児童の福祉施設入所承認申立事件

1 申立ての趣旨
主文同旨
2 申立ての実情
事件本人は,親権者である父B(以下「父Jという。)の下では養育が困難であるとして,平成14年4月30日・児童養護施設への入所を承認する旨の審判がなされ,児童養護施設rCXXXX)J(以下「本件施設Jという。)において監護されてきた。事件本人は,精神的不安定な状態から学校や本件施設での暴力行為等の問題行動が悪化したため,指導等によりその更生を図ってきたが,内省のないまま問題行動が激化してきていて児童養護施設-での処遇は困難となっている。父は,気が向くと本件施設を訪れ,事件本人との面会等を行っていたものめ,平成17年3月の面会を最後に全く連絡がとれない状態となり,児童相談所の再三にわたる来訪も拒んで、いる状態で,事件本人の養育困難な状況には変わりないが事件本人の児童自立支援施設への措置変更については,同意しない。そこで,申立入は本件申立てに及んだ。
2 当裁判所の判断(1) 杢信己録及び平成14年闘第xxx号,同第xxQ号児童福祉施設入所承認申立事件記録によれば,以下の事実が認められる。① 事件本人は平成5年12月19日に,その妹Cは平成7年7月9日に,父と母Dとの聞に出生し,平成7年12月20日に父と母が離婚し父がその親権者となった。② 事件本人及び妹c(以下両名を「事件本人らJという。)は,平成8年2月に父の養育閤難を理由に口口児童相談所によりにわ会乳児院Jへ措置入院され,翌3月には父が事件本人らを引き取れないので死ぬしかないなどとして自宅車庫に石油をまき放火して逮捕され自己所有建造物等以外放火罪で罰金刑に処せられ,同年8月には口口児童相談所に置き去りにされるなどして児童養護施設に措置入院となったが,父が児童相談所の対応を非難するなどしたうえ事件キ人らを引き取り自ら養育することを強く求めて措置解除となった。しかし,父はその後も児童相談所に自殺をほのめかしたり,飲酒のうえ児童相談所の職員等に対する攻撃的な言動に出たり,あるいは養育悶難な状況となると自ら事件本人らの施設入所を希望するなどして,その都度,事件本人らは児童養護施設に一時保護されたり措置入院となるも,しばらくすると,父が事件本人らの引き取げを強く求めでかかる措置が解除されるということが繰り返ーされた。平成14年4月30日には,ムム児童相談所長の申立.てに基づき,事件本人らを児童養護施設に入所させることを承認する旨の審判がなされ(当庁平成14年隊)第xxx号,同第xxQ号).以後,事件本人らは,本件施設で監護養育された。なお,同審判は,事件本人らの健全な成長のために,父が自己の性格特徴上の問題点に関する認識や飲酒について内省を深め,飲酒に頼らなくても精神的に安定した生活を営めるようになるまで,事件本人らを児童養護施設に入所させることが相当であるとしている。③ 父は,事件本人らの本件施設入所後は,事件本人らの家庭復帰を目標に児童相談所からの指導等を受け,平成15年6月ころまでは児童相談所に連絡のうえ事件本人らと定期的な面接等を行い,事件本人らの家庭復帰に向けて順調に推移していた。しかし,父はその後には事件本人らを伴い外出中に飲酒して車を運転するなどして本件施設職員から注意を受けたり,酔余のうえ児童相談所や本件施設に対し架電したり赴いたりして怒号するなど攻撃的な言動を繰り返すなどし,平成16年秋ころからは事件本人らとの面接も途絶えがちとなり,平成17年3月を最後に面接しなくなり,以後,本件施設や児童相談所からの連絡にも応じない状態となっている。父は,児童相談所や本件施設に対して極めて攻撃的であり,事件本人を児童自立支援施設に移すことも妹Cを引き続き児童養護施設に入れておくことも同意できず,いずれは事件本人らを引き取りたいとは述べるが,そのための準備や現在の生活状況等については,関係ないことであるとしてこれを明らかにしていない。いずれにしても,未だ,父の下で事件本人を健全に監護養育で‘きる環境が整えられているとはし、えない。事件本人は.0ム市立O口小学校6年生(学内での問題行動が多発したことにより平成汀年4月からは普通学級から特殊学級に移籍④となっている。)であるが,これまでにも暴力行為, 万引き,女児の身体に触るなどのわいせつ行為等様々な問題行動に及び,級友に対する暴力等も頻発し級友の中には不登校となったものも現れた。少年関係裁判例事件本人には,本件施設内での心理療法や児童相談所への通所指’導などが行われてきたが,改善傾向は見られないまま, 同年1Q月18日tこ,tま同年8月ころから本件施設内の小学2年生の女児を事件本人が無理矢理に裸にして性器を触ったり祇めたりするなどの強制わいせつ行為を繰り返していたことが発覚し,事件本人は同月20日に一時保護され,以後.0ム中央児童相談所の一時保護所で生活している。自らの行為についての問題意識がほとんどない状態”"G.内省は極めて乏しく,これまでの指導等にもかかわらず悪化傾向にあることなどからしても,しかし,ー事件本人は,もはやこのまま児童養護施設での処遇を総統することが有効であるとはいえず,児童自立支援施設において専門家の手によるより手厚い指導を施す必要がある。以上によれば,前記審判で指摘された父の問題点は改善しておらず,事件本人の健全育成のためには,事件本人を児童自立支援施設に入所させることが相当である。よって.本件申立てを認容することとし,主文のとおり審判する。(家事審判官安藤範樹)

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