祭杷財産の承継者の指定申立事件

第1 申立ての趣旨及び理由の要旨
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(1)被 相続人c(以下「被相続人」という。)は,従前○○家の祭祀承継者であったところ,同人は,平成20年×月×日死亡した。申立人(大正7年×月×日生)は,被相続人の実妹である。
(2) 被相続人の子であるD(昭和15年×月×日生)は,被相続人の生前,同人から迷惑をかけられたこと等を理由に,同人の遺骨を引き取る意思はなく.(わ家の祭記継承もしたくないとの意向を表明しており,被相続人に係る相続も放棄している。被相続人の子であるE(昭和21年×月×日生)は,結婚して名字が変わっていること,被相続人とは何十年も会っていないこと等を理由に.()()家の祭最E継承をすることはできない旨の意向を表明しており,被相続人に係る相続も放棄している。被相続人の子である相手方(昭和17年× 月×日生)は,申立人法定代理人成年後見人:からの.co家の祭最E承継の意思の有無についての問い合わせに対し,返答をしなし、。被相続人のその余の子は,既に死亡してし、る。
(3) 被相続人の兄弟姉妹は,申立人を除いて全員死亡している。また,被相続人の妹である亡Fの子であるG (昭和32年×月×日生)は,申立人法定代理人成年後見人からの○○家の祭最E承継の意思の有無についての問い合わせに対し,先祖を粗末にする積もりはないが,結婚しており○○県在住のため即答しかねるとの返答をしたまま,連絡がない。被相続人にはG以外におい及びめいはいない。
(4) 以上のとおり○○家の新Eを承継できる可能性のある者はし、ずれも承継に積極的ではない。
2 他方,申立人は,被相続人とは非常に仲がよく,また,従前.(わ家の菩提寺に対し永代供養の手続を進めるような話をしていた。現在,申立人は,認知症を発症し;後見開始の審判がされているが,判断力を有していれば○○家の先祖や被相続人の遺骨を永代供養し,自らも同じ形での埋葬を希望することが推認される。
3 被相続人は,その所有の祭杷財産の承継者につき指定をしておらず,慣習は不明である。そして,上記1.2の事情にかんがみれば,申立人が被相続人の祭杷承継者となるのが相当である。よって,申立人を祭杷財産の承継者と定める審判を求める。第2 当裁判所の判断1 一件記録によれば,以下の事実が認められる。
(1) 被相続人は,亡H (明治23年×月×日生,昭和50年×月×日死亡)と亡1(明治23年×月×日生,昭和31年×月×日死亡)の長男であり,申立人は両名の長女である。両名は,被相続人及び申立人のほか,二女,三女及び二男をもうけたが,二女及び二男はいす・れも子をもうけることなく死亡した。上記三女は,その後婚姻し.Gをもうけた後,死亡した。
(2)
ア 被相続人は,昭和15年×月×日.Jと婚姻し,長女であるD.長男である相手方,二男及び二女をもうけたが,二男及び二女は生後間もなく死亡した。被相続人とJは,昭和42年×月×日離婚した。
イ 被相続人は.Kとの聞に亡L及びEをもうけ,両名を認知した後,昭和43年×月×日上記Kと婚姻し,同年×月×日同人と離婚し,同日同人と婚姻し,昭和45年×月×日同人と離婚した。亡Lは,既に死亡しており,子はいない。
ウ 被相続人は,昭和58年×月×日.Mと婚姻したが.昭和59年×月×日,同人と離婚した。
(3) 亡Hは,晩年認知症を発症するまで申立人と同居しており,昭和50年×月×日死亡した。
(4) ○○家の墓は,被相続人が承継して管理しており,被相続人は,平成4年×月×日,東京都0:コ区所在の宗教法人0:コ寺(以下ro0寺Jとし、ぅ。)の墓地使用許可を受け,同日付けでcx)寺檀徒誓約書を差し入れた。また,被相続人は,従前,自宅に仏壇を置き.0:コ家の祖先の位牌をまつっていた。
(5) 申立人は,平成16年ころ認知症を発症し,平成19年×月×日後見開始の審判が確定し,成年後見人が付された。申立人は,従前,被相続人と親しい交際を続けており,被相続人も申立人法定代理人成年後見人に対し,申立人が死亡した場合には.申立人をCわ寺のCわ家の墓に埋葬したい旨述べていた。
(6) 被相続人は,平成20年×月×日死亡した。
(7) 現在,被相続人の近親者は,妹である申立人,子であるD.相手方及びE並びにめいであるGの4人である。このうち.Dは,東京都内在住ではあるものの,被相続人の生前,同人から迷惑を被るなどしたため,同人の遺骨を引き取る意思も○○家の祭杷を承継する意思もなく,被相続人に係る相続も放棄している。Eは,神奈川県○○市在住であり,被相続人と数十年間疎遠であったことなどから○○家の祭最Eを承継する意思はなく,被相続人に係る相続も放棄している。Gは.Cわ県在住であり住所が遠方であることを理由に○○家の祭記を承継するか否かについては即答できないとし,その後,何らの連絡をしない。相手方は,申立人法定代理人成年後見人から祭杷承継の意思の有無を確認する問い合わせを受けたが,現在まで何らの返答もせず,本件審判の呼出を受けながらこれに出席しなかった。
(8) ○○家の菩提寺である○○寺は,同寺にある○○家の墓をだれも承継しないのであれば無縁仏とするほかないが,永代供養代60万円及び墓の撤去費用10万円を支払うことにより,現在○○家の墓に埋葬されている遺骨を同寺の境内にある永代供養墓地に改葬し,永続的に供養する永代供養をすることができる,その場合,申立人が死亡した際に同人を当該永代供養墓地に埋葬することが可能であるとの意向である。
2 上記1において認定した事実に基って検討する。本件において,被相続人が祖先の祭杷を主宰するべき者を指定した事実は認められず,祭杷承継者に係る慣習の存在も明らかではない。そこで,家庭裁判所が,被相続人の祭肥財産の承継者を定めることになるところ,現在,被相続人の祭杷を承継し得るのは,妹である申立人,子であるD.相手方及びE並びにめいであるGの4人であるということができる。しかしながら. D及びEは,被相続人の実子ではあるものの,被相続人との関わりをむしろ避けようとしており,現に,被相続人の祭記を承継する意思がない旨明言している。Gは.祭配承継についての窓,思を明確にはしていないが,従前の経緯にかんがみると,祭杷承継に対して積極的ではないことがうかがわれる上,○○家の墓があるco寺は東京都○○区所在であり○○県在住のGが祭犯を行うのは事実上困難であると思われる。相手方は,申立人法定代理人成年後見人からの問い合わせに回答せず,本件審判の審判期日にも出頭しない状況であって,その意思は全く不明である。これに対し,申立人は,従前被相続人と親しく交際していたこと,被相続人も,申立人が死亡したにわ寺のco家の墓に埋葬することを希望していたこと,申立人及び被相続人の実父である亡Hも,生前申立人と同居していたことは上記1において認定したとおりであり.申立人は,被相続人や亡Hとの関係が深かったことが認められる。また.D及びEは,申立人が被相続人の祭杷承継者になることに異議がない(甲第4号証の1.2)。さらに,申立人は現在後見開始の審判を受けているが,申立人が被相続人の祭最E承継者となり.法定代理人成年後見人を通じ○○寺に永代供養の手続をすることによって,申立人自身の死後の祭杷も可能になるというのであり,これらの諸事情を併せ考えると.申立人を被相続人の祭記承継者とすることが相当というべきである。3 よって,被相続人所有の祭杷財産の承継者を申立人と定めることとし,主文のとおり審判する。(家事審判官藤原典子)

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