親権者の職務執行停止・職務代 行者選任(審判前の保全処分)申立事件

l 申立ての趣旨及び理由は,別紙「審判前の保全処分申立書Jのとおりである。
2 当裁判所の判断
(1)一件記録及び審問の結果によれば,次の事実が一応認められる。
ア未成年者は,事件本人ら(平成18年×月×日婚姻)の聞に,平成19年×月×日長男として出生した男児である。
イ未成年者は,平成20年×月×日,00病院において00と診断され,現在,ムム病院において入院中である。
ウ△△病院における診断によれば,未成年者の現在の病状は,緊急に右眼摘出手術,左眼局所療法及び全身化学療法を行えば,約90パーセントの確率で治癒が見込まれるものであるが,右眼の視力が失われるのに加え,温存される左眼の視力もほぼ失われる。これに対し,緊急に上記手術・治療をしなければ,臨筋の眼球外浸潤がおこり,数か月以内には死亡することになる。
エ未成年者の共同親権者である事件本人らは,平成20年×月×日以降,再三にわたり医師等から未成年者の病状と手術・治療の必要62・8-84裁判例( 家事)性の説明を受けたが, 「治療はしたくなし、。自分は育てられない。」などと述べ,障害を持つ子供を育てていくことに不安があるとの理ー白から,同意しない。
オ00病院は,未成年者につき,平成20年×月×日に右眼摘出手術を予定している。
(2) 以上の疎明事実からすると,事件本人らは,未成年者の親権者として,適切に未成年者の監護養育に当たるべき権利を有し,義務を負っているところ,未成年者は緊急に手術・治療を施さなければ死亡を免れない状況にあるのに,事件本人らは再三の説得にもかかわらず同意をせずJ このまま事態を放置することは未成年者の生命を危うくするものであるし,事件本人らの対応に合理的理由を認めることはできない。このような事件本人らの対応は,親権を濫用し,未成年者の福祉を著しく損なっていると解される可能性が高いものであって,事件本人らから同意を得る時間的余裕もない。したがって,事件本人らの親権者としての職務の執行を停止させ,かっ,未成年者の監護養育を本案審判確定まで図る必要があるから,その停止期間中は,弁護士である0000をその職務執行代行者に選任するのが相当である。
(3) よって,本件申立てを認容することとし,主文のとおり審判する。(裁判長家事審判官堀内照美家事審判官田中正哉薄井真由子)

(別紙)
審判前の保全処分申立書
平成20年×月×日
津家庭裁判所御中当事者の表示.
【 申立人】所長 。 0000 00 児童相談所A B C
【 未成年者】氏. 平成19 年×月×日生
【 職務代行候補者】0000 名 氏本案審判事件の表示当事者
第 1相手方らは、未成年者の実父・実母であり、未成年者の共同親権者である。
第 2名氏名名親権喪失宣告申立事件 .求める保全処分本案審判申立事件の審判が効力を生ずるまでの問、未成年者の親権者につき、職務の執行を停止し、職務代行者を選任する審判を求める。保全処分を求める事由申立人は、 00 児童相談所所長である。未成年者は、平成19 年×月×日生まれの生後三ヶ月の男児であり、現在ムム病院に入院中である。申立に至る経緯相手方らは、平成19 年×月×目、ムム病院において、未成年者を受診させたところ、 00 と診断された。さらに、平成20 年×月×目、ムム病院から紹介をされた00 病院名氏氏津家庭裁判所2 裁判にて未成年者を受診. させたが、同様に00 と診断され、両院よ り手術{9 I J (家事)をすすめられたが、これを拒否した。
2相手方h は、医師より説得をうけて、平成20 年×月 ×旬、 検査及び治療方針決定の目的で未成年者をムム病院小児科に入院させた。同院において平成20 年×月× 日MR I 検査をしたところ、未成年者の右眼球内にOOmm 、左眼球内にOOmm の腫鎮が認められたが、視神経や大脳など眼球外への浸簡は認められなかった。そこで、同院は、右眼球腫筋は進行期、右と比較して左眼は軽症と診断し、治療法として右眼は眼球摘出、左眼は保存的治療(全身化学療法と局所治療)(以下 「 本件治療方法」という。)との方針をたて、相手方らに本件治療方法実施の同意を求めたが、相手方らはこれを拒否した。
3申立人は、平成20 年×月×目、ムム病院より本件にっしての相談を受け、直ちに同院の医師と面接して事情を聴取したと ころ、未成年者の00 に対する治療法としては、本件治療方法が標準治療である こと、本件治療方法の成功可能性は90% 以上である こと、本件治療方法が成功すれば、両眼の視力を失うもの. の、天命を全う するまで生存で2ヶ月以内に死亡する可能性が1 00% に近いとの説明を受けた。そこで、申立人は本件治療方法実施の拒否は医療ネグレクトと して虐待に該当するとの結論に達し、翌XX臼及びxx日、ムム病院において相手方(母)から事情を聴取したが、同人は障害をもっ未成年者を育ててい く自信がないため本件治療方法に同意し ないと主張しと面会し、・ 本件治療方法へのた。申立人は翌xx日も、相手方(母)同意を求めたが、同人は本件治療方法を拒否する姿勢を崩さなかっきる可能性が極めて高いこと、仮に本件治療を行わなければ、た。第3 親権の濫用相手方らが、本件治療方法を拒否する心情も理解できなくはないところであり、また、児童の権利に関する条約第 5 条で父母の権利 ・ 義務の尊重が規定されていることからして、相手方らの意見にも耳を傾ける必要はあろう。しかしながら、同条約第 6 条では児童が生命に対する固有の権利を有すること及び締結国に対して児童の生存を最大限の確保する義務が規定されていること、また、第 5 条に定める父母の児童に対する指導 ・ 指示の権利も「児童の発達しつつある能力に適合する方法で」との限定がついていることからして、児童の生存をはかるのが児童にとっての最善の利益であり、共同親権者たる相手方らは、かかる最善の利益を確保するために親権を行使する義務があるのである。しかるに、本件治療方法を拒否する相手方らの態度は、生命という未成年者の最善の利益を害することが明白であり、民法834 条に定める親権の濫用に該当する。第4 保全の必要性現荏のところ未成年者に視神経や大脳など眼球外への浸潤は認められないが、 00 の腫誤増殖速度は速く、治療開始の遅れは腫協が眼外へ進出する機会を増加させ、生存率を極めて低下させるため、平成20年×月中の本件治療開始が不可欠であり、△△病院においては、平成20 年×月× 日の本件治療実施につき、準備はととのっている。よって、保全の必要性は高度に認められる。第 5 まとめ以上により、申立趣旨記載の保全処分を求め本申立に及んだ。以上

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