子の監護に関する処分(養育費免除)申立事件

第1 申立ての趣旨及び実情
本件は,当裁判所が平成16年11月12日にした,申立人は相手方に対し,未成年者らの養育料として一人当たり毎月3万円を支払えとの審判(平成16年闘第xxxQ号,同第xxx口号,同第×ヌXム号。以下,これらを総称して「前件審判Jという。j・について,申立人が,平成17年8月24日付けで会社を退職し.収入が無くなったとして,養育料の免除の調停を求めた(平成17年(家イ)第xxxQ号,同第xxx口号,同第xxxム号。以下,これらを総称して「本件調停」という。)ところ,調停が不成立となったために,審判に移行した事案である。
第2 当裁判所の判断
.l 本件紛争の経緯本件記録,前件審判記録及び福岡高等裁判所平成16年間第xxx号記録によれば,以下の事実が認められる。(1) 申立人と相手方は婚姻して夫婦となり,未成年者らをもうけたが,平成11年5月10日,未成年者c(昭和63年×月x日生,現在17歳).同D (平成4年×月×日生,現在日歳)及び向E (平成7年×月×日生,現在10歳)の親権者をいずれも相手方と定めて協議離婚し,以後,相手方が未成年者らを旋育してしも。(2) 当裁判所は,平成16年11月12日,申立人は相手方に対し,未成年者らの養育料として未払分に加え,平成16年11月から未成年者らがそれぞれ満20歳に達する月まで,毎月末日限り,1人当たり3万円を支払えとの審判をし,同審判に対する抗告は,同年12月28日に棄却された。申立人は,前件審判において,未成年者らに対する援助はこれからも行っていくが,相手方に対する金銭の支払等はすべて拒否し,給料差押え等の強制執行が行われる場合,退職してでも抵抗する旨記載した書面を提出した。(3) 相手方は,申立人の給与について,前件審判に基づき,債権差押命令を申し立て,平成17年7月の給与から17万8128円,賞与から10.万6384円,同年8月の給与から12万8055円の支払を受けた。(4) 申立λは,同月24日,勤務先を退職し,同年9月30骨,未成年者-らについての養育料の支払免除を求め,本件調停を申し立てた。申立人は,前件審判で定められた養育料について,一度も任意に支払っておらず,支払う意思もないところ,勤務先を退職した理由について,相手方から強制執行をされて生活ができなくなり,第三者が介在して強制的に支払わされることに納得できなかったためで・あると陳述している。(5) 申立人は,平成16年において,少なくとも総額467万1931円の給与収入を得ており,平成17年7月には給与として43万5076円,賞与として26万9300円,同年8月には給与として32万8035円の収入を得ていた。(6) 相手方は,同年7月から11月までの聞において, 1か月平均13万3978円の給与収入を得ている。
2 申立人は,勤務先を退職し,収入が無くなったのであるから,養育料について免除されるべきであると主張する。前記1(3X4)によれば,申立人は,前併審判で定められた養育料をー度も任意に支払ったことがなかったところ,前件審判に基つ’く強制執行を受けたことを契機として〉勤務先を退職したから,現在は収入を得ていないことが認められる。しかしながら,前記1(2X4)によれば,申立人は,前件審判時から,強制執行を受けた場合には勤務先を退職して抵する旨の意向を有していたところ,現に強制執行を受け,裁判所により強制的に支払わされることに納得て-きなかったために,勤務先を退職したのであり,稼動能力は有していると認められる。そもそも,未成年者らの実父である申立人は,未成年者らを扶養し,未成年者らを監護する相手方に対し養育料を支払うべき義務があるところ,前件審判において,養育料の支払を命ぜられたにもかかわ-らず,一度も任意に履行せず,強制執行を受けるやそれを免れるために勤務先を退職したのであるから,申立人が現在収入を得ていないことを前提として養育料を免除するのは相当ではなく,申立人が滞在的稼動能力を有していることを前提として,勤務を続けていれば得ベかりし収入に基づき,養育料を算定するのが相当である。
3 (1) そして,養育料は.①当事者双方の年間の総収入から,公租公課,職業費及び特別経費を控除して基礎収入を算出し,②子が基礎収入の多い方の親と同居したと仮定した場合に子に配分されるべき生活費の金額を算出し, ③この配分されるべき生活費を監護親と非監護親の基礎収入の割合により按分して算定される金額を参考として定めるのが相当である。(2) 本件においては,前記2のとおり,申立人の総収入について,勤務先を退職していなかった場合に得ベかりし収入に基づき算定す4きところ,前記1(5)によれば,申立人は勤務先を退職していなければ,少なくとも年額467万1931円の給与収入を得ていたと認められる。そして,公租公課,職業費及び特別経費を理論上及び統計上認められる標準的な割合に基づき差し引くと,申立人の基礎収入は,総収入の42パーセントの年額196万2211円であるとするのが相当である。他方,前記1(6)によれば,相手方の総収入は,年額160万7736円程度と認めるのが相当であり,相手方の基礎収入は,総収入Q)42パーセントである年額67万5249円とするのが相当であ・る。(3) そうすると,未成年者らの必要生活費は.基礎収入の多い方である申立人と生活した場合を前提とすることになる。そして.親については生活扶助基準に基づく最低生活費,19歳以下の子については最低生活費に加え教育費込考慮して生活費の指数を定めるべきところ,親を100とした場合,0歳から14歳までの子については55,15歳から19歳までの子については90とするのが相当であるから,未成年者らに費やされるべき生活費は,3人分合わせて月額10万9011円となる。(4)上記の金額を,申立人と相手方の基礎収入の割合で按分すると,申立人が負担すべき未成年者らの養育料の目安は,未成年者ら3人分で月額8万1101円となる。そうすると,未成年者1人当たりの養育料の目安は,上記の金額を3で除した2万7033円となるところ,諸般の事情を総合考慮し,本件において申立人が相手方に対し負担すべき未成年者1人当たりの養育料は月額3万円と定めるのが相当である。(5) 以上によれば,申立人は,相手方に対し,未成年者らの養育料として,’1人当たり月額3万円を支払うべきところ,同金額は前件審判で定められた金額と同額であるから,養育料の免除を求める申立人の申立ては理由がないことに帰する。よって,主文のとおり審判する。(家事審判官荒谷謙介}

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