離婚請求事件、同反訴請求事件

第1
申立て本訴被告(反訴原告。以下,単に「被告」という。)は,本件訴訟が係属していることを前提に,主文第2項掲記の住面をもって本件訴訟につき口頭弁論期日の指定を求めた。
第2 事案の概要
1 前提事実
(1) 本訴原告(反訴被告。以下,単に「原告」としろ。)と被告は,平成14年×月×日婚姻の届出をした夫婦であった(甲1)。
(2) 原告は,平成19年×月×日被告との離婚を求める本訴を提起し,その後.被告も同年×月×日,原告の不法行為によって離婚に至ったことによる慰謝料請求の予備的反訴を提起した(顕著な事実)。
(3) 当裁判所の口頭弁論調岳によれば,平成20年×月×日に聞かれた第3回口頭弁論期日において,原告,同訴訟代理人,被告及び利害関係人C各出頭の上,当事者及び利害関係人の間で,要旨,次のとおりの訴訟上の和解(以下「本件和解」という。)が成立したことになっている。なお,利害関係人は,原告の現在の交際相手である(原告本人)。① 原告と被告は,和解離婚する。② D (平成19年×月×日生)の親権者を原告と定める。③ 原告は,被告に対し,和解金として金120万円の支払義務のあることを確認する。④利害関係人は,被告に対し,前項の債務を連帯保証する。⑤原告と利害関係人は,被告に対し,連帯して,第③項の金員を,次のとおり分割して支払う。平成20年×月末日限り,金10万円平成20年×月から平成24年×月まで毎月末日限り,金2万円⑥ 上記分割金の支払を怠り,その金額が4万円に達したときは期限の利益を失い, 原告と利害関係人は,被告に対し,残金に対する期限の利益を失った日の翌日から支払済みまで・年10ノ宅一セントの遅延損害金を支払う。⑦ 被告は,その余の請求を放棄する。③ 原告と被告との間,被告と利害関係人との聞には,本和解条項に定めるほかに債権債務がないことを確認する。⑨訴訟費用及び和解費用は各自の負担とする。
2 被告の主張被告は,たしかに本件訴訟で和解はしたが,上記口頭弁論調書に記載されたような和解をした覚えはない。すなわち,本件和解条項第①項によれば,直ちに離婚したことになっているが,被告は和解金が全額支払われた時点で離婚をする趣旨であった。また,本件和解条項第⑧項,同第⑨項もそのような和解をした覚えがない。
3 原告の反論本件訴訟は,本件和解が成立したことによって,終了した。
第3 裁判所の判断
1 当裁判所の口頭弁論調書によれば.本件和解が成立したことによって,本件訴訟は終了しており, 口頭弁論の方式に関する規定の遵守は調書によってのみ証明することができる上(民事訴訟法160条3項).本件和解が成立していないとする証拠もない。もっとも.被告の真意は,和解の成立自体を争うものではなく,和解の内容を争うことにあるのかもしれないが,被告主張のように和解金を支払った時点で離婚が成立するような条件付きの身分行為を成立させることは.あり得ないのであり,また.本件和解条項第③項のいわゆる清算条項,同第⑨項の訴訟費用の合意は,どのような和解においても一般的に合意されるもので, これを欠くような和解はほぼあり得ないと思われる。いずれにしても,当裁判所の口頭弁論調書記載の本件和解条項の記載に誤記等はなく, この内容で和解が成立しており, これに反する証拠はない。
2 また,被告は,本件和解について錯誤があると主張する趣旨かもしれないが,本件和解は,被告が離婚に同意する代わりに,原告及び原告の現在の交際相手であった利害関係人に対して,連帯して和解金120万円の支払義務を課すというものであって,利害関係人の連帯保証を認めさせた点で,判決よりも被告に有利な面があり,かつ,和解金の金額自体には被告が不服を持っていないことが明らかであること(本件期目指定申立て後に実施された被告本人尋問の結果)に照らすと,本件和解について,上記被告の主張する点を含め,特段の錯誤があったとは認められず, 被告の錯誤を認めるに足りる証拠はない。
3 なお,被告の書面には,それ以外にも他々不服な点の記載があるが,本件和解の成否及びその効力の問題と直接関係するものとは認められない。
4 したがって,本件訴訟は,本件和解の成立によって,終了したことが明らかであって,本件和解について無効となるような事情は認められないから,主文のとおり判決する。(裁判官松谷佳樹)

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