保佐開始申立却下審判に対する即時抗告事件

第1 事案の概要等
1 事案の概要理由
(1) 抗告人(本人の母)は,平成15年8月14日,原審に対し,本人にっき後見を開始するよう求める申立てをしたが,平成16年4月19日,申立ての趣旨を,保佐開始に変更した。
(2) 原審は,平成16年9月17日,鑑定の結果によると,本人は,統合失調症の慢性期にあり,自己の財産を管理処分するには常に援助が必要とされる状況にあるけれども,抗告人の申立ては,その真意において本来の保佐制度の目的に適合せず,申立権の濫用であ.t).” 保佐人を選任する必要性は極めて乏しいとして抗告,人の中立てを却下する旨の原審判をした。
(3) そこで,抗告人が原審判を不服として即時抗告をしたのが,本件である。2 抗告の趣旨及び理由(1) 抗告人は,原審判を取り消し,本件を原審に差し戻す旨の裁判を求めた。(2) 抗告理由の要旨は,原審判は,鑑定の結果を受けて保佐人の候補者を探していたにもかかわらず,精神を病む本人の言い分を重視して,抗告人の申立でを却下したものであって,不当である,本人と親族の聞に保佐人が介在することで,状況の改善が期待できるから,保佐人を選任する必要性がある,というものである。
第2 当裁判所の判断
1 本件の事実関係は.次のとおりである。
(1) 記録によると,次のとおり訂正するほかは,原審判1頁25行目か裁判例( 家事)ら同5頁l行固までに記載の事実が認められる。ア原審判2頁5行自の「平成9年から平成11年8月まで約2年半Jを「平成10年5月から平成13年2月まで」と,同頁7行自のr17歳時」をr16歳時Jと同頁15行自の「平成10年Jを「平成11年4月Jと,同18行目の「年金は打ち切られたJを「本人の労働意欲を喚起するため,年金は返上したJと各改める。イ同3頁19行目の「応じず」から同20行目末尾までを「応じなかった。Jと改める。ウ同4頁6. 7行目の「一切の援助を行っていない。」を「これらの要請を拒絶している。」と改める。
(2) 記録によると,更に,次の事実が認められる。ア本人は,平成16年×月×日,ムム信用金庫cx)支庖で傷害事件を起こし,逮捕勾留され,略式命令により10万円の罰金刑に処されたが.-これを支払うζ とができず,労役場留置となり,同年×月×日,同措置を終えた。イ本人は,平成17年×月頃,原審判肩書地(α コ市)の自毛内で-仏壇を燃やしたり,扇風機等を庭に投棄したりするなどの行為に及び,同月×日,所轄保健所の勧めで00病院に任意入院したが,同月×日,同室の患者に暴行を働き,病院からの勧告を受けj退院した。ウそこで,本人は.Cわ市の自宅に戻ったが,その直後,自宅から出火し,母屋が全焼した。その際,本人は,現場に臨場し,事情聴取をしようとした警察官に対して頭突きをする行為に及んだため,公務執行妨害罪の現行犯人で・逮捕された。本人は,同年×月×日,同罪で起訴されたが,同年×月,執行猶予付きの有罪判決を受けて釈放され,中学校時代の1年先輩の男性の家に身を寄せた。たばこを食べる行為をしたため,病院 同年×月×日, 本人は, ニ乙に入院したが,翌日,退院した。同月×日,パトカーを損壊し,警察官により,口口病 本人は, オ同年×月×日,医療保護入院の手続がとられたが,平成18 年×月×日,再び任意入院となり,後,同病院に在院したまま現在に至っている。保佐開始の必要性 2 以上の事実(当審で引用する原審鑑定人の鑑定の結果を含む原審 (1) 判認定の事実を含む。)によると,本人は,平成 3 年頃から,精神症状による入院を繰り返しており,現在は統合失調症の慢性期にある己とそのため,本人は,種々の社会的逸脱行動を繰り返して-し、るほか,金銭に関する判断力が低下していて,計画性に乏しく,自己の財産旨管理処分するには常に 衝動的に浪費することがあり,援助が必要であることが認められるから,民法11 条所定の「精神上の障害により事理を弁識する能力が著しく不十分である者」に該当すると評価することができる。そして,本人は,財産として本件預金を有し,月額9 万円余の障
(2) これらを衝 害年金を受給しているところ,上記の精神疾患のため,動的に浪費するおそれがあること,本人につき保佐が開始されれば,保佐人に対する代理権授与について本人の同意が得られなくと元本の領収として保佐人勾同意を要する行為 も,預金の払戻しは,(民法13 条 1 項 1 号) 本件において保佐を開始するこ となるから同月×日,措置入院となった。同年×月×日,任意入院に切り替えられたとは,本人の上記の衝動的な浪費を防止し,本人の保護に資する有院に運ばれ,その後,本人は,効な手だてになるというべきである。
(3) したがって,本件においては,本人につき保佐を開始すべき必要があるものといえる。記録によると,抗告人は,保佐人に対し,本人と親族の聞をとり もったり,社袋的逸脱行動をしないよう本人の行動を監督する役割まで期待しているように窺えるところ,かかる期待には,保佐人が本来果たすべき役割を超えるものがあることは否定できないが, であるからといって,上記のような必要性が認められる以上,抗告人の本件申立てが制度の趣旨に適合せず,申立権の濫用であると判断すべきではない。保佐人の選任 3 上記の経緯を辿っている本件においては,保佐人就任を承諾する第三者を得ることが困難であったが,当審において,適任者の推薦を求めたところ,漸く .00 弁護士会から主文掲記の C弁護士の推薦を得ることができた。問弁護士を本人の保佐人に選任することとする。 そこで,以上の次第で,原審判は相当ではなく,本件抗告は理由があるか 4 ら,家事審判規則19 条 2 項に基づき,原審判を取り消し,審判に代わる裁判をすることとして,主文のとおり決定する。(裁判長裁判官村田龍平) 久 松本 裁判官 田中j 仕太

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