特別縁故者に対する相続財産分与申立却下審判に対する即時抗告事件

1 本件抗告の趣旨及び理由は,別紙「即時抗告申立書」記載のとおりで
ある。
2 当裁判所の判断
(1) 本件記録によれば,次の事実が認められる。
ア抗告人は,平成14年1月25日頃に死亡したB (昭和23年7月11日生)の父方叔母(昭和6年11月23日生)であるところ. Bに相続人のあることが明らかでないとして,平成14年5月22日,福岡家庭裁判所小倉支部に相続財産管理人の選任を申し立てた(同庁平成14年岡第xxxx号事件)。
その選任申立書には. 「申立人(抗告人)は.Bと姉弟のように暮らし.Bが死亡するまで生活上の世話をし,死亡後は葬儀を行ったり,遺産の管理もしている。今後,特別縁故者として相続財産の分与を請求する予定である」旨記載されている。
イ前記申立てを受けて,同裁判所は.平成14年6月25日,亡Bの相続財産管理人として抗告人の子であるCを選任する旨の審判をした上,その旨の公告をし,さらに一切の相続債権者及び受造者に対する詩求申出の公告が行われた後,なお相続人の存在が明らかでないとして上記管理人の申立てによって相続人捜索の公告をし,その公告期間が平成16年1月31日に満了した。
ウ抗告人は.上記公告期間が満了したときから約9か月が経過した平成16年11月2日,同裁判所に本件相続財産分与の申立てを行った。これに対し,同裁判所(原審)は,抗告人の本件申立てが民法958条の公告期間満了日から3か月(民法958条の3第2項)経過後になされていることを理由に,本件申立てを却下した。
(2)ア抗告理由の第1点は.「本件申立ては.形式的には民法958条の公告期間満了日から3か月経過後になされているが,抗告人は,特別縁故者の資絡で相続財産管理人の選任申立てを行っているから,その選任申立て時に特別録故者としての相続財産分与の申立ても行っていると評価するべきである。そうすると,同申立ては相続権主張催告(相続人捜索)の公告期間満了前になされていることになるが,同期間満了後もなお相続権を主張する者が現れない場合は,その蔵抗が治癒され適法な申立に転化する(大阪家裁昭和40年11月25日審判)から,抗告人の上記申立ては適法である。」というものである。
イしかし,相続財産管理人の選任申立てと相続財産分与の申立ては,法律上も明らかに別個の手続とされているのであって.手統の明確性,安定性の見地からしても,いかに特別縁故者の資格でもって相続財産管理人の選任申立てをしたからといって,これを相続財産分与の申立てと評価することはできない。しかも, 抗告人がした相続財産管理人の選任申立曹には,前記(1)アの後段で認定した記載があるにとどまるのであって,抗告人が亡Bの特別縁故者として同申立てをすることが明確にされているわけではない。すなわち,同申立書記載の前段の事情は抗告人が民法952条所定の「利害関係人」であることを主張する趣旨のものにすぎないことは記載の体裁からして明らかであり, また,間後段部分の記載は,抗告人自身も.別途相続財産分与の申立てをなす必要があることを認識していたことを示している。
したがって,抗告理由の第1点は理由がない。
(3)ア抗告理由の第2点は,相続財産管理人が残余の相続財産を国庫に引き継いでいない聞は,相続財産管理人に知れている特別縁故者に対しては財産を分与しうると解するべきである, というものである。
イしかし,特別縁故者であると主張する者に対して相続財産を分与するか否かは,家庭裁判所が審判によって判断するのであって,そのように主張する者が相続財産管理人に知れているか否かは,分与の是否とは関係がない。また,民法958条の3第2項は,分与の請求は相続人捜索の公告期間満了後3か月以内にしなければならないと明確に規定しているのであって抗告人の上記主張は独自の見解というほかなく,到底採用することができない。なお,抗告人は,この点に関して最高裁昭和50年10月24日判決(民集29巻9号1483頁)を援用するが,同判決は,特別縁故者に分与されなかった相続財産の国庫帰属の時期等について判断したもの(「相続財産管理人が国庫に引き継いだ時に国庫に帰属する」とした。)にすぎず,抗告人の上記アの主張を理由あらしめるものでないことは多言を要しない。
したがって,抗告理由の第2点も理由がない。
(4) 相続財産管理人選任の申立告に「今後,特別縁故者として相続財産の分与を請求する予定である」旨の記載までした抗告人が,何故民法958条の3第2項の期聞を徒過したのかは記録上つまびらかでない。それにしても,抗告人が,期間徒過の故をもって,亡Bの相続財産の分与を請求できないということはまことに気の毒な結果ではあるが, もはやこの結果を覆すことはできないものというほかはない。
3 結論
以上によれば.抗告人の本件申立てを却下した原審判は相当であり.本件抗告は理由がないことに帰する。(裁判長裁判官 西理 裁判官 内藤正之 吉岡茂之)

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