子の監護に関する処分(面接交渉)申立事件

l 申立の趣旨及びその実情
申立人と相手方とは, 平成8年10月23日婚姻し,両名聞に長女の事件本人C及び二女の同Dが生まれたが,平成15年10月9日に事件本人らの親権者をいずれも申立人と定めて協議離婚したのち,平成16年3月7日,申立人と相手方聞の横浜家庭裁判所小田原支部平成16年(家イ)第xx号,.同第xx号子の監護に関する処分(面接交渉)調停申立事件におし、て,í 申立人(A ) は, 相手方(B) が事件本人らと毎-~ 1回面接交渉するζ とを認め,その日時,場所及び方法等は,事件本人らの福祉を考慮、し,その都度当事者間で事前に協議して定める。」との調停条項の調停(前件調停)が成立した。しかるに,相手方は申立人の忠告を無視して再三事件本人らと無断で会い事件本人らを取り戻すなどと放言し,申立人に精神科通院を余儀なくさせたうえ,事件本人らに対じて「また一緒に住める」などと動揺させる発言をなし,事件本人らの福祉を害するので,相手方が事件本人らと面接受渉するのを取り止めにしたく,その旨の審判を求める。H 当裁判所の判断本件記録によれば,次の事実カ1主主め.られる。すなわち,1 申立人(昭和41年生)は会社員として働いているところ,平成8年5月から相手方(昭和43年生)と同居を始めたのち,同年10月23日婚姻し,両名聞に長女の事件本人c(平成9年×月X.日生)が生まれ,神奈川県00市内の申立人の実家で申立人の父母との同居生活を営み,その後,二女の事件本人D (平成12年×月×日生)が生まれた。申立人と相手方との夫婦仲はその後相手方の頻繁なカジノ場通いなどから悪化したが,申立人と相手方は平成15年3月,やり直しする・ため事件本人らを連れて申立人の実家を出て神奈川県co市内ーのアパー卜に転居し,家族4人での生活を始めたが,夫婦仲を修復することがr.-.できず,同年10月9日に事件本人らの親権者をいずれも申立人と定めて協議離婚したものであり,申立人は毛の後まもなく事件本人らを連れて上記アパートを出て再び実家に戻った。2 相手方はその後平成15年12月,前記アパートを出て解体業を営むEとの同居を始めると共に事件本人らの引き取りを希望し,申立人を相手どり,横浜家庭裁判所小田原支部に事件本人らの親権者変更調停の申立をなし,調停期日が聞かれたのちまもなく同事件を取り下げたうえ,事件本人らとの面接交渉を求める調停申立(平成16年(家イ)第xx号,同第xx号)をなし,同事件の調停期日が聞かれ,平成16年5月7日,同事件において, r申立人(A) は,相手方(B) が事件本人らと毎月l回面接交渉することを認め,その日時,場所及び方法等は,事件本人らの福祉を考慮し,その都度当事者間で事前に協議して定める。Jとの調停条項の前件調停が成立した。申立人はそれまでに相手方から復縁したいとの言があったので,将来の復縁を期待し,面接交渉には申立人も付き添って相手方との4人で会う方法で実施したいと考え,前件調停の成立に応じた。この間の平成16年4月,事件本人Cは小学校に入学し,通学を始めた。3 申立人と相手方は前件調停成立翌月の平成16年6月,事件本人らを官む4人での面接交渉を実施し,同年8月にも4人で面接交渉を実施した。相手方はその後同年9月の面接交渉の予定が立たなかったので,3回にわたり申立人に無断で事件本人らの様子を見に行って事件本人らと会ったところ,これを知った申立人はその後まもなく相手方が勝手に事件本人らと月3回も会いに来たので本件調停条項を遵守し,勝手に会うのを制止してほしいと横浜家庭裁判所小田原支部に履行勧告の申出をなし,しばらく面接交渉に応じないことにしたが,こう・した間,相手方から,もはや申立人と彼縁する気持はなく,事件本人らを取り戻したし、などと言われたことで強いストレスを感じ,精神科に受診し, 抑欝状態と診断され,2か月ほど服薬を余儀なくされた。他方,相手方は平成16年10月の面接交渉を申立人が応諾せず,事件本人らと会うことができなかったので同裁判所に履行勧告の申出をなし,申立人に前件調停条項の履行を求めたが,同年11月には4人で温泉旅行に行って面接交渉を円滑に実施することができた。4 申立人はその後平成17年2月2日,相手方と復縁できる可能性はなく,前記のとおりストレスで抑欝状態になったことから相手方の事件本人らとの面接交渉の取り止めを求めて横浜家庭裁判所相模原支部に本件面接交渉調停の申立(平成17年(家ィ)第xX, X X号)をなし,同3月8日の第1回期日が聞かれ,調停続行になったが,相手方はその後まもなく申立人に無断でOIJj:件本人Cのヤ校途中を待ち伏せたり,幼稚園に通う同Dに会いに行くなどしたものであり,これを知った申立人は面接交渉をしばらく応せ.ず,再開時期を延ばすことにした。相手方は同年3月31日,同裁判所に事件本人らの親権者変更調停の申立をなし,上記事件と並行して進行されることになった。同年4月,事件本人Cは小学校2年生に進級し.・同Dは幼稚園年長組になった。5 申立人はその後平成17年5斤24日の第2回調停期日に調停委員会から提案された面接交渉の試行に応じなかったものの.同年7月14日の第3回調停期日において,次回期日の同年1σ月4sooiてひと面接交渉を再開することを応諾し, 次回期日までに面接交渉を・3回試行することが約された。これに応じ,相手方は同年7月の試行1回目には事件本人Cと1日遊んで過ごすことができたが,同年8月の試行2回目には事件本人らが申立人により自動車で待ち合わせ場所にやって来たものの,事件本人Cが相手方の再三の誘いにも応せ.ず, 自動車から降りないで相手方との面接交渉を拒否したので,相手方はやむなく事件本人Dだけを海に連れて行って遊ぶことができた.相手方はその際.J同Dに対して「ママと暮らそう」と誘ったものであり,申立人はその後まもなくその事実を知づ;た。同年9月の試行3回目は相手方代理人弁護士も待ち合わせ場所で・立ち会ったが.事件本人らは共に相手方と一緒に過ごすことを拒否し,そのため,相手方は面接交渉することができなかっーた。申立人はこの聞の同年7月頃から現在の妻のF(昭和42年生)と交際を始めたのちまもなく申立人の実家に同女を迎.え入れ,事件本人らと一緒に同居するよ、う?となった。6 その後平成17年10月4日の第4回調停期日において申立人と相手方双方の言い分は対立し,本件調停事件は不成立に終わり,審判に移行した。相手方は同日,前記調停事件のうち事件本人Cの親権者変更事件を取り下げ,その後,同Dの親権者変更事件も取り下げた。申立人は前記審判移行直前の平成17年10月2日実家を出て,実家近くの肩書住所の賃貸マンションでF及び事件本人らとの4人での生活を始めたのち,前記審判移行後しばらくした同年12月18日にFとの婚姻届を出した。7 こうした間,相手方は会いに行くだけなら申立人に無断で‘も良いだろうと考え,前記審判移行後2日後の平成17年10月5日に申立人宅近くの(x)公園で事件本人Dの塾帰りを待ち伏せして声を掛け,同月7日に事件本人Dの通う幼稚園に行って声を掛け,帰宅後に前記公園に来るように呼び掛ける勝手気盛な行動に及んだ。相手方は同月12日に事件本人Dに「後で来てね」と芦を掛けて同マンショ・ン前で・しばらく持っていたものであり,この際,様子を見に来た申立人の父と怒鳴り合い,警警察官を呼ぶ騒ぎになった。相手方はさらに同月19日に事件本人Cの通う小学校に行き,休み時間で校庭にいた事件本人Cに声を掛けたのち.下校時に再び事件本人Cに声を掛けたが,事件本人Cは相手方の制止を振り切り,走って逃げた。こうした経過のもと.前記審判移行後に家事審判官から包括調査命令を受けた家庭裁判所調査官の提案により平成18年1月10日,横浜家庭裁判所相模原支部において相手方と事件本人らとの面接交渉の試行が実行された。相手方はその3日後の周13日に事件本人Dの通う幼稚園に行って,公園で待っていると声を掛け,同年2月3臼に公園で事件本人らが来るのを待ち伏せしていたが,事件本人らは来なかった。申立人とFとの夫婦仲は円満に推移し,現在までに事件本人らはFにすっかり懐いており,事件本人ら聞の姉妹仲も良好である。8 相手方はその後平成18年3月1日午後,申立人に無断で事件本人Dを連れ回し,途中で相手方と電話で話を交わした家庭裁判所調査官から事件本人Dを申立人に帰すように注意されたにもかかわらず,直ちに申立人の元に帰さず. 2時間位連れ回したところ,これを知った申立人は同日夜,相手方を未成年審議場答疑でcxコ警察署に告訴し,そめ後まもなく相手方は未成年者誘拐容疑で警察官に逮捕された。申立人はこれまで本件審判で相手方の面接交渉が許容されることになれば,ある程度の面接交渉に応じようと思っていたが,相手方の逮捕という深刻な事態の発生に至り,最早相手方の面接交渉に応じることはできず,相手方の面接交渉を禁止してほしいと考えている。以上の事実が認められる。ところで,面接交渉権は親権者又は監護者として自ら実際にその子を監護養育しない方の親が, その子と個人的に面接したり,文通したりして交渉する権利であり,民法上明文の規定はないが,親子とし、う身分関係から当然に認められる権利であると解される。申立人と相手方は前件調停において毎月1田の面接交渉を認める旨の合意を成立させているものであるが,家庭裁判所は家事審判法9条1項乙類4号所定の「子の監護に関する処分」として面接交渉権につ.”、て,従前成立した調停の調停条項の変更を含めて必要な審制fをすることがでぎるところ,面接交渉の可否,方法や内容は子の福祉という観点に立って子の監護のために必要かどうか,相当かどうかということか后決せられるべきものである。そうじて,上記事実によれば,相手方は前件調停成立後まもなくから申立人に無断で事件本人らと会い,そのため,申立人をして履行勧告の申出を余儀なくさせ,申立人による本件調停事ー件の申立に至らせたのち,本件調停が係属中にもかかわらず,事件本人Cの下校途中を待ち伏せたり,幼稚闘に通う同Dに申立人に無断でも会いに行くなどし,調停不成立の審判移行後にも会いに行くだけなら申立人に無断でも良いだろうとの勝手な解釈のもと,審判移行後僅か2日後からしばしば事件本人Dの通う幼稚園に行って声を掛けたり,事件本人Cの通う小学校に行って声を掛けたりしたうえ,さらに自分勝手な行動を続け,申立人に無断で事件本人Dを2時間位連れ回し,未成年者誘拐容疑で逮捕されるに至ったものであり, こうした背信的な行動を重ねる相手方には今後ルールを守って事件本人らと面接交渉をしたり,事件本人らの心情や生活状況に配J直した適切な面接交渉を実施することを期待することは困難であって,こうした状況のもとで相手方の面接交渉を許容することは事件本人らの福祉に適合しないといわざるをえず,相手方が実母として強く面接交渉をすることを望んでいることを十分考慮、しても,全面的に面接交渉を禁止することもやむをえないと認められる。それゆえ,前件調停の調停条項を変更し, 相手方が事件本人らと面接交渉することを禁止することとする。
皿よって,主文のとおり審判する。(家事審判官榎本克巳)

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