請求すべき按分割合に関する処分申立事件

第1 申立ての趣旨
主文と同じ
第2 申立人の主張
l 申立人と相手方は,昭和52年×月×日に婚姻したが,平成19年11月×日,離婚の裁判が確定した。申立人と相手方との聞の離婚時年金分割制度に係る第一号改定者及び第二号改定者の別,対象期間及び按分割合の範囲は,別紙のとおりである。
2 年金分割制度の趣旨は,婚姻中の年金保険料の納付に対する互いの貢献を評価することにより,縦婚後の夫婦問での年金受給額の格差を是正し,老後の生活保障を図ることにあるから, 本件における按分割合は0.5とすべきである。
3 相手方は,年金保険料の納付に対する申立人の寄与を争うが,申立人と相手方が別居を開始した平成6年×月ころ当時,当事者間の長女は16歳であり,申立人が長女を監護養育し,相手方が養育等に必要な生活費を送金していた。また,長女は, 19歳であった平成9年X月から米国へ留学しているが,その学費は相手方が援助し,申立人が生活費月約10万円を送金していた。したがって,申立人は,別居後も,子の養育にあたってきたものであり,相手方の年金保険料納付に対し寄与がないとはいえない。
4 よって,主文同旨の審判を求める。
第3 相手方の主張
1 申立人と相手方は,申立人が離婚調停の申立てをした結果,平成6年×月から離婚まで,別に購入したマンションで申立人が生活するという形での別居生活が続いた。この間,申立人は,相手方が送り続ける生活費で生活し,配偶者としてのつとめを一切なさなかった。このように,申立人は,婚姻期間約30年間のうち約13年間は相手方に対し何らの協力もしていなかったのであるから, 請求すべき按分割合を定めるにあたっては,別居期間中の保険料納付に対する申立人の寄与がゼロであったことが考慮されるべきである。2 仮に,申立人が長女の養育に協力していたとしても,長女が成人して以降の9年間は,申立人による夫婦協力の事実は一切ないというべきであって,この期間の保険料納付に対する申立人の寄与がゼロであったことが考慮されるべきである。第4 当裁判所の判断1 本件記録によれば,前記第2,1の事実が認められる。
2 ところで,対象期間における保険料納付に対する夫婦の寄与は,特別の事情がない限り,互いに同等と見るのを原則と考えるべきである。なぜなら,被用者年金の中心となる老齢基礎年金は,その性質および機能上,基本的に夫婦双方の老後等のための所得保障としての社会保障的意義を有しているものであり, 離婚時年金分割制度との関係においては,婚姻期間中の保険料納付は互いの協力によりそれぞれの老後等のための所得保障を同等に形成していくという意味合いを有しているものと評価すべきであって,いわゆる3号分割に関する厚生年金保険法78条の13に示された「被扶養配偶者を有する被保険者が負担した保険料について,当該被扶養配偶者が共同して負担したものであるという基本的認識」は,特別の事情のない限り,いわゆる合意分割に関しでも妥当するものと考えるべきであるからである。そして,法律上の夫婦は,互いに扶助すべき義務を負っており(民法752条),仮に別居により夫婦問の具体的な行為としての協力関係が薄くなっている場合であっても,夫婦双方の生活に要する費用が夫婦の一方または双方の収入によって分担されるべきであるのと同様に,それぞれの老後等のための所得保障についても夫婦の一方または双方の収入によって同等に形成されるべき関係にある。これを本件についてみると,申立人と相手方は,平成19年11月の離婚の裁判確定までの聞は法律上の夫婦であり,当事者間の離婚判決(甲第4号証)を含む本件記録によれば,平成6年×月の別居後も,当事者双方の負担能力にかんがみ相手方が申立人を扶助すべき関係にあり,この間,申立人が相手方に対し扶助を求めることが信義則に反していたというような事情は何ら見当たらないから,別居期間中に関しでも,相手方の収入によって当事者双方の老後等のための所得保障が同等に形成されるべきであったというべきである。したがって,相手方が主張する事情は,仮に事実と認められたとしても保険科納付に対する夫婦の寄与が互いに同等でないと見るべき特別の事情にあたるとはいえないから,その主張自体失当であり,申立人と相手方との聞の別紙記載の情報に係る年金分割についての請求すべき按分割合は, 0.5と定めるのが相当である。
3 よって,主文のとおり審判する。(家事審判官松村徹)

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