子の監謹に関する処分(面接交渉) 申立事件

第1 申立ての趣旨
相手方と未成年者とが面接交渉をする時期,方法などにつき相当な審判を求める。
第2 当裁判所の判断
1 本件記録により認められる事実
(1) 別居に至る経緯ア申立人(昭和44年×月×日生)と相手方(昭和43年×月×日生)とは,平成6年×月×日.婚姻し,平成7年×月×目,長男である未成年者Cをもうけた。相手方は.0ム大学卒業後,ムムに勤務し,申立人は.0口大学を卒業後,口口に勤務していたが,未成年者を妊娠した直後の平成7年×月に退社し,専業主婦となった。59・3ー74裁・判例(家事)イ申立人と相手方とは,次第に不仲となり,平成15年8月×日,申立人は,未成年者を連れて従来の居宅を出て申立人の実家に戻り,別居した。,~(2) 面接交渉の経緯ア相手方は,平成15年11月,東京家庭裁判所八王子支部に対し,面接交渉の審判(平成15年豚)第xx号)を申し立てた。イ申立人と相手方との話し合いにより,次のとおり面接交渉が実施された。① 平成16年3月×日(月) 16時から16時30分xxxにて② 同年6月×日(月) 16時から17時xxxにて③ 同年8月×日(月) 13時から16時までxxxにて④ 同年10月×日(土) 10時から13時までC丈わで待ち合わせ⑤ 同年12月×日(日) 12時から16時までムムムで待ち合わせウ平成16年11月15日,面接交渉の審判手続は調停手続(平成16年(家イ)第xx号)に付され,同日付けで要旨次のとおり調停、(以下「前回調停」としいう。)が成立した。① 申立人は,相手方に対し,相手方が未成年者と1か月半に1回程度の面接交渉することを認め,その具体的日時,場所,方法については,乎の福祉を慎重に考慮し,双方事前に協議して定める。②相手方が希望している宿泊付きの面接交渉については,今後,申立人において検討する。エその後,双方の代理人間で,平成17年1月下旬の土曜日又は日曜日に面接交渉を行う方向で調整が進められたが,申立人代理人の都合がつかなかったことから,相手方は,別の立会人を探すか.その後の週で申立人代理人の都合がつく日に再調整するよう申し入れた。そこで,申立人代理人は,相手方代理人に立ち会うよう要請したところ,相手方代理人は,誰が立ち会うかではなく.立ち会いの要否そのものの問題であり,相手方代理人としては立ち会い不要と考えているので立ち会うつもりはなく,どラしでも立ち会いが必要ならば申立人の側で人選すべき旨答えた。調整の結果,同年1月×日目随自に面接交渉を実施する方向で調整が始められたが,申立人代理人は,相手方代理人に対し,面接の際に何かあった場合.申立人代理人と連絡がつくようにして欲しいと要請した。相手方代理人は.相手方が相手方代理人と連絡をとるかは相手方側の問題であり,申立人に対して何かを約束する筋合いの問題ではない旨強調し,申立人の人選にも干渉しないし,関係者が面接交渉に終始随行することも黙認する旨述べ申立人側の要請を断った。その後,申立人代理人は,相手方代理人に対し. 未成年者の両親が直接対面することを嫌がっているから同年1月×日の面接交渉は延期したいとし,また,面接の際の相手方と相手方代理人間の連絡態勢ないし双方代理人の立ち会いが面接交渉の前提条件であると通告した。、結局,同年2月×日日曜日,申立人代理人立ち会いのもと面接交渉が実施された。相手方は,未成年者ム口口口で待ち合わせ,ムム経由でcxコに行き.0ムに連れて行った。オ双方の代理人間で.同年2月中旬頃から日程の調整が開始されたが,申立人代理人から,同年3月×日文は同年4月×日との候補白及び面接時間の短縮の案が示され,かつ,未成年者が両親の直接の対面を嫌がりどちらかの弁護士が立ち会わなければ「絶対に行きたくなし、Jと述べているとし,前回は申立人代理人が立ち会ったので,今回は相手方代理人が立ち会って欲しい旨の要請があった。しかし,相手方代理人は,候補日,時間短縮は受け入れるが,相手方代理人の立ち会いは断る旨告げた。これに対し,申立人代理人から同年3月×日面接交渉を拒否する旨の通告があった。カそこで,相手方は,平成17年3月.東京家庭裁判所八王子支部に面接交渉の履行勧告を申し立てた。調査官による調整の結果,面接交渉が再開されることになり,平成17年5月×日,面接交渉が実現し.相手方は.未成年者をロムに連れて行った。キ相手方代理人は,平成17年6月下旬,申立人代理人に対して,次回の面接希望日を同年6月×日とし,次々回をxxxxの試合の観戦したいので同年8月×日としたいと提案した。そり理由は,相手方はxxxxが好きであったところ,未成年者もxxx×を題材にした漫画が好きであったためである。申立人代理人は,同年6月×日の面接の方法について回答すると共に,同年8月×日は先約が入っている旨回答したので,相手方代理人は,その先約が未成年者が楽しみにしている用事であれば了解するが,未成年者に究約とxxxxの試合とのどちらを選ぶか検討させて欲しいと伝えたところ,申立人代理人は,先約を優先したいとの意向であると回答した。同年6 月×日の面接の際に未成年者に尋 しかるに,相手方が, クねたところ,未成年者にはxxxx のチームが来ることが伝えらこの問題は面接妨害による損害賠償 その後,相手方代理人は, ケ×日に宿泊を伴う面接交 同年8 月×日, の問題に譲ることとし,渉を実施するよう提案したところ,申立人代理人は,未成年者がこれを拒否していると回答した。同年8 月×日,面接交渉が実施されたが相手方代理人が次回 コ同 の面接交渉につし、ての希望を伝えたところ,申立人代理人は,れていないようで・あったので,申立人代理人に対し,未成年者にどのように説明したのかにつき釈明を求めたところi申立人代理人は未成年者には伝えた旨回答し,平行線のまま終始した。×日の面接が可能か尋ねたが,申立人代理人は双方代理人間の話し合いを経ていないとし,同月×日の面接交渉を見送る旨通告した。同月×日, 年10 月×日にして欲しい旨提案した。相手方は,面接交渉をすることを拒否しているためである。その後,相手方と未成年者との面接交渉は実施されていない。年(家ホ)第xx 号離婚等請求事件,平成16 年(家へ)第xx 号損害賠償請求事件) ,申立人はこれに対し反訴を提起した(平成16 年(家ホ)第xx 号)離婚反訴請求事件)。同裁判所ば,平成18 年 3月×日 要旨 次のような判決をし イ申立人によれば,及びその後面接交渉を実施していないのは,未成年者が相手方と同年8 月×日以後の面接交渉を延期したこと東京家庭裁判所八王子支部に対し,申立人を被告として,離婚訴訟及び損害賠償請求訴訟を提起し(同裁判所平成16た。
(1) 原告と被告とを離婚する。相手方は, 原告と被告との長男 C(平成7 年×月×日生)の親権者を被 (2) と定める。 告(母)
(3) 原告は,被告に対し,長男 Cの養育費として本判決確定の日の属する月から長男 Cが成人に達するまで毎月 3万円を毎月末日限り支払え。原告は,被告に対し,財産分与として40 万円を支払え。
(4) 原告のその余の請求を棄却する。
(5) 被告のその余の反訴請求を棄却する。
(6) 上記裁判において申立人は,上記別居の経緯について,平成 ウ(ア)12 年8月頃以降顔にあざができるような暴力を振るわれ,平成15 年8月×日,相手方から脅迫的な内容の電話がかかってきたところ,未成年者が従来の居宅を出て行こうと発言したため,未成年者も相手方との同居を望んでいないことを知り,別居を決意したと主張している。これに対し,相手方は,申立人は相手方から生活態度をとがめられると,相手方に対し,殴る蹴るの暴行を加え,特に平成13 年6 月と同年11 月には,模造万や竹の棒で殴ったり,素手で相手方の頭や上半身を殴ったり,倒れたところを蹴るなどし,振るっていたことが認められるが,いずれも打撲程度であり,深刻な怪我を負わせるような暴力を振るったものと認めるに足受けたこともあると主張した。同判決は,申立人と相手方との聞の暴力については,平成12- (ウ)年後半以降頻繁に喧嘩を繰り返し,喧嘩の際には互いに暴力をまた,平成13年7月には,申立人が投げたコップが相手方のこめかみに当たり,相手方が数日間の吐き気を覚えて脳の CTスキャン検査を(イ)相手方は怪我をして病院で診察を受けるに至り,りる証拠はなく,また,どちらかが一方的に激しい暴力を振るっていたとまでは認められないとし.また,面接交渉については,申立人は,相手方の求めに応じて面接交渉を実施しており,実現できなかったのは双方の連絡や面接の条件が折り合わなかったことが原因であり,申立人にのみ賀任があったわけではないと判断Lている。
(4) 東京家庭裁判所八王子支部家庭裁判所調査官(ただし,別件に関するもの)及び当庁調査官の調査結果によれば.次の事実が認められる。ア申立人は,平成14年3月からムムにおいて高校生や浪人生に×ムを教えており,月収は手取り25万円であり.実家から毎月5万円の援助を受けているほか,子が通っている学習塾の月謝約3万円のうち2万5000円を出してもらっている。イ申立人の住居は,住居近くのアパートで居室は6畳一間であり.台所,便所.風呂が付属している。家賃は月額7万6000円である。ウ相手方は,平成16年5月末からムO所在のムロムの事務職員として稼働しており,年収は約450万円である。エ未成年者は,甘えん坊の性格であり,外出するときは申立人と手をつなぎたがり,寝るときも添い寝を求め,入浴時の洗髪も申立人以外にはさせたがらず, また,人前では恥ずかしがり屋であり,あいさつや自分の意見を述べることがなかなかできない状況にある。オ調査官が申立人め実家で母子の交流状況を観察したところ,未成年者は,学校や友達のことなどを話題にしていた際も,未成年者は申立人の脇から離れることはなく.むしろ時間が経つにつれて次第に申立人に抱きついたり膝に乗ったりするなど,密着するよ5になった。未成年者の小学校における成績は理数系を中心に良好であり,一–交友関係も円滑である。未成年者の申立人に対する評価は.全般的に肯定的であり,実際の言葉からも観察された態度や行動からも愛着の強さがうかがわれた。未成年者は,素直に申立人に対する甘えを表現する一方p 不快なことがあれば申立人に慰めを求めることで気持ちを整理するなど,申立人が未成年者にとって心の拠り所になっているといえる。カ未成年者は,ことさら相手方に対し拒否的な言動を示すことはなかったが,同居中に申立人と相手方との間で繰り返された争いについては,生々しい記憶が残っており.再び争いがおきなし、かなど不安を感じている梯子であった。
2 本件に関する当事者双方の意向
(1) 申立人申立人は,相手方が,面接交渉の場において,未成年者に対し.申立人との生活状況について詳細に尋ねたりしないことを確約するならば.1か月半に1回の割合で,相手方が未成年者と面接交渉することを認める。
(2) 相手方(平成18年1月×日主張盤面でのもの)ア面接の時聞は,毎月第4日随日の正午から実施するものとし,待ち合わせ場所はJR山手線又はその内側にある交通機関の駅の中から相手方が指定する場所とすることイ面接の際未成年者との会話について禁止事項をもうけないことウ遠出あるいは宿泊を伴う旅行を半年にl回実施することエ未成年者の学級担当者との商談を定期的に実施し,その内容を相手に知らせ,未成年者の通信簿全部のコピーを交付し,学校行事については予定の連絡があってから1週間以内にメールがファックスで伝達し,学校からの配布物を月にl度コピーして送付し,通っている塾についてのカリキュラム,内容,頻度を開示,未成年者の進学についての考えを明らかにすること(3) 相手方の主張に対する申立人の意見ア面接交渉日は1か月半に1回.双方の都合が良い日曜日に実施するのが適当である。イ場所は,社団法人Cわの利用を前提とするなら,同所の所在場所付近又は同職員が同行しやすい場所とするのが適当である。ウ面接交渉中に未成年者を通じて申立人の言動等を尋ねたり.申ー立人から特定の行動を禁止されていることの確認を求める等,未成年者が返容に窮する事項の質問を避けるべきである。エ宿泊を伴う面接交渉は,未成年者り負担が大きく,現状では難しい。オ保護者が学級担当者に面談を求めることは,学校内において.その保護者や子に何か特殊な事情があるとの印象を抱かせることになるので適切ではなし、。カ学校行事等に関する情報や通っている塾のカリキュラム等については,これをすべて明らかにせよとの相手方が主張する理由は明らかではないが,これらの情報を現段階で開示することは困難である。3 検討(1)一般に,父母が離婚した場台も,未成熟子が非監護親と面接交渉の機会を持ち,親からの愛情を注がれることは.子の健全な成長,人格形成のために必要なことであり,面接交渉の実施が子の福祉に59・3-82裁判例( 家事)反するなどの特段の事情がない限り,これを認めるのが望ましい。しかし,面接交渉が子の健全な成長.人格形成のためであることに鑑みると,その程度,方法には,自ずから一定の限度があり,子の心理面,身体面に与える影響,子の意向等を十分配慮する必要があるし,真に子の福祉に資するような円滑かつ安定的な面接交渉を実施するには.父母相互の信頼と協力関係が必要である。(2)ア相手方は,面接交渉の回数につき,毎月1回第4日曜日の面接交渉及び半年に1度遠出ないし宿泊付きの面接交渉を求めている。しかし, 本件は,紛争性が強い事案であり.未成年者は.10歳,という心身とも未だ未熟な年齢であり,また,その性格は内向的であるうえ,同居中の両親の争いについて生々しい記憶を有していること.他方,申立人に対する愛着の強さは相当なものがあり,心の拠り所在なっている状態にあること,前回調停において合意がで:きたのは1か月半にl度の面接交渉であり,宿泊については申立人において「検討する。Jとの内容にとどまっており,本件において申立人は,未成年者の負担が大きいとして宿泊付面接交渉につき反対していること,前回調停で-合意された面接交渉すら具体的内容について折り合いがつかないなどの理由でそのとおりには実施されておらず,平成17年8月を最後に中断したままとなっていること,これまでの面接交渉の状況から未だ申立人と相手方との聞に面接交渉についての信頼関係が十分に形成されているとはし、えないことを総合考慮すると.相手方主張のような前回調停を上回る割合ないし宿泊付の面接交渉を認めることは.現時点では時期尚早であり,未成年者の肉体的・精神的負担を増加させ,父母相互の信頼と協力関係に悪影響をもたらしかねず.其に子の福祉に資するような円滑かつ安定的な面接交渉を期待することが困難となるおそれがあるというべきである。Lたがって,相手方の上記主張は採用できなし、。イ相手方は,申立人に対し,未成年者の学級担当者との面談を時宜にかつ定期的に実施し,その内容を相手に知らせ,未成年者の通信簿全部のコピーを交付し,学校行事については予定の連絡があってから1週間以内にメールかファックスで伝達し,学校からの配布物を月に1度コピーして送付し,通っている塾についてのカリキュラム,内容,頻度を開示.未成年者の進学についての考えを明らかにすることを求める旨主張する。しかしながら,これらの情報の開示は,面接交渉の実現とは直媛関係がない事柄であり,面接交渉の手段でもなければ,目的で込なし、。.むしろ,面接交渉においてこれらの開示を求めることは,かえって未成年者の養育のありょうをめぐ、て新たな紛議をもたらし,未成年者をその渦中に置くこととなるおそれがあるから,本件面接交渉において上記情報の開示を求めることは相当ではない。したがって,この点についても,相手方の主張は採用できなし、。ウ相手方は,面接交渉において未成年者との会話に制限をもうけるべきではない旨主張する。しかしながら,面接交渉において未成年者の生活状況をあれこれ詮索したり.申立人の言動の真偽について未成年者に意見を求めたりすることは未成年者を申立人と相手方の紛争に巻き込み,無用のストレスを与えることになりかねす;子の福祉に反するから,許されるべきではない。面接交渉における基本的な判断基準は,子の福祉に反するか否かである。そうすると,面接交渉自体が両親の紛争に未成年者を巻き込んだり,いずれの親の言動やふるまいが正しし、かの選択を追ったり,監護親の言動が正しし、かどうかのテストを未成年者に求めたりするのは,未成年者に著しいストレスを与え,子の福祉に反するおそれがあるから,特段の事情がない限り,不相当といわざるを得ない。低に.そのような面接交渉を重ねるならば,いずれ子が面接交渉自体を拒否ないし消極的になることになろうが,裁判所としても,相応に成長した子の意思は尊重せざるを得ず.早晩,面接交渉を禁止せざるを得ない事態が生じかねないおそれがあるというべきである。.したがって,上記相手方の主張は採用できなし、。エ当事者双方は.本件面接交渉を社団法人Cわを介して行うことに合意し丈いるところ,今後,面接交渉を円満かつ安定的なものに,長期に継続す与ためには,同職員又はその指定する者(当分の聞は同職員の立ち会いが必要であろうが,同職員の判断により.将来,当事者聞に信頼関係が築かれたとされた時期には,同職員の指定する者の立ち会いによる面接交渉が可能となろう。)の立ち会いのもとに実施する必要がある(申立人が提案する双方代理人が交互に立ち会う方法は,前記従前の紛争の経緯に照らし,相当ではない。)。また,面接交渉の日時,場所,方法,同交渉の際の留意事項,禁止事項については,同職員の指示に全面的に従うべきである。
(3) 以上を総合勘案すると.申立人は,相手方に対し,本審判確定後1か月半に1回の割合で,社団法人00の職員又はその指定する者の立ち会いのもと.相手方が未成年者と面接交渉を行うことを許さなければなら.ず.当事者双方は,前記面接交渉の日時,場所,方法,同交渉の際の留意事項’.禁止事項について,社団法人(x)の職員の指示に従わなければならず,また,諸般の事情を考慮すると,上記面接交渉に関し.社団法人Cわに支払うべき費用は.当事者双方が折半して負担すべきである。よって,主文のとおり審判する。(家事審判官大沼洋一)

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