の共同相続人全員の同意がないことは上記権利行使を妨げる理由となるものではない。上告人は,共同相続人の一人に被相続人名義の預金口座の取引経過を開示することが預金者のプライバシーを侵害し,金融機関の守秘義務に違反すると主張するが,開示の相手方が共同相続人にとどまる限り,そのような問題が生ずる余地はないというべきである。なお,開示請求の態様,開示を求める対象ないし範囲等によっては,預金口座の取引経過の開示請求が権利の濫用に当たり許されない場合があると考えられるが,被上告人の本訴請求について権利の濫用に当たるような事情はうかがわれない。
4 以上のとおりであるから,被上告人の請求を認容した原審の判断は,結論において是認することができる。論旨は採用することができない。よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。(裁判長裁判官涌井紀夫裁判官甲斐中辰夫泉徳治宮川光治樫井龍子)
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2012年2月26日 | コメント/トラックバック(0) |
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離婚、反訴請求控訴事件、附帯控訴事件
第1 控訴の趣旨等
1 控訴
(1) 本訴ア原判決を取り消す。イ被控訴人の請求を棄却する。
(2) 予備的反訴原判決中,控訴人の予備的反訴に係る部分を次のとおり変更する。「被控訴人は,控訴人に対し.5000万円及びこれに対する本判決確定の日の翌日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。」
2 附帯控訴原判決中,控訴人の予備的反訴に係る部分を次のとおり変更する。「被控訴人は,控訴人に対し. 504万円及びこれに対する本判決確定の日の翌日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。」
第2 事案の概要等
1 前提となる事実は,原判決「事実及び理由」の「第2 事案の概要J1記載のとおりであるから,これを引用する(甲1. 2及び弁論の全趣旨)。
2 被控訴人の主張については,次のとおり付加するほか,原判決「事実及び理由」の「第2 事案の概要J2の(1)ないし(3)記載のとおりであるから, これを引用する。
(1) 原判決は,被控訴人と控訴人の婚姻が破綻した主たる原因は被控訴人にあり,離婚に伴う控訴人の精神的損害を賠償する責任があるとして,被控訴人に慰謝料500万円の支払義務があるとした。しかしながら,本件においては,次に掲げるような事情が存在するものであり,これらの事情に照らせば,破綻の原因となった別居を一方的な被控訴人の違法行為によるものと認定することはできない。ア被控訴人は,長男Cの出生した昭和58年×月から同61年×月までの2年6か月間,実家を離れ,マンションを借りて親子4人で生活し関係改善に努めている。イ被控訴人は,実家を2世帯住宅に改造し,台所,風目, トイレを親世帯と別にして独立した生活ができるように環境を整えた。ウ被控訴人は, 3人の子供に対しては,差別することなく私立の幼稚園に入国させ,父親として行事に参加している。長男Cについては,小学校時代から地元の少年野骨Eチームに入団させ,被控訴人は頻繁に応援に行っていた。エ控訴人は同居生活の中で極めて苛酷な忍従の生活を強いられたかのように主張しているが,親子5人で,昭和62年×月に購入じた00の別荘を春夏秋冬利用して旅行に行っているし,控訴人は,自動車運転免許を取得し,ゴルフ練習場に通ってレッスンを受け,被控訴人や友人とコースに行きコ・ルフを楽しむという生活を享受している。オ控訴人は,平成4年ころから,子供がまだ小さいにもかかわらず,生活のため働かなければならない状況でもないのに,一方的に,口口口に就職して全日勤務の仕事に従事したばかりか,週2, 3回は夜遊びに出かけていた。原判決は,控訴人の現況が被控訴人と比べて経済的状況の差が著しいことも慰謝料判断の事情に加えているが,扶養的財産分与の要否において判断すべき事情であって慰謝料判断の事情とすべきではない。本件離婚は,被控訴人の不貞とか暴力というような原因によるものではなく,婚姻を継続し難い歳月の経過による破綻状態が続いた結果であり,慰謝料請求は棄却されるのが相当である。
(2) 控訴人は,有賀配偶者で・ある被控訴人からの離婚請求を認めることは信義誠実の原則に反し,許されない旨主張する。しかしながら,本件における夫婦関係は既に破綻しており,当事者双方が関係を修復して真撃な意思をもって共同生活を営む意思を確定的に喪失していることは,明らかである。このような夫婦としての実態を欠く婚姻関係を戸籍上だけで存続させることこそ,反倫理的であり,反社会的である。原判決は.離婚によって経済的に苛酷な状況に置かれるであろう控訴人に対する給付として,破綻原因において有責と判断された被控訴人に慰謝料500万円に加えて扶養的財産分与として504万円の支払を命じた。被控訴人は,控訴審において,原判決の認容した離婚給付額1004万円の2割増の金員支払を提示する。
3 控訴人の主彊については,原判決「事実及び理由Jの「第2 事案の概要J3の記載を引用した上(ただし,向3の(2M3)を,後記(1)のとおり改める。),当審における補充主張を,後記(2)のとおり付加する。
(1) 仮に,本件離婚請求が認容された場合の慰謝料,財産分与については,次のとおりである。ア慰謝料控訴人は. 3人の子供との同居を許されず,やむなく別居に至ったが,他方で,被控訴人は,前記のとおりの多大な資産収入がありながら,控訴人や長男Cが生活に困窮して経済的援助を求めても,これを拒絶し,婚姻費用分担の調停が成立するまで何らの金銭的給付をしなかったのであって,控訴人らを悪意で遺棄したものというべきである。控訴人は,被控訴人の提起した本件離婚訴訟に対する対応等が原因で抑うつ状態に陥っているところ,控訴審においても離婚を認容する判決がされた場合には,更に症状が悪化することが懸念される。そして,被控訴人から経済的援助が得られなかったことから所在不明となってしまったCのことでも心労が重なっており,このような状態を作出した主たる原因は,被控訴人が十分な資力を有しながら妻や長男に対して満足のいく経済的援助・財産的給付を拒んでいることにあるのであって,そのことにより,控訴人は,多大な精神的苦痛を被ってし、る。以上の事情に加えて,控訴人の主張立証している一切の事情を脳酌すれば,控訴人の受けた精神的苦痛を慰謝するには4000万円をもって相当というべきであり,内金として1500万円を請求する。イ財産分与fア)控訴人は.現在同居している娘夫婦の社宅を近いうちに退去しなければならなし、ため.CXコ所在のリゾートマンションについては, ローン残額を被控訴人において全額負担した上で,これを財産分与の対象とすべきである。同マンションの現在価格に相当する500万円が分与の対象となる。(イ) そのほか,金地金36万4482円(平成19年11月20日の金地金1g2765円による算定価格).預貯金1347万0786円,生命保険解約返戻金70万円,退職金約135万円が財産分与の対象とされるべきである。(ウ) また,離婚請求が認容されたときは,控訴人は将来の配偶者としての相続権を失い,将来における婚姻費用分担の請求も不可能となり,今後の生活不安が増大することは避けられない。また,長男Cの高校再入学や就職についても被控訴人からの援助を期待できないことから,控訴人において.Cを監護し,その生活を保持させていかなければならない事情もある。他方,被控訴人においては,現在でも時価2億8000万円を下らない土地共有持分を有し,母Dの所有する土地についても近い将来相続により取得する可能性が高く,加えて有限会社cx:xコOの代表者としての収入もある。このような事情を考慮すれば,被控訴人は控訴人に対して.平均余命の範囲である今後20年間の生活費(月額14万円)として3360万円の負担をすべきである。上記の諸事情を考慮すれば,財産分与の額は,少なくとも5448万5268円であるところ,内金として3500万円を請求する。ウ合計額以上のとおり,慰謝料1500万円(4000万円の内金)及び財産分与3500万円(5448万5268円の内金)の合計5000万円を予備的反訴として請求する。(2) 本件は,いわゆる有責配偶者からの離婚請求であるところ, 原判決は,被控訴人からの離婚請求を認めることが,信義誠実に反するとまではし、えないと判断した。しかしながら,本件においては,次に掲げるような事情が存在するものであり,これらの事情に照らせば,有賀配偶者である被控訴人の離婚請求は,信義誠実の原則に反するものであって,これを認めることはできない。ア被控訴人は,長男Cに対して,父親として適切な監護養育をしてこなかった。すなわち, cが生まれっき口蓋裂とし、う障害を負っていたことから,被控訴人は,その母親であるDと一緒になって, cを厭い,十分な食事を与えないなど,他の2人の子供と差別した取り扱いをしてきた。Cが,高校中退後,少年院に収容された際も,被控訴人は,退院後の身元引受人とならず,退院後にCが自宅に戻ることも拒絶した。その後,定職に就けないCが,被控訴人に対して,経済的援助を求めた際にも,被控訴人がこれを拒絶し,その結果,Cは現在所在不明となっている。イCは,年齢は成人に達しているものの,未だ,親の監護なしでは生活を保持し得ない状況にあり,未成熟子ないしはそれに準ずる存在である。すなわち, cは,幼少期から父である被控訴人から冷淡に接され,十分な養育監護をされず,高校中退後は,被控訴人から怒鳴られたり,暴力を振るわれたりした上,少年院に収容されることとなったものであり,退院後,現在でも,高校に再入学して自動車整備士の資格を取得する希望を有しているものの,両親からの経済的援助が得られないことから, 日雇労働で毎日を過ごしており,仕事を得られないときには浮浪者同然の生活をしているとしろ状況にある。加えて,前述のように,cは生まれつきの障害を有していたにもかかわらず,被控訴人から何らの愛情も受けることなく育ったことが影響し,精神的未発達ないし精神的障害を有していることがうかがわれる。被控訴人のCに対する従来の冷淡かつ不誠実な態度に照らせば,離婚請求が認容されるならば,長男Cとの問で、の親子関係を修復することは,ほとんど不可能となり,直接Cの福祉に重大な影響を及ぼすことになる。ウ被控訴人は,亡父から相続した広大な土地の持分(共有物分割により単独所有とした場合には,約950m2に相当する。)を有するほか,有限会社0000の代表者として00家の所有する約2800m2の土地を管理し,多大な駐車場収入を得ている。被控訴人の有する不動産持分だけでも,2億8000万円を下らない価値があり,配偶者としての控訴人の相続分は,遺留分だけでも7000万円相当にも達する。原判決の認める程度の離婚給付(慰謝料500万円,財産分与504万円の合計1004万円)では,夫婦としての扶養仁配偶者としての相続権を到底確保し得ないものであるから,破綻した婚姻関係であったとしても,控訴人にとっては継続される実益がある。エ被控訴人は, 別居後,控訴人の再三の求めを拒み,妻である控訴人と長男Cの生活費を一切負担せず,本件離婚請求に際しでも,財産関係の清算につき何ら誠意ある提案をしていない。その上,一審判決が言い渡された後においても,附帯控訴して,自らは有責配偶者ではないと主張して,慰謝料支払義務さえ否定する態度を示している。控訴人は,現在,家事調停に基づき被控訴人から婚姻費用分担金として支払われる月額14万円の給付で何とか生活をしており,他にめぼしい資産も収入もなし、。その上,更年期障害に加えて腰痛及ひ下青神障害(抑うつ状態)を患っており,50歳としろ年齢からも,就労して収入を得ることは,極めて困難である。今後の生活のことを考えると,本件離婚請求は,控訴人を経済的・精神的に極めて苛酷な状況に置くものであって,到底許されるものではない。オ被控訴人は,控訴審において,原判決の認容した離婚給付額1004万円の2割増の金員支払を提示しているが,その程度の金員は,更年期障害に加えて腰痛及び精神障害を抱える控訴人にとっては,これらの疾病の治療費の負担等もあって. 6年程度で費消してしまう金額であり,被控訴人の上記金員支払提示は,被控訴人による離婚請求が信義誠実の原則上許されないとの前記結論に影響するものではない。
第3 当裁判所の判断
当裁判所は,被控訴人の離婚請求は理由がないものと判断する。その理由は,次のとおりである。
I 離婚原因の有無当裁判所も,控訴人と被控訴人間の婚姻関係は破綻しているものと判断する。この点に関する事実認定及び判断は,原判決「事実及び理由」の「第3 当裁判所の判断J1及び2(!X2)記載のとおりであるから,これを引用する。
2 被控訴人からの離婚請求の許否そこで,有賀配偶者である被控訴人からの本件離婚請求を認容することができるかどうかについて,判断する。
(1)上記引用に係る原判決「事実及び理由」の「第3 当裁判所の判断J1官頭に摘示の各証拠に加えて,当審において取り調べた証拠(甲39. 乙12ないし22. 24ないし27)及び弁論の全趣旨によれば,次の各事実が認められる。ア平成14年×月に長男Cが医療少年院を退院した後,控訴人は,Cを引き取り,それまで勤務していた口口口を辞めて口口に転居して.cと共に生活していたが,預貯金等の替えが底をつき,被控訴人からも経済的援助を得られなかったことから,同年×月に.cが勤務先の寮で・生活することとなったことを契機に,単身でムム所在の実家で‘生活した。しかし.Cが下記のような行動であったことから,同16年×月ころ.cの更生を見守るために上京し,そのころからxx所在の長女方に寄宿している。イこの間.cは,平成16年×月に車上荒らしを犯して, 警察に逮捕,勾留される事件を起こし,その後.0口で派遣社員として勤務していたが同18年×月には無断欠勤等の理由で解雇され,ロムに戻って,路上生活者として生活するなどし,新聞配達員や建設作業員として働くこともあったがいずれも長続きしなかった。控訴人は.cに対して,同年×月から×月の間に合計26万円を送金するなどの金銭的援助を行うとともに.cの相談相手となるなどしていたが.cは,同18年×月に所在不明となり.長期にわたって全く連絡がとれない状態であったところ,同20年×月になって,ょうやく連絡がとれ,所在が確認された。ウ控訴人は,従来から,更年期障害に加えて,腰痛を患っていたところ,被控訴人との聞の紛争やCの将来に対する心労から,不安焦燥,抑うつ気分,集中力減退,不眠等の症状を呈するに至り,精神科医師から「抑うつ症Jの診断を受けている。エ控訴人は,現在,家事調停に基づき被控訴人から婚姻費用分担金として支払われる月額14万円の給付で何とか生活をしており,他に資産も収入もないが,上記の疾病に加えて50歳という年齢からも,就労して収入を得ることは極めて困難な状況にある。また,現在寄宿中の長女方も,長女の夫の勤務先の社宅であり, 同人の将来の異動等を考慮すれば長期間の滞在は困難である。オ被控訴人は.cが医療少年院に収容されている問,一度も面会に行かなかったばかりか,書簡等により連絡を取ることも一切せず,同人が医療少年院を退院する際にも,身元引受人となることを拒絶した。そして,退院後に, cが被控訴人宅を訪れた際にも追い返し,cが高校再入学や就職のために経済的援助を求めた際にも一切これを拒絶している。カ被控訴人は,現在,ロム口所在の宅地1076.82m2, 066所在の田825m2につき共有持分(2分の1)を有するほか, Dや被控訴人等の所有する土地を駐車場等として管理する有限会社C丈わOの持分(2分の1)を有し,その社員(持分権者)ないし役員(代表取締役)としての収入も得ている。
(2] 上記引用に係る原判決「事実及び理由Jの「第3 当裁判所の判断J1記載の事実関係に上記(1]記載の各事実を総合すれば,被控訴人は,平成5年×月に別居を始めて以来,同17年×月に婚姻費用分担に関する調停が成立するまで,控訴人に対して,婚姻費用として何らの金銭給付も行っていないところ,控訴人は,現在,資産も,安定した住居もなく,被控訴人から給付される月額14万円の婚姻費用分担金を唯一の収入として長女方に寄宿して生活しているものであり,高齢に加えて,更年期障害,腰痛及び抑うつ症の疾病を患い,新たに職に就くことは極めて困難なものとうかがわれ,仮に被控訴人からの離婚請求が認容された場合には,被控訴人から婚姻費用分担金の給付を受けることができなくなり,経済的な窮境に陥り,躍患する疾病に対する十分な治療を受けることすら危ぶまれる状況となることが容易に予想されるところである。加えて,長男であるCについては,生まれつきの身体的障害に加えて,その後の生育状況に照らし,控訴人がその生活について後見的な配慮を必要と考えるのも,無理からぬ点がある。この点,被控訴人は甲39の陳述岱の末尾においてCの処遇に関する決意を記載しているが,被控訴人のCに対する従来の態度が愛情を欠き, cに対する金銭的援助を一切拒絶していることに照らせば,離婚請求が認容されれば,被控訴人とCとの間で実質的な親子関係を回復することはほとんど不可能な状態となることは,控訴人の危倶するとおりであり,経済面,健康面において不安のある控訴人において,独力でCの生活への援助を行わざるを得ないことになれば,控訴人を,経済的,精神的に更に窮状に追いやることになるものである。被控訴人は,当審において,離婚に際して, 1204万8000円(原判決の認容した1004万円の2割増)の金員支払を提示しているが,この点を考慮しでも,離婚を認容したときに控訴人が上記のような窮状に置かれるとの認定は左右されるものではなし、。そうすると,本件において,被控訴人の離婚請求を認容するときは,控訴人を精神的,社会的,経済的に極めて苛酷な状態に置くこととなるといわざるを得ないから,被控訴人の離婚請求を認容することは著しく社会正義に反するものとして許されないというべきである。
3 結論以上によれば,被控訴人の離婚請求は理由がない。よって,被控訴人の離婚請求を認容し,控訴人の予備的反訴を一部認容した原判決ほ相当で、なし、から,控訴人の控訴に基づき,原判決を取り消し,被控訴人の本訴請求を棄却することとし(したがって,予備的反訴についての判断は要しない。),被控訴人の附帯控訴を棄却することとして,主文のとおり判決する。(裁判長裁判官南敏文裁判官安藤裕子三村量一)
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2012年2月26日 | コメント/トラックバック(0) |
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戸籍訂正許可申立却下審判に対する即時抗告事件
第1
抗告の趣旨及ひ理由別紙即時抗告申立普及び即時抗告型白書に記載のとおりである。
第2 当裁判所の判断
1 当裁判所も.抗告人の本件戸籍訂正貯可の申立は理由がないと判断する。その理由は.次項以下のとおか抗告理由に対する判断を付加するほかは.原審判理由欄の「第3 当裁判所の判断Jのlのとおりであるからこれを引用する。
2 (1)抗告人は.下記アないしウのとおり主張する。
ア原審判は.要旨戸籍法(以下「法」という。) 113条による家庭裁判所の許可に基づく戸籍の訂正は.戸籍の記載自体から訂正すべき事項が明白な場合.又は戸籍の記載自体からは明白ではないものの.訂正すべき事項が軽微で.親族法.相続法上の身分関係に重大な影響を及ぼす成がない場合に許されるもので.これらに当たらない場合には,法116条1項によらなければならない旨判断して.抗告人の申立を却下した。
イしかし法113条は.同粂による家庭裁判所の許可について.原審判の述べるような限定を加えていない。戸籍の基礎となる法律行為の存否は職権主義的に判断されるべきものであって真実に反する戸籍記載は当然抹消されるべきであり,法116条のような当事者主義的対立椛造によって判断されるべきものではない。
ウ本件は,戸籍の記載に錯誤がある場合であり.法113条に該当する。また.人事訴訟法2粂は.認知不存在確認訴訟の形式を認めていないから.法113粂による必要があるというべきであるo
(2) しかしながら,戸籍の記i肢は,親族法.相続法のみならず.多方面にわたる法律上の身分関係の基礎となるものであって,その記載に公信力は認められないものの.戸籍の記載は一応真実であるという事実上.の推定を受ける(最高裁判所昭和28年4月23日第1小法廷判決・民集7巻4号396頁)。このような戸籍記載の重要性及び.その変更によって法律上事実上不利益を被る相手方当事者.関係者の実体法上手続法上の権利利益を考慮すると,相手方の手続関与を伴わない法113条の手続によって戸籍訂正の許される範囲についてはおのずから制約があか訂正の対象事項が戸籍の記載自体から明白な場合(明白性の要{牛).又は戸籍の記載自体から明白でないにしても.関係者の同意がある等,その事項が軽微で.訂正が法律上重大な影響を及ぼす虞のない場合(軽微性の要件)に限られると解されるのであって. この趣旨は.従来から我が国の判例が判示してきたところである(大審院大正5年2月3日決定・民録22輯156頁.大審院大正5年4月19日決定・民録22輯774頁等)。
(3) 本件において,抗告人が訂正を求める戸籍の記載事項は,抗告人.による胎児認知(以下「本件胎児認知Jという。)及び.これに基づく抗告人と本件胎児認知の相手方との問の父子関係の存否という重大な法律関係に関する事項であるが.その訂正に対する.本件胎児認知の相手方やその母親からの同意の存否については.なんらの疎明がない。また,戸籍法上の本件胎児認知の記載は.その相手方の日本国籍の取得の可否についても影響を及ぼす成ーがあると考えられる(国籍法2粂)。
(4) 以上を総合すれば,本件では上記(2)の明白性軽微性の要件が認められないというのが相当であって.これと向趣旨に出た原審判の判断は正当である。
(5) なお.抗告人は.人事訴訟法2粂が認知不存在確認訴訟の形式を認めていない旨主張するが.同条各号は.人事訴訟法上の人事訴訟と認められる典型的な場合を列挙したに止まるものであって.同条本文が問各号所定以外の人事訴訟を禁止する趣旨とは解せられず.抗告人の上記主張から以上の判断を左右することはできない。
3(1 ) また.抗告人は.下記アないしエのとおり主張する。
ア仮に法113条による戸籍訂正に明白性の制限を加えるとしても.報告的届出にあっては,その添付岱:類に基づいて戸籍の訂正がなされているのであるから.i戸籍の記載自体から訂正すべき事項が明白な場合Jとは.提出された添付啓類も含んで判断がなされるべきである。
イ本件では.本件胎児認知の相手方の母親によってなされたロシア法上の認知を示す添付書類(以下「本件添付書類」という。)の翻訳の過誤は.抗告人が提出した専門家の翻訳に基つ・いて裏付けられており,戸籍に記載された日に胎児認知が存在しないことは明らかである(しかも.胎児認知があったとされる時期から相当経過して胎児認知の相手方の出生後に戸籍の記載がなされた事実からすると胎児認知であれば国籍が取得できることを意識して.故意に誤った翻訳がなされた可能性が高い。)。・
ゥまた.本件添付書類におけるロシア領事館の証明は.単に署名.を証明しているだけのもので,本件添付’1!J:類がロシアj去に基づく胎児認知の存在を示すものでないことは明白で・ある。
エ仮にロシア法に基つ’く胎児認知制度の有無について疑問があるとしても,法律に関する問題は.本来裁判所の職権により判断されるべきであるから, ロシア法に閲する部分については,明白性の判断から除外されるべきであり,原審判には,以上の点について判断を誤った違法がある。
(2) しかしながら,抗告人が. 本件添付性類の誤りを裏付ける専門家の哲面として提出する疎明資手,. (甲lの3のlないし7)は.①ロシア法に胎児認知の制度が存在すること.② ロシアでは市民登録局に対し出生登録をすることにより.ロシア連邦家族法47条所定の確立した法秩序において確認されている子供の出生起源を取得することができることを示すにすぎず. それ以外に.本件添付書類ないしその翻訳に過誤があるとか.本件胎児認知が無効である等の指摘事項は含まれていない。かえって. 甲Iの3の6 (訳文は甲lの3の7)には,抗告人と本件胎児認知の相手方との父子関係は,規定された法秩序において確認されている旨が記載されており(なお、ここに法秩序というのは、上記②のロシア連邦家族法所定の法秩序を指す趣旨と解せられる。),専門家も本件胎児認知の効力に肯定的である様子が窺われる。
(3)したがって、本件において,抗告人が訂正の許可を求める戸籍の記紋が法律上許されないものであること文はその記載に錯誤若しくは遺j昂ーがあること(法113条)について, 明白性ないし軽微性の要件が具備されていると認めることはできず.抗告人の上記(1)の主張も採用できない
第3 結論
よって.抗告人の戸籍訂正の申立は理由がなく. これを却下した原審判は相当であるから. 本件抗告を棄却することとし主文のとおり決定する。(裁判長裁判官岡光民雄裁判官夏目明徳光吉恵子)
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推定相続人排除申立事件
第1 申立ての趣旨及び実情
相手方は,被相続人の長男で,遺留分を有する推定相続人である。相手方は,浪費を重ね,被相続人の財産の大半を浪費した上,被相続人は,相手方の債権者らから,弁済につき,自宅で面会を強要されたり,電話による支払を求められたりし,心理的にも大きな痛手を被った。このため,被相続人は,遺言書で,相手方を推定相続人から廃除する旨遺言し,申立人(弁護士)が遺言執行者に選任された。よって,申立人は,主文同旨の審判を求める。第2 当裁判所の判断1
本件記録及び相手方の審問の結果によれば,以下の事実が認められる。
(1) 被相続人は,高等学校卒業後, 00に入り, 53歳まで勤務し,その後, 53歳から63歳まで, 00株式会社に勤務した者で,実直な性格であり,生涯堅実な生活を送っていた。
(2) 被相続人には,妻D (昭和13年×月×日生)がおり, Dとの聞に,E (昭和39年×月×日生)及び相手方をもうけていた。
(3) 相手方は,高校卒業後,2浪して予備校に通っていたころから遊輿に金銭を費やすようになり,進学しないまま就験した後も同様で,競馬,パチンコや車の購入,女性との交際費等で借財を重ねるようになり,自動車販売の仕事や交通事故で借財が増えることもあった。このため,被相続人が相手方の債権者らを回って返済をし, 再三相手方の反省を促していたが,相手方の浪費や借財は収まらず,相手方は,金利の高い消費者ローン業者や貸金業法上の登録業者ではないいわゆるヤミ金からも再三借金を重ねていた。このため,相手方は,全額を返済ができないために,取立関係者から殴られて帰宅したことがあり,また,取立関係者が返済を求めて被相続人の自宅に電話をかけてきたり,同宅を見張ったりしただけでなく,実際にも同宅に押しかけたり,近所にも聞こえるような大声で罵倒し,被相続人が警察を呼ぶような事態も生じた。もっとも,相手方は,一応働いており,全くの無為徒食というわけではなく,返済も一部していたようであるが,平成2年ころから平成14年ころまで,被相続人が相手方のために,相手方の債権者らに立て替えて支払った額は. 2千数百万円に上っており,そのうち一部は返済されたものの. 2000万円以上の残金が被相続人に対して返済されなかった。
(4) 被相続人は,前記立替払金を自ら支払っていたが,自己資金だけでは立替えに充てる金員に不足し. Eから,平成13年に300万円,その後にも300万円の合計600万円を借り受けたが,平成20年×月x日死亡するまでに. Eに対し返済することはできなかった。
(5) 相手方は,高校卒業後,少なくとも,平成9年後半ころから平成14年ころまでの間,被相続人の自宅不動産である別紙物件目録記載の土地建物(以下「自宅不動産」という。)に被相続人及びDと同居していたが,前記のように借金の返済が度重なったほか,相手方が被相続人に対し,被相続人の自宅不動産の権利証の交付を要求したこともあり,平成14年4月ころに,被相続人から「勘当」と言われ,被相続人の自宅から追い出された上,自宅に近づくこと及びDに近づくことを禁止された。
(6) 被相続人は.Dに対し,平成14年4月ころ,被相続人が「倒れたら,開封して下さい」として,下記内容の手紙(以下「本件手紙」という。)を書き記した。日u-宝ロ近日中に脳の血管障害により倒れる予感がするので. Dに次のことを伝えておく。① 脳の血管障害は,死か重度の身体障害を伴うものでありDに負担をかけるがよろしく。② 相手方は勘当(親元を追い出されること)した身であり二度とこの家の敷居を跨がせないこと。① 相手方はF君に頼み,自立・更正させない限り,同じことを繰り返し,親・姉を路頭に迷わせ,どん底に墜ちることとなることを銘記し,間違ってもDは,二度と一緒に暮らそうなんてことを考えないこと。④ Eは相手方と縁を切り,係わらないこと。⑤ G (被相続人の母)については. Eに頼む。00県00に行き,養護施設に入所させてください。(以下略)
(7) 被相続人は,平成14年8月×日付けで,下記内容の遺言書(自筆証書,以下「本件遺言Jという。)を作成した。記① Dには,遺言者(被相続人)名義の00銀行及び00の各預貯金通帳記載の残高全額。② Dに土地・家屋を相続させた場合,相手方がこれを抵当にして借金することが明白であり,これを防止するため次のとおり指定する。アEに自宅不動産を相続させる。イ自宅不動産は.Dが一人で暮らせる聞は維持・補修し,一人暮らしが困難となり,特別養護施設(有料)等に入所する際に処分し,その費用に充てる。① 相手方には,これまでに2000万円以上の貸しがあり,未だに返金を受けていないので,その貸借を解消することとし,その他一切の相続は認めない(相続の廃除)。
(8) 相手方は,被相続人の自宅から追い出された前後のころから,親戚である牧師方(本件手紙にあるrF君」方)に預けられたが,その後も借財を重ね,自己破産の申立て(00地方裁判所平成00年同第000号) を行うことになり,破産決定及び免責決定を受けた。
(9) しかしながら,相手方は,前記破産決定及び免責決定後も,被相続人に対し,引越代として30万円の無心をしたり,高校生時代の友人らから数百万円の借財を重ね,その友人らが,被相続人の自宅にきて返済を求めることがあった。被相続人は,平成18年に脳梗塞で倒れ,平成19年9月入院していた際に. Eに対し, 葬式になっても密葬とし,相手方を葬式には呼ばないように指示していた。。被相続人は,平成20年×月×日に死亡したが,現在判明している被相続人の死亡時の財産としては,自宅不動産(平成19年度の固定資産評価額は,土地831万643円,建物97万7390円である。) 及び預貯金(00銀行普通預金70万3217円)の合計999万1250円相当のみである。
(11)相手方は,平成20年3月×日の本件申立ての前後にかかわらず. Dに対し無心を続け. Dに対し.r今度,裁判所に行くことになった。姉(E) は卑怯だ,廃除に腹が立つJrもう,やくざになって仕返しして,どうなってもいいんだな,結婚できなかったらお前らのせいだからJr蒸発する」などと述べて,相手方を心配するDから,平成20年3月×日に50万円,同月×日に60万円,同年4月×日に50万円,同年5月×日に50万円,同月×日に45万円,同年8月×日に15万円(以上合計270万円)の送金を受けた。なお,相手方は. Eに対しでも,度々借財を申し出ている。
(12) Eは,相手方が何度も被相続人からやり直す機会をもらって期待されていたにもかかわらず,一向に改心せず借金を重ねており,推定相続人の廃除でけじめをつけないと相手方のためにもDのためにもならないと考えている。Dは,母親として,相手方が憎いわけではないが,これまでのこと,並びに自分の居住する自宅不動産の処分を防ぐこと及びEの安心のために,推定相続人の廃除はやむを得ないと考えている。2 被相続人の相手方に対する貸金又は立替金残額について被相続人が残した一覧表(平成2年度から平成12年度まで,以下「本件一覧表Jという。)には,平成2年度から平成4年度までは推定で合計200万円が,平成5年度から平成12年度までは,各月毎に細かく金額がそれぞれ記載され,平成9年6月の373万円,同年9月の187万1000円,平成11年11月の351万8067円については,その明細が普かれた書面と裏付けの書面(借入契約書,領収容など)が存在しており,本件一覧表は,被相続人によって,根拠に基づき整理された上で記載されていたことが窺えるほか,その記載には,棺手方の返済の記憶とも一致する記載があり(相手方は,調査時に全く返済していないこともなく,多いときで35万円から40万円を返したこともあるし.1000円単位で細かく返したこともある旨陳述しているところ,本件一覧表にも,A 印で返済を示す記載が少なからずあり,平成11年12月にはrL::>400000Jの記載もある。).その記載内容は全体として十分信頼に価するところ,本件一覧表の貸金又は立替金の残額は,平成12年の終わりで2300万円を超える額である。上記の外,被相続人は,平成14年8月×日付けの本件遺言書で.r約2000万円以上の貸しがありJと記載していること,本件遺言書作成以後,相手方は破産しているところ,相手方の被相続人に対する貸金又は立替金債務が免責の対象となったのか否かの点はともかくとして,相手方が被相続人に何らかの返済をした事情は窺えないこと(相手方は,破産以後に新たに被相続人から出してもらった分を返済したとは陳述するが,破産以前の分については,何らの言及をしていない。)を考慮すると,被相続人の相手方に対する貸金又は立替金の残額は,免責の点をひとまずおくと, 2000万円以上であったと認めるのが相当である(この額が,被相続人が相手方のために実質出費した額と考えられる。)。この点についての,相手方の陳述は,首尾一貫せず,何ら裏付けを欠くもので,採用することができない。3 推定相続人廃除の可否推定相続人の廃除は,相続的協同関係が破壊され,又は破壊される可能性がある場合に,そのことを理由に遺留分権を有する推定相続人の相続権を奪う制度であるから,民法892条所定の廃除事由は,客観的かつ社会通念に照らし,推定相続人の遺留分を否定することが正当であると判断される程度に重大なものでなければならないと解すべきである。これを本件についてみるに,前記1, 2の各認定事実によると,相手方は,競馬,パチンコや車の購入,女性との交際費等で借金を重ね,被相続人に度々返済させるなどいわゆる尻ぬぐいを長年にわたってさせており,しかも被相続人が相手方から返済を受けられなかった出費の合計額は2000万円以上に上っており,被相続人死亡時の被相続人の財産1000万円相当に比べて相当過大であるだけでなく,被相続人が長年00や00株式会社に勤務し,ある程度の収入や蓄財が予想されるにもかかわらず,立替金の財源に不足し,娘であるEからも借金をしなければならなかったことも考慮すると,被相続人の経済的な負担は極めて大きかったものと認めることができる。また,相手方の債権者らには,いわゆるヤミ金や相手方の友人がおり,相手方が殴られて帰宅したことや,関係者が被相続人の自宅を見張ったり押しかけたことがあり,近所にも聞こえるような大声で罵倒し警察を呼ぶ事態も生じたことなどがあるのであるから,被相続人の親としての心の平穏や住居の平穏を著しく害されたことは否定できなし、。さらに,相手方は,被相続人からいわゆる「勘当jまでされたにもかかわらず,再び借金を重ねて破産,免責の決定を受けたほか,破産,免責決定後も,改心したとまではいいがたく,被相続人にまで再び引越代の無心をしたりしている。そうすると,相手方の行為は,相手方が成人に達するころから約20年間,被相続人を経済的,精神的に苦しめてきたものといわざるを得ず,被相続人の苦痛は被相続人の死亡まで続いており,被相続人が心情を吐露したとみられる本件手紙及び本件遺言書の各内容,並びにいわゆる「勘当Jの存在及び葬式への相手方出席に閲するEへの指示などは,後相続人の怒りが相当激しいものであったことを示しているところ,相手方の行為による被相続人への経済的,精神的な苦痛の大きさやその継続に鑑みれば,被相続人の怒りも十分理解できるものであって,結局,相手方の行為は,客観的かつ社会通念に照らし,相手方と被相続人の相続的協同関係を破壊し,相手方の遺留分を否定することが正当であると判断される程度に重大なものであり,民法892条の「著しい非行」に該当するといわざるを得ない。4 相手方の主張について相手方は,被相続人との関係は,本件遺言書の作成以後徐々に回復していき,被相続人に会ったり,就職について被相続人に身元保証人になってもらったり,晩年には被相続人の見舞いにも行った旨陳述し,被相続人から宥恕してもらっていた旨主張するかのようである。しかしながら,① 被相続人は,死亡するまで,本件遺言容を撤回したり,本件遺言書と異なる遺言牲をしたことはないこと, ② 相手方は,被相続人死亡まで,被相続人と同居することはなく,いわゆる「勘当」が解けたとまではいえないこと,③ 相手方は,本件遺言書作成までの借金癖や生活態度を改善したとはいえず,被相続人にまで再び引越代の無心をしたりしており,被相続人は,死亡の数か月前に,Eに対し,相手方を葬式には呼ばないように伝えていたこと. <D 身元保証人等を裏付ける証拠がないこと(仮にあったとしても,身元保証等の事実は,被相続人が相手方の立直りを最後まで願っていたことを示すとまではいえても,それを超えて宥恕していたとまでは認めるに足りない。)からすると,相手方の宥恕の主張は採用することができない。
第3 結論よって,本件申立ては理由があるのでこれを認容することとし,主文のとおり審判する。(家事審判官浅見宣義)
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推定相続人廃除申立事件
第1 申立ての要旨
申立人の推定相続人は,妻Cが既に死亡していることから,長男の相手方と二男のDの2人だけである。相手方は,これまで,何度も窃盗で捕まったり交通事故を繰り返したりし,申立人夫婦に多大の苦痛を与え,数百万円の負担をかけたうえ,平成16年夏ころ親子の縁を切ると自ら言って家出し,今日まで音信不通となった。申立人は,相手方に著しい非行があり,自宅不動産等を相手方に相続させるつもりがないので,相手方を推定相続人から廃除するとの審判を求める。
第2 当裁判所の判断
1 事実の認定一件記録によれば次のとおり認めることができる。
(1) 申立人とCは,昭和44年×月×日に婚姻し,昭和48年×月×日に相手方,昭和57年×月×日にDをそれぞれもうけ,その後,姓を「甲」から「乙Jに変更する必要から,同年×月×日に協議離婚した後すぐに再び婚姻した。Cは平成13年×月× 日に死亡した。
(2) 相手方は,中学時代にコンビニで万引きしたのを手始めとして以後窃盗等を繰り返し,これまで何度も刑務所に服役してきたが,現在も,平成19年10月の現金盗につき常習累犯窃盗の罪に関われて懲役2年の刑に処せられ, 00刑務所に在監中である。相手方は,このほかにも,交通事故を繰り返したり,消費者金融から借金を重ねたりし,それでいながら,賠償や返済をほとんど行わなかった。申立人は,このため,窃盗や事故の被害者らに謝罪し,被害弁償や借金返済等に努め,これにより,多大の精神的苦痛を被るとともに,少なくとも400万円から500万円程度を負担した。なお,相手方は,申立人とCが成績優秀なDを依惜晶贋し,相手方に厳しい態度を示すことに反発し,窃盗等を重ねたものであると述べている。
(3) 申立人は,一級建築士等の資格があり, 00株式会社に勤務し,平成19年5月に定年退職した。現在,失業保険や厚生年金を受給し,自宅でDとの2人暮らしを続けているが,約2400万円の住宅ローンと約240万円の教育ローンを抱えており,再就職を考慮中である。Dは,現在, 00大学大学院博士課程に在籍し,研究生活を送っている。(4) 申立人は,評価額1300万円程度の自宅土地建物と評価額のつかない原野のほか数十万円の預金を有するところ,平成16年ころ全財産をDに相続させる内容の公正証書遺言を作成済みであり,相手方が将来遺留分を主張してDを苦しめることが予測されることから,相手方を推定相続人から廃除することを思い立った。申立人は,相手方が求める手切れ金を渡すつもりがなく,将来における兄弟聞の遺産争いを防ぐためにも,相手方との関係を断ち切るためにも,相手方を推定相続人から廃除してほしいと述べる。
(5) 相手方は,申立人に迷惑をかけたことを自認しつつ,推定相続人から廃除されることに納得できないとし,手切れ金として500万円ないし600万円を用意してくれるなら,これを受け入れてもよいし,遺留分を放棄しでもよいと述べる。2 検討・判断相手方は,これまで窃盗等を繰り返して何度も服役し,今も常習累犯窃盗罪で懲役2年の刑に処せられて在監中であり,このほかにも,交通事故を繰り返したり消費者金融から借金を重ねたりしながら,賠償や返済をほとんど行わず,このため,申立人をして被害者らへの謝罪と被害弁償や借金返済等に努めさせ,これにより,申立人に対し多大の精神的苦痛と多額の経済的負担を強いてきたことが明らかであって,申立人に対する著しい非行があったと認めるべきである。そして,これまでの経過や事情に加えて,相手方が自身の行状につき申立人にも責任の一端があるかの知く述べたうえ多額の手切れ金を要求しており,申立人がこれに応じる意思がないと述べていることからみて,両名の親子関係に改善の見込みがあるとはいい難く,その他,本件に顕れた諸般の事情を勘案すると,相手方を申立人の推定相続人から廃除するのが相当である。
第3 結論よって,申立人の本件申立ては理由があるからこれを認容することとし,主文のとおり審判する。(家事審判官播磨俊和)
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債務不存在確認等、遺言無効確認等請求事件
上告代理人0000の上告受理申立て理由について
1本件は.Aの共同相続人の一人であり.Aの遺言に基づきその遺産の一部を相続により取得し,他の共同相続人である被上告人らから遺留分減殺請求を受けた上告人が.被上告人Y1はAの相続について上告人に対する遺留分減殺請求権を有しないことの確認を求める旨及び被上告人Y2がAの相続について上告人に対して有する遺留分減殺請求織は2770万3582円を超えて存在しないことの確認を求める旨を訴状伝記載して提起した各訴えにつき.確認の利益の有無が問題となった事案である。
2 原審の確定した事実関係の概要等は,次のとおりである。
(1) A.(大 正9年2月19日生)は,平成16年12月7日に死亡した。上告人及び被上告人らは.Aの子である。
(2) Aは.平成10年12月7日.Aの遺産につき.遺産分割の方法を指定する公正証書道言(以下「本件遺言Jという。) をした。
(3)被上告人らは.平成17年12月2日ころ,上告人に対し遺留分減殺5iY求の意思表示(以下「本件迫留分減殺前求Jという。)をし.上告人は.遅くとも本件訴訟の提起をもって.被上告人らに対し本件遺言による遺産分割の方法の指定が被上告人らの遺留分を侵害するものである場合は民法1041条所定の価額を弁償する旨の意思表示をした。
(4) 被上告人らは,上告人に対し遺留分減殺に基づく目的物の返還請求も価額弁償請求もいまだ行っていない。
(5) 本件訴訟の訴状には.請求の趣旨として① 被上告人Y1はAの相続について上告人に対する遺留分減殺請求権を有しないことの確認を求める旨② 被上告人Y2がAの相続について上告人に対して有する遺留分減殺請求権は2770万3582円を超えて存在しないことの確認を求める旨の記載がある(以下\上告人の被上告人らに対する上記確認請求を併せて「本件各確認前求Jといい, 本件各確認結求に係る訴えを併せて「本件各確認の訴え」という。)。上告人は.原審の第l回口頭弁論期日において.価額弁償をすべき額を確定したいため.本件各確認の訴えを提起したものである旨を述べた。
3 原審は.上記事実関係等の下で.①被上告人Y1に対する確認請求は.上告人が被上告人Y1の遺留分について価額弁償をすべき額がないことの確認を求めるものであり.②被上告人Y2に対する確認請求は.上告人が被上告人Y2の遺留分について価額弁償をすべき額が2770万3582円を超えないことの確認を求めるものであると解した上.以下の理由によか本件各確認の訴えは確認の利益を欠き不適法であると判断し第l審判決中.本件各確認の訴えが適法であることを前提とする本件名確認請求に係る部分を取り消して,本件各確認の訴えを却下した。
(1) 被上告人らは.上告人に対して遺留分減殺請求をしたが,いまだ価額弁償請求権を行使していない。したがって.被上告人らの価額弁償請求権は確定的に発生しておらず,本件各確認の訴えは.将来の権利の確定を求めるものであり.現在の権利関係の確定を求める訴えということはできない。
(2) 仮に.上告人による価額弁償の意思表示があったことにより.潜在的に被上告人らが上告人に対して価額弁償請求権を行使することが可能な状態になったことを板拠として.本件各雌認の訴えをもって現在の権利関係の確定を求める訴えであると解する余地があるとしても,受造者文は受問者が価額弁{貨をして迫II自又は贈与の目的物の返還義務を免れるためには現実の履行又は版行の提供を要するのであって,潜在的な価額弁償請求権の存否又はその金額を判決によって確定しても.それが現実に履行されることが確実であると一般的にはいえない。そして,その金額は.事実審の口頭弁論終結時を基準として確定されるものであって.口頭弁論終結時と上記金額を確認する判決の確定時に隔たりが生ずる余地があることをも考慮すると,本件各確認の訴えは.現在の62・5-62裁判例( 家事)権利義務関係を確定し紛争を解決する手段として適切とはいい縫い。
4 しかしながら,原審の上記判断は是認することができない。その理由は.次のとおりである。
(1)被上告人Y1に対する確認の訴えについて前記事実関係等によれーば.被上告人Y1に対する確認の訴えは.これを合理的に解釈すれば.本件遺言による遺産分割の方法の指定は被上告人Y1の遺留分を侵害するものではなく.本件遺留分減殺請求がされでも,上記指定により上告人が取得した財産につき.被上告人Y1が持分権を取得することはないとして.上記財産につき被上告人Y1が持分権を有していないことの確認を求める趣旨に出るものであると理解することが可能である。そして.上記の趣旨の訴えであれば,確認の利益が認められることが明らかである。そうであれば.原審は.上告人に対し被上告人Y1に対する確認諦求が上記の趣旨をいうものであるかについて釈明権を行使すべきであったといわなければならず.このような措置に出ることなく.被上告人Y1に対する確認の訴えを確認の利益を欠くものとして却下した点に拘いて,原判決には釈明権の行使を怠った違法があるといわざるを得ず, この違法が判決に影響を及ぼす’ことは明らかである。
(2) 被上告人Y2に対する確認の訴えについて
ア一般に,遺贈につき遺留分権利者が遺留分減殺請求権を行使すると,遺贈は遺留分を侵害する限度で失効し受造者が取得した権利は上記の限度で当然に減殺訪求をした遺留分権利者に帰属するが,この場合.受造者は,遺留分権利者に対し同人に嬬・属した遊間の目的物を返還すべき義務を負うものの,民法1041条の規定により減殺を受けるべき限度において迫I!自の目的物の価額を弁mし又はその履行の提供をすることにより. 目的物の返還義務を免れることがで63きると解される(最高裁昭和53年(オ)第907号同54年7月10日第三小法廷判決・民集33巻5号562頁参照)。これは,特定の遺産を特定の相続人に相続させる旨の遺言による遺産分剖の方法の指定が遺留分減殺の対象となる本件のような場合においても異ならない(以下,受遺者と上記の特定の相続人を併せて「受遺者等Jという。)。そうすると.遺留分権利者が受逃者等に対して遺留分減殺請求権を行使したが.いまだ価額弁償請求権を確定的に取得していない段階においては,受・造者等は.遺留分権利者に帰属した目的物の佃i額を弁賞し.又はその履行の提供をすることを解除条件として.上記目的物の返還義務を負うものということができ.このような解除条件付きの義務の内容は.条件の内容を含めて現在の法律関係というに妨げなく,確認の対象としての適格に欠けるところはないというべきである。
イ遺留分減殺簡求を受けた受造者等が民法1041粂所定の価額を弁償し,又はその版行の提供をして目的物の返泣義務を免れたいと考えたとしても,弁償すべき額につき関係当事者間に争いがあるときには,遺留分算定の基礎となる遺産の範囲,遺留分権利者に帰属した持分割合及びその価額を確定するためには,裁判等の手続において厳密な検討を加えなくてはならないのが通常であり,弁償すべき額についての裁判所の判断なくしては.受造者等が自ら上記価額を弁償し又はその履行の提供をして遺留分減殺に基づく目的物の返還義務を免れることが事実上不可能となりかねないことは容易に想定されるところである。弁償すべき額が裁判所の判断により確定されることは,ーと記のような受造者等の法律上の地位に現に生じている不安定な状況を除去するために有効,適切であり.受遺者等において:i11留分減殺に係る目的物を返還することと選択的に価額弁償をす裁判例.(家事)ることを認めた民法1041条の規定の趣旨にも沿うものである。そして,受遺者等が弁償すべき額が判決によって確定されたときはこれを速やかに支払う意思がある旨を表明して.上記の額の確定を求める訴えを提起した場合には,受遺者等がおよそ価額を弁償する能力を有しないなと矛の特段の事情がない限り.通常は上記判決確定後速やかに価額弁{貨がされることが期待できるし. 他方.遺留分権利者においては,速やかに目的物の現物返還請求権又は価額弁償請求権を自ら行使することによか上記訴えに係る訴訟の口頭弁論終結の時と現実に価額の弁償がされる時との閑に隔たりが生じるのを防ぐことができるのであるから.価額弁償における価額算定の基準時は現実に弁償がされる時であること(最高裁昭和50年同第920号同51年8月30日第二小法廷判決・民集30巻7号768頁参照)を考慮しでも.上記訴えに係る訴訟において, この時に最も接着した時点である事実審の口頭弁論終結の時を基準として.その額を確定する利益が否定されるものではない。
ウ以上によれば,遺留分権利者から遺留分減殺請求を受けた受造者等が,民法1041条所定の価額を弁償する旨の意思表示をしたが.遺留分権利者から目的物の現物返還請求も価額弁償請求もされていない場合において,弁償すべき額ιっき当事者間に争いがあり,受退者等が判決によってこれが確定されたときは速やかに支払う意思がある旨を表明して.弁償すべき額の確定を求める訴えを提起したときは,受造者等においておよそ価額を弁償する能力を有しないなどの特段の事情がない限り.上記訴えには碓認の利益があるというべきである。
エこれを本伺こについてみるに,前記事実関係等によれば,被上告人Y2に対する確認の訴えは,被上告人Yzの本件逃留分減殺請求により同被上告人に帰属するに至った目的物につき,上告人が民法1041条の規定に基づきその返還義務を免れるために支払うべき額が2770万3582円であることの確認を求める趣旨をいうものであると解されるから. 上告人において上記の額が判決によって確定されたときはこれを速やかに支払う意思がある旨を表明していれば,特段の事情がない限り, 上記訴えには確認の利益があるというべきである。これと異なる見解に立って. 被上告人Y2に対する確認の訴えを却下した原審の判断には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。以上のとおりであるから,論旨は理由があり. 原判決中, 上告人の被上告人らに対する確認請求に係る部分(主文第l項及び第2項)は破棄を免れない。そして, 同部分につき. 更に審理を尽くさせるため,本件を原審に差し戻すのが相当である。よって. 裁判官全員一致の意見で.主文のとおり判決する。(裁判長裁判官古田佑紀裁判官今井功中川了滋竹内行夫)上告代理人0000の上告受理申立て理由2上告人の主張本件において. 被上告人らは故Aの遺言は無効と主張しつつも遺留分減殺崩求権を行使した。そこで.上告人は.被上告人らに対し価額弁償をするとし被上告人Y2に対し遺留分の価額弁償をすべき金額が2770万3582円を超えないこと.被上告人Y1について価額弁償すべき金額がないことの確認を求めた。しかるに原判決は.
① 遺留分減殺請求権は,被相続人の生前処分や遺言によって相続人の遺留分が侵害された場合.遺留分縮利者の意思表示によって,当該生前処分や遺言の効力を遺留分を保全する限度で隠滅するもの裁宇リ例(家事)でその効力は物権的に生じ. 対象財産の権利が遺留分権利者に当然帰属する(最高裁昭和40年(オ)第1084・号同41年7月14日第一小法廷判決・民集20巻6号1183頁)。
② 遺留分減殺請求を受けた者は,民法1041条I項の規定により.追①留分権利者の遺留分に相当する財産の価額を弁償して.財産の返還義務を免れることができるがこの場合.価額弁償は現実に履行するか履行の提供をしなければならない(最高裁昭和53年(オ)第907号同54年7月10日第三小法廷判決・民集33巻5号592貢)o.遺留分権利者は.相手方が価額弁償の履行の提供をしていない場合であっても.遺留分権利者に対して価額を弁償する旨の意思表示をしたときには.遺留分権利者は相手に対し. 遺留分減殺に基づく目的物の現物返還請求権を行使することもできるι.それに代わる価額弁償請求権を行使することもでき.遺留分権利者が相手方に対して価額弁償を請求する権利を行使する旨の意思表示をした場合には遺留分権利者は.逃留分減殺{こよって取得した目的物の所有権及び所有権に基づく現物返還前求権をさかのぼって失いこれに代わる価額弁償請求権を確定的に取得する(最古裁平成18年(受)第1572号同20年1月24日第一小法廷判決・民集62巻l号63頁)。
の3つの判例を引用し.i迫留分に係る価額弁償請求権は.遺留分権利者がこれを行使する旨の意思表示をするまで確定的に発生しているとはいえないから, その意思表示がある前の段階においてその存否又はその金額の確定を求める請求は.現在の権利関係の確定を求める訴えということはできない。Jとし遺留分減殺5it求権者が, 遺留分減殺詰求権を行使したにもかかわらず, 現物返還請求権の行使に若手しておらず,価額弁償請求権を行使する意思表示もしていないときは. 上告人の価額弁償請求権は確定的に発生していないとし上告人の価額弁償請求権の不存在及びその金額の確定を求める訴えは. 将来の権利の確定を求めるもM 、のであるとして.確認の利益を欠くとして. 上告人の諮求を却下した。上告人の請求は現在の法律関係について権利の確定を求めるものであり,適法であり. 本請求を却下とするのは.裁判の拒否である。
3)遺留分減殺請求を受けた者は.遺留分権利者が価額弁償の請求をしたか否かにかかわらず. 自らの権利として価額弁償をし.遺留分を消滅させることができる(前記最高裁判決②)。その場合. 遺留分減殺詰3止を受けた者として.そもそも価額弁償するべき義務があるのか否か, また弁償すべき義務があるとして. いくら価額弁償すべきか. が問題となる。つまり弁償すべき額の有無及びその額が当事者間で争いとなり.、,、-の争いは,権利・義務の有無及び範囲の争いであって.法律上の争いであり.且つ現在の争いである。つまり遺留分滅殺請求縮を消滅させるのには.履行の前提として.履行すべき金額の有無及び額を確定しなければ弁償ができない。遺留分減殺請求を受けた者は.現実の履行(庖行の提供)をすることによって.遺留分権利者の逃留分を消滅させることができるのであるが, 現実の履行をするべきか否か, するとしてもいくらすべきかについて.正確な金額が分からない(確定していない)以上.履行したものが少なかったならば争いになることは明らかであか他方.遺留分を消滅させるために.弁償者が.多めの弁償をせざるを得ないとしたならば.弁{賞者に過大な負担を強いることとなり.不当であることは明らかである。
4)このように本件請求を却下すると. 本件の被上告人Y,は造留分として減殺訂j求する権利があると主張し上告人は遺留分として請求されるものは無いと主張し.争いがあるところ.被上告人Y,は訴えを62・5-6845)裁手リ例(家事)提起することにより解決をする手段はある。しかし上告人から被上告人Y,の遺留分に関する権利は不存在として確認を求める訴えは認めない(不適法)とすることは.上告人の解決の手段を認めないとするものでそれは裁判り拒否である。このことは:被上告人Y2に対し一定の金額を超えて遺留分減殺請求権は存在しないとの判断を求める場合も同様である。以上のように遺留分減殺請求権を「消滅」させるのに現実の履行(履行の提供)が必要であるとしても,その「履行の内容(=具体的金額)Jについて争いがあるならば.当事者間において紛争は解決しない。このような法的紛争を解決することを裁判所が訴の利益なしとして却下することは裁判の拒否に他ならず,国民の裁判を受ける権利を侵筈するものとして. 強法第32条に反する。また原判決は・「逃留分減殺請求を受けた者は,民法1041粂l項の規容により.遺留分権利者の遺留分に相当する財産の価額を弁償して財産の返還義務を免れることができるJとした前記最高裁判決(②)の趣旨にも反する。現実に履行が
4原判決は価額弁償をすべき金額を判決で雌定しでもなされるか否か確実でないとするが,その点は上告人に釈明を求め.履Eつわさがわざ裁判を提.行の意思と能力を確認すれば足りることであり.起して金額の確認を求めること自体,版行の意思と能力があることは明らかである。また存否.金額は事実務の口頭弁論終結時を基準として確定されるものであり.口頭弁論終結時と当該判決の確定l判的が生じる余地均このことは本件に限らずf,{~認訴訟において一般的に生ると指摘するがじることであってそのことをもって上告人に解決の方法を認めないとする理由になるものではない。
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推定相続人廃除申立事件
第1 申立ての趣旨
主文と同旨。
第2 当裁判所の判断1 本件一件記録及び家庭裁判所調査官作成の調査報告書によれば次の事実が認められる。
(1) 当事者等申立人は,平成18年×月×日,当庁において被相続人の遺言執行者に選任された。被相続人Cは,平成18年×月×日に死亡した。被相続人の推定相続人は,長女D,長男である相手方,二男Eである。相手方は,昭和51年に妻Fと婚姻し. Fとの聞に昭和51年に長男を,昭和55年に二男を,昭和60年に長女を,平成元年に二女が出生しているが,平成11年×月にFと調停離婚した。
(2) 被相続人は,遺言公正証書(00地方法務局所属0000作成にかかる平成11年7月×日付平成11年第000号遺言公正証書)において,相手方を被相続人の推定相続人から廃除する旨及びその理由は,相手方が長男でしかも妻子がありながら,相続によって取得した財産を売り渡して得た現金を持って,妻子を残して一人家出し,以後,老齢の被相続人ばかりか妻子の扶養もしないため,人道に反する行為をしたというものである。
(3) 被相続人は,大正13年生まれであり,夫Gとの聞に相手方ら3名の子をもうけたが. Gは,昭和54年に死亡し,その後,しばらくの間,被相続人の次男であるEと同居していたが,昭和田年,相手方家族が被相続人と同居するようになった。亡Gの遺産については,遺産分割協議がされ,遺産のうち,被相続人が畑10筆合計約4509平方メートル,宅地約744平方メートルなどを,相手方は,田3鑑合計約4588平方メートルを, H (Gと前妻との聞の長男)と二男Eは畑562平方メートルずつをそれぞれ相続し,長女Dは何も相続しなかった。被相続人は,昭和55年か昭和56年ころ,リュウマチを発症し, Fの介護を受けて生活していたが,平成10年か11年ころ,リュウマチの症状が悪化し,歩行ができずにベッドでの生活となり,身体障害者1級の認定を受けた。そのころ,相手方は,女性と関係を持ち,自宅を出たり戻ったりするようになり,平成11年×月x日, Fと調停離婚をした。離婚後,被相続人はそのままFとその子どもたちと同居し, Fの介護を受けた。相手方は,離婚前に. Fの求めに応じて相手方名義の自宅の建物をF名義に変更したが,離婚後は,被相続人や子ら4名に対する扶養料は一切支払わなかった。そのため,被相続人が月3万円の生活費をFに渡し, Fのパート収入と併せて家計を維持し,相手方の長男,二男も就職後,被相続人らの家計を援助した。
(4) 相手方は,縦婚の翌月である平成11年×月,被相続人など親族には全く棺談しないまま, Gから相続した回3筆約4588平方メートルを他人に売却した。Fとの離婚後,相手方は,自宅に戻ることはなかった。相手方は,平成17年ころ,相手方の異母兄Hに対し, 00市でアパートを借りる保証人になってもらいたい旨手紙を出したことより所在が判明したが,連絡が付かない状態であり,被相続人が死亡した際にも電報で知らせたが,葬儀には参列しなかった。
(5) 相手方の現在の生活状況の詳細は不明であり,離婚後,韓国人女性と婚姻して2子をもうけ,韓国, 00市内のアパートを行き来しているようであるが,本件推定相続人廃除の申立てに対し,相手方は,相手方自身の生活費が必要であるため,財産を現金化することはやむを得ないし,扶養する余裕もないから,相手方の行為が人道に反する行為には当たらないが,相手方の子らが相続するのはやむを得ない旨主張している。
(6) 以上によれば,相手方は,被相続人の長男であり,妻子とともに被相続人と同居していたところ,被相続人が70歳を超えた高齢であり,身体障害者1級の認定を受けて介護が必要な状態であったにもかかわらず,被相続人の介護を事実上妻に任せたまま出奔し,要と調停離婚した後にも,未成年の子ら3名や被相続人の扶養料を支払うことも全くなく,被相続人の夫から相続した田畑2588平方メートルを被相続人や親族らに知らせないまま売却し,それ以後も被相続人や子らに対して自ら所在を明らかにしたり扶養料を支払うことがなかったというのであるから,相手方のこれら行為は,悪意の遺棄に該当するとともに,相続的共同関係を破壊するに足りる著しい非行に該当するものと認められる。よって,主文のとおり審判する。(家事審判官小川理佳)
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婚姻費用分担審判に対する抗告事件
第l 抗告の趣旨及び理由
抗告人は, 00家庭裁判所平成00年(家)第0000号事件の平成20年9月×日付け審判はこれを取り消し,本件を00家庭裁判所に差し戻すとの裁判を求め,抗告の理由として,要旨,①相手方は,現在,長男を幼稚園に通わせ,長女を保育聞に預けており,就業が可能であるから,少なくとも年収125万円程度の潜在的稼働能力がある,この年収と抗告人の年収をいわゆる標準算定表に当てはめると月額8万ないし10万円となり,相手方が一方的に別居したことをも考慮すれば,抗告人が負担すべき婚姻費用は月額8万円を超えることがないというべきである, ②抗告人は,相手方に対し,平成19年12月×日から平成20年8月×日にかけて7回にわたり合計83万5000円(自動車税分を含めると合計87万円)を支払っているところ,平成20年1月分及び同年2月分の婚姻費用(月額8万円として合計16万円)を控除した後の67万5500円(自動車税分を含めると合計71万円)は,平成20年3月以降の婚姻費用に充当されるべきであると述べた。第2 当裁判所の判断1 事実関係については,次項に補正するほか,原審判の理由欄(1頁21行目から2頁lき行固まで)の記載と同じであるから,これを引用する。(中略)
2
(1) 抗告人が分担すべき婚姻費用の月額については,当裁判所もこれを平成20年3月以降11万円と定めるのを相当と判断するものであって,その理由は,次に補正するほか,原審判の理由欄(2頁15行自から3頁4行固まで)の記載と同じであるからこれを引用する。
(2) 抗告人は,相手方が,長男を幼稚園に通わせ,長女を保育闘に預けていることから,就業が可能であるので,少なくとも年収125万円程度の潜在的稼働能力があるものとして扱うべきである旨主張するが,潜在的稼働能力を判断するには,母親の就労歴や健康状態,子の年齢やその健康状態など諸般の事情を総合的に検討すべきところ,本件では,相手方は過去に就労歴はあるものの,婚姻してからは主婦専業であった者で,別居してからの期聞は短いうえ,子らを幼稚園,保育園に預けるに至ったとはいえ,その送迎があり,子らの年齢が幼いこともあって,いつ病気, 事故等の予測できない事態が発生するかも知れず,就職のための時間的余裕は必ずしも確保されているとはいい難く,現時点で相手方に稼働能力が存在することを前提とすべきとの抗告人の主張は探用できない。また,抗告人は,相手方が一方的に別居したことを考属すべきであるとも主張するが,一件記録によれば,夫婦聞の口論あるいはののしり等が高じた末,相手方が腹に据えかねて自宅を出て行った面もあり,一方的に相手方に非があるともいえないから,抗告人の上記主張も採用し得ない。
(3)抗告人は,上記のとおり相手方に対し,平成20年3月からの婚姻費用を支払うべき義務があるところ, 一件記録によれば,同時期以降に純然たる婚姻費用として支払われた金員は,①平成20年5月x日ころの4万5500円(ちなみに,抗告人は,相手方において使用中の自動車に関する平成初年度自動車税額3万4500円を支払ったことにより,同額の婚姻費用が既払になったものと主張するが,上記自動車の所有者は抗告人であるから,その自動車税の負担は婚姻費用の分担金の支払といえず,その主張は理由がない),②同年6月×日ころの8万円,③同年7月×日の8万円,④同年8月×日の8万円の合計28万5500円であると認められ,これ以外の金員が婚姻費用として既払になったものとは認め難い。抗告人は,平成19年12月から平成20年1月にかけて支払った金員を同年3月以降の婚姻費用に充当すべき旨主張するが,一件記録によれば,抗告人主張の金員については,相手方は内13万円は婚姻費用としても認めるものの,その余は立替払等への弁済と主張していることが認められるのであって,その支払時期が本件事件の支払期間以前であることを考慮すれば,抗告人の主張は採用できないものである。
3 以上によれば,本件抗告は,上記説示の範囲で理由があるから,家事審判規則19条2項により,原審判を変更することとし,主文のとおり決定する。(裁判長裁判官松本哲也裁判官白石研二岡口基一)
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登記申請却下処分取消請求事件
上告代理人0000の上告受理申立て理由について
1 本件は,登記義務者である上告人が,登記権利者と共同して,上告人名義の建物について所有権移転登記を申請したところ,高知地方法務局登記官から不動産登記法(以下「法Jという。)61条所定の登記原因を証する情報(以下「登記原因証明情報Jという。)の提供がないことを理由に申請を却下する旨の決定(以下「本件処分」という。)を受けたため,その取消しを求める事案である。
2 原審の適法に確定した事実関係の概要は,次のとおりである。
(1) 上告人ほか4名の相続人の間で,平成18年6月15日, 高知家庭裁判所において遺産分割j調停が成立し,第1審判決別紙のとおりの調停調書(以下「本件調書」という。)が作成された。本件調書には,上告人が,被相続人の遺産である土地を取得した代償として,他の相続人2名(以下「本件譲受相続人」という。)に対し,同年8月末日限り,上告人所有の建物(以下「本件建物」という。)を持分2分のlずつの割合で譲渡する旨の条項(以下「本件条項」という。)かある。なお,本件調書において,本件建物の譲渡は,上告人の本件譲受相続人に対する代償金支払義務があることを前提としてその支払に代えて行われるものとはされておらず,また,その譲渡に関し, 本件譲受相続人から上告人に対して反対給付が行われるものとはされていない。
(2) 上告人は,本件譲受相続人と共同して,平成18年9月11日, 本件建物につき,登記原因及びその日付の記載を「平成18年6月15日遣産分割による代償譲渡」とし,登記原因証明情報として本件調書を添付した所有権移転登記の申請(以下「本件申請Jという。) をした。
(3) 高知地方法務局登記官は,平成18年10月5日,本件申請につき,添付された本件調書には登記の原因となる事実又は法律行為(法5粂2項)の記載がなく,登記原因証明情報の提供がないことを理由として,法25条9号の規定によりこれを却下する旨の本件処分をした。
3 原審は,上記事実関係の下において,本件処分は適法であると判断した。その理由の要旨は,次のとおりである。本件申請において登記原因証明情報として添付された本件調書中の本件条項には,上告人が遺産取得の代償として本件建物を譲渡する旨が記載されているものの,それがいかなる法律行為によるものであるかが特定明示されていない。本件条項をみても,本件建物の譲渡が有{賞であるか無償であるか,有償であるとして,だれとの聞でどのような対価関係に立つものであるか等が必ずしも明らかではなく,物権変動の原因となる法律行為の特定がされているとは認められない。したがって,本件調書には,登記の原因となる法律行為を特定する記載がなく,本件調書は登記原因証明情報とはなり得ないので,本件申請は登記原因証明情報の提供を欠くというべきである。
4 しかしながら,原審の上記判断は是認することができない。その理由は,次のとおりである。前記事実関係によれば,本件条項による合意は,上告人が遺産分割によって被相続人の遺産である土地を取得する代償として本件建物を本件譲受相続人に譲渡することを内容とするものであり,その譲渡は,代償金支払義務があることを前提としてその支払に代えて行われるものとはされておらず,また,本件建物の譲渡自体について本件譲受相続人から上告人に対して反対給付が行われるものとはされていないというのであるから,上記の合意は,上告人が本件捜受相続人に対し,遺産取得の代償として本件建物を無償で譲渡することを内容とするものであるということができる。そうすると,本件調書中の本件条項の記載は, 登記の原因となる法律行為の特定に欠けるところがなく,当該法律行為を証する情報ということができるから, 登記原因証明情報の提供を欠くことを理由に本件申請を却下した本件処分は違法というべきである。
5 以上と異なる原審の判断には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。論旨はこの趣旨をいうものとして理由があり,原判決は破棄を免れない。そして,以上説示したところによれば,本件処分の取消しを求める上告人の請求は理由があるから,これを棄却した第1審判決を取り消し,上告人の請求を認容すべきである。よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。(裁判長裁判官泉徳治裁判官甲斐中辰夫涌井紀夫宮川光治)
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2012年2月26日 | コメント/トラックバック(0) |
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