性別の取扱いの変更申立却下審判に対する即時抗告事件

1 本件抗告の趣旨及び理由
別紙即時抗告申立書記載のとおり
2 事案の概要
〔抗告人〕A
(1) 本件は.抗告人が,性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律(以下「法」という。) 3条に基づき,性別の取扱いを男から女に変更する審判を求めた事案である。
(2) 原審は,抗告人には離婚した配偶者との聞に2子がいるから,法3条1項3号の要件を欠くと判断して,本件性別の取扱いの変更の申立てを却下した。
3 当裁判所の判断
(1) 当裁判所札本件性別の取扱いの変更の申立てを却下すべきものと判断する。その理由は,原審判説示の理由と閉じであるから,これを引用する。
(2) 抗告人は,抗告理由として,法3条1項1号から5号までの要件(以下5要件」という。)は,憲法13条.14条1項に違反するものであり,性同一性障害者である限り性別の取扱いの変更を認めるべきであると主張する。
法は,性同一性障害者に関する法令上の性別の取扱いの変更を認める特例を定めるものであり(1条).家庭裁判所は,性同一性障害者であって一定の要件を満たすものについて,その者の請求により,性別の取扱いの変更の審判をすることができ(3条).性別の取扱いの変更の審判を受けた者は.民法その他の法令の規定の適用については,法律に別段の定めがある場合を除き,その性別につき他の性別に変わったものとみなすものとして(4条).性同一性障害者の性別の取扱いの特例が認められる対象者を,性同一性障害者のうち5要件を満たすものに限っている(3条1項)。そこで. 5要件のそれぞれについてみると,性別はその人の人格にかかわる重大な事柄である上,その変更は不可逆的なものとなるため,本人に慎重に判断させる必要があることなどから法3条1項1号を,同性婚という現行法秩序において解決困難な問題の発生を回避する必要があることから同項2号を,親子関係などの家族秩序に混乱を生じさせたり,子の福祉に影響を及ぼすことがないようにする必要があることから同項3号を,性別の取扱いの変更を認める以上, 元の性別の生殖能力等が残っているのは相当でないことから同項4号を,他の性別に係る外性器に近似する外観がないことによって生ずる可能性のある社会生活上の混乱を回避する必要があることから同項5号を,それぞれ要件として定めたものと解される。そうすると. 5要件は,いずれも十分な合理的根拠があるものというべきであって. 5要件の存在により,これを満たさない性同一性障害者の利益が制約されるとしても,そのような規制が立法府の裁量権を逸脱し,著しく不合理であることが明白であるといえず, 憲法13条に違反するものでない。そして. 5要件はいずれも十分な合理的根拠があることは前示のとおりであるから.5要件により,これを満たす性同一性障害者とこれを満たさない性同一障害者との聞に区別が生じることになるとしても,館法14条1項に違反するものでない。したがって,抗告人の上記主彊はいずれも採用することができない。
(3) 以上によれば,本件性別の取扱いの変更の申立てを却下すべきであり,これと同旨の原審判は相当である。
よって,本件抗告を棄却することとし,主文のとおり決定する。
( 裁判長裁判官福岡右武裁判官畠山稔菅野雅之)

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