遺言確認申立却下審判に対する抗告事件

第1 抗告の趣旨及び理由
本件抗告の趣旨及び理由は,別紙「即時抗告申立書」のとおりである。
第2 事案の慨要
1 本件は,追言者がした別紙の危急時遺言(本件遺言)について,その証人となった抗告人が遺言の確認を求める事案である。
2 原審は,本件遺言が遺言者の真意に基づいてされたものと認めることは困難であるとしてJ本件申立てを却下したところ,抗告人がこれを不服として本件抗告を申し立てた。
第3 当裁判所の判断
1 当裁判所は,原審と異なり,遺言者は,遺言執行者としてC弁護士を指定する部分を除いて,本件遺言をしたことを確認すべきものと判断した。
2 本件記録によると,以下の事実が認められる。
(1) 遺言者は,平成20年×月×日に死亡した。
(2)遺言者は,長年入院をしていたが,平成20年初めころに退院し最後の住所地に所在する口口口(本件居室)に住むようになり,遺言者の義姉であるDの世話になりながら静養を続けていた。
(3) Dは,抗告人(抗告人は,本件居室の所在するマンションを管理する00の管理ディレクターを務めている。)から紹介を受けたC弁護士に遺言者の遺言書の作成について相談をしていたところ,同年×月×日ころ,遺言者の容態が悪化したため,抗告人に危急時遺言の作成を依頼し,抗告人はC弁護士に相談し,遺言書の内容について聞いた上で下書きを作成した。
(4) 抗告人及び00の社員であるE. Fは,同月×日本件居室に赴き,遺言者にDから依頼されて遺言芭を作成しにきたと伝えたところ,遺言者は,その財産をすべてDに贈りたいと述べたので,抗告人は,これをメモとして書き取った上,このメモを遺言者に読み聞かせ,遺言者の了解を得た。その後,抗告人は,本件居室から出てC弁護士に電話をし,遺言書の作成方法を聞いた上で,本件遺言書を作成し,抗告人E及びFは,本件遺言密の筆記が正確なことを承認し,証人として署名した。本件遺言書には.c弁護士を遺言執行者に指定する旨の記載があるが,抗告人が遺言者から話を聞いたときには,遺言者はそのようなことを述べなかった。
3 家庭裁判所は,危急時遺言が遺言者の真意に出たものであるとの心証を得なければこれを確認することはできないが,この確認には既判力がなく,他方でこの確認を経なければ遺言は効力を生じないことに確定するから,真意に出たものであるとの心証は,確信の程度に及ぶ必要はないものと解される。本件では,本件遺言の証人である抗告人及びFは,遺言者が本件遺言の内容を話し,これを抗告人が書き取り,書き取った内容を読み上げて遺言者の確認を得た旨を述べ.Eは遺言者は話をしなかったと述べているものの,抗告人が遺言の内容を記載した書面を読み聞かせ,遺言者がこれに額いたと述べている。証人らの供述には徴妙な違いはあるものの,証人となった3名が遺言者との聞に特別の利害を有していることを示す証拠はないから,上記2のとおりの事実を認定できるというべきであり,本件遺言のうち,遺言執行者の指定に関する部分を除けば,これが遺言者の真意に出たものであると認めるのが相当である。なお,上記認定のとおり,本件遺言のうち,遺言執行者の指定に関する部分は遺言者が口述していないもので,その真意に出たものとは認められない。
4 よって,主文のとおり決定する。(裁判長裁判官一宮なほみ裁判官田川直之小野瀬厚)

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