推定相続人廃除申立事件

第1 申立ての趣旨
主文と同旨。
第2 当裁判所の判断1 本件一件記録及び家庭裁判所調査官作成の調査報告書によれば次の事実が認められる。
(1) 当事者等申立人は,平成18年×月×日,当庁において被相続人の遺言執行者に選任された。被相続人Cは,平成18年×月×日に死亡した。被相続人の推定相続人は,長女D,長男である相手方,二男Eである。相手方は,昭和51年に妻Fと婚姻し. Fとの聞に昭和51年に長男を,昭和55年に二男を,昭和60年に長女を,平成元年に二女が出生しているが,平成11年×月にFと調停離婚した。
(2) 被相続人は,遺言公正証書(00地方法務局所属0000作成にかかる平成11年7月×日付平成11年第000号遺言公正証書)において,相手方を被相続人の推定相続人から廃除する旨及びその理由は,相手方が長男でしかも妻子がありながら,相続によって取得した財産を売り渡して得た現金を持って,妻子を残して一人家出し,以後,老齢の被相続人ばかりか妻子の扶養もしないため,人道に反する行為をしたというものである。
(3) 被相続人は,大正13年生まれであり,夫Gとの聞に相手方ら3名の子をもうけたが. Gは,昭和54年に死亡し,その後,しばらくの間,被相続人の次男であるEと同居していたが,昭和田年,相手方家族が被相続人と同居するようになった。亡Gの遺産については,遺産分割協議がされ,遺産のうち,被相続人が畑10筆合計約4509平方メートル,宅地約744平方メートルなどを,相手方は,田3鑑合計約4588平方メートルを, H (Gと前妻との聞の長男)と二男Eは畑562平方メートルずつをそれぞれ相続し,長女Dは何も相続しなかった。被相続人は,昭和55年か昭和56年ころ,リュウマチを発症し, Fの介護を受けて生活していたが,平成10年か11年ころ,リュウマチの症状が悪化し,歩行ができずにベッドでの生活となり,身体障害者1級の認定を受けた。そのころ,相手方は,女性と関係を持ち,自宅を出たり戻ったりするようになり,平成11年×月x日, Fと調停離婚をした。離婚後,被相続人はそのままFとその子どもたちと同居し, Fの介護を受けた。相手方は,離婚前に. Fの求めに応じて相手方名義の自宅の建物をF名義に変更したが,離婚後は,被相続人や子ら4名に対する扶養料は一切支払わなかった。そのため,被相続人が月3万円の生活費をFに渡し, Fのパート収入と併せて家計を維持し,相手方の長男,二男も就職後,被相続人らの家計を援助した。
(4) 相手方は,縦婚の翌月である平成11年×月,被相続人など親族には全く棺談しないまま, Gから相続した回3筆約4588平方メートルを他人に売却した。Fとの離婚後,相手方は,自宅に戻ることはなかった。相手方は,平成17年ころ,相手方の異母兄Hに対し, 00市でアパートを借りる保証人になってもらいたい旨手紙を出したことより所在が判明したが,連絡が付かない状態であり,被相続人が死亡した際にも電報で知らせたが,葬儀には参列しなかった。
(5) 相手方の現在の生活状況の詳細は不明であり,離婚後,韓国人女性と婚姻して2子をもうけ,韓国, 00市内のアパートを行き来しているようであるが,本件推定相続人廃除の申立てに対し,相手方は,相手方自身の生活費が必要であるため,財産を現金化することはやむを得ないし,扶養する余裕もないから,相手方の行為が人道に反する行為には当たらないが,相手方の子らが相続するのはやむを得ない旨主張している。
(6) 以上によれば,相手方は,被相続人の長男であり,妻子とともに被相続人と同居していたところ,被相続人が70歳を超えた高齢であり,身体障害者1級の認定を受けて介護が必要な状態であったにもかかわらず,被相続人の介護を事実上妻に任せたまま出奔し,要と調停離婚した後にも,未成年の子ら3名や被相続人の扶養料を支払うことも全くなく,被相続人の夫から相続した田畑2588平方メートルを被相続人や親族らに知らせないまま売却し,それ以後も被相続人や子らに対して自ら所在を明らかにしたり扶養料を支払うことがなかったというのであるから,相手方のこれら行為は,悪意の遺棄に該当するとともに,相続的共同関係を破壊するに足りる著しい非行に該当するものと認められる。よって,主文のとおり審判する。(家事審判官小川理佳)

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