市町村長の処分に対する不服申立の審判に対する即時抗告事件

第1 事案の概要1 本件は,相手方が,相手方とその妻との聞の長男の出生届(以下「本件出生届」とし、う。)を抗告人に提出したところ,抗告人によって本件出生届に記載された子の名に用いられた文字が戸籍法施行規則(昭和22年12月司法省令第94号。以下「施行規則Jという。) 60条に定める文字でないことを理由として不受理処分にされたため,戸籍法118条に基づき,本件出生届の受理を命ずる宮の審判を求めて不服申立てをした事案である。原審が,抗告人に対し,本件出生届の受理を命じたので.抗告人が-本件即時抗告をした。2 前提となる事実(記録により認められる事実)(1) 平成18年×月×日,相手方とその妻との聞に長’男が出生した。(2)相手方は,平成18年×月×日,上記長男についで,子の名を「隆OJとする孟件出生届を福島市長(抗告人)に対して提出した。これに対し,抗告人は,本件出生届に記載された子の名の「隆Jの文字(以下「本件文字」ともいう。)が,施行規則的条に定める文字以外の文字であったため,相手方にこれを受理するととはできない旨を説明し.施符規則60条に定める文字による名に改めるよう補正を求めたが,相手方はこれに応じなかった。そどで,抗告人は.同日,本件出生届を受理しない旨の処分をし,本件出生届を相手方に返戻した。(3) 相手方は,平成18年×月×日.本件出生届を受理すべきことを命じる旨の審判を求めて,原審に本件申立てをした。(4)相手方(昭和56年×月×日生)の名はr(准」であり,相手方の父の名は「隆OJであるため,相手方は.r隆」の文字を自分の長男に引き継がせたいと考えている。(5)戸籍法50条1項にいう「常用平易な文字Jの範囲を定めた施行規則60条には.r隆Jの字は含まれていない。3 問題の所在戸籍法(昭和22年法律第224号。以下「法」とし、う。なお,昭和22年法律第224号は,形式的には従前の戸籍法(大正3年法律第26号)を改正した形を採っているが,全文改正であるため,改正前のものを「旧戸籍法」としみ。) 50条1項は,子の名には常用平易な文字を用いなければならないとし,同条2項は,常用平易な文字の範囲は法務省令でこれを定めるとしているところ.常用平易な文字の範囲を定めた法務省令が施行規則60条の規定である。ところで,法50条1項が子の名には常用平易な文字を用いなければならないとしているのは,従来,子の名に用いられる漢字には極めて複雑かつ難解なものがきbく,そのため命名された本人や関係者に,社会生活上,多大な不便や支障を生じさせたことから.子の名に用いられるべき文字を常用平易な文字に制限し,これを簡明にすることにある。また,閉条2項が常用平易な文字の範囲は法務省令でこれを定めると規定し,施行規則60条が常用平易な文字の範囲を定めているところ,誌が常用平易な文字の範囲の定めを法務省令に委任したのは,当該文字が常用平易であるか否かは社会通念に基づいて判断されるべきものであるが.その範囲は必ずしも一義的に明らかではなく.時代の推移,国民意識の変化等の事情によっても変わり得るものであり,専門的な観点からの検討を必要とする上,上記の事情の変化に適切に対応する必要があることなどによるものと思われる。そして.施行規則60条は,上記委任に基づき.常用平易な文字を限定列挙したものであるが,法50条2項は,子の名には常用平易な文字を用いなければならないとの同条1項による制限の具体化を施行規則的条に委任したものであるから,同条が,社会通念上,常用平易であることが明らかな文字を子の名に用いることのできる文字として定めなJウミった場合には,法50条1項が許容していない文字使用の範囲の制限を加えたことになり,その限りにおいて,施行規則60条は,法による委任の趣旨を逸脱するものとして違法,無効と解すべきである。そして,法50条l項は,単に,子の名に用いることのできる文字を常用平易な文字に限定する趣旨にとどまらず,常用平易な文字は子の名に用いることができる旨を定めたものというべきであるから,上記の場合には,戸籍事務管掌者は,当該文字が施行規則60条に定める文字以外の文字であることを理由として,当該文字を用いて子の名を記載した出生届を受理しないことは許されないというべきである。そうすると,市町村長が施行規則60条に定める文字以外の文字を用いて子の名を記i院したことを理由として出生届の不受理処分をし, これに対し,届出人が家庭裁判所に不服を申し立てた場合において,家庭裁判所及びその抗告’裁判所は.審判,決定手続に提出された資料,公知の事実簿に照らし,当該文字が社会通念上明らかに常用平易な文字と認められるときには.当該市町封長に対し.当骸出生届の受理を命じることができるのである(最高裁判所平成15年12月25日第三小法廷決定・民集57巻11号2562頁参照)。したがって,本#出生届の子の名に用いられた「隆」の文字が,社会通念上常用平易であることが明らかな文串といえるか否かが問題となる。なお,r隆Jと「隆Jとは字種を共通にし, r隆Jは「隆」の旧字体であって,rたかし、J,rさかんなJ等の意味を持ち.音読は,rリュ・ウJである。「降Jの略体である「許Jと「生J(草が上に伸びるさま)から成る会意文字であり,おりる力に抗して上入上へと豊かに盛り上がることを表し,ひいては,盛んの意になったものであるとされている(学習研究社「漢和大辞典J,角川住庖「漢和中辞典J,平凡社「字通J参照)0r隆J及び仁隆j とも.正字(証会一般において正しいと認められている字であって,常用漢字表など公的裏付けのあるもの及び康照字典,漢和辞典等で正しいとされている文字のこと)である。4 当事者の主張抗告人の主張は,別紙「即時抗告申立書J,i答弁書に対する意見書」に記載のとおりであり,相手方の主張は,別紙「答弁書」に記載のとおりである。第2 当裁判所の判断1 人名用漢字の制限の経過については) 旧戸籍法の時代従来,我が閉巴およ6、ては,子の名に使用する文字には法律上の制限がなく,旧戸籍法~ ,. 届出番の記載について「略字文ハ符蹴ヲ用ヰス字笠明瞭ナルコトヲ要スJとのみ定めていた(同法55条, 28条1項)。そのため,子の名に用いられた漢字の中には極めて難読難解なものが少なからずあり,そのため社会生活上において自他に多大な不便や支障が生じていた。(2) 当用漢字表と当用漢字字体表漢字は,もともと古代中国に発生した表意文字であり,字数がはなはだ多いだけでなく(18世紀に編纂された中国の代表的字典である「康照字典Jには親字として4万7000余りが収め.られている。),その中には字体が嘘雑なものや画数が非常に多いものなども多数あり. また,用い方も複雑であって,国民の教育半,社会生活上の不便は多大なものがあった。そのため,昭和21年11月,漢字を制限し,国民の生活能率を上げ,文化水準を高めることに資するべく,「現代園語を書きあらわすために, 日常使用する漢字の範囲」を定めるものとして,1850字を選定した「当用漢字表J(昭和21年内閣告示第32号)が定められた。これは,当時の国民生活の上で,漢字の制限があまり無理なく行われるこ主を目安として,法令,公用文書,新聞,雑誌、及び一般社会で使用する漢字の範囲を示したものであり,字体の整理は後の調査にゆだねることにされた。そのため,当用漢字表上の漢字の字体は,慣用されている簡易字体(\.,、わゆる新字体)については,例えば, i当(嘗)J. i学(皐)J, i実-(質)J,「恋(態)Jなどのように,簡易字体を本体とし原字(し、わゆる旧字体)を参考のため括弧内に添える扱いをしたが, i第J,i様J,i圏」などのように,簡易字体があるものについても基本的には原字(旧字体)で記載されたものが多く, i隆」の文字も旧字体である「隆Jとして記載されていた。次いで,昭和24年4月,当用漢字表の制定に当たって積み残されていた字体の問題に闘し,i現代国語を書きあらわすために日常使用寸る漢字の字体の標準」を定めるものとして, i当用漢字字体表」(昭和24年内閣告示第1号)が定められた聞この表の字体の選定については,異体の統合,略体の採用,点画の整理などを図るとともに,筆写の習慣,学習の難易をも考慮し,印刷字体と筆写字体とをできるだけ一致させることが基本方針とされた。そのため,当用漢字表において新字体で選定されていた文字は新字体が選定されたのはもちろんであるが,当用漢字表にオ品、てイ日字体で選定されていた文字も新字体が選定されることとなり, 438字について当用漢字表の字体とは異なる字体が選定された。これらの新字体の中には,例えば,i団J,i単J,i専」などのように従来活字として普通には用いられていなかったものもあったが,多くは,活字.として従来から一般に用いられていたものであった。また,当用漢字表で簡易字体が選定されたものの中にも,例えば「礼Jや「蹄」の文字のように,当用漢字衰の字体と当用漢字字体表の字体とでは異なるものがある。この当用漢字字体表では, r陸Jの文字も新字体である「隆Jに改められた。なお, ここで新字体と旧字体についていうと,漢字は,象形文字・指事文字に由来しており,これを合わせたり抽象化-したりするなどして多数の文字が作られていったが,広い中国においては地域差などもあって,複雑なものとなった。泰による統一国家が成立すると字体の統ーが行われ,また,漢代になって文化が大いに盛んになると文字に関する研究もされた。そして,この間, 次第に字形が簡易化され,整形化されるようになり,築mや隷奮が生み出されたが,唐の時代にはより簡易化された措症が正式な容体,すなわち正書として通用するようになった。今日,我が国で一般に正字と呼ばれているものは康照字典等に記されている借$の文字を指している。しかし,康県字典等で正字として扱われた文字も複雑なものや回数が多いものがあり.そのため多く使われる文字の中には笹写や活字の便宜のために吏に字体が簡易化されて使用ちれた文字もあり.これらの簡易化された字体を正字に対して簡易字体,略字体,略体などと呼んでいる。簡易化する際にどの部分をどのように簡易化するかの違いにより,一つの正字について複数の簡易茅体があるものもあり,漢字をより複雑にする一因となっ.ている。新字体とは,一般に簡易化された字体のうち,我が国で広くー敢に通用しているものとして当用漢字表や当用漢字字体表,後に述べる常用漢字表に選定された字体をいい,これに対して.新字体の基犯なった正字を一般に旧字体と呼んでいる。新字体と旧字体は,我が国ではいずれも標準字体として正字の扱いを受けているが.簡易字体の中には当用漢字字体表や常用漢字表等に選定されなかったもの.も数多くあり.標準字体以外のものとして異体字と呼ばれている。ま.た,異体字の用語は,正字同士の聞でも,旧字体を新字体の異体字というように使うこともある。簡易字体は,多くは筆写などの過程で自然発生的に生み出されたものと思われるが,中には現代中国漢字のように,国の政策として新しく簡易化されたものもある。(3)法50条1項と施行規則的条ア国語施策として制定された当用漢字表による漢字の制隈を人名用漢字の取扱いにも及ぼすことが妥当とされ,昭和22年12月に制定された現行戸籍法(昭和23年1月1日施行)は,当用漢字衰の趣旨に従って,子の名には,常用不易な文字を用いなければならないとし(法50条l項),常用平易な文字の範囲は,命令でこれを定めるとした(同条2項)。そして,施行規則60条は,子の名として使用できる漢字の範囲を当用漢字表に掲げる1850字に限定・した。昭和24年4月,上記(2)のように,当用漢字字体表が定められたが,当用漢字表と当用漢字字体表とでは字体の異なるものが数多くあったため,どちらが使用できる字体なのかについて戸籍事務に疑義が生じたが,いずれの字体を用いても差し支えないとされた(昭和24年6月民事甲第1501号民事局長回答,同年7月民事甲第1524号民事局長回答,同年9月17日法務府民事局民事甲第2108号民事局長通達,同月24臼民事甲第2022号同367号民事局長回答)。そのため,昭和24年以降も旧字体による子の名の出生届が受理されることになった。イその後,当用漢字表の漢字のみではこれまでの人名選択に当たつての慣行上不便が大きいとして,国民の聞に当用漢字表以外に人名として使用できる漢字の範囲肱大を求める声が強まったため,国語審議会の建議に基づき.昭和26年5月,当用漢字表に掲げる漢字以外に人名として用いて差し支えない漢字として.i人名用漢字別表J(昭和26年内閣告示第1号。「琢」の字ほか92字が選定された。)が定められ,施行規則60条の規定も改正された。なお,人名用漢字別表には「亙」や「龍Jの字体が掲げられていたが.それぞれ,辞書等に示されている「亘Jや「竜」の字体で受理しても差し支えないとされたり,同別表の「猪Jについ_-r:. i猪」の字体を受理しても差し支えないとされたりするなどしていた(昭和26年6月民事甲第1346号民事局長回答, 昭和31年11月民事甲第2677号民事局長電信回答,昭和37年1月20日民事甲第103号民事局長回答,昭和39年4月民事甲第1503号民事局長田答)。ウ人名に使用できる漢字の範囲鉱大の更なる要望を受け.昭和51年7月,当用漢字表及び人名用漢字別表に掲げる漢字以外に人名に用いて差し支えない漢字として.i人名用漢字追加表J(昭和51年内閣告示第1号)が定められ. 28字が追加された。(4) 常用漢字表と施行規則60条の改正ア我が国の国語施策の改善の一環として,漢字の字極・字体等の問題について総合的な審議を行っていた国語審議会の答申に基づき,昭和56年10月. i現代の国語をmき表すための漢字使用の目安Jとして.i常用漢字表J(昭和56年内閣告示第1号)が定められ,常用漢字として1945字が選定された。常用漢字表は,法令,公用文書, ー新聞,雑誌,放送など,一般の社会生活において,現代の国語を書き表す場合の漢字使用の目安を示すものであり,字体, 音訓,語例等が併せ示されている。なお,常用漢字表の制定に伴い,当用漢字表,当用漢字字体表,人名用漢字別表,人名用漢字追加表ほ廃止された。イー一方,子の名に用いる漢字については,戸籍等の民事行政との結び付きが強いことから,法務省にその取扱いがゆだねられ,法務省では,学識経験者,実務家等で組織する民事行政審議会に諮問し,その答申を得た上で,常用漢字表に掲げられた漢字のほか,人名用漢字別表(92字)及び人名用漢字追加表(28字)の合計120字の中から常用漢字表に採舟ちれた8字を除いた112字に新たに54字を加えた合計166字を人名用のために特に使用を認める漢字とし,これを施行規則別表第二に場ω地rまた,人名用漢字の字体については,同ーの字種につき原則として1字体とする原則(一字種一字体の原則)を採り,常用漢字表の字体(括弧書きが添えられているものは括弧の外に掲げられでいるもの)又は施行規則別表第二に掲げる字体(この字体と常用漢字表の字体とを併せて「通用字体Jとし、う。)に限ることとした。ただ,例外と』ー.・:.・._して,当分の間一定の字種につき2字体を用いるこJとができることとし,常用漢字表において通用字体と著しい差異があるものとして括弧書きで添えられた355字体のうち195字体仁従来の人名用漢字別表及び人名用漢字追加表に掲げる漢字のうち,先例により一字種につき復数の字体が用いられたも・のであって通用字体と著しい差異があるとされた「渚J. i猪J.i琢J等10字体との合計205字体(これを「人名用漢字許容字体Jとし、ぅ。)については,当分の間用いることができるとした。これにより,施行規良何0条各号等は次のように改正された(昭和56年法務省令第51号。昭和56年10月1日施行)。「一常用漢字表(昭和五十六年内閣告示第一号)に掲げる漢字.(括弧宮きが添えられているものについては,括弧の外のものに限為。)一別表第二に掲げる漢字別表第二人名用漢字別表(第六十条関係)附則2 当分の間,子の名には,この省令による改正後の戸籍法施行規則第六十条各号に掲げる文字のほか,附則別表に掲げる漢字を用いることができる。附則別表人名用漢字許容字体表(附則第二項関係)一常用漢字表に掲げる漢字に関するものニ別表第二に掲げる漢字に関するもの常用漢字表は,字体については,明朝体活字のうちの一種を例に用いて示すものであり,活字設計上の表現の差(デザインの違し、)とみられるものや印刷と手自き上のそれぞれの習慣の相違に基づく表現の差については字体の差異があるとするものではなく,r久」と「久」と「久Jとには字体の遣いはないとしているものと思われる。常用漢字表は,現代の通用字体といえるものを括弧の外に,明治以来行われてきた活字の字体とのつながりを示すためにその字の康照字典体の活字(旧字体)のうち著しい差異があると認められるものを括弧に入れて添えているものであるが,常用漢字表では,r隆(隆)Jとされており,また, r隆」及び「隆」はいずれも人名用漢字許容字体表に掲げられていない。したがって,施行規則の改正の結果, r隆」及び「陸Jの字体は,昭和56年10月1日以降,人名に使えないこととなった。ウその後も漢字あるいは子の名に対する好ぷの変化などの人名用漢字の増加を希望する国民一般の要望は続き,また,裁判例などを承けて,次のとおり人名用漢字が路軒規則別表第二に追加された。fア) 平成2年3月法務省令第5号(平成2年4月18施行)118字の追加。付) 平成9年12月法務省令第73号(平成丘年12月3臼施行)「琉」の字の追加。(ウ) 平成16年2月法務省令第7号(平成16年2月23日施行)「曽Jの字の追加。同平成16年6月法務省令第42号(平成16年6月7日随行)「獅Jの字の追加同平成16年7月法務省令第49号(平成16隼7月12日施行)「毘J.r漉J及び「駕Jの追加(5) 人名高漢字の見直し(f漢字d表J) 一- 市,ア平成16年2″月,法務大臣は,近年における人名用漢字に対する国民の価値観の多様化.制限外文字使用の要望,ー人名用漢字の拡大についての国民の関心の高まり等の情勢の変化にかんがみ,法制審議会に対し,人名用漢字の範囲の見直じについて諮問をした。そのため,法制審議会は,その調査審議b悔めに人名用漢字部会を設置し,人名用漢字部会において審議がなされた。イ人名用漢字部会においては,髄味の人名用漢字の制限方式を維持することとし,字種の選定に関しては,まず,JIS漢字の第1水準及び第2水準の漢字のうち,常用漢字表に掲げーられた漢字及び人名用漢字別表に掲げられた漢字とその許容字体を除いたものを検討の対象とすることとし,出版物における摸字出札頻度を調査した「漢字出現頻度調査(2}J (平成12年3月文化庁作成)の結果を活用した。そして,人名用漢字に含まれていないJI8第1水準漢字770字から,漢字出現頻度数調査(2)における出現順位3012位以上(出現回数200回以上。平均すれば過半数の書籍等に1回登場する。)の漢字503字をまず選定した。さらに,それ以外のJI8第1水準漢字及びJ18第2水準以下の漢字については,上記出現頻度や平成2年から平成15年1月までに全国の各市町村窓口に届出(その後不受理又は撤回)・相談された要望漢字の有無・程度などを考慮して,①ヨ18第1水準漢字のうち出現順位3013位以下(出現回数199回以下)で要望法務局数が6以上(全国50局の10分のlを超える要望数となる。)の18字.②JI8第2水準漢字のうち出現順位3012位以上であって要望法務局数が6以上の12字,③J18第2水準漢字のうち出現順位3013位以下から4009位(出現回数50回)以上であって要望法務局数が8以上の17字,④JI8第2水準の漢字のうち出現順位4010位以下であって要望法務局数が11以上の8字.⑤JI8第3水準漢字のうち,出現順位3012位以上であってその異体字がJIS第1水準漢字として掲げられている20字の合計75字を選定した。また,人名用漢字部会では,字体については,一字種一字体の原則の考え方を基本的に維持するとされたが.同一字種について2字体が常用平易であると判断される場合には,これを用いても社会生活上の混乱を生じさせるおそれはないと考えられることから,例外的に次の32字(3組の同一字種2字体の文字を含む。)を認めることを相当とした(これらは上記578文字に含められている。)。(7) 常用漢字(括弧の中に添えた。)の異体字「薗(園)J f堺(界)J r駈{駆)J r藁(稿)J r埼(崎)J r蹟(跡)J r嶋(島)J r盃(杯)J r医(坂)J r富(富)J r峯(峰)J「裡(裏)J(JIS第1水準・出現順位3012位以上)〔埜(野)J(JIS第1水準・出現順位3013位以下・要望法務局数6以上)「高(万)J r涼(涼)J(J18第2水準・出現順位3012位以上・要望法務局数6以上)「祭(栄)J r質(実)J r固(円)J r躍(孔)J(JI8第2水準・出現順位3013位以下4009位は上・要望法務J・a・_,_ー噛町局数8以上) –一一付) 今回改正前の人名用漢字(括弧の中に添えた。)の異体字「曾(曽)J(JIS第1水準・出現順位3012位弘判、”‘”"‘-「遁(遥)J(JIS第2水準・出現順位3012位以上,要望法務局数6以上)「箆(謀)J r尭(尭)J r損(慎)J r茄(萌)J(JI8第2水準・出現順位3013位以下4009位以上・要望法務局数8以上)「脱(晃)J(JI8第2水準漢字・出現順位4010位以下・要望法務局11以上)(ウ)新たに2字体が採用されたもの「桧J(JIS第1水準・出現順位3013位以下・要望法務局数6以上)及び「槍J(JI8第2水準・出現順位3012位以上・要望法務局数6以上)「栖J(JIS第1水準・3012位以上)及び「棲J(JlS第1水準・3012位以上)「祢J(JIS第1水準・出現順位3013位以下・要望法務局数6以上)及び「禰J(f禰JにつきJIS第1水準)ウまた,人名用漢字部会においては,当初漢字の意味が人名にふさわしいものであるかどうかについては考慮、しないとされたが,異論もあったため,パブリック・コメン卜手続を実施して改めて検討した結果,名に用いることが社会通念上明らかに不適当と判断された88字が削除され.一方.人名用漢字として採用すべきとの意見が特に多かった1字が追加された。また,裁判例により常用平易であると認められた「毘J.r瀧J及び「駕」の3字については施行規則が改正されて人名用漢字として先に追加されたため削除され,結果,人名用漢字として追加すべきとされたものは488字となった。エ平成16年9月8日,法制審議会は.法務大臣に対し.①人名用漢字に関する従来の制限方式は維持する,②常用平易な漢字の写種については. JIS第1水準漢字及び第2水準漢字の中から漢字出勤頗度数調査(2)に現れた出版物上の出現頻度に基づき,要望の有無・程度なども総合的に考慮、して選定する(なお,名の社会性にかんがみ,名に用いることが社会通念上明らかに不適当と認められる漢字は除外する。).③字体については,基本的に「表外漢字字体表J(平成12年12月国語審議会答申)に掲げられた字体を選定する,④一字種一字体の原則は維持するが,例外的に1字種について2字体を認めることを排斥するものではないとした上で,結論として, 上記488字を人名用漢字に追加するのを相当である旨の答申を行った。この488字の中に「隆Jの文字は含まれていなし、。オ率成16年9月27日,上記法制審議会の答申を受けて,施行規則別表二が,人名用漢字別表の漢字290字,法制審議会答申の488字及び人名用漢字許容字体表の漢字205字を併せた合計983字の「漢字の表」に全面改正され,附則第2項及び附則別表が削られた(平成16年法務省令第66号)。』・-.”ζれにより,現在,常用漢字表の漢字1945字(括弧の添えられたものは括弧の外のもの)と「漢字の表Jの漢字983字の合計2928字が子の名に用いられる漢字となっ・ている。「漢字の表」には,常用漢字が一般の社会において現代の国語を書き表すための漢字使用の目安であることから,常用漢字の異体字のうち,別字意識の生じていると判断される6字(r堺(界)J f麓(稿)J r矯(崎)J r蹟(跡)J r阪・(坂)J r裡(裏)J)を除く209字(従来の人名用漢字許容字体195字,新たに加えられた19字から上記6字を控除した13字及び平成16年7月の改正により既に加えられていた「瀧」の文字の合計)についてば.その旨を明らかにするために常用漢字の異体字以外の漢字774字とは区別して掲げられている。なお,許容字体については,人名用漢字許容字体表に掲げられ,昭和56年の施行規則の改正に当たって.経過措置として.当分の間用いることができるとさ孔たものであるが..その後23年が経過し,子の名に用いることができる漢字として社会的にも十分に定着しているもゐと判断されたことから,これらの字体の使用を禁.止する理由はないとして選定されている。(6) 表外漢字字体表及び漢字出現頻度数調査(2)、J表外漢字字体表は.文部大臣(当時)の諮問機関である国語審議会が, 一般の社会生活において,常用漢字以外の謹字(表外漢字)を使用する場合の字体選択のよりどころとなることを目的として答申されたものであり,印刷標準字体1022字体及び簡易慣用字体22字体を示している。なお,印刷標準字体とは「明治以来.活字体として最も普通に用いられてきた印刷文字字体で・あって,かつ,現在においても常用漢字の字体に準じた略字体以上に高い頻度で用いられている印刷文字字体Jと「明治以来,活字字体として,康照字典における正字体と同程度か,それ以上に用いられてきた俗字体や略字体などで,現在も康照字典の正字体以上に使用頻度が高いと判断される印刷文字字体」をいう。この表外漢字字体表の作成に主として’相..6_ ・世話匂喧使用されたのが文化庁作成の漢字出現頻度数調査(2)である。これは,表外漢字の字体の検討を行うためにされた「漢字出現頗度数調査J(平成9年11月文化庁)に引き続いて,これを補完するためになされた調査であり, 凸版印刷で扱った出版物を対象とする書籍等における漢字使用の実態と読売新聞を対象とする新聞紙面における漢字使用の実態を調べたものであり,向調査のうち,凸版印刷で扱った書籍を対象とした全体調査は,主として平成9年中に作成された385種の出籍等の組版データを対象とし,漢字数約3330万字について,その出現回数.度数%.累積度数(当該漢字の順位以上の漢字が全体に占める割合)等を調査したものであって,我が固における同種の調査の中でも最大規模のものであった。この調査結果では. i隆」については,出現順位1079位,出現回数5732回,度数%0.017. 累積度数89.909であり.i隆Jについてはj 出現順位4527位,出現回数26回,度数%0.000(小数点3位未満).累積度数99.929であった。(7) JIS漢字JIS漢字は,コンビュータ一等における情報交換に用いる文字の符号化を規定した規格であり,昭和53年に通商産業大臣(当時)が制定し,その後改正が重ねられている規格であり,その制定当時からあるJIS第l水準及びJIS第2水準の漢字規格(JISX0208)は,社会一般において幅広く用いられている。’JIS第l水準漢字は,一般日本語表記用漢字(より使われやすい漢字)として.IBM 2245漢字印刷装置文字色vト一覧表など合計37の漢字表に採用されている文字の中から,出現頻度等をもとに選定され主ムのであり.2965字が選定されてに、ゐ。._iた.JIS第2・水準漢字は,個別分野用漢字として,情報処理学会標準漢字コード表,行政管理庁基本漢字, 日本生命人名漢字表及び国土行政区画総覧の主要4漢字衰のいずれかに現われ,第l水準漢字に含まれなかった漢字のす《てであり.3390字が選定されている。平成2年.JIS第1水準漢字及びJIS第2水準漢字に約5800の漢字を追肌して拡張された規絡(JISX0212)が制定されたが,これ&は別に,平成12年. JISX 0208規格を補完するJIS第3水準漢字(1908字)及び第4水準漢字(2436字)を追加して8主張された規格(JIS)C 0213)が制定された。しかし.JISX 0213規格は,現在ま.でのところ,大半のコンピューターに搭載されているとはし、し、難L、状況である。「隆」の文字はJIS第3水準の漢字である。もっとも.JIS第3水準に含まれている人名用漢字ほ合計107字ある。(8) 誤字俗字・正字一覧表民事局長通達により,戸籍の氏名欄の記載が誤字・俗字でされてし:る場合に市区町村長限りの職権で更正できる範囲が定められているが(昭和42年10月民事甲第2400号民事局長通達.昭和58年3月法務省民二第1501号民事局長通達.平成2伊H月法務省民二第5300号民事局長通達,平成6年11月法務省民二第7007号民事局長通達,平成16年10月法務省民ー第2842号民事局長通達).この中では.r隆Jと共に「隆J及び「隆Jが正字等とされている。なお,ここでいう.r正字等Jとは,①常用漢字衰の通用字体,②「漢字の表Jに掲げる字体,③康黒字典体又は漢和辞典で正字とされている字体,④当用漢字表の字体のうち,常用漢字表においては括弧に入れて添えられなかった.r隆」ほか3字,⑤国字で上記①から④までに準ずる字体.⑤平成2年10月法務省民二第5200号民事局長通達別表に掲げられた一定の俗字及びJIS第l水準漢字のうち康熊字典体を通用字体に準じて整理した文字をいい.r誤字」・「俗字」とは,文字の骨組みに誤りがあるもの及び上記の正字等の通俗の字体のことをし、う。2 本件文字の常用平易性について(1)本件文字は,正字であり,かつ,旧字体である。そして,上記1でみたように,当用漢字表では「隆Jの文字は旧字体で選定されており,当用漢字字体表では新字体が選定されている。そして.当用漢字字体表が定められた昭和24年以降h 戸籍事務の取担いの上では旧字体による出生届も受理される扱いとなっていたため,現行戸籍法が施行された昭和23年1月1日から当用漢字字体表が定められた昭和24年4月までの聞はもちろんのこと,それ以降弘昭和56年9月30日までは本件文字による出生届が受理されていたことになる。同年×月×日生まれの相手方の出生届が.ro隆Jの名で受理されたのはこの理由による。したがって,現時点においては.r隆Jの文字が用いられた人名が少なくないであろちことは容易に推認されるところである。しかしながら,現時点において「隆Jの文字が用いられている人名が少なくないというのは,当用漢字表には旧字体のみが載っており,常用平易の漢字の範囲を定めた施行規則60条が「当用漢字表に掲げる漢字」としていたことによるものとみられるのであって,「隆Jの文字が用いられている人名が少なくないからといって.現在においても直ちに旧字体である「隆Jの文字が常用平易な文字であるとはいえない。また,正字であるということも,常用平易ということを根拠付けるものではない。なぜなら,前記のとおり旧字体も正字なのではあるが,当用漢字字体表やこれを受け継いだ常用漢字表が旧字体を選定せず,新字体を選定しているのは漢字をより平易化し,使いやすくするためであったと考えられるからである。すなわち,新学律三旧字体とを比較すれば,より常用平易な文字とし吠るのは新字体であることが明らかである。(2) ところで,法50条1項が子の名には常用平易な文字を用いなげればならないとしているのは,従来.子の名に用いられる漢字には極めて複雑かつ難解なものが多く.そのため命名された本人や関係者に,社会生活上,多大な不便や支障を生じさせたことから,子の名に用いられるべき文字を常用平易な文字に制限し,これを簡明ならしめるというところにある。また.一字種につき複数の異体字があるととも漢字を複雑化させている一因となっていることは明らかである。このような観点に立ったとき,一字種一字体の原則は,人名の簡易化という目的に大きく資するものと考え当主設。また,当該文字が常用平易であるか否かは,社会通念に基づいて判断されるべきものであって,時代の推移,国民意識の変化等の事情によっても変わり得るものであるところ,こ・れは.同一文字の異なる字体同士についてもいえるところである。そして噌法は,この.ことも含めて,.専門的な観点からの検討を加え,上記の事情の変化に適切に対応することを法務省令にゆだねたものと解されるのである。しかるところ,施行規則は,既に昭和56年において常用漢字であった「隆」の旧字体である「隆Jについてはこれを許容字体としても認めないこととしたところ,その後の使用し得る人名用漢字の度重なる拡大の中においても,r隆Jの文字は人名に使用し得る文字とはならなかったのである。また,平成16年には,JIS漢字の水準などの汎用性,在籍等の大規模な漢字の利用調査結果に基づく漢字の出現順位・出現回数などの使用の頻繁性及び全国の各市町村窓口における要望の有無・程度などの国民意識を組み合せて考慮した結果,例外的に異体字として認められた32字(3組の同一字種2字体の文字を含む。)を含む488字が新たな人名用漢字とされたのであるが,このような調査方法によってもなお, r隆」の文字は選定さ.れるべき基準を満存してはし、なかったのである。統計的結果を取り入れ,また,コンピューターの使用が不可欠となっている現在の社会国民生活半における利便性等とV、う観点を幽酌した上記のような人名用漢字の選定の方針・方法は,客観的かつ合理的といえるものであり,漢字に関する現在の情勢,国民意識等をもおおむね忠実に反映しているものと考えられるところである。(3) これに対して, r隆Jの字体が広く社会一般に多くの場面で使用されているとの事情は,本件全資料,公知の事実等に照らしてもうかがうことはできない。むしろ,人名以外では奈良県斑鳩町に「法隆寺一丁目Jなどの字名としてわずかに使用されていることが認められる程度であり,これを除けば人名以外で使用されることはほとんどないものと考えられる。そして,上記(1)のとおり,現時点において「隆」の文字が用いられた人名が少なくないのは,当用漢字表に載っていた字体が旧字体であり.当用漢字字体表が定められた昭和24年4月以降も.旧字体による出生届が受理される扱い七あった-という過去の戸籍実務の所産にすぎないと考えられるのである。また, r隆Jの字を構成要紫とする漢字としては,r躍Jr窟J「霞Jr薩Jr癌Jr蕗Jなどの文字があるが,これらはいずれも常用漢字ではなく;・また,施行規則60条の定める文字でもないし,広く一般に使用されている文字でもない。そして;r隆」の文字については,新字体である常用漢字の「隆」が存在しており『画数などの俗信的なことをひとまず措けば,もともと「隆」と「隆Jとは同一文字であり,音,意味,外観において変わることはないのであって, r隆Jの文字が使用し得ないからといって,子の名の選択が防げられているともL、し、難いのである。単に中国古来の正字である旧字体を使用したいというのであれば,それは人名用漢字を常用平易なものに制限しようとする法50条l項の趣旨に沿わないこ&である。なるほど,r隆」の文字自体は, r隆Jの字に1画を加えたのみであるから, さほど難しい文字ではないといえるかもしれなし、。しかしながら, 1画があるかないかを見分けさせること自体があまり意味のない社会生活上の不便や支障を招来することに思いを致さなければならない。なお,この点にヲいていえば, r漢字の表Jの中には”r隆」の字と対比した場合に一般性の程度においてさして変わらないと思われる字もみられなくはなく.また,そのーに掲げられた「渚一渚」「猪ー猪Jr琢ー琢」などや,そのこに掲げられた(参考のため常用漢字を括弧の中に添えた。)r究(究)J r器(器)J r者(者)J r煮(煮)J r臭(臭)J r暑(暑)J r署(署)J .r緒(緒)J r諸(諸)J r著(著)J r都(都)J r突(突)J r類(類)J r郎(郎)J r朗(朗)J r廊(廊)Jなどは,いずれも1画が付されているだけで,音,意味において相違がなく.外観の差異も極めてわずかなものがあり,一見すると.r隆Jの字が人名用漢字として採用されていないことと均衡がとれていないように思われなくはない。しかしながら.r漢字の表」が一字極一字体の原則の例外として掲げた異体字のうち205字については既に昭和56年の施行規則改正に当たって当分の間用いることができるとされたものであり,その後平成16年9月の施行規則改正まで・の23年間にわたって子の名に用いることができたのであるから,これらの文字が社会的にも十分に定着していると考えたことにも合理性がないではなく,また, うち32字は.汎用性・頻繁性・要望度の観点からの調査結果からみて,これら文字が一般性を有していると考えたことに合理性がないとはいえなし、。反面.r隆Jの文字は.昭和56年10月1日以降..子の名として用いることができないとされてきたばかりでなく,汎用性・頻繁性・要望度の観点からの大規模な調査の結果によって弘人名に用いることがふさわしい文字とはされなかったのである。そうしてみると,人名用漢字として許容されている字体と「隆」の字体を対比した結果からーみても.r隆Jの字体を子の名に用いることのできる字体として認めなかったことをもって,施行規則的条が法50条1項の許容していない文字使用の範囲の制限を加えたものと解することもできないものというべきである。また.仮に「漢字の表J.の中に必ずしも常用平易とはいし、難い文字が選定されているとしても,そのことのゆえに本件文字が常用平易であるということ巴なるものでもない。(4) このようにみてくると.r隆」の文字は常用平易であることが明らかな文字であるとはし、し、難いといわざるを得ないのであって,「隆」り字を子の名に用いることのできる文字よ定めなかったからといって,施行規則60条が,法50条l項が許容してし、ない文字使用の範囲の制限を加えたものと解することはできなしごものというべきr、- 一ー} 勺である。.-3 相手方の人権侵害の主張について相手方は.親から子へと受け継がれてきた文字を自分の子に用いさせないのは相手方の人権を侵害するものである旨の主張する。しかしながら,戸籍法に定める戸籍は,国民各自の民法上の身分行為及び身分関係を公簿上に明らかにしてこれを一般的に公証する制度であって,法が上記の身分行為や身分関係上の地位の取得に当たって氏名を付した届出を要求するとともに.その氏名の選択につき従来からの伝統や社会的便宜を願慮、しながら一定の制限を和ナているのも.専ら上記の法の趣旨・目的から出たものと解されるから,戸籍上の氏名に聞する限り,法の定めるとむろに従って命名しなければならないのは当然で・あって,これらの規定にかかわりなく氏名を選択し,戸籍上それを公示すべきことを要求し得る一般的な自由ないじ権利が国民各自に存在するとはし、えないと解すべきであり,そう解したとしても,法は,各自が戸籍」三の氏名以外の関係でこれと異なる氏名を呼称することを別段禁止していないのであるから,法が子の戸籍上の名につき一定の制限を設けていることをもって,人権侵害に当たるということはできない(最高裁判所昭和58年10月13日第一小法廷決定・家庭裁判所月報36巻10号77頁参照)。相手方の人権侵害の主張は,採用することができなし、。4 結論以上の次第rなあるから,本件出生届に子の名として用いられた「隆」の文字は,常用平易な文字であることが明らかな文竿ということはできず,したがって,施行規則的条に掲げられていない文字を用いたことを理由に本件出生届を受理しなかった福島市長の処分は正当というべきであるから,相手方の本件申立ては理由がなく,これを却下すべきものである。よって,当裁判所の上記判断と異なる原審判を取り消し,相手方の本件申立てを却下することとして,主文のとおり決定する。(裁判長裁判官丈楠弘裁判官鈴木桂子中村恭)

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