離婚無効確認請求上告事件

上告代理人0000,同000の上告理由について

原審の適法に確定した事実関係によれば, (ー)被上告人と中野勇作(以下「勇作」という。)とは昭和15年11月25日婚姻の届出をした夫婦であったところ,同48年2月20日付で協鵠離婚の届出(以下「本件離婚」という。)がされ,その旨戸籍に記載されている, (二)勇作と上告人は昭和48年2月21日婚姻の届出(以下「本件婚姻」という。)をした, (三)勇作は昭和56年8月26日死亡した, (四)彼上告人は,昭和56年10月15日00地方検察庁検察官(以下「検察官」という。)及び上告人を共同被告として訴えを提起し,検察官に対する関係においては,本件離婚を無効とする旨の判決色上告人に対する関係においては,本件婚姻を取消す旨の判決をそれぞれ求めた, というのである。

ところで、本件離婚の無効確認鯖求と本件婚姻の取消請求とは,法律上それぞれ独立の附求であって,固有必要的共同訴訟に当たらないのはもとより,いわゆる類似必要的共同訴訟にも当たらないと解されるから,本件訴訟の目的が検察官及び上告人の両名全員につき合ーにのみ確定すべき場合には当たらないとした原審の判断は,正当として是認することができる。論旨は,独自の見解に基づき原判決を論難するものにすぎず,採用することができない。

よって,民訴法401条,95条,89条に従い,裁判官全貝一致の意見て、主文のとおり判決する。(裁判長裁判官谷口正孝裁判官角田穂次郎高島益郎大内恒夫佐藤哲郎)

上告代理人0000,同000の上告理由

ー原判決には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の解釈,適用を誤った違法がある。以上,その理由を述べる。

二原判決までの経過概要

1 本件訴は,被上告人が検察官と上告人を共同被告として,対被告検察官との関係においては,被上告人と亡中野勇作(以下,亡勇作という)聞の離婚の無効確認を鵬求し,又対被上告人との関係においては被上告人と亡勇作との右離婚が無効であることを前提とした重婚を理由に,上告人と亡勇作との後婚たる婚姻の取消を鯖求したものである。

2 一審の審理では,被告検察官は,冒頭に答弁舎を提出しただけで,ぞれ以降判決に至るまで何らかの主張立証はおろか,弁論への出頭すらせず,上告人において,検察官が被告とされている離婚無効確認精求事件についても,事実上司直) 反証してきたものである。一審においては,特に,本件二つの筒求に関し,共同訴訟ないし補助参加等の関係の求釈明もなされず,又分離されることもないまま共同訴訟として訴鐙追行され判決に至った。

3 上告人は,被上告人の右鰭求をいずれも包容した一審判決に対し, 彼役訴人の敗訴部分について取消す。被控訴人の精求を棄却する」旨の位訴を申立てた。の第一審判決が確定し,上告人においても人事訴絞手続法18粂1項の地問により右判決の効力を受け,本件離婚が無効であることを争い得ない,としてこれを理由に,重婚の関係にある亡勇作と上告人の婚姻の取消餅求が認められる旨判示し, 上告人の往訴を棄却したものである。

三離婚無効の部分に関する判決の確定の遮断

1 原審において,上告人は,原判決のいう離婚無効の判決部分の確定の成否に関し,本件離婚無効の矧求と,この離婚無効による重婚を理由とした婚姻取消の簡求は必要的共同訴E去の関係にあり,従って.上告人による婚姻取i自の部分の判決に対する控訴(本件控訴)によって,本件離婚無効に関する判決部分についても確定は遮断されている旨主張してきた。

2 これに対し,原判決は.本件の各附求は,本件離婚無効が本件婚姻取消鮪求の前縫問題(先決事項)となっているとはいえ.現行法制のもとにおいては,いまだ論理的要求にすぎないものというべきであるから.本件各Il’f求が検察官及び鐙訴人の両名全員につき合ーにのみ確定すべき場合には当らない旨示し,前記のとおり,本件離婚無効の部分の判決の確定を認定した。

3 しかしながら,後配のとおり,原判決は,必要的共同訴松の範囲に闘し,民事訴訟法第62粂に規定する「合ーにのみ確定すべき場合Jの解釈を怒り,その結果判決確定のがカに関する法令の適用を誤ったものである。

四必要的共同訴訟の成否

l 民事訴際法第62粂の「合ーにのみ確定すべき場合jの解釈については変遷があり,現在においても様々な異論がある。「合一確定」とは. 一般に.判決が法律上合ーにのみ確定すべき場合,すなわち共同訴訟人の1人についてなされた判決の既判カがいに他に及ふ・関係があって,その問矛盾した判決をなしえない場合と解されている。しかし.こうした一般的抽象的基滋による判例理論に仏具体的訴訟において必らずしも一貫したものがなし結局具体的事件における偲別決定的になっているのが実情である. (例え.共有関係訴11)実際の具体的訴訟にあっては,必要的共同訴訟と通常共同訴訟の中間に位置する訴訟が多数存在する。そうした現状にあって,司法の効率的な運営あるいは具体的事案の解決の妥当性と合理性からみて. 偲の訴絞1個の判決で解決されるべきものが多々あるとき,従前の「共同訴松人間に互いに判決の既判カが及ふ・場合」という基単で必要的共同訴去の範囲を形式的に函することは不合理な結果を招いている.

2 原判決は.合ーにのみ確定すべき場合とは,訴の縫起あるいは判決が各共同訴松入金貝につき合ーにのみなされるべきであり,区々となってはならない法律上の必要がある場合をいうのであって,単に事実上,又は論理上合一確定の要慨があるというだけでは足りないと解すべき」と判示している。しかしながら,右にいう「法律上の必要」について,必らずしも既判力の抵触回避という訴松法的観点からのみならず,訴訟の目的が共同訴訟人につき実体法上合ーに裁判されなければならない場合を含むと解すべきである。

3 以上のことを前提に,本件二つの筒求の関係を具体的に分析してみる。

(1) 能婚無効の餅求と婚姻取消の鯖求一般的には必らずしもl個の事実関係にあるわけでなく,原判決のいうように.法律上はそれぞれ別倒独立の紡求として別個独立の訴訟物であ」る。

(2) しかしながら,本件事案のように,縫婚無効による窓婚を理由とした婚姻取消鯖求の場合は,前者は後者の簡求の前提間短(先決事項)となっているのであり,まさに実体上1個の事件であり,笑体法上は合ーに確定すべき必要がある。

(3) しかも,離婚無効の判決は既判力が拡張され,対世的効力が法律上められることになっている(人事訴管法18条)。

(4) 原判決は当事者適格もそれぞれ法定されていること,訴提起も判決も別個独立になされうることをその理由に挙げているが,これは一般論としてはともかく,本件具体的事案に関する「合一確定の必要Jの成否の判断に際しては,聞をもって聞に答える式の論法で,何ら理由とならない。

(5) 原判決め判示するように,仮に,本件において,綾上告人が前婚の夫を相手に前婚の離婚無効確包の筒求を別個独立して先に提起し,判決を確定させた場合,右離婚無効の裁判に全〈関与し得ない後婚の配偶者(上告人の立場)には,何らの反論防禦の機会が与えられないまま,婚姻取闘の求に敗脈しなければならなくなる。

(6) 前例の場合に, 夫が生存しているならば,後婚の配偶者lま前婚の離婚無効確認の公の存在を知り,それに参加しうる途は残されているともいえるが,本件の如」が死亡した後に縫起された検察官を被告とする離婚無効確認の訴が別途に提起された場合には,その訴松の存在すら知らないまま,第三者間の裁判の結呆の効力のみを受忍せざるを得ないことになり,このことの不合理性,不公正さは明らかであろう。しかも,本件の如被告たる検察官が,一片の答弁舎の徒出のみでその他一切の訴訟追行,調査すらもなされずに終結されたような場合を考えるとその不合理性は一層明らかであろう。

4 (1) 以上のとおり.一般的に離婚無効と婚姻取消の二つの荷求が「合一確定すべき場合」にあたるとはいえないとしても,前婚の荷量婚無効の筒求と,それに基づく盤婚を理由とした後婚の婚姻取消の請求との聞については.単に鈴理上にとどまらず,両公当事者に爽体法上,公法上合一確定をする必要が臨められるのであって,間有必要的共同訴訟にあたると解すべきである.

(2) 仮に固有必要的共同訴鮫でないとしても,会社合併無効の訴(商法104条)や株主総会決犠無効確ftA.の訴(商法252条)などにuめられているように,人事訴訟法18条の準用によって判決の既判力が拡張され対世的効力が認められる離婚無効確認の楕求と,それを前提とした婚姻取消の概求については類似必要的共同訴訟と解されるべきである。

(3) 更に,これが従前の必要的共同訴伝の範囲に認められないとしても.前記3で指摘した重大な不合理性を有した本件二つの附求について,原判決も包めている「鈴理上の合一確定の要鰍jは勿論,実体法上も合一確定が認められるべきである以上,民事訴訟法第62条と同第61粂の規定の中間領域の訴伝として,必要的共同訴訟の規定を準用して,取扱うべきである.右ニつの筒求が別訴として縫起きれればともかし本件のように, 同一郎松手続において審理される場合には,民訴法第62粂を準用して各筒求につき実体法上論理的に合一的判断がなされるべきであって,そのことは民訴法第71粂がすでに認めているところの手続きでもある。

五原判決の鋲りしかるに,判決は,本件二つの務求の特殊な事情を深〈検討することなし必要的共同訴訟の範聞について抽象的形式的な基調高に拘泥し,民隊法第62条の「合ーにのみ確定すべ〈場合jの具体的解釈を鋲り.判決確定の効力の適用を絞った違法がある。しかも,本件は複雑な背景的事情と被上告人らの虚偽の主張や偽装工作など極めて難解な事実関係があるにもかかわらず.審ではこれについて上告人において請求したにもかかわらず金〈主張立証をする機会を与えず事実審理をしないままに,前記のとおり,事実関係につき判断することもなく鐙訴棄却の判決を下したものである。従って,右法令解釈適用の限りが判決の結果に影響を及ぽすものであることは明白であり.よって原判決は違法であって破棄されるべきものである。

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