児童福祉施設入所の承認申立却乍審判に対する抗告事件

第l 抗告の趣旨及び理由
抗告人は,大阪家庭裁判所岸和田支部平成20年働第1345号,同第1346号児童福祉法28条1項i号に基づく承認申立事件の平成21年4月3日付け審判を取り消し,抗告人が事件本人Aを児童養護施設に,事件本人Bを乳児院文は児童養護施設に入所させることをいずれも承認するとの決定を求め,抗告の理由として,原審は,親権者父による事件本人らに対する性的虐待の危険性を過小評価する一方で親権者らの監護窓欲について過大評価していること,事件本人らを親権者らに監護させるのでは著しく事件本人らの福祉を害することなどを主張しfこ。
第2 当裁判所の判断
l 事実関係次のとおり付加訂正するほかは,原審判2頁9行自から6頁16行目までに記載のとおりであるからこれを引用する。
(1) 2頁18行自の「同母は.Jの次に「平成14年×月ころから同居するようになり.Jを力日える。
(2) 2頁20行自の「親権者父は.Jの次に「親権者母と婚姻する前に.Jを加える。
(3) 2頁22行自の「親権者母は.Jの次に「親権者父と婚姻する前に.Jを加える。
(4) 2頁25行目の「申立人」から3・頁l行自の「第000号)J までを「平成17年×月×日,親権者を前夫に変更するとの調停が成立し(原審平成17年僚イ)第000号)Jに改める。
(5) 3頁l行自の末尾の次に改行して以下を加える。「カ親権者父母は,平成16年×月から.E及ひ’親権者父の子であるFと同居するようになったが,同月×日.Eが親権者父から虐待されている疑いがあるとの通告が00から抗告人に対してなされた。そこで,抗告人は.Eを一時保護した上..担当者が親権者父と面接したところ,親権者父は,火が消えたばかりのライターがEの手に当たり火傷をさせたことがあること,愛情表現ないしスキンシップのつもりでEのズボンをずらしたり胸を触ったりしたことなどを述べた。また.Eは,同年×月XB.産婦人科で・性暴力受傷疑いと診断された。抗告人は,親権者父による性的虐待のおそれがあるなどとして.Eについて,児霊福祉法28条1項l号に基づく承認を求める申立てをした(原審平成17年劇第000号)が,上記のとおりEの親権者が前夫に変更されたため,これを取り下げた。」
(6) 3頁4行自の「送った後.Jの次に「同女を施設に入所させることを親権者母が抗告人に求めたことから.Jを加える。
(7) 3頁5行自のrx月.Jをrx月×目,年齢超過により」に改める。
(8) 3頁8行自の「結局」を「近隣の保育所への入所が決まったこともあってJに改める。
(9) 3頁10行目の「を約束させた」から12行目の「合理的である。)Jまでを「の指導をした」に改める。(lω 3頁13行自の「保育所に通っていたところJを「同居している親権者父と2人で入浴することもあったが.Jに改め.r平成18年×月×日,Jの次に「産婦人科を受診したところ,性暴力受傷後ムムとの診断がなされ,Jを加.える。
(11) 3頁14行目の末尾の次に改行して以下を加える。r Aは,上記産婦人科の医師から「お父さんが指を入れたのJ,r痛かったの」と質問され,いずれも首を縦に振り肯定的な返事をしたほか,平成18年×月×日には,抗告人の担当者に対しても,親権者父(当時は非親権者)から性器を触られた旨話した。上記産婦人科の医師は,親権者父の刑事事件(下記(3)) において証人となり,上35傷害は,腫入口から宅内に向かって物体を挿入することで生じるものであり,人の指を挿入することで生じると考えても矛盾がないこと,体を洗う際に同部をつめで強くひっかくことで同様の傷害が生じる可能性も絶対にないとはいえないことなどを供述している。また,医師000は,上記損傷にっし:て,腫入口から腔内に向かつてある程度の径をもっ物体が進入したことで生じた可能性が高いこと,体を洗うなどの過程で偶然生じる損傷とは考えにくいことなどを記載した意見書を作成した(なお,この意見書は,親権者父の刑事事件(下記(3)) の判決宣告後に作成されたものである)oJω 3頁16行自の「申立人は,Jの次に「平成19年×月×日, jを加-えるoil–
(13) 4頁4行自の「平成16年×月×日」の次に「ころ」を加える0u
4) 4頁5行目の「押しつけて」の次に「少なくとも」を加えるo同4頁9行自の「大阪府」の次にroo市」を加える。
U6) 4頁10行目の「全治」の次に「約」を加える。(1司4頁22行自の末尾の次に改行して以下を加える。「抗告人は,親権者父の逮捕後,親権者母との信頼関係を築くことができなくな?ていたが,上記無罪判決により,親権者父母の態度はいっそう硬化し,抗告人は親権者父母に対する指導や援助ができなくなったのみならず,親権者父母の現状を把握することもできなくなった。」同5頁3行目の「出生児は,超未熟児であうたが」を「出生時は,超未熟児であり」に改める。側5頁4行自の「近づきつつある」の次に「が,知的発達には,なお遅れがみられる」を加える。側5頁11行自の「多かったJの次に「が;親権烹母よりも祖母の方が積極的にBの世話をし,親権者母とBの情緒的関わりを補っτいた」を加える。倒5頁14行目の「遅くともJから22行目の「言い渡され, jまで及ぴ22行自から23行目にかけてのT親権者父母はJを削除する。倒5頁26行目の「二聞があり.Jの次にfA,Bの写真やAの賞状が壁に掲げられている。」を加える。倒6頁l行目の末尾の次に「近隣の保育所文は幼稚園にBが入園できるとは限らないことから,親権者母が自宅でBを監護養育するつもりである。また, Aの小学校への通学には徒歩で30分を要することから,親権者母がAの送迎をするつもりである。」を加える。凶6頁2行自のf親権者父は,j-の次に「鉄道の」を加えるo側6頁3行自のroo万円から00万円」をroo万円から00万円」に改めるo倒6頁4行自の「あったが,Jの次に「口口の治療に専念するために休職し,その後も体調が戻らなかったため退職し.jを加えるo間6頁5行目の「示している。」の次に「親権者父母は,いずれも,平成15年ころに自己破産をしたが,その後も借金をし,現在では」を力日える。倒6頁10行目の「申立員」を「抗告人」に改める。ω1) 6頁12行目から13行目にかけての「思っていると述べた上?親権者父とAらが一緒に風自に入れない」を「思っており,親権者父との間で,性的虐待を疑われないようにするための具体的方策について話し合ったこともないと述べた上,ー事件本人らの入浴を親権者父にはできるだけ頼まないようにし,なるべく自分で事件本人らを入浴させる」に改める。
2 上記事実関係に基づき検討する。
(1) 抗告人は,事件本人らと親権者父母とが家族として再統合するための調整期間として概ね1年程度を確保するために,事件本人らを引き続き児童養護施設等に入所させることの承認を求め,その理由として,親権者父母の監護能力等からすると,事件本人らを直ちに親権者父母らに引き渡すのでは著しく事件本人らの福祉を害すると主張し,親権者父母は,事件本人らを直ちに引き取ることを希望し,本件申立ての却下を求めている。
(2) 上記1の事実によると,親権者父母は,これまでも,事件本人らを乳児院文は児童養護施設に預けるなどしていたもので,自ら事件本人らの育児をした経験に乏しいことや, Eは親権者父から被害を受け,親権者母はこれを防止できなかったことなどを考慮すると,監護能力及び監護者としての適格性に疑問があり,加えて,事件本人らは,超未熟児として出生し,現在でも心身の発達に遅れがあり, 00病院で定期的に検診を受けているのであって,かかる事件本人らを親権者父母が適切に監護養育できるかについては,不安を払拭することができなし、。また,親権者父の夜勤が多いことから,親権者母が育児の主体と62・7-66裁,判例(家事)なることが予想されるが,親権者母は,口口で体調が思わし《なく,仕事への復帰もできない状態であって,健康面にも不安がある。さらに,親権者父母がAを自宅で養育していた際は,保育所による育児の援助があったが,親権者父母は, Bを保育所に入所させずに自宅で監護養育する意向を有しているから,今後, Bの育児についての支援は抗告人が中心とならざるを得なわところ,抗告人と親権者父母との信頼関係が構築されているとはいい難い。以上によると,親権者父母が直ちに事件本人らを引き取ることが可能な状態になっているとはいい難く,親権者父母が事件本人らを受け入れるための準備や環境整備のための期間が必要であるというべきである。
{3} また,抗告人は,親権者父が事件本人らに性的虐待をする危険があると主張するo上記1の事実によると,親権者父は, Eに対する強制わいせつ罪で有罪判決を受けており,親権者母がAを引き取った後, Aがムムの傷害を負い,その原因についての医師の意見やAの医師に対する応答からすると,刑事事件の判決はあっても,親権者父の性的虐待、を疑う事情があることは否定できないところ,親権者母は,今後,事件本人らの入浴をなるべく親権者父lζ 頼まないようにするとは述べているが,親権者父に事件本人らの入浴を依頼しないとまでは述べておらず,また,親権者母は,今後,親権者父による性的虐待を疑われないようにするための対策について夫婦問で話し合うことすらしていない。以上によると,親権者父が現在執行猶予中であることを考慮しても,親権者母だけで事件本人らが性的虐待の被害に遭うことを防止ある程度の期間,抗告人によって親権者父母に対する適切な指導を実施する必要があるというべきである。なお疑問を抱かざるを得ず, できるかについては,抗告人は,親子の再統合のためには最低で約 1 年間の親子再統合
(4) プログラムを行うことが必要であると主張しているが,一件記録によると,親権者父の裁判が係属していたこともあって,抗告人が親権者父母との信頼関係を構築することかできず,同プログラムの開始には至っていないことが認められる。
(5) 以上を総合すると,事件本人らを直ちに親権者父母の監護に服させるのでは事件本人らの福祉を著しく害するおそれがあるというべ1 年 きであり,親権者父母が事件本人らを監護養育するに先立ち,したがって,かかる準 程度の準備期間が必要であると認められる。備期間を確保するため,抗告人が事件本人らを児童養護施設等に入よって,本件抗告は理由があるから,家事審判規則19 条 2 項により原審判を取り消し,審判に代わる裁判をすることとし,主文のとおり3 所させることを承認するのが相当である。岡口基一) 田中義則 裁判官 松本哲弘 決定する。(裁判長裁判官

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