婚姻費用分担審判に対する抗告事件

第l 抗告の趣旨及び理由
抗告人は, 00家庭裁判所平成00年(家)第0000号事件の平成20年9月×日付け審判はこれを取り消し,本件を00家庭裁判所に差し戻すとの裁判を求め,抗告の理由として,要旨,①相手方は,現在,長男を幼稚園に通わせ,長女を保育聞に預けており,就業が可能であるから,少なくとも年収125万円程度の潜在的稼働能力がある,この年収と抗告人の年収をいわゆる標準算定表に当てはめると月額8万ないし10万円となり,相手方が一方的に別居したことをも考慮すれば,抗告人が負担すべき婚姻費用は月額8万円を超えることがないというべきである, ②抗告人は,相手方に対し,平成19年12月×日から平成20年8月×日にかけて7回にわたり合計83万5000円(自動車税分を含めると合計87万円)を支払っているところ,平成20年1月分及び同年2月分の婚姻費用(月額8万円として合計16万円)を控除した後の67万5500円(自動車税分を含めると合計71万円)は,平成20年3月以降の婚姻費用に充当されるべきであると述べた。第2 当裁判所の判断1 事実関係については,次項に補正するほか,原審判の理由欄(1頁21行目から2頁lき行固まで)の記載と同じであるから,これを引用する。(中略)
2
(1) 抗告人が分担すべき婚姻費用の月額については,当裁判所もこれを平成20年3月以降11万円と定めるのを相当と判断するものであって,その理由は,次に補正するほか,原審判の理由欄(2頁15行自から3頁4行固まで)の記載と同じであるからこれを引用する。
(2) 抗告人は,相手方が,長男を幼稚園に通わせ,長女を保育闘に預けていることから,就業が可能であるので,少なくとも年収125万円程度の潜在的稼働能力があるものとして扱うべきである旨主張するが,潜在的稼働能力を判断するには,母親の就労歴や健康状態,子の年齢やその健康状態など諸般の事情を総合的に検討すべきところ,本件では,相手方は過去に就労歴はあるものの,婚姻してからは主婦専業であった者で,別居してからの期聞は短いうえ,子らを幼稚園,保育園に預けるに至ったとはいえ,その送迎があり,子らの年齢が幼いこともあって,いつ病気, 事故等の予測できない事態が発生するかも知れず,就職のための時間的余裕は必ずしも確保されているとはいい難く,現時点で相手方に稼働能力が存在することを前提とすべきとの抗告人の主張は探用できない。また,抗告人は,相手方が一方的に別居したことを考属すべきであるとも主張するが,一件記録によれば,夫婦聞の口論あるいはののしり等が高じた末,相手方が腹に据えかねて自宅を出て行った面もあり,一方的に相手方に非があるともいえないから,抗告人の上記主張も採用し得ない。
(3)抗告人は,上記のとおり相手方に対し,平成20年3月からの婚姻費用を支払うべき義務があるところ, 一件記録によれば,同時期以降に純然たる婚姻費用として支払われた金員は,①平成20年5月x日ころの4万5500円(ちなみに,抗告人は,相手方において使用中の自動車に関する平成初年度自動車税額3万4500円を支払ったことにより,同額の婚姻費用が既払になったものと主張するが,上記自動車の所有者は抗告人であるから,その自動車税の負担は婚姻費用の分担金の支払といえず,その主張は理由がない),②同年6月×日ころの8万円,③同年7月×日の8万円,④同年8月×日の8万円の合計28万5500円であると認められ,これ以外の金員が婚姻費用として既払になったものとは認め難い。抗告人は,平成19年12月から平成20年1月にかけて支払った金員を同年3月以降の婚姻費用に充当すべき旨主張するが,一件記録によれば,抗告人主張の金員については,相手方は内13万円は婚姻費用としても認めるものの,その余は立替払等への弁済と主張していることが認められるのであって,その支払時期が本件事件の支払期間以前であることを考慮すれば,抗告人の主張は採用できないものである。
3 以上によれば,本件抗告は,上記説示の範囲で理由があるから,家事審判規則19条2項により,原審判を変更することとし,主文のとおり決定する。(裁判長裁判官松本哲也裁判官白石研二岡口基一)

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