請求すべき按分割合関する処分申立事件

第1 申立ての趣旨等
申立人と相手方は,昭和52年×月×日に婚姻し,共同して婚姻生活を営み夫婦として生活していたが,平成19年4月×日に協議離婚した。申立人と相手方との聞の離婚成立日,離婚時年金分割制度に係る第一号改定者及び第二号改定者の別,対象期間及び按分割合の範囲は別紙第1のとおりであるから,申立人と相手方との聞の別紙第l記載の情報に係る年金分割についての請求すべき按分割合を.0.5と定めるとの審判を求める。
第2 当裁判所の判断
l 本件記録によれば,次の事実を認めることができる。
(1) 申立人と相手方は,昭和52年×月×日に婚姻し,長男c(昭和53年×月×日生)及び長女D (昭和55年×月×日生)を設けたが,平成19年4月×日に協議離婚した。
(2) 離婚時年金分割制度に係る第一号改定者及び第二号改定者の別,対象期間及び按分割合の範囲は別紙第lのとおりである。
(3) 申立人と相手方は,平成19年4月×日ころ.「平成19年×月より支給される共済年金は,全額Bが受け取るものとする。年金分割制度によるAの取り分は,これを全て放棄する。」との条項を含む離婚に伴う財産分与が記載されている別紙第2の離婚協議書を連名で作成した。
(4) 平成16年×月ころ,相手方は,相手方が平成18年度から受領する年金について,その半分を申立人の生活費のために分与することを約束し,その旨の同月×日付け覚書を作成し,これを申立人に交付した。しかし,いざ,離婚する段になって,申立人と相手方が財産についての話しゃ,年金についての話し合いをすることになり, 申立人が「年金を欲しい。」と云ったら,相手方は.「駄目だ。」と云い出した。
(5) 離婚協議書は,申立人と相手方とが話し合いをした後に,申立人が離婚協議書を作成した数日前に下書きを書き,相手方にそのとおり清書してもらった上で,連名で作成した。話し合った上で離婚協議書を作成したので,作成時に,申立人と相手方との間には何らのトラブルもなかった。
(6) 申立人は,相手方から離婚協議書を昏かないと離婚届出に印を押さないと言われたので作成したが,離婚協議書により譲り受けた不動産は,相手方の浮気の代償としてもらったものであり,離婚については何ももらっていない,平成16年×月に作成された覚書では,平成18年度より受領する年金について,その半額を生活費として分与すると記載されているので,年金分割についての合意がなされていると主張する。
2 以上を前提に,検討するに,離婚当事者は,協議により按分割合について合意することができるのであるから,協議により分割をしないと合意することができるところ,本件においては,申立人と相手方との聞には,離婚協議書による離婚時年金分割制度を利用しない旨の合意がある。このような合意は,それが公序良俗に反するなどの特別の事情がない限り,有効であると解される。上記認定したとおり,当該離婚協議書は,申立人と相手方が話し合った上で,申立人が数日の熟慮期間をおいて下書きをしたことに基づいて作成されたものであり,そして,その作成時には,申立人と相手方との聞に何らのトラブルもなかったのであるから, この合意を無効とする事情は存しないといわざるを得ない。なお,申立人は,平成16年の覚書について主張しているが,同覚書は,離婚時年金分割制度が施行される前のものであること,離婚協議舎においても「財形年金の受け取り分は.Aが半額を受け取るものとする。」と規定されており,覚書の年金についての配慮がなされていることを併せ勘案すると,平成16年の覚書を離婚時年金分割制度における合意と認めることはできない。
3 よって,主文のとおり審判する。(家事審判官布村重成)

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